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|magnetic ordering=[[常磁性]]<ref>[http://www-d0.fnal.gov/hardware/cal/lvps_info/engineering/elementmagn.pdf Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds], in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.</ref>
|magnetic ordering=[[常磁性]]<ref>[http://mri-q.com/uploads/3/4/5/7/34572113/susceptibility_of_inorganic_compounds.pdf Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds], in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.</ref>
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'''イリジウム''' ({{lang-en-short|iridium}}) は[[原子番号]]77の[[元素]][[元素記号]]は '''Ir'''。
'''イリジウム'''{{lang-en|iridium}} {{IPA-en|ɨˈrɪdiəm|}})[[原子番号]]77の[[元素]]で、[[元素記号]]は '''Ir'''である。[[遷移元素]]かつ[[白金族元素]]に分類される元素の1つで、単体では[[白金]](プラチナ)に似た[[金属光沢]]を有する


== 概要 ==
== 名称 ==
「イリジウム」という名は、その[[塩 (化学)|塩類]]が、虹のように様々な色調を示す事から、[[ギリシャ神話]]の虹の女神[[イーリス|イリス]]にちなんで名付けられた<ref name="sakurai" />。
[[白金族元素]]の一つ。[[貴金属]]、[[レアメタル]](希少金属)として扱われている(地球の地殻中での濃度は0.001 [[Ppm|ppm]])。単体は銀白色の[[金属]]([[遷移金属]])で、[[比重]]は22.42、[[融点]]は2454 {{℃}}(異なる実験値あり)、[[沸点]]は4500 {{℃}}以上。常温、常圧で安定な結晶構造は[[面心立方構造]] (FCC)。比重は全元素中二番目に大きい(最大は[[オスミウム]])。[[酸]]、[[アルカリ]]に不溶で、常温では[[王水]]にも溶けない(粉末にすればわずかに溶ける)。高温で[[フッ素]]、[[塩素]]と反応する。[[展延性]]に乏しく、加工も難しい。-1, 0, +2, +3, +4, +6価の[[原子価]]を取り得る。


== 用途 ==
== 所在 ==
=== 地球の地殻 ===
[[白金]]とイリジウムの[[合金]]は硬度が高く、[[国際キログラム原器|キログラム原器]]、[[メートル原器]]の材料として使われている。耐熱性に優れていることから工業用の[[るつぼ]]や自動車の[[点火プラグ]]の電極、耐食性・耐摩耗性に優れていることから高級[[万年筆]]のペン先の材料として用いられている。<!-- [[携帯電話]]の内部にも使われている。--><!-- 単に「携帯電話の内部」だけでは漠然としすぎです -->また近年は、希少性の高さから、[[結婚指輪]]など宝飾品の材料として用いられることもある。
イリジウムは白金の精錬時に得られる副産物として採取されている<ref name="materia.54.339">御手洗 容子 『[https://doi.org/10.2320/materia.54.339 白金族金属の構造材料への応用]』 まてりあ Vol.54 (2015) No.7 pp.339-342, {{doi|10.2320/materia.54.339}}</ref>。このためプラチナの生産量に、イリジウムの生産量も依存する。ただ、[[地球]]の[[地殻]]中での濃度は{{Val|0.001|ul=ppm}}({{Val|1|ul=ppb}})に過ぎず<ref>{{Cite web
| title = The Element Iridium
| work = It's Elemental |publisher=Jefferson Lab
| url = http://education.jlab.org/itselemental/ele077.html
| accessdate = 2016-10-01}}</ref><ref group="注釈">地球の地殻中では、オスミウムとロジウムに次ぎ、イリジウムは3番目に低濃度の元素である。</ref>、イリジウムの1年間の採掘量は、4トン程度と少ない。このため、[[レアメタル]](希少金属)として扱われている。


なお地殻中でも偏在が見られ、イリジウムの産出量の95パーセントを[[南アフリカ共和国]]が占めており、南アフリカ共和国のブッシュフェルトの埋蔵量は、現在知られている中で最大である。この他には、ロシアの[[ノリリスク]]や、カナダの[[サドバリー (オンタリオ州)|サドバリー]]でも採掘されており、僅かながら[[アメリカ合衆国]]でも発見されている。
また[[人工放射性同位体|人工的に作った放射性同位体]]のイリジウム192は、[[非破壊検査]]の際の線源として利用される。


== 歴史 ==
=== その他の場所 ===
このように地球の地殻中では希少だが、地球内部の[[マントル]]には、地殻よりも遥かに高濃度でイリジウムが含まれている。また[[隕石]]にも、より高濃度でイリジウムが含まれており、その濃度は{{Val|0.5|ul=ppm}}以上であるとされている。
[[1804年]]に[[オスミウム]]と共に[[スミソン・テナント|テナント]] (S.Tennant) が発見した。


=== 特殊な地層中に含まれるイリジウム ===
「イリジウム」という名は、その[[塩 (化学)|塩類]]が、虹のように様々な色調を示す事から、[[ギリシャ神話]]の虹の女神[[イリス]]にちなんで名付けられた。
[[恐竜]]絶滅に関する議論で、[[白亜紀]]と[[古第三紀]]の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ地層である[[K-Pg境界|K-Pg境界層]]が、しばしば登場してきた。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地球の深部由来の物と判断され、これをユカタン半島への隕石の衝突を示す証拠であると言及されたり、[[デカン高原]]を形成した[[破局噴火|破局的な噴火]]が発生した証拠であると言及されたりしてきた。

{{see also|K-Pg境界}}

== 性質 ==
=== 物理的性質 ===
常温常圧で安定なイリジウムの結晶構造は、[[面心立方構造]] (FCC)である。常温常圧におかれたイリジウムは、[[展延性]]に乏しく、非常に硬いため、加工も難しい。

常圧におけるイリジウムの[[融点]]は 2466 ℃、[[沸点]]は4428 ℃である。このように融点も高いため、そのままでは加工や成形を行う事が困難であり、一般的には粉末にしたイリジウム合金を[[焼結]]して使用する場合が多い。

イリジウム単体の[[密度]]は {{Val|22.562|ul=g/cm3}}<ref name="PlatRev" />であり、比重は全元素中で2番目に大きい<ref group="注釈">密度が最大の元素は[[オスミウム]](Os)で、その密度は、22.587 [[キログラム毎立方メートル|g/cm<sup>3</sup>]]である。</ref>。かつてはイリジウム{{Val|22.65|ul=g/cm3}}、オスミウム{{Val|22.61|ul=g/cm3}}とされ、イリジウムが全元素中最大の比重とされてきたものの、計算時の原子数が間違っていたため修正された<ref name="a">[[#グレイ(2010)|グレイ(2010)]]</ref>。

=== 化学的性質 ===
イリジウムの単体は、一般的な[[酸]]や[[アルカリ]]とは反応せず、常温では[[王水]]ともほとんど反応しない。せいぜい、粉末にすれば僅かに王水に溶ける程度である。常温では[[酸素]]とも反応が難く、[[貴金属]]として扱われる。このように反応性が低いため、Ir-10Al合金化する事で優れた耐酸化性能を与えられる<ref name="materia.52.440" />。

しかしながら、高温で[[フッ素]]、[[塩素]]、酸素と反応する。また、高温酸化雰囲気中では揮発性酸化物を生成する<ref>J. H. Carpenter: J. Less-common Met., 152(1989), 35-45., {{doi|10.1016/0022-5088(89)90069-6}}</ref>。なお、イリジウムは、-1, 0, +2, +3, +4, +6価の[[原子価]]を取り得る。参考までに、酸素と化合したイリジウムで安定なのは、+4価の[[二酸化イリジウム]]である。

== 鉱物 ==
イリジウムを含有した[[鉱石鉱物]]には、次のような物が見られる。


== 産出する場所・物質 ==
=== 産出国 ===
* [[南アフリカ共和国]]
=== 鉱物 ===
* [[自然イリジウム]]、(Ir,Os,Ru)
* [[自然イリジウム]]、(Ir,Os,Ru)
** ([[自然オスミウム]])、(Os,Ir,Ru)
** ([[自然オスミウム]])、(Os,Ir,Ru)
115行目: 136行目:
* [[輝イリジウム鉱]]、IrAs<sub>2</sub>
* [[輝イリジウム鉱]]、IrAs<sub>2</sub>


=== その他 ===
== 用途 ==
2020年現在、白金との比較で、概ね2倍から2.5倍ほどと、非常に高価である。また、加工も難しいため、用途は限られてきた。
* [[隕石]]

* [[K-T境界|K-T境界層]]
=== 工業用 ===
* 北極の氷の中
イリジウム単体や、イリジウムの[[合金]]は、その硬度や融点の高さから[[耐熱性]]や[[耐摩耗性]]が求められる用途で使用される場合が多い<ref name="materia.52.440">御手洗容子、村上秀之 『[https://doi.org/10.2320/materia.52.440 Ir 基合金の高温耐酸化性]』 まてりあ Vol.52 (2013) No.9 p.440-444, {{doi|10.2320/materia.52.440}}</ref>。

;高温耐酸化性
:* 人工の[[サファイア]]の[[単結晶]]を製造するための工業用の[[るつぼ]]は、非常に高い耐熱性が求められるため、イリジウムはるつぼの材料として使用され<ref name=furuyametals>[http://www.furuyametals.co.jp/products/ イリジウムルツボ] 株式会社 フルヤ金属</ref>、イリジウムの用途として最も一般的である。
:* 高温に曝されても酸化被膜が生成され難いため、[[飛行機]]や[[自動車]]エンジンの[[点火プラグ]]の電極の材料として使用される<ref name="materia.54.339" />。
:* [[ロジウム]](Rh)との合金は、IrRh熱電対温度計として 2100 ℃までの計測が可能である<ref>{{PDFlink|[http://www.furuyametals.co.jp/pdf/20130327.pdf 従来の約20倍の耐久性を持つ超高温用熱電]}}</ref><ref>小倉秀樹 ほか、「1950℃付近におけるイリジウム-ロジウム熱電対の評価技術」 センシングフォーラム資料 31, 234-238, 2014-09-25, {{naid|40020353679}}</ref>。
;耐摩耗性
:* 耐食性・耐摩耗性に優れているため、高級な[[万年筆]]のペン先の材料として、[[オスミウム]]などと共に用いられる場合もある。
;原器の材料
:* 白金とイリジウムの合金(Pt-10Ir)は、[[国際キログラム原器|キログラム原器]]や[[メートル原器]]の材料として使われてきた。
;放射線源
:* [[人工放射性同位体|人工的に作った放射性同位体]]のイリジウム192({{chem|192|Ir}})は、[[非破壊検査]]の際の線源として利用されている。

=== 宝飾用 ===
白金の硬化のために、白金との合金の材料としてイリジウムが使用される場合が多く<ref name="jewellery1">{{Cite web|和書|url=http://www.jja.ne.jp/aboutjewellery/aboutjewellery_inner05.html |title=貴金属について |accessdate=2017-05-01 |publisher=日本ジュエリー協会}}</ref>、指輪やネックレスなどの多くの宝飾品に用いられている。


また、近年ではイリジウム単体を、[[結婚指輪]]などの材料として用いる場合もある<ref name="jewellery2">{{Cite web|url=https://www.americanelements.com/irmwb.html |title=Luxury Iridium Jewelry |accessdate=2017-05-01 |publisher=American Elements}}</ref>。
== 地層に含まれるイリジウム ==
[[恐竜]]絶滅に関する議論で、[[白亜紀]]と[[第三紀]]の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ層がある。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地殻の深部由来のものと判断され、そのことから隕石の衝突を示す証拠であると言及されることが多い。


== 同位体 ==
== 同位体 ==
{{Main|イリジウムの同位体}}
{{Main|イリジウムの同位体}}
イリジウムの[[安定同位体]]は、<sup>191</sup>Irと<sup>193</sup>Irの2核種のみで、天然に存在するイリジウムの[[同位体]]は、この2種である。


イリジウムの[[安定同位体]]は、{{Chem|191|Ir}}と{{Chem|193|Ir}}の2核種のみで、天然に存在するイリジウムの同位体は、この2種である。
== 出典 ==

{{Reflist}}
== 歴史 ==
[[1804年]]にオスミウムと共に[[スミソン・テナント]] (S. Tennant) が、イリジウムも発見した<ref name="sakurai">{{Cite |和書 |author =桜井弘 |title = 元素111の新知識 |date = 1997-10-20 | page = 314 |publisher =講談社 |isbn=4-06-257192-7 |ref = harv }}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
=== 出典 ===
{{Reflist|refs=
<ref name="PlatRev">J. W. Arblaster: ''Densities of Osmium and Iridium'', in: Platinum Metals Review, 1989, 33, 1, S.&nbsp;14–16; [http://www.platinummetalsreview.com/pdf/pmr-v33-i1-014-016.pdf Volltext].</ref>
}}
=== 参考文献 ===
* {{Cite book|和書|editor=セオドア・グレイ |translator=武井摩利 |others=若林文高(監修) |chapter= |title=世界で一番美しい元素図鑑 |series= |date=2010-10-22 |publisher=[[創元社]] |isbn=978-4-422-42004-2 |pages=176-177 |url=|ref=グレイ(2010)}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[ツングースカ大爆発]] - 爆発地点でイリジウムが検出された。
* [[ツングースカ大爆発]] - 爆発地点でイリジウムが検出された。
* [[K-T境界]] - イリジウムを高濃度に含む地層が見つかっている。


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[[yo:Iridium]]
[[zh:铱]]
[[zh-yue:銥]]

2024年3月19日 (火) 01:20時点における最新版

オスミウム イリジウム 白金
Rh

Ir

Mt
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
Iridium has a face-centered cubic crystal structure
77Ir
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 イリジウム, Ir, 77
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 9, 6, d
原子量 192.217
電子配置 [Xe] 4f14 5d7 6s2
電子殻 2, 8, 18, 32, 15, 2(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 22.562 g/cm3
融点での液体密度 19 g/cm3
融点 2739 K, 2466 °C, 4471 °F
沸点 4701 K, 4428 °C, 8002 °F
融解熱 41.12 kJ/mol
蒸発熱 563 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 25.10 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 2713 2957 3252 3614 4069 4659
原子特性
酸化数 6, 5, 4, 3, 2, 1, 0, -1, -3
電気陰性度 2.20(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 880 kJ/mol
第2: 1600 kJ/mol
原子半径 136 pm
共有結合半径 141±6 pm
その他
結晶構造 面心立方格子構造
磁性 常磁性[1]
電気抵抗率 (20 °C) 47.1 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 147 W/(m⋅K)
熱膨張率 6.4 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 4825 m/s
ヤング率 528 GPa
剛性率 210 GPa
体積弾性率 320 GPa
ポアソン比 0.26
モース硬度 6.5
ビッカース硬度 1760 MPa
ブリネル硬度 1670 MPa
CAS登録番号 7439-88-5
主な同位体
詳細はイリジウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
188Ir syn 1.73 d ε 1.64 188Os
189Ir syn 13.2 d ε 0.532 189Os
190Ir syn 11.8 d ε 2.000 190Os
191Ir 37.3% 中性子114個で安定
192Ir syn 73.827 d β- 1.460 192Pt
ε 1.046 192Os
192m2Ir syn 241 y IT 0.161 192Ir
193Ir 62.7% 中性子116個で安定
193mIr syn 10.5 d IT 0.080 193Ir
194Ir syn 19.3 h β- 2.247 194Pt
194m2Ir syn 171 d IT ? 194Ir

イリジウム英語: iridium [ɨˈrɪdiəm])は、原子番号77の元素で、元素記号Irである。遷移元素かつ白金族元素に分類される元素の1つで、単体では白金(プラチナ)に似た金属光沢を有する。

名称

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「イリジウム」という名は、その塩類が、虹のように様々な色調を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられた[2]

所在

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地球の地殻

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イリジウムは白金の精錬時に得られる副産物として採取されている[3]。このためプラチナの生産量に、イリジウムの生産量も依存する。ただ、地球地殻中での濃度は0.001 ppmppb)に過ぎず[4][注釈 1]、イリジウムの1年間の採掘量は、4トン程度と少ない。このため、レアメタル(希少金属)として扱われている。

なお地殻中でも偏在が見られ、イリジウムの産出量の95パーセントを南アフリカ共和国が占めており、南アフリカ共和国のブッシュフェルトの埋蔵量は、現在知られている中で最大である。この他には、ロシアのノリリスクや、カナダのサドバリーでも採掘されており、僅かながらアメリカ合衆国でも発見されている。

その他の場所

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このように地球の地殻中では希少だが、地球内部のマントルには、地殻よりも遥かに高濃度でイリジウムが含まれている。また隕石にも、より高濃度でイリジウムが含まれており、その濃度は0.5 ppm以上であるとされている。

特殊な地層中に含まれるイリジウム

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恐竜絶滅に関する議論で、白亜紀古第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ地層であるK-Pg境界層が、しばしば登場してきた。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地球の深部由来の物と判断され、これをユカタン半島への隕石の衝突を示す証拠であると言及されたり、デカン高原を形成した破局的な噴火が発生した証拠であると言及されたりしてきた。

性質

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物理的性質

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常温常圧で安定なイリジウムの結晶構造は、面心立方構造 (FCC)である。常温常圧におかれたイリジウムは、展延性に乏しく、非常に硬いため、加工も難しい。

常圧におけるイリジウムの融点は 2466 ℃、沸点は4428 ℃である。このように融点も高いため、そのままでは加工や成形を行う事が困難であり、一般的には粉末にしたイリジウム合金を焼結して使用する場合が多い。

イリジウム単体の密度22.562 g/cm3[5]であり、比重は全元素中で2番目に大きい[注釈 2]。かつてはイリジウム22.65 g/cm3、オスミウム22.61 g/cm3とされ、イリジウムが全元素中最大の比重とされてきたものの、計算時の原子数が間違っていたため修正された[6]

化学的性質

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イリジウムの単体は、一般的なアルカリとは反応せず、常温では王水ともほとんど反応しない。せいぜい、粉末にすれば僅かに王水に溶ける程度である。常温では酸素とも反応が難く、貴金属として扱われる。このように反応性が低いため、Ir-10Al合金化する事で優れた耐酸化性能を与えられる[7]

しかしながら、高温でフッ素塩素、酸素と反応する。また、高温酸化雰囲気中では揮発性酸化物を生成する[8]。なお、イリジウムは、-1, 0, +2, +3, +4, +6価の原子価を取り得る。参考までに、酸素と化合したイリジウムで安定なのは、+4価の二酸化イリジウムである。

鉱物

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イリジウムを含有した鉱石鉱物には、次のような物が見られる。

用途

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2020年現在、白金との比較で、概ね2倍から2.5倍ほどと、非常に高価である。また、加工も難しいため、用途は限られてきた。

工業用

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イリジウム単体や、イリジウムの合金は、その硬度や融点の高さから耐熱性耐摩耗性が求められる用途で使用される場合が多い[7]

高温耐酸化性
  • 人工のサファイア単結晶を製造するための工業用のるつぼは、非常に高い耐熱性が求められるため、イリジウムはるつぼの材料として使用され[9]、イリジウムの用途として最も一般的である。
  • 高温に曝されても酸化被膜が生成され難いため、飛行機自動車エンジンの点火プラグの電極の材料として使用される[3]
  • ロジウム(Rh)との合金は、IrRh熱電対温度計として 2100 ℃までの計測が可能である[10][11]
耐摩耗性
  • 耐食性・耐摩耗性に優れているため、高級な万年筆のペン先の材料として、オスミウムなどと共に用いられる場合もある。
原器の材料
放射線源

宝飾用

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白金の硬化のために、白金との合金の材料としてイリジウムが使用される場合が多く[12]、指輪やネックレスなどの多くの宝飾品に用いられている。

また、近年ではイリジウム単体を、結婚指輪などの材料として用いる場合もある[13]

同位体

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イリジウムの安定同位体は、191Ir193Irの2核種のみで、天然に存在するイリジウムの同位体は、この2種である。

歴史

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1804年にオスミウムと共にスミソン・テナント (S. Tennant) が、イリジウムも発見した[2]

脚注

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注釈

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  1. ^ 地球の地殻中では、オスミウムとロジウムに次ぎ、イリジウムは3番目に低濃度の元素である。
  2. ^ 密度が最大の元素はオスミウム(Os)で、その密度は、22.587 g/cm3である。

出典

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  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ a b 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1997年10月20日、314頁。ISBN 4-06-257192-7 
  3. ^ a b 御手洗 容子 『白金族金属の構造材料への応用』 まてりあ Vol.54 (2015) No.7 pp.339-342, doi:10.2320/materia.54.339
  4. ^ The Element Iridium”. It's Elemental. Jefferson Lab. 2016年10月1日閲覧。
  5. ^ J. W. Arblaster: Densities of Osmium and Iridium, in: Platinum Metals Review, 1989, 33, 1, S. 14–16; Volltext.
  6. ^ グレイ(2010)
  7. ^ a b 御手洗容子、村上秀之 『Ir 基合金の高温耐酸化性』 まてりあ Vol.52 (2013) No.9 p.440-444, doi:10.2320/materia.52.440
  8. ^ J. H. Carpenter: J. Less-common Met., 152(1989), 35-45., doi:10.1016/0022-5088(89)90069-6
  9. ^ イリジウムルツボ 株式会社 フルヤ金属
  10. ^ 従来の約20倍の耐久性を持つ超高温用熱電 (PDF)
  11. ^ 小倉秀樹 ほか、「1950℃付近におけるイリジウム-ロジウム熱電対の評価技術」 センシングフォーラム資料 31, 234-238, 2014-09-25, NAID 40020353679
  12. ^ 貴金属について”. 日本ジュエリー協会. 2017年5月1日閲覧。
  13. ^ Luxury Iridium Jewelry”. American Elements. 2017年5月1日閲覧。

参考文献

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  • セオドア・グレイ 編、武井摩利 訳『世界で一番美しい元素図鑑』若林文高(監修)、創元社、2010年10月22日、176-177頁。ISBN 978-4-422-42004-2 

関連項目

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