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「コンプレックス」の版間の差分

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'''コンプレックス'''(独:Komplex 英:complex)は、何かが混ざったり複雑になったことを意味し、[[心理学]]・[[精神医学]]用語では、感情、認識、願望、思考などが無意識的に結びついて形成した「'''感情複合'''」の状態を指す。「'''フィーリング・トーンド・コンプレックス'''(Feeling Toned complex)」ともいう。
|出典の明記=2018年8月
|独自研究=2018年8月
}}
[[心理学]]・[[精神医学]]用語の'''コンプレックス'''(独:Komplex)とは、衝動・[[欲求]]・[[観念]]・[[記憶]]等の様々な心理的構成要素が無意識に複雑に絡み合って形成された観念の複合体をいう。普段は意識下に抑圧されているものの、現実の行動に影響力をもつ。「'''感情複合'''」とも言われる。


もっとも、この意味でのコンプレックスは、[[ジークムント・フロイト|フロイト]]派、[[アルフレッド・アドラー|アドラー]]派、[[カール・グスタフ・ユング|ユング]]派など、[[深層心理学]]諸学派の間でだけ流通する概念であり、心理学や精神医学の世界で広く受け入れられているわけではない。
もっとも、この意味でのコンプレックスは、[[ジークムント・フロイト|フロイト]]派、[[アルフレッド・アドラー|アドラー]]派、[[カール・グスタフ・ユング|ユング]]派など、[[深層心理学]]諸学派の間でだけ流通する概念であり、心理学や精神医学の世界で広く受け入れられているわけではない。


== 概要 ==
== 歴史と発展 ==
この語を最初に持ち込んだのは[[ヨーゼフ・ブロイアー]]とされる。しかし、この語を有名にしたのは[[カール・グスタフ・ユング|ユング]]である。ユングの定義によれば、コンプレックスとは、何らかの[[感情]]によって統合されている心的内容の集まりである。ある事柄と、本来無関係な感情とが結合された状態であり、これを「'''心的複合体'''」とも訳す。
この語を最初に持ち込んだのは[[ヨーゼフ・ブロイアー]]とされる。しかし、この語を有名にしたのは[[カール・グスタフ・ユング|ユング]]である。ユングの定義によれば、コンプレックスとは、何らかの[[感情]]によって統合されている心的内容の集まりである。ある事柄と、本来無関係な感情とが結合された状態であり、これを「'''心的複合体'''」とも訳す。


[[日本]]では、早くから西洋医学の導入と共に、[[ジークムント・フロイト|フロイト]]の精神分析もまた心理学・精神医学上の学説として入って来ていた。フロイトの精神分析においては、「'''エディプス複合'''('''エディプス・コンプレックス''')」が中心的な位置を占めていた。しかし、もともと[[西洋人]]の意識・無意識の動力学理論でもあった精神分析は、[[日本人]]の理にはあまり適合しなかった。
[[日本]]では、早くから西洋医学の導入と共に、[[ジークムント・フロイト|フロイト]]の精神分析もまた心理学・精神医学上の学説として入って来ていた。フロイトの精神分析においては、「'''エディプス複合'''('''エディプス・コンプレックス''')」が中心的な位置を占めていた。しかし、意識・無意識の動力学理論でもあった精神分析は、当時の[[日本人]]には親しみがなく、その理論が一般的流通することはなかった。


[[戦後#第二次世界大戦後|戦後]]、[[アメリカ合衆国]]より[[アルフレッド・アドラー]]の「人格心理学」が日本に流入した。アドラーの[[理論]]は当時「'''劣等複合'''(inferiority complex)」を理論の中心に置いていた。この劣等複合の克服を通じて人格の発達が成立するとしたこの理論は日本人には親しみがあったようで、戦後の日本ではフロイトの理論よりもアドラーの理論が流通し、また、その理論の中心概念である「劣等複合」が一般になった。
[[戦後#第二次世界大戦後|戦後]]、[[アメリカ合衆国]]より[[アルフレッド・アドラー]]の「人格心理学」が日本に流入した。アドラーの[[理論]]は当時「'''劣等複合'''(inferiority complex)」を理論の中心に置いていた。この劣等複合の克服を通じて人格の発達が成立するとしたこの理論は日本人には親しみがあったようで、戦後の日本ではフロイトの理論よりもアドラーの理論が流通し、また、その理論の中心概念である「劣等複合」が一般になった。


「劣等複合」とは「劣等コンプレックス」のことであるが、日本においてはこのアドラーの理論が一般的に受容された上に、コンプレックスのうちの劣等コンプレックスが特に流布したため、コンプレックスの名で「劣等複合」を指すような日常の用語法が生まれた。日本では今なお、「コンプレックス」と言えば、暗黙に「'''劣等コンプレックス'''」のことを指す傾向がある。さらに、精神分析の用語から離れて、「コンプレックス」を「'''[[劣等感]]'''」(inferiority complex)の同義語とするような誤用も生まれ、今に至っている。正確には、劣等感はこの「劣等コンプレックス」を意味する。
「劣等複合」とは「劣等コンプレックス」のことであるが、日本においてはこのアドラーの理論が一般的に受容された上に、コンプレックスのうちの劣等コンプレックスが特に流布したため、コンプレックスの名で「劣等複合」を指すような日常の用語法が生まれた。日本では今なお、「コンプレックス」と言えば、暗黙に「'''劣等コンプレックス'''」のことを指す傾向がある。


[[分析心理学]]上[[フェティシズム]]がコンプレックスとほぼ同義であるため、フェティシズムの分野にもコンプレックスという用語が使われることもある。心理学用語ではなく俗語であるが、概念的には間違っているとは言い切れない。この場合、正確には「あるフェティシズムから想起されるコンプレックス」のことを意味する。
[[分析心理学]]上[[フェティシズム]]がコンプレックスとほぼ同義であるため、フェティシズムの分野にもコンプレックスという用語が使われることもある。心理学用語ではなく俗語であるが、概念的には間違っているとは言い切れない。この場合、正確には「あるフェティシズムから想起されるコンプレックス」のことを意味する。


== 心理学的コンプレックスからの派生事例 ==
== コンプレックスからの派生事例 ==
=== 主に男性が抱くコンプレックス ===
*[[ファーザー・コンプレックス|ファザーコンプレックス]](ファザコン) - 子供が父親に抱く愛着
*[[ロリータ・コンプレックス|ロリータコンプレックス]](ロリコン) - 少女に対する愛着
*[[マザーコンプレックス]](マザコン) - 子供が母親に抱く愛着
*[[マザーコンプレックス]](マザコン) - 子供が母親に抱く愛着
*[[エレクトラコンプレックス]] - 娘の母親に対する対抗心
*[[エディプスコンプレックス]] - 息子の父親に対する対抗心
*[[エディプスコンプレックス]] - 息子の父親に対する対抗心
*[[アグリッピーナコンプレックス]] - 息子の母親に対する嫌悪
*[[アブラハムコンプレックス]] - 父親の息子に対する憎悪
*[[シスターコンプレックス]](シスコン) - 姉妹に対する愛着
*[[カメリアコンプレックス]] - 不幸な女性を救おうとする男性の心理
*[[オレステスコンプレックス]] - 父親の掟と母親の呪縛の中で心が引き裂かれる心理
*[[ナポレオン・コンプレックス]] - 身長の低さによる劣等感
*[[ベビーコンプレックス]] - 乳児に対する愛着

=== 主に女性が抱くコンプレックス ===
*[[ショタコン|正太郎コンプレックス]](ショタコン) - 少年に対する愛着
*[[ファーザー・コンプレックス|ファザーコンプレックス]](ファザコン) - 子供が父親に抱く愛着
*[[エレクトラコンプレックス]] - 娘の母親に対する対抗心
*[[イオカステーコンプレックス]] - 母親の息子に対する愛着
*[[イオカステーコンプレックス]] - 母親の息子に対する愛着
*[[阿闍世コンプレックス]] - 母親と子供の心理葛藤
*[[阿闍世コンプレックス]] - 母親と子供の心理葛藤
*[[アグリッピーナコンプレックス]] - 母親の密着に対する息子の嫌悪
*[[ブラザーコンプレックス]](ブラコン) - 兄弟に対する愛着
*[[ブラザーコンプレックス]](ブラコン) - 兄弟に対する愛着
*[[シスターコンプレックス]](シスコン) - 姉妹に対する愛着
*[[カインコンプレックス]] - 兄弟姉妹間の親の愛をめぐる葛藤
*[[ロリータ・コンプレックス|ロリータコンプレックス]](ロリコン) - 少女に対する愛着(特に12~15歳を指す場合も)
*[[アブラハムコンプレックス]] - 父親の息子に対する憎悪
*[[シンデレラコンプレックス]] - 女性の高い男性志向
*[[シンデレラコンプレックス]] - 女性の高い男性志向
*[[白雪姫コンプレックス]] - 被虐待児症候群及び母親の娘に対する憎悪
*[[白雪姫コンプレックス]] - 被虐待児症候群及び母親の娘に対する憎悪
*[[ショタコン|正太郎コンプレックス]](ショタコン) - 少年対する愛着
*[[ダイアナコンプレックス]] - 男性は負けたくないという女性心理
*[[ダフネコンプレックス]] - 処女の男性恐怖

=== その他 ===
*[[カインコンプレックス]] - 兄弟姉妹間の親の愛をめぐる葛藤
*[[二次元コンプレックス]] - 二次元キャラに対する愛着
*[[二次元コンプレックス]] - 二次元キャラに対する愛着
*[[メサイアコンプレックス]] - 強迫的に人を援助する心理
*[[メサイアコンプレックス]] - 強迫的に人を援助する心理
*[[ユディットコンプレックス]] - 強い男に身を任せたい感情と相手に対する憎しみが重なった女性の二重心理
*[[ダイアナコンプレックス]] - 男性には負けたくないという女性心理
*[[カメリアコンプレックス]] - 不幸な女性を救おうとする男性の心理
*[[スペクタキュラコンプレックス]] - 性嗜好が行動を規律する心理
*[[スペクタキュラコンプレックス]] - 性嗜好が行動を規律する心理
*[[ピグマリオンコンプレックス]] - 人形に対する愛着
*[[ピグマリオンコンプレックス]] - 人形に対する愛着
*[[オレステスコンプレックス]] - 父親の掟と母親の呪縛の中で心が引き裂かれる心理
*[[ダフネコンプレックス]] - 処女の男性嫌悪
*[[フランケンシュタイン・コンプレックス]] - 人工存在を創造する欲望とその対象に対する恐怖
*[[フランケンシュタイン・コンプレックス]] - 人工存在を創造する欲望とその対象に対する恐怖
*[[身体醜形障害|容姿コンプレックス]] - 自身の顔や身体への嫌悪
*[[身体醜形障害|容姿コンプレックス]] - 自身の顔や身体への嫌悪
*青春コンプレックス - 青春への憧憬
*[[白人コンプレックス]] - 非白人国の国民が持つ[[欧米]][[白人]]の[[容姿]]や[[ライフスタイル]]に対する[[憧れ]]と、自国民や自身の容姿に対する[[劣等感]]
*[[白人コンプレックス]] - 非白人国の国民が持つ[[欧米]][[白人]]の[[容姿]]や[[ライフスタイル]]に対する[[憧れ]]と、自国民や自身の容姿に対する[[劣等感]]
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== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
*[https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-67579 コトバンク]
*[https://psychoterm.jp/applied/clinical/a13.html 心理学用語集サイコタム]


== 外部リンク ==
== 関連項目 ==
*[http://iyashi.find21.net/column/c006rettokan.html きまぐれコラム>劣等感とコンプレックスの違いって?]
{{Wiktionary|コンプレックス|complex}}
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* [[見 (仏教)]]


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[[Category:精神分析用語]]
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[[Category:分析心理学]]
[[Category:分析心理学]]
[[Category:社会心理学]]
[[Category:臨床心理学]]

2024年3月24日 (日) 05:26時点における版

心理学精神医学用語のコンプレックス(独:Komplex)とは、衝動・欲求観念記憶等の様々な心理的構成要素が無意識に複雑に絡み合って形成された観念の複合体をいう。普段は意識下に抑圧されているものの、現実の行動に影響力をもつ。「感情複合」とも言われる。

もっとも、この意味でのコンプレックスは、フロイト派、アドラー派、ユング派など、深層心理学諸学派の間でだけ流通する概念であり、心理学や精神医学の世界で広く受け入れられているわけではない。

歴史と発展

この語を最初に持ち込んだのはヨーゼフ・ブロイアーとされる。しかし、この語を有名にしたのはユングである。ユングの定義によれば、コンプレックスとは、何らかの感情によって統合されている心的内容の集まりである。ある事柄と、本来無関係な感情とが結合された状態であり、これを「心的複合体」とも訳す。

日本では、早くから西洋医学の導入と共に、フロイトの精神分析もまた心理学・精神医学上の学説として入って来ていた。フロイトの精神分析においては、「エディプス複合エディプス・コンプレックス)」が中心的な位置を占めていた。しかし、意識・無意識の動力学理論でもあった精神分析は、当時の日本人には親しみがなく、その理論が一般的に流通することはなかった。

戦後アメリカ合衆国よりアルフレッド・アドラーの「人格心理学」が日本に流入した。アドラーの理論は当時「劣等複合(inferiority complex)」を理論の中心に置いていた。この劣等複合の克服を通じて人格の発達が成立するとしたこの理論は日本人には親しみがあったようで、戦後の日本ではフロイトの理論よりもアドラーの理論が流通し、また、その理論の中心概念である「劣等複合」が一般になった。

「劣等複合」とは「劣等コンプレックス」のことであるが、日本においてはこのアドラーの理論が一般的に受容された上に、コンプレックスのうちの劣等コンプレックスが特に流布したため、コンプレックスの名で「劣等複合」を指すような日常の用語法が生まれた。日本では今なお、「コンプレックス」と言えば、暗黙に「劣等コンプレックス」のことを指す傾向がある。

分析心理学フェティシズムがコンプレックスとほぼ同義であるため、フェティシズムの分野にもコンプレックスという用語が使われることもある。心理学用語ではなく俗語であるが、概念的には間違っているとは言い切れない。この場合、正確には「あるフェティシズムから想起されるコンプレックス」のことを意味する。

コンプレックスからの派生事例

主に男性が抱くコンプレックス

主に女性が抱くコンプレックス

その他

参考文献

関連項目