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'''申 淑子''' (シン・スクチャ、[[1942年]] - ）は、[[朝鮮民主主義人民共和国]]（北朝鮮）の[[朝鮮民主主義人民共和国の強制収容所|強制収容所]]に収容された[[大韓民国]]出身の女性。夫の'''呉吉男'''（오길남, オ・ギルラム）が北朝鮮からデンマークに亡命したのち、娘たちと一緒に[[耀徳強制収容所]]に投獄された。この事件は[[アムネスティ・インターナショナル]]が彼女を[[良心の囚人]]と命名し、解放のために重点的な運動を行うなど国際的な注目を受けた。
'''申 淑子''' (シン・スクチャ、[[1942年]] - ）は、[[朝鮮民主主義人民共和国]]（北朝鮮）の[[朝鮮民主主義人民共和国の強制収容所|強制収容所]]に収容された[[大韓民国]]出身の女性。夫の[[呉吉男]]（오길남、オ・ギルラム）が北朝鮮からデンマークに亡命したのち、娘たちと一緒に[[耀徳強制収容所]]に投獄された。この事件は[[アムネスティ・インターナショナル]]が彼女を「[[良心の囚人]]」と命名し、解放のために重点的な運動を行うなど国際的な注目を受けた。


== おいたちと結婚 ==
== 韓国とドイツでの初期の人生 ==
1942年、現在は[[大韓民国]]の一部となっている[[慶尚南道]]の[[統営市]]で生まれた。彼女はそこの小学校と中学校に通った。1958年から彼女は[[馬山市]]の看護学校で勉強をした<ref name="DI">{{cite web | title= Campaign seeks to save SK woman from NK prison camp| work=Donga Ilbo, August 6, 2011| url=http://english.donga.com/srv/service.php3?biid=2011080362968| accessdate=September 27, 2011}}</ref>。
1942年、[[日本統治時代の朝鮮|朝鮮]]の[[慶尚南道 (日本統治時代)|慶尚南道]]統営郡（現在の[[大韓民国]][[慶尚南道]][[統営市]]）で生まれた。現地の小学校と中学校に通った後、1958年から[[馬山市]]の看護学校で学んだ<ref name="DI">{{cite web | title= Campaign seeks to save SK woman from NK prison camp| work=Donga Ilbo, August 6, 2011| url=http://english.donga.com/srv/service.php3?biid=2011080362968| accessdate=September 27, 2011}}</ref>。


1970年に彼女は韓国を発ち、[[ドイツ]]の[[テュービンゲン]]で看護師として働いていた。そこで彼女は1972年に韓国の[[経済学]]の学生だった呉吉男と出会い、彼と結婚した<ref name="AI2">{{cite web | title= North Korea: Fear of "disappearance" of Shin Sook Ja (and her daughters), p. 5 - 8| work=Amnesty International, January 1994| url= http://www.amnesty.org/en/library/asset/ACT77/001/1994/en/849eaaf0-ec2c-11dd-8d9d-a7825928c0bf/act770011994en.html | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。
1970年に彼女は韓国を発ち、[[ドイツ]]の[[テュービンゲン]]で看護師として働いていた。そこで彼女は1972年に韓国の[[経済学]]の学生だった呉吉男と出会い、彼と結婚した<ref name="donga">{{Cite web|和書|title=北朝鮮収容所に残された呉吉男氏の妻娘、出身地統営で救出呼びかける展示会|url=https://www.donga.com/jp/article/all/20110803/414390/1|website=|date=2011-08-03|accessdate=2021-12-01|publisher=[[東亜日報]]}}</ref><ref name="AI2">{{cite web | title= North Korea: Fear of "disappearance" of Shin Sook Ja (and her daughters), p. 5 - 8| work=Amnesty International, January 1994| url= http://www.amnesty.org/en/library/asset/ACT77/001/1994/en/849eaaf0-ec2c-11dd-8d9d-a7825928c0bf/act770011994en.html | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。


後に二人は[[キール (ドイツ)|キール]]の近くに引っ越し、ここで彼女は呉恵媛（오혜원, オ・ヘウォン、1976年9月17日）および呉圭媛（오규원, オ・ギュウォン、1978年6月21日）の2人の娘を出産した。家族は1985年までキール近くのクロンスハーゲンに住んでいた<ref>{{cite web | title= Save Oh Sisters!!| work=Free the NK Gulag (NGO)|url=http://eng.nkgulag.org/bbs/board.php?bo_table=e_02&wr_id=2 | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。
後に2人は[[キール (ドイツ)|キール]]の近くに引っ越し、ここで彼女は呉恵媛（오혜원, オ・ヘウォン、1976年9月17日）および呉圭媛（오규원, オ・ギュウォン、1978年6月21日）の2人の娘を出産した。家族は1985年までキール近くのクロンスハーゲンに住んでいた<ref>{{cite web | title= Save Oh Sisters!!| work=Free the NK Gulag (NGO)|url=http://eng.nkgulag.org/bbs/board.php?bo_table=e_02&wr_id=2 | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。


==北朝鮮へ移動==
== 北朝鮮へ移動 ==
呉は1980年代初頭に韓国政府に対する政治運動に関わるようになった<ref name="AI">{{citation|url=http://www.amnesty.org/library/asset/ASA24/003/1993/en/959f4967-ecb6-11dd-85fd-99a1fce0c9ec/asa240031993en.html|title=North Korea: Summary of Amnesty International's concerns|chapter=2.2. Shin Sook Ja and her daughters|publisher=[[Amnesty International]]|year=1993|accessdate=2010-02-25}}</ref>。
呉は1980年代初頭に韓国政府に対する政治運動に関わるようになった<ref name="o1994">[[#呉|呉（1994）]]</ref><ref name="miura">{{Cite web|和書|title=呉吉男事件と特定失踪者生島さん|url=https://www.yamatopress.com/archives/30529|author=[[三浦小太郎]]|website=|date=2018-09-28|accessdate=2021-12-01|publisher=[[やまと新聞社]]|ref=三浦}}</ref><ref name="AI">{{citation|url=http://www.amnesty.org/library/asset/ASA24/003/1993/en/959f4967-ecb6-11dd-85fd-99a1fce0c9ec/asa240031993en.html|title=North Korea: Summary of Amnesty International's concerns|chapter=2.2. Shin Sook Ja and her daughters|publisher=[[Amnesty International]]|year=1993|accessdate=2010-02-25}}</ref>。
呉は宋斗律（ソンドゥユル）と[[尹伊桑]]を含む何人かのドイツの有名な韓国の左派活動家に影響された。彼らは後に、呉が北朝鮮の経済学者として働くことによって祖国を助けることができると勧めた<ref name="ChosunIlbo20090903">{{citation|periodical=Chosun Ilbo|date=2009-09-03|accessdate=2010-02-25|url=http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2009/09/03/2009090300464.html|title= }}</ref>。呉の左翼家としての活動は北朝鮮政府の代表者の注目を集め、さらに呉の妻が[[平壌]]で無料の[[肝炎]]の治療が受けられると主張して、亡命させようとした。
呉は{{仮リンク|宋斗律|ko|송두율}}（ソンドゥユル）や音楽家[[尹伊桑]]を含む何人かのドイツの有名な韓国の左派活動家に影響された<ref name="donga" />。彼らは後に、呉が北朝鮮の経済学者として働くことによって祖国を助けることができると勧めた<ref name="miura" /><ref name="ChosunIlbo20090903">{{citation|periodical=Chosun Ilbo|date=2009-09-03|accessdate=2010-02-25|url=http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2009/09/03/2009090300464.html|title= }}</ref><ref name="araki47">[[#荒木|荒木（2005）p.47]]</ref>。呉の左翼家としての活動は北朝鮮政府の代表者の注目を集め、さらに呉の妻が[[平壌]]で無料の[[肝炎]]の治療が受けられると騙して北に亡命させようとした<ref name="o1994" />。


申の反対をよそに、家族は1985年12月8日に北朝鮮に到着した。約束した治療を受ける代わりに、呉と申は軍の宿営所にとらわれ、[[金日成]]の[[主体思想]]を研究することを強制された。そして二人は韓国向けのプロパガンダ放送のために用いられた<ref name="WP">{{citation|last=Harden|first=Blaine|date=2010-02-22|title=A family and a conscience, destroyed by North Korea's cruelty|url=http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/21/AR2010022103690.html?sid=ST2010022103942|periodical=Washington Post|accessdate=2010-02-25}}</ref>。
申の反対をよそに、家族は1985年12月8日に北朝鮮に到着した。ルートは、[[西ベルリン]]から[[東ベルリン]]、[[モスクワ]]を経由して[[平壌直轄市]]というコースであった<ref name="o1994" /><ref name="miura" />。呉と申は約束した治療を受ける代わりに、軍の宿営所にとらわれ、[[金日成]]の[[主体思想]]を研究することを強制された<ref name="donga" />。そして2人は韓国向けの[[プロパガンダ]]放送のために用いられた<ref name="donga" /><ref name="miura" /><ref name="WP">{{citation|last=Harden|first=Blaine|date=2010-02-22|title=A family and a conscience, destroyed by North Korea's cruelty|url=http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/21/AR2010022103690.html?sid=ST2010022103942|periodical=Washington Post|accessdate=2010-02-25}}</ref>{{refnest|group="注釈"|毎日13分、自分が韓国内にいる民主活動家のふりをして韓国政治の批判や対日米の従属について虚偽もまじえて中傷の放送を行うのが、彼のしごとだった<ref name="miura" />。}}。そこにいる間、やはりプロパガンダ放送に用いるために[[大韓航空機YS-11ハイジャック事件]]で連れてきた[[ソン・ギョンフィ]]ら客室乗務員の2名を含む、[[北朝鮮による韓国人拉致問題]]の被害者達と会ったと呉吉男は証言した<ref name="NKRadio">{{citation|url=http://english.nkradio.org/news/231|periodical=Open Radio for North Korea|title=Fate of Abducted Korean Airlines Passengers Still Unclear|last=Um|first=Han-Ah|date=2007-10-05|accessdate=2010-07-07}}</ref>。北朝鮮抑留中の呉はまた、日本人拉致被害者の[[石岡亨]]、[[生島孝子]]を目撃しているという<ref name="miura" /><ref name="araki47" /><ref>[[特定失踪者問題調査会]]NEWS 2228号（2016年6月20日）</ref>{{refnest|group="注釈"|生島孝子は、[[1972年]]11月1日に[[東京都]][[渋谷区]][[笹塚 (渋谷区)|笹塚]]で突然失踪した日本人女性。呉吉男と同じアパートに住み[[日本語]]を教えていたという<ref name="miura" />。}}。


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その後、北朝鮮当局は他の韓国の学生達を北朝鮮におびき寄せるために、家族は一緒に行けないと伝えて呉吉男をドイツに送り戻した<ref>{{cite web | title= ’Please fight for my wife, daughters’| work=The Korea Times, August 17, 2011| url= http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2011/08/116_92969.html| accessdate=September 27, 2011}}</ref>。呉が後に語ったところによれば、彼が韓国人を何人か連れて戻って来ると言った時に、申は呉の顔を打ち「私たちが誤った意思決定のための代償を支払わなければならないとしても、他の人達を犠牲にする命令には従わずに逃げなさい。私たちの娘も憎むべき共犯者の娘になるべきではありません。もしこの国を脱出した場合、私たちを救出してください。しかし、あなたが失敗した場合、私と娘たちは死んでいたと思いなさい」と言った<ref name="donga" /><ref name="miura" /><ref name="DI" />。
そこにいる間、やはりプロパガンダ放送に用いるために[[大韓航空機YS-11ハイジャック事件]]で連れてきた客室乗務員の2名を含む、[[北朝鮮による韓国人拉致問題]]の被害者達と会ったと呉は主張している<ref name="NKRadio">{{citation|url=http://english.nkradio.org/news/231|periodical=Open Radio for North Korea|title=Fate of Abducted Korean Airlines Passengers Still Unclear|last=Um|first=Han-Ah|date=2007-10-05|accessdate=2010-07-07}}</ref>。


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== 呉吉男の亡命 ==
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その後、北朝鮮当局は他の韓国の学生達を北朝鮮におびき寄せるために、家族は一緒に行けないと伝えて呉吉男をドイツに送り戻した<ref>{{cite web | title= ’Please fight for my wife, daughters’| work=The Korea Times, August 17, 2011| url= http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2011/08/116_92969.html| accessdate=September 27, 2011}}</ref>。呉が後に語ったところによれば、彼が韓国人を何人か連れて戻って来ると言った時に、申は呉の顔を打ち「私たちが誤った意思決定のための代償を支払わなければならないとしても、他の人達を犠牲にする命令には従わずに逃げなさい。私たちの娘も憎むべき共犯者の娘になるべきではありません。もしこの国を脱出した場合、私たちを救出してください。しかし、あなたが失敗した場合、私と娘たちは死んでいたと思いなさい」と言った<ref name="DI"></ref>。
{{See also|呉吉男|耀徳強制収容所}}
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1986年、呉吉男はドイツへ向かう途中のデンマークで政治亡命を要請した<ref name="donga" /><ref name="miura" />。翌年、申と2人の娘（当時9歳と11歳）は、明らかに夫が北朝鮮に戻らなかったという理由で[[耀徳強制収容所]]に強制送還された<ref name="donga" /><ref name="AI2" /><ref name="miura" />。


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北朝鮮の公式の仲介者達は1988年と1989年に呉に、申と娘達からの手紙を与え、1991年には彼女らの声の録音テープと耀徳強制収容所での家族の6枚の写真を渡した<ref name="miura" /><ref name="AI" />。写真の一部は公開された<ref name="KH">{{cite web | title= Groups gather in Japan to save S. Korean prisoner in N. Korea | work=The Korea Herald | date=September 6, 2011| url= http://res.heraldm.com/content/image/2011/09/06/20110906001073_0.jpg | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。[[脱北者]]達や耀徳強制収容所の囚人だった[[安赫]]と[[姜哲煥]]は、申は自殺を何回か試みたが、彼らが釈放された1987年の時点でまだ生きていたと証言した<ref>{{cite web | title=월간조선 아내·두 딸을 북한에 두고 탈출한 오길남 박사 | work=Monthly Chosun Ilbo |date=March 9, 2009| url= http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2009/09/03/2009090300464.html | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。
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==呉吉男の亡命==
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1986年、呉吉男はドイツへ向かう途中のデンマークで政治亡命を要請した。翌年、申と2人の娘（当時9歳と11歳）は、明らかに夫が北朝鮮に戻らなかったという理由で耀徳強制収容所に強制送還された<ref name="AI2"></ref>。

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北朝鮮の公式の仲介者達は1988年と1989年に呉に、申と娘達からの手紙を与え、1991年には彼女らの声の録音テープと耀徳強制収容所での家族の6枚の写真を渡した<ref name="AI"></ref>。写真の一部は公開された<ref name="KH">{{cite web | title= Groups gather in Japan to save S. Korean prisoner in N. Korea | work=The Korea Herald | date=September 6, 2011| url= http://res.heraldm.com/content/image/2011/09/06/20110906001073_0.jpg | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。[[脱北者]]達や耀徳強制収容所の囚人だった[[安赫]]と[[姜哲煥]]は、申は自殺を何回か試みたが、彼らが釈放された1987年の時点でまだ生きていたと証言した<ref>{{cite web | title=월간조선 아내·두 딸을 북한에 두고 탈출한 오길남 박사 | work=Monthly Chosun Ilbo |date=March 9, 2009| url= http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2009/09/03/2009090300464.html | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。


2011年9月に『[[韓国日報#コリア・タイムス|コリア・タイムス]]』は、申と彼女の娘たちが生きていて別の場所に移転されたと報道した<ref name="koreatimes" />。報告は彼女が[[金正日]]への忠誠の誓いを書くことを拒否したとも述べている<ref name="koreatimes">{{cite web | title= 'Daughter of Tongyeong'| work=The Korea Times |date=September 22, 2011| url= http://www.koreatimes.co.kr/www/news/opinon/2011/09/137_95256.html | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。
2011年9月に『[[韓国日報#コリア・タイムス|コリア・タイムス]]』は、申と彼女の娘たちが生きていて別の場所に移転されたと報道した<ref name="koreatimes" />。報告は彼女が[[金正日]]への忠誠の誓いを書くことを拒否したとも述べている<ref name="koreatimes">{{cite web | title= 'Daughter of Tongyeong'| work=The Korea Times |date=September 22, 2011| url= http://www.koreatimes.co.kr/www/news/opinon/2011/09/137_95256.html | accessdate=September 27, 2011}}</ref>。


==申淑子を救出するキャンペーン==
== 申淑子救出キャンペーン ==
1993年、 [[アムネスティ・インターナショナル]]は耀徳強制収容所から申と娘達を自由にせよとのキャンペーンを開始した。利用可能なすべての情報に基づいて、アムネスティ・インターナショナルは、申淑子と2人の娘が呉の海外亡命の要求により拘束されたと考えている。アムネスティインターナショナルは、申淑子と彼女の娘達を良心の囚人として指定し、直ちにかつ無条件に彼女らを解放するために北朝鮮当局に呼びかけた<ref name="AI"></ref>。
1993年、 [[アムネスティ・インターナショナル]]は[[耀徳強制収容所]]から申と娘達を自由にせよとのキャンペーンを開始した。利用可能なすべての情報に基づいて、アムネスティ・インターナショナルは、申淑子と2人の娘が呉の海外亡命の要求により拘束されたと考えている。アムネスティインターナショナルは、申淑子と彼女の娘達を良心の囚人として指定し、直ちにかつ無条件に彼女らを解放するために北朝鮮当局に呼びかけた<ref name="AI"></ref>。


2011年4月、申の故郷の人権活動家達は「統営の娘救出運動」を始め<ref>{{cite web | title= A City Waiting for Its Daughter Back | work=Daily NK |date=September 9, 2011| url= http://dailynk.com/english/read.php?cataId=nk00100&num=8160| accessdate=September 27, 2011}}</ref>韓国および世界の一部メディアの注目を集め<ref name="KH"></ref>2011年9月時点で解放を求める70,000以上の署名を集めた<ref>{{cite web | title= Shin Suk Ja Movement Gaining Traction | work=Daily NK |date=September 25, 2011| url= http://www.dailynk.com/english/read.php?cataId=nk03500&num=8209| accessdate=September 27, 2011}}</ref>。
2011年4月、申の故郷の人権活動家達は「統営の娘救出運動」を始め<ref>{{cite web | title= A City Waiting for Its Daughter Back | work=Daily NK |date=September 9, 2011| url= http://dailynk.com/english/read.php?cataId=nk00100&num=8160| accessdate=September 27, 2011}}</ref>韓国および世界の一部メディアの注目を集め<ref name="KH"></ref>2011年9月時点で解放を求める70,000以上の署名を集めた<ref>{{cite web | title= Shin Suk Ja Movement Gaining Traction | work=Daily NK |date=September 25, 2011| url= http://www.dailynk.com/english/read.php?cataId=nk03500&num=8209| accessdate=September 27, 2011}}</ref>。


韓国紙『[[朝鮮日報]]』は、2011年9月、韓国の情報機関が数十人の韓国人と[[北朝鮮による日本人拉致問題|日本の拉致被害者]]が[[平安南道]][[平原郡 (平安南道)|平原郡]][[元和里]]（院和里）に移動させられた可能性が高く、そのなかに申淑子の一家も含まれると報道した<ref name="saenulee">{{Cite web|url=http://saenulee.com/board/index.php?mid=asiab&m=0&page=1&search_target=tag&search_keyword=%E6%8B%89%E8%87%B4&category=0&document_srl=35180&ckattempt=1|title=北朝鮮、元スパイ養成所を拉致被害者の収容施設に|date=2011-09-20|accessdate=2021-11-22|author=朝鮮日報日本語版|publisher=セヌリマガジン}}</ref>。また、体力の衰えた申淑子がこの地にある[[朝鮮労働党]]幹部用病院で治療を受けているという情報があることも報じている<ref name="saenulee" />{{refnest|group="注釈"|[[社会安全省|人民保安部]]（現、社会安全省）の中佐を務めた[[脱北者]]の証言によれば、この地はもともと韓国に送られる工作員の訓練施設として使用されていたが、[[1990年代]]以降北朝鮮は工作員の数を減らしたので、拉致被害者のための施設に変わり、近くにはサッカー北朝鮮代表のキャンプや以前「中央党結核病院」と呼ばれた、朝鮮労働党幹部とその家族専用の総合病院があるという<ref name="saenulee" />。}}。
韓国紙『[[朝鮮日報]]』は、2011年9月、韓国の情報機関が数十人の韓国人と[[北朝鮮による日本人拉致問題|日本の拉致被害者]]が[[平安南道]][[平原郡 (平安南道)|平原郡]][[元和里]]（院和里）に移動させられた可能性が高く、そのなかに申淑子の一家も含まれると報道した<ref name="saenulee">{{Cite web|和書|url=http://saenulee.com/board/index.php?mid=asiab&m=0&page=1&search_target=tag&search_keyword=%E6%8B%89%E8%87%B4&category=0&document_srl=35180&ckattempt=1|title=北朝鮮、元スパイ養成所を拉致被害者の収容施設に|date=2011-09-20|accessdate=2021-11-22|author=朝鮮日報日本語版|publisher=セヌリマガジン}}</ref>。また、体力の衰えた申淑子がこの地にある[[朝鮮労働党]]幹部用病院で治療を受けているという情報があることも報じている<ref name="saenulee" />{{refnest|group="注釈"|[[社会安全省|人民保安部]]（現、社会安全省）の中佐を務めた[[脱北者]]の証言によれば、この地はもともと韓国に送られる工作員の訓練施設として使用されていたが、[[1990年代]]以降北朝鮮は工作員の数を減らしたので、拉致被害者のための施設に変わり、近くにはサッカー北朝鮮代表のキャンプや以前「中央党結核病院」と呼ばれた、朝鮮労働党幹部とその家族専用の総合病院があるという<ref name="saenulee" />。}}。


2011年11月、アムネスティ・インターナショナルは、申と他の耀徳強制収容所の囚人を含めて「権利のために書こう」という手紙を書くキャンペーンを始めた<ref>{{cite web | title= North Korea: Thousands held in Secret Camps | work=Amnesty International, November 2011| url= http://www.amnestyusa.org/writeathon/caseindex.php?i=9 | accessdate=November 8, 2011}}</ref>。一ヶ月後、 北朝鮮の国営ニュースサービス[[朝鮮中央通信]]は、"悪い心の意図によって促された"、"中傷キャンペーン"だと申淑子のためのキャンペーンを説明した<ref>{{cite web | title= S. Korea's Anti-DPRK Human Rights Campaign Slammed | work=Korean Central News Agency |date=December 12, 2011| url= http://www.kcna.co.jp/item/2011/201112/news09/20111209-10ee.html | accessdate=January 27, 2012}}</ref>。
2011年11月、アムネスティ・インターナショナルは、申と他の耀徳強制収容所の囚人を含めて「権利のために書こう」という手紙を書くキャンペーンを始めた<ref>{{cite web | title= North Korea: Thousands held in Secret Camps | work=Amnesty International, November 2011| url= http://www.amnestyusa.org/writeathon/caseindex.php?i=9 | accessdate=November 8, 2011}}</ref>。一ヶ月後、 北朝鮮の国営ニュースサービス[[朝鮮中央通信]]は、"悪い心の意図によって促された"、"中傷キャンペーン"だと申淑子のためのキャンペーンを説明した<ref>{{cite web | title= S. Korea's Anti-DPRK Human Rights Campaign Slammed | work=Korean Central News Agency |date=December 12, 2011| url= http://www.kcna.co.jp/item/2011/201112/news09/20111209-10ee.html | accessdate=January 27, 2012}}</ref>。


==死亡通知==
== 死亡通知と国連の釈放要請 ==
2012年5月、国連からの問い合わせへの返答として、北朝鮮は申淑子が肝炎で死亡していると答えた。大使はまた、娘達は呉が家族を放棄したので父とは思っていないと述べた。記者会見で呉は、[[北朝鮮による日本人拉致問題|日本国民を拉致した事件]]で北朝鮮が死んだと虚偽の説明をした例（[[横田めぐみ]]ほか）を挙げて、報告を信じないと答えた<ref>{{cite web |url=http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2012/05/116_110578.html |title=North Korea says detainee died of hepatitis |author=Kim Young-jin |date=8 May 2012 |work=The Korea Times |accessdate=8 May 2012}}</ref>。
2012年5月、国連からの問い合わせへの返答として、北朝鮮は申淑子が肝炎で死亡していると答えた。大使はまた、娘達は呉が家族を放棄したので父とは思っていないと述べた。記者会見で呉は、[[北朝鮮による日本人拉致問題|日本国民を拉致した事件]]で北朝鮮が死んだと虚偽の説明をした例（[[横田めぐみ]]ほか）を挙げて、報告を信じないと答えた<ref>{{cite web |url=http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2012/05/116_110578.html |title=North Korea says detainee died of hepatitis |author=Kim Young-jin |date=8 May 2012 |work=The Korea Times |accessdate=8 May 2012}}</ref>。


2012年5月29日、[[国際連合人権高等弁務官事務所]]は、「1987年以降継続して北朝鮮による強制的な拘禁下にある」と断定、北朝鮮に即時釈放と賠償を求める意見書をまとめていたことが判明した<ref>{{Cite news | url = https://web.archive.org/web/20120529154731/http://sankei.jp.msn.com/world/news/120529/kor12052922080002-n1.htm | title = 「韓国のめぐみさん」母娘3人、国連機関が北に釈放要求…人権高等弁務官事務所が意見書 | newspaper = 産経新聞 | date = 2012-5-29 }}</ref>。韓国当局者は、「判決の法的強制性はない」としながらも「北朝鮮への無視できない圧力になる」と語った<ref>{{Cite news|url=http://japanese.joins.com/article/910/152910.html?servcode=500&sectcode=500 |title = 国連「北、申淑子母娘を拘禁」… 17年前の決定を覆す |newspaper = 中央日報 |date = 2012-5-29 }}</ref>。
==国連による釈放要請==
2012年5月29日、[[国際連合人権高等弁務官事務所]]は、「1987年以降継続して北朝鮮による強制的な拘禁下にある」と断定、北朝鮮に即時釈放と賠償を求める意見書をまとめていたことが判明した<ref>{{Cite news
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| title = 「韓国のめぐみさん」母娘３人、国連機関が北に釈放要求…人権高等弁務官事務所が意見書
| newspaper = 産経新聞
| date = 2012-5-29
}}</ref>。韓国当局者は、「判決の法的強制性はない」としながらも「北朝鮮への無視できない圧力になる」と語った<ref>{{Cite news
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| title = 国連「北、申淑子母娘を拘禁」… 17年前の決定を覆す
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| date = 2012-5-29
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=荒木和博|authorlink=荒木和博|year=2005|month=2|title=拉致 異常な国家の本質|publisher=[[勉誠出版]]|isbn=4-585-05322-0|ref=荒木}}
* {{Cite book|和書|author=呉吉男|translator=金民柱|year=1994|month=8|title=恨・金日成―金日成よ、私の妻と子を返さぬまま、なぜ死んだ! |publisher=ザマサダ|isbn=978-4915977046|ref=呉}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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*[http://www.amnestyusa.org/writeathon/caseindex.php?i=9 North Korea: Thousands held in Secret Camps] Amnesty International: Write for Rights letter-writing campaign for Shin Sook-ja and other political prisoners in Yodok camp
*[http://www.amnestyusa.org/writeathon/caseindex.php?i=9 North Korea: Thousands held in Secret Camps] Amnesty International: Write for Rights letter-writing campaign for Shin Sook-ja and other political prisoners in Yodok camp
*[http://hrnk.org/wp-content/uploads/The_Hidden_Gulag.pdf Committee for Human Rights in North Korea] -証言と衛星写真で北朝鮮の捕虜収容所での概要
*[http://hrnk.org/wp-content/uploads/The_Hidden_Gulag.pdf Committee for Human Rights in North Korea] -証言と衛星写真で北朝鮮の捕虜収容所での概要
* {{Cite web|和書|title=呉吉男事件と特定失踪者生島さん|url=https://www.yamatopress.com/archives/30529|author=[[三浦小太郎]]|website=|date=2018-09-28|accessdate=2021-12-01|publisher=[[やまと新聞社]]|ref=三浦}}

報道関係
報道関係
*[http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/05/09/2012050901159.html 拉致：申淑子さんの夫「北の言うことは信じられない」]2012/05/09 朝鮮日報
*[http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/05/09/2012050901159.html 拉致：申淑子さんの夫「北の言うことは信じられない」]2012/05/09 朝鮮日報

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申淑子
生誕 1942年
大日本帝国の旗 日本統治下朝鮮 慶尚南道統営郡
国籍 大韓民国の旗 大韓民国
著名な実績 良心犯
配偶者 吳吉男
子供 呉惠媛（1976）
呉圭媛（1978）
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申淑子
各種表記
ハングル： 신숙자
漢字： 申淑子
発音： シン・スクチャ
RR式： Shin Suk-ja
MR式： Shin Sukja
英語表記： Shin Suk-ja または Shin Sook-ja
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申 淑子 (シン・スクチャ、1942年 - ）は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の強制収容所に収容された大韓民国出身の女性。夫の呉吉男（오길남、オ・ギルラム）が北朝鮮からデンマークに亡命したのち、娘たちと一緒に耀徳強制収容所に投獄された。この事件はアムネスティ・インターナショナルが彼女を「良心の囚人」と命名し、解放のために重点的な運動を行うなど国際的な注目を受けた。

おいたちと結婚[編集]

1942年、朝鮮の慶尚南道統営郡（現在の大韓民国慶尚南道統営市）で生まれた。現地の小学校と中学校に通った後、1958年から馬山市の看護学校で学んだ[1]。

1970年に彼女は韓国を発ち、ドイツのテュービンゲンで看護師として働いていた。そこで彼女は1972年に韓国の経済学の学生だった呉吉男と出会い、彼と結婚した[2][3]。

後に2人はキールの近くに引っ越し、ここで彼女は呉恵媛（오혜원, オ・ヘウォン、1976年9月17日）および呉圭媛（오규원, オ・ギュウォン、1978年6月21日）の2人の娘を出産した。家族は1985年までキール近くのクロンスハーゲンに住んでいた[4]。

北朝鮮へ移動[編集]

呉は1980年代初頭に韓国政府に対する政治運動に関わるようになった[5][6][7]。 呉は宋斗律（朝鮮語版）（ソンドゥユル）や音楽家尹伊桑を含む何人かのドイツの有名な韓国の左派活動家に影響された[2]。彼らは後に、呉が北朝鮮の経済学者として働くことによって祖国を助けることができると勧めた[6][8][9]。呉の左翼家としての活動は北朝鮮政府の代表者の注目を集め、さらに呉の妻が平壌で無料の肝炎の治療が受けられると騙して北に亡命させようとした[5]。

申の反対をよそに、家族は1985年12月8日に北朝鮮に到着した。ルートは、西ベルリンから東ベルリン、モスクワを経由して平壌直轄市というコースであった[5][6]。呉と申は約束した治療を受ける代わりに、軍の宿営所にとらわれ、金日成の主体思想を研究することを強制された[2]。そして2人は韓国向けのプロパガンダ放送のために用いられた[2][6][10][注釈 1]。そこにいる間、やはりプロパガンダ放送に用いるために大韓航空機YS-11ハイジャック事件で連れてきたソン・ギョンフィら客室乗務員の2名を含む、北朝鮮による韓国人拉致問題の被害者達と会ったと呉吉男は証言した[11]。北朝鮮抑留中の呉はまた、日本人拉致被害者の石岡亨、生島孝子を目撃しているという[6][9][12][注釈 2]。

その後、北朝鮮当局は他の韓国の学生達を北朝鮮におびき寄せるために、家族は一緒に行けないと伝えて呉吉男をドイツに送り戻した[13]。呉が後に語ったところによれば、彼が韓国人を何人か連れて戻って来ると言った時に、申は呉の顔を打ち「私たちが誤った意思決定のための代償を支払わなければならないとしても、他の人達を犠牲にする命令には従わずに逃げなさい。私たちの娘も憎むべき共犯者の娘になるべきではありません。もしこの国を脱出した場合、私たちを救出してください。しかし、あなたが失敗した場合、私と娘たちは死んでいたと思いなさい」と言った[2][6][1]。

呉吉男の亡命[編集]

「呉吉男」および「耀徳強制収容所」も参照

1986年、呉吉男はドイツへ向かう途中のデンマークで政治亡命を要請した[2][6]。翌年、申と2人の娘（当時9歳と11歳）は、明らかに夫が北朝鮮に戻らなかったという理由で耀徳強制収容所に強制送還された[2][3][6]。

北朝鮮の公式の仲介者達は1988年と1989年に呉に、申と娘達からの手紙を与え、1991年には彼女らの声の録音テープと耀徳強制収容所での家族の6枚の写真を渡した[6][7]。写真の一部は公開された[14]。脱北者達や耀徳強制収容所の囚人だった安赫と姜哲煥は、申は自殺を何回か試みたが、彼らが釈放された1987年の時点でまだ生きていたと証言した[15]。

2011年9月に『コリア・タイムス』は、申と彼女の娘たちが生きていて別の場所に移転されたと報道した[16]。報告は彼女が金正日への忠誠の誓いを書くことを拒否したとも述べている[16]。

申淑子救出キャンペーン[編集]

1993年、 アムネスティ・インターナショナルは耀徳強制収容所から申と娘達を自由にせよとのキャンペーンを開始した。利用可能なすべての情報に基づいて、アムネスティ・インターナショナルは、申淑子と2人の娘が呉の海外亡命の要求により拘束されたと考えている。アムネスティインターナショナルは、申淑子と彼女の娘達を良心の囚人として指定し、直ちにかつ無条件に彼女らを解放するために北朝鮮当局に呼びかけた[7]。

2011年4月、申の故郷の人権活動家達は「統営の娘救出運動」を始め[17]韓国および世界の一部メディアの注目を集め[14]2011年9月時点で解放を求める70,000以上の署名を集めた[18]。

韓国紙『朝鮮日報』は、2011年9月、韓国の情報機関が数十人の韓国人と日本の拉致被害者が平安南道平原郡元和里（院和里）に移動させられた可能性が高く、そのなかに申淑子の一家も含まれると報道した[19]。また、体力の衰えた申淑子がこの地にある朝鮮労働党幹部用病院で治療を受けているという情報があることも報じている[19][注釈 3]。

2011年11月、アムネスティ・インターナショナルは、申と他の耀徳強制収容所の囚人を含めて「権利のために書こう」という手紙を書くキャンペーンを始めた[20]。一ヶ月後、 北朝鮮の国営ニュースサービス朝鮮中央通信は、"悪い心の意図によって促された"、"中傷キャンペーン"だと申淑子のためのキャンペーンを説明した[21]。

死亡通知と国連の釈放要請[編集]

2012年5月、国連からの問い合わせへの返答として、北朝鮮は申淑子が肝炎で死亡していると答えた。大使はまた、娘達は呉が家族を放棄したので父とは思っていないと述べた。記者会見で呉は、日本国民を拉致した事件で北朝鮮が死んだと虚偽の説明をした例（横田めぐみほか）を挙げて、報告を信じないと答えた[22]。

2012年5月29日、国際連合人権高等弁務官事務所は、「1987年以降継続して北朝鮮による強制的な拘禁下にある」と断定、北朝鮮に即時釈放と賠償を求める意見書をまとめていたことが判明した[23]。韓国当局者は、「判決の法的強制性はない」としながらも「北朝鮮への無視できない圧力になる」と語った[24]。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 毎日13分、自分が韓国内にいる民主活動家のふりをして韓国政治の批判や対日米の従属について虚偽もまじえて中傷の放送を行うのが、彼のしごとだった[6]。
  2. ^ 生島孝子は、1972年11月1日に東京都渋谷区笹塚で突然失踪した日本人女性。呉吉男と同じアパートに住み日本語を教えていたという[6]。
  3. ^ 人民保安部（現、社会安全省）の中佐を務めた脱北者の証言によれば、この地はもともと韓国に送られる工作員の訓練施設として使用されていたが、1990年代以降北朝鮮は工作員の数を減らしたので、拉致被害者のための施設に変わり、近くにはサッカー北朝鮮代表のキャンプや以前「中央党結核病院」と呼ばれた、朝鮮労働党幹部とその家族専用の総合病院があるという[19]。

出典[編集]

  1. ^ a b “Campaign seeks to save SK woman from NK prison camp”. Donga Ilbo, August 6, 2011. 2011年9月27日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g “北朝鮮収容所に残された呉吉男氏の妻娘、出身地統営で救出呼びかける展示会”. 東亜日報 (2011年8月3日). 2021年12月1日閲覧。
  3. ^ a b “North Korea: Fear of "disappearance" of Shin Sook Ja (and her daughters), p. 5 - 8”. Amnesty International, January 1994. 2011年9月27日閲覧。
  4. ^ “Save Oh Sisters!!”. Free the NK Gulag (NGO). 2011年9月27日閲覧。
  5. ^ a b c 呉（1994）
  6. ^ a b c d e f g h i j k 三浦小太郎 (2018年9月28日). “呉吉男事件と特定失踪者生島さん”. やまと新聞社. 2021年12月1日閲覧。
  7. ^ a b c “2.2. Shin Sook Ja and her daughters”, North Korea: Summary of Amnesty International's concerns, Amnesty International, (1993), http://www.amnesty.org/library/asset/ASA24/003/1993/en/959f4967-ecb6-11dd-85fd-99a1fce0c9ec/asa240031993en.html 2010年2月25日閲覧。 
  8. ^ Chosun Ilbo, (2009-09-03), http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2009/09/03/2009090300464.html+2010年2月25日閲覧。 
  9. ^ a b 荒木（2005）p.47
  10. ^ Harden, Blaine (2010-02-22), “A family and a conscience, destroyed by North Korea's cruelty”, Washington Post, http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/21/AR2010022103690.html?sid=ST2010022103942 2010年2月25日閲覧。 
  11. ^ Um, Han-Ah (2007-10-05), “Fate of Abducted Korean Airlines Passengers Still Unclear”, Open Radio for North Korea, http://english.nkradio.org/news/231 2010年7月7日閲覧。 
  12. ^ 特定失踪者問題調査会NEWS 2228号（2016年6月20日）
  13. ^ “’Please fight for my wife, daughters’”. The Korea Times, August 17, 2011. 2011年9月27日閲覧。
  14. ^ a b “Groups gather in Japan to save S. Korean prisoner in N. Korea”. The Korea Herald (2011年9月6日). 2011年9月27日閲覧。
  15. ^ “월간조선 아내·두 딸을 북한에 두고 탈출한 오길남 박사”. Monthly Chosun Ilbo (2009年3月9日). 2011年9月27日閲覧。
  16. ^ a b “'Daughter of Tongyeong'”. The Korea Times (2011年9月22日). 2011年9月27日閲覧。
  17. ^ “A City Waiting for Its Daughter Back”. Daily NK (2011年9月9日). 2011年9月27日閲覧。
  18. ^ “Shin Suk Ja Movement Gaining Traction”. Daily NK (2011年9月25日). 2011年9月27日閲覧。
  19. ^ a b c 朝鮮日報日本語版 (2011年9月20日). “北朝鮮、元スパイ養成所を拉致被害者の収容施設に”. セヌリマガジン. 2021年11月22日閲覧。
  20. ^ “North Korea: Thousands held in Secret Camps”. Amnesty International, November 2011. 2011年11月8日閲覧。
  21. ^ “S. Korea's Anti-DPRK Human Rights Campaign Slammed”. Korean Central News Agency (2011年12月12日). 2012年1月27日閲覧。
  22. ^ Kim Young-jin (2012年5月8日). “North Korea says detainee died of hepatitis”. The Korea Times. 2012年5月8日閲覧。
  23. ^ “「韓国のめぐみさん」母娘3人、国連機関が北に釈放要求…人権高等弁務官事務所が意見書”. 産経新聞. (2012年5月29日). https://web.archive.org/web/20120529154731/http://sankei.jp.msn.com/world/news/120529/kor12052922080002-n1.htm 
  24. ^ “国連「北、申淑子母娘を拘禁」… 17年前の決定を覆す”. 中央日報. (2012年5月29日). http://japanese.joins.com/article/910/152910.html?servcode=500&sectcode=500 

参考文献[編集]

  • 荒木和博『拉致 異常な国家の本質』勉誠出版、2005年2月。ISBN 4-585-05322-0。 
  • 呉吉男 著、金民柱 訳『恨・金日成―金日成よ、私の妻と子を返さぬまま、なぜ死んだ!』ザマサダ、1994年8月。ISBN 978-4915977046。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

報道関係

日本の旗 日本人拉致問題
日本の旗 法令
日本の旗 団体・運動
日本の旗 政府・議会
日本の旗 拉致被害者
日本の旗 特定失踪者
（拉致濃厚）
朝鮮民主主義人民共和国の旗拉致被害者（朝鮮籍）
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  • 葉美玲（Yap Me Leng）
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