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「RAS症候群」の版間の差分

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{{混同|RAS病|x1=[[遺伝子疾患]]の}}
'''RAS症候群'''({{lang-en-short|RAS syndrome}})とは、[[頭字語]]などの[[略語]]や熟語使うときに言葉の一部である単語を重ねて使てしまうことをす。[[症候群]]と付くが、何らかの[[病気]]を表す言葉ではない。
'''RAS症候群'''(ラスしょうこうぐん、{{lang-en-short|RAS syndrome}})とは、ある[[頭字語]]を、頭字語を構成する単語と組み合わせて使用してしまうことである。すなわち、頭字語元の形に開くと、同じ単語が繰り返し現れることを意味。[[症候群]]と付くが、何らかの[[病気]]を表す言葉ではない。


例えば、PIN番号(PINのNはnumber(番号)の意味)などが知られている。また、RAS症候群の「RAS」も、'''Redundant Acronym Syndrome'''(冗長な[[頭字語]]症候群)の略で、この言葉自体がRAS症候群の「症例([[自己整合語]])」となっている。
RASは「Redundant Acronym Syndrome」の略で、直訳すると'''冗長頭字語症候群'''となる。つまり、'''RAS症候群'''という言葉自体、{{lang|en|syndrome}} の頭文字'''S'''と'''症候群'''が重複しており、ひとつの「症例」となっている。RAS症候群という名称自体は[[2001年]]に『[[ニュー・サイエンティスト]]』誌で使われ、一般に広まった<ref name=Newman>Newman, Stanley (December 20, 2008). "[http://www2.canada.com/windsorstar/news/readersatplay/story.html?id=ea936740-3787-49be-813d-937b3a63eb74 Sushi by any other name]", ''[[Windsor Star]]'', p. G4.</ref><ref>{{cite news|title=Feedback|publisher=[[New Scientist]]|issue=2285|date=2001-04-07|page=108|url=http://www.newscientist.com/article/mg17022858.000|format=fee required|accessdate=2006-12-08}}</ref>。


この言葉は、2001年に『[[ニュー・サイエンティスト]]』のコラムで使われたものが広まったものである<ref>{{Cite news |last=Clothier |first=Gary |date=8 November 2006 |title=Ask Mr. Know-It-All |newspaper=The York Dispatch}}</ref><ref name=Newman>{{Cite news |last=Newman |first=Stanley |date=December 20, 2008 |url=http://www2.canada.com/windsorstar/news/readersatplay/story.html?id=ea936740-3787-49be-813d-937b3a63eb74 |title=Sushi by any other name |newspaper=Windsor Star |page=G4 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20120503121728/http://www2.canada.com/windsorstar/news/readersatplay/story.html?id=ea936740-3787-49be-813d-937b3a63eb74 |archive-date=May 3, 2012 }}</ref><ref>{{cite news |title=Feedback |newspaper=[[New Scientist]]|issue=2285 |date=2001-04-07 |page=108 |url=https://www.newscientist.com/article/mg17022858.000 |format=fee required |access-date=2006-12-08}}</ref>。多くの[[スタイルガイド]]では、このような冗長な表現をしないよう勧告しているが<ref name="Garner">[[Bryan A. Garner|Garner, Bryan A]]. (2000) ''The Oxford Dictionary of American Usage and Style.'' Oxford and New York: Oxford University Press.</ref>、話し言葉では広く使用されている。[[日本語]]においては、外国語の文字と日本語の文字が混在することになるため、このような現象がさらに起こりやすい。特に、頭字語を多用するコンピュータ業界では数多く見られる。
日本語においては、外国語の文字と日本語の文字が混在することになるため、このような現象がさらに起こりやすい。特に、頭字語を多用するコンピュータ業界では数多く見られる。熟語の例では「馬から落馬」「頭痛が痛い」などの言葉のことである。

<!--「Katana sword」や「Edamame beans」「チゲ鍋」など、外来語が混在する場合は、このような現象がさらに起こりやすくなる。-->


== 例 ==
== 例 ==
'''[[太字]]'''が意味の重複した単語。
'''[[太字]]'''が意味の重複した単語。
* [[BB弾]] - {{lang|en|Ball '''Bullet'''}}
* [[BB弾]] - {{lang|en|Ball '''Bullet'''}} (由来が二種類有り Ball bearing の場合はRAS症候群ではない)。
* [[MIDI インターフェイス]] - {{lang|en| Music Instruments Digital '''Interface'''}}
* [[ボディマス指数|BMI]]指数 - {{lang|en|Body Mass '''Index'''}}
* [[ボディマス指数|BMI]]指数 - {{lang|en|Body Mass '''Index'''}}
* [[DCコミックス]] - {{lang|en|Detective '''Comics'''}}
<!--* [[DVD]]ディスク - {{lang|en|Digital Versatile '''Disk'''}} DVDは現在「DVD」という規格であるため、RASの事例として不適当なためコメントアウト-->
* [[DVD]]ディスク - {{lang|en|Digital Versatile '''Disc'''}}
* [[File Transfer Protocol|FTP]]プロトコル - {{lang|en|File Transfer '''Protocol'''}}
* [[File Transfer Protocol|FTP]]プロトコル - {{lang|en|File Transfer '''Protocol'''}}
* [[HAART療法]] - {{lang|en|Highly Active Anti-Retroviral '''Therapy'''}}
* [[HAART療法]] - {{lang|en|Highly Active Anti-Retroviral '''Therapy'''}}
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* [[結合試験|IT]]テスト - {{lang|en|Integration '''Test'''}}
* [[結合試験|IT]]テスト - {{lang|en|Integration '''Test'''}}
* [[情報技術|IT]]技術 - {{lang|en|Information '''Technology'''}}
* [[情報技術|IT]]技術 - {{lang|en|Information '''Technology'''}}
* [[日本業規格|JIS]]規格 - {{lang|en|Japanese Industrial '''Standards'''}}
* [[日本業規格|JIS]]規格 - {{lang|en|Japanese Industrial '''Standards'''}}
* [[マルチメディアカード|MMC]]カード - {{lang|en|Multi Media '''Card'''}}
* [[マルチメディアカード|MMC]]カード - {{lang|en|Multi Media '''Card'''}}
* [[Portable Document Format|PDF]]フォーマット - {{lang|en|Portable Document '''Format'''}}
* [[Portable Document Format|PDF]]形式 - {{lang|en|Portable Document '''Format'''}}
* [[レクリエーショナル・ビークル|RV]]車/[[SUV]]車 - {{lang|en|Recreational '''Vehicle'''}}/{{lang|en|Sport Utility '''Vehicle'''}}
* [[レクリエーショナル・ビークル|RV]]車/[[スポーツ・ユーティリティ・ビークル|SUV]]車/[[電動輸送機器|EV]]車 - {{lang|en|Recreational '''Vehicle'''}}/{{lang|en|Sport Utility '''Vehicle'''}}/{{lang|en|Electric '''Vehicle'''}}
<!-- 例を追加しようとする方へ: もう例は十分でしょう。あなたが追加しようとしている例は本当に必要ですか? それを付け足すことで何が分かりやすくなりますか? その例は確かな出典に基いて追加しようとしていますか? このページは RAS語のデータベースではありません。-->
<!-- 以下、Acronym ではないためまとめてコメントアウト。
* Kinkakuji temple(金閣寺の寺とtemple(寺)が重複)
* Katana sword(刀とswordが重複)
* [[チゲ]]鍋([[朝鮮語]]で鍋料理を意味するチゲに鍋を重複)
* [[カザフスタン共和国]]など(~人の国を意味するスタンに国を重複)
-->


== RAS症候群の原因 ==
== 原因 ==
編集技術として、分かりやすさを向上させるために冗長性を排除することはあるが<ref name="Bryson2002">{{Citation |last=Bryson |first=Bill |author-link=Bill Bryson |title=Bryson's Dictionary of Troublesome Words |year=2002 |isbn=0-7679-1043-5 |postscript=.}}</ref>、自然言語においては、あえて冗長性を持たせることも多い。著述家の[[ビル・ブライソン]]は次のように述べている<ref name="Bryson2002"/>。
{{出典の明記|date=2013年12月}}
{{quote|全ての繰り返しが悪いわけではない。繰り返しは効果的に、あるいは明瞭にするために、あるいは慣用句を考慮して使われる。「[[戦略兵器制限交渉|SALT]]交渉」(''SALT talks'')や「[[ヒト免疫不全ウイルス|HIV]]ウイルス」(''HIV virus'')は、2番目の単語が既にその前の略語に含まれているので、技術的には冗長である。しかし、それを遺憾に思うのは気難しい人だけである。"wipe that smile off your face"{{efn|「あなたの顔から笑みが消える」の意味。}}という表現で、顔以外に笑う場所はないので"your face"は冗長であるが、この2語がなければこの表現は成り立たないのと同様である。}}
RAS症候群のような表現を人が使ってしまう原因としては、以下のようなものが考えられる。


冗長性を限定的に使うことで、全ての読者に対して、少なくともそれを必要とする読者の補助として、意思疎通を円滑にすることができる。この例として、[[無線電話]]における[[通話表]]{{efn|文字を正確に伝えるために、A,B,Cをアルファ、ブラボー、チャーリーと表現したり、「朝日のア、いろはのイ」などと表現するもの。}}の必要性が挙げられる。RAS症候群もこの例として見ることができる。冗長性により、文脈を理解しやすくし、「[[アルファベット・スープ (言語学)|アルファベット・スープ]]指数」(略語や頭字語の氾濫)を低下させることで、聞き手の補助となる。
; 円滑な意思疎通

: ある程度の[[冗語]]は、[[意思]]疎通を円滑にすると考えられる(あるいは、話し手がそう考える)。話し言葉での好例は、ABCをアルファ、ブラボー、チャーリーなどと発音する、[[無線通信]]などで使われる[[通話表]]([[NATOフォネティックコード]])である。いくつかのRAS症候群は、冗長性の原則の構文上の例であると見なせるかもしれない。これらは、略語が持つ意味を明確にする働きを持っているとも考えられる。
外国語の頭字語は、それが翻訳されない場合には未解析の[[形態素]]として扱われる。例えば、日本語やフランス語では「IPプロトコル」や"le protocole IP"(Internet Protocol protocol)という言い方はよくされるし、英語では"please {{仮リンク|RSVP|en|RSVP|preserve=1}}"(RSVPの部分を英語に訳すと"please respond please"のような意味になる)という表現はよく使われる<ref name=Garner/><ref>{{cite web|url=http://www.linguistlist.org/issues/4/4-532.html#1 |title=LINGUIST List 4.532: Last Posting: Acronyms |publisher=Linguistlist.org |access-date=2009-05-22}}</ref>。これは、[[トポニム]]の多くが[[トートロジー]](同語反復)になる{{efn|例えば、アメリカにある「[[タホ湖]] (Lake Tahoe)」の「タホ」は原住民の言葉で「湖」を意味するため、つなげると「湖湖」となってしまう。}}のと同じ[[言語学]]的理由で発生するものである。多くの場合は、外来語由来の略語の元の意味を理解していないためであり、あるいは、単に慣用的な使われ方をしているためである。
; [[語源]]を知らない

: 特に[[日本語]]で顕著であるが、[[外国語]]から入ってきた[[略語]]は、その省略の元となった語句の意味を考えないで使われることがあるため。
==RAS症候群ではない例==
; 系列的派生語の存在
繰り返し現れる単語があっても、RAS症候群ではない例がある。例えば、[[レーザー]](laser)は"light amplification by stimulated emission of radiation"の略語であり、レーザー光線(laser light)という表現は"light"が重複しているが、レーザーは光を増幅するプロセスのことであってそれ自体は光線ではないため、光線を後につけても冗長ではない。同様に、[[石油輸出国機構]]の略称OPECのCは"Countries"の頭文字であるが、OPECという言葉は組織を表すものであり、"OPEC countries"(OPEC諸国)はOPEC加盟国という意味であって、冗長ではない。
: 「HTTP」の例で言えば、「HTTPサーバ」、「HTTPクライアント」、などの一連の用語により、「HTTP」が、プロトコルを指す略語ではなく、あたかも独立した一連の関連したものを指す語のような感じがあるため、その伝で派生させてしまうと、それらのプロトコルは「HTTPプロトコル」ということになってしまう。
; 同格の語の存在
: 「JIS規格」の例では、「[[国際標準化機構|ISO]]規格」、「[[国際電気標準会議|IEC]]規格」などとの釣り合いの点から、「JIS」ではなく冗長な「JIS規格」という表現が選好されるのではないかと思われる。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
===注釈===

{{notelist}}
<!--
===出典===
==実はRAS症候群ではない例==
{{Reflist}}
一見当てはまるように見えるが、実はそうではない例
* [[弾道弾迎撃ミサイル|ABM]]ミサイル = '''A'''nti-'''B'''allistic '''M'''issile ミサイルとなるが、"Ballistic Missle"で「弾道弾」なので、それを迎撃するミサイルということで見れば実は冗長になっていないという解釈も可能。
* [[ASCII]]コード = '''A'''merican '''S'''tandard '''C'''ode for '''I'''nformation '''I'''nterchangeコード。「コード」が重なっているように見えるが、実はASCIIの真ん中の"Code"は「コード体系」という意味であるのに対し、最後の「コード」は個別のキャラクタが持っているコード(数値)という意味なので、冗長でないとも言える。
* [[巡回冗長検査|CRC]]コード = '''C'''yclic '''R'''edundancy '''C'''heck コード。"CRC"の後ろの"C"は"Check"。
* [[Cascading Style Sheets|CSS]]スタイルシート = '''C'''ascading '''S'''tyle '''S'''heetsスタイルシート。一見「スタイルシート」が重複しているが、CSSは言語の名前であり、「CSSスタイルシート」はCSSによって記述されるスタイルシートという意味である。
* [[Domain Name System|DNS]]サーバ = '''D'''omain '''N'''ame '''S'''ystem サーバ。"S"は"system"のSで、"server"ではない。
* [[JPEG]]画像 = '''J'''oint '''P'''hotographic '''E'''xperts '''G'''roup 画像
* [[MACアドレス]] = '''M'''edia '''A'''ccess '''C'''ontrol アドレス
* PDFファイル = '''P'''ortable '''D'''ocument '''F'''ormat ファイル(上記の通り、「PDFフォーマット」だとRAS症候群になる)-->


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[自己整合語]]
* [[三菱UFJフィナンシャル・グループ]] - 社名設定の際、UFJのFがFinancialとなるために、重複となる指摘をされたが、'''「UFJ」の部分を[[固有名詞]]扱い'''とすることで、「重複」使用しない、という説明をしていた。
* [[再帰的頭字語]] - 正式名称の中にそれ自身が含まれている頭字語であることから、実質的な[[重言]]ともいえる。

* [[冗語]]
* [[冗語]]
* [[再帰的頭字語]]
* [[トートロジー]]
* [[重言]]
* [[重言]]


[[Category:言葉遊び|らすしようこうくん]]
{{DEFAULTSORT:らすしようこうくん}}
[[Category:略語|らすしようこうくん]]
[[Category:言葉遊び]]
[[Category:略語]]

[[de:Akronym#Redundantes Akronym]]

2024年4月12日 (金) 08:53時点における最新版

RAS症候群(ラスしょうこうぐん、: RAS syndrome)とは、ある頭字語を、その頭字語を構成する単語と組み合わせて使用してしまうことである。すなわち、頭字語を元の形に開くと、同じ単語が繰り返し現れることを意味する。症候群と付くが、何らかの病気を表す言葉ではない。

例えば、PIN番号(PINのNはnumber(番号)の意味)などが知られている。また、RAS症候群の「RAS」も、Redundant Acronym Syndrome(冗長な頭字語症候群)の略で、この言葉自体がRAS症候群の「症例(自己整合語)」となっている。

この言葉は、2001年に『ニュー・サイエンティスト』のコラムで使われたものが広まったものである[1][2][3]。多くのスタイルガイドでは、このような冗長な表現をしないよう勧告しているが[4]、話し言葉では広く使用されている。日本語においては、外国語の文字と日本語の文字が混在することになるため、このような現象がさらに起こりやすい。特に、頭字語を多用するコンピュータ業界では数多く見られる。

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太字が意味の重複した単語。

  • BB弾 - Ball Bullet (由来が二種類有り Ball bearing の場合はRAS症候群ではない)。
  • MIDI インターフェイス - Music Instruments Digital Interface
  • BMI指数 - Body Mass Index
  • DCコミックス - Detective Comics
  • DVDディスク - Digital Versatile Disc
  • FTPプロトコル - File Transfer Protocol
  • HAART療法 - Highly Active Anti-Retroviral Therapy
  • HDDドライブ - Hard Disk Drive
  • HIVウイルス - Human Immunodeficiency Virus
  • HTML言語 - Hyper-Text Markup Language
  • ISBN番号 - International Standard Book Number
  • ITテスト - Integration Test
  • IT技術 - Information Technology
  • JIS規格 - Japanese Industrial Standards
  • MMCカード - Multi Media Card
  • PDF形式 - Portable Document Format
  • RV車/SUV車/EV車 - Recreational Vehicle/Sport Utility Vehicle/Electric Vehicle

原因

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編集技術として、分かりやすさを向上させるために冗長性を排除することはあるが[5]、自然言語においては、あえて冗長性を持たせることも多い。著述家のビル・ブライソンは次のように述べている[5]

全ての繰り返しが悪いわけではない。繰り返しは効果的に、あるいは明瞭にするために、あるいは慣用句を考慮して使われる。「SALT交渉」(SALT talks)や「HIVウイルス」(HIV virus)は、2番目の単語が既にその前の略語に含まれているので、技術的には冗長である。しかし、それを遺憾に思うのは気難しい人だけである。"wipe that smile off your face"[注釈 1]という表現で、顔以外に笑う場所はないので"your face"は冗長であるが、この2語がなければこの表現は成り立たないのと同様である。

冗長性を限定的に使うことで、全ての読者に対して、少なくともそれを必要とする読者の補助として、意思疎通を円滑にすることができる。この例として、無線電話における通話表[注釈 2]の必要性が挙げられる。RAS症候群もこの例として見ることができる。冗長性により、文脈を理解しやすくし、「アルファベット・スープ指数」(略語や頭字語の氾濫)を低下させることで、聞き手の補助となる。

外国語の頭字語は、それが翻訳されない場合には未解析の形態素として扱われる。例えば、日本語やフランス語では「IPプロトコル」や"le protocole IP"(Internet Protocol protocol)という言い方はよくされるし、英語では"please RSVP英語版"(RSVPの部分を英語に訳すと"please respond please"のような意味になる)という表現はよく使われる[4][6]。これは、トポニムの多くがトートロジー(同語反復)になる[注釈 3]のと同じ言語学的理由で発生するものである。多くの場合は、外来語由来の略語の元の意味を理解していないためであり、あるいは、単に慣用的な使われ方をしているためである。

RAS症候群ではない例

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繰り返し現れる単語があっても、RAS症候群ではない例がある。例えば、レーザー(laser)は"light amplification by stimulated emission of radiation"の略語であり、レーザー光線(laser light)という表現は"light"が重複しているが、レーザーは光を増幅するプロセスのことであってそれ自体は光線ではないため、光線を後につけても冗長ではない。同様に、石油輸出国機構の略称OPECのCは"Countries"の頭文字であるが、OPECという言葉は組織を表すものであり、"OPEC countries"(OPEC諸国)はOPEC加盟国という意味であって、冗長ではない。

脚注

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注釈

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  1. ^ 「あなたの顔から笑みが消える」の意味。
  2. ^ 文字を正確に伝えるために、A,B,Cをアルファ、ブラボー、チャーリーと表現したり、「朝日のア、いろはのイ」などと表現するもの。
  3. ^ 例えば、アメリカにある「タホ湖 (Lake Tahoe)」の「タホ」は原住民の言葉で「湖」を意味するため、つなげると「湖湖」となってしまう。

出典

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  1. ^ Clothier, Gary (8 November 2006). “Ask Mr. Know-It-All”. The York Dispatch 
  2. ^ Newman, Stanley (December 20, 2008). “Sushi by any other name”. Windsor Star: p. G4. オリジナルのMay 3, 2012時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120503121728/http://www2.canada.com/windsorstar/news/readersatplay/story.html?id=ea936740-3787-49be-813d-937b3a63eb74 
  3. ^ “Feedback” (fee required). New Scientist (2285): p. 108. (2001年4月7日). https://www.newscientist.com/article/mg17022858.000 2006年12月8日閲覧。 
  4. ^ a b Garner, Bryan A. (2000) The Oxford Dictionary of American Usage and Style. Oxford and New York: Oxford University Press.
  5. ^ a b Bryson, Bill (2002), Bryson's Dictionary of Troublesome Words, ISBN 0-7679-1043-5. 
  6. ^ LINGUIST List 4.532: Last Posting: Acronyms”. Linguistlist.org. 2009年5月22日閲覧。

関連項目

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