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[[File:2006 Honda Airwave fuel efficiency meter.jpg|thumb|自動車のメーターに表示された燃費値。<br />[[エンジンコントロールユニット|ECU]]から得られた[[燃料噴射装置|燃料噴射]]信号を基にしており、瞬間値と平均値の切り替え表示ができるものが多い。]]
[[File:2006 Honda Airwave fuel efficiency meter.jpg|thumb|自動車のメーターに表示された燃費値。<br />[[エンジンコントロールユニット|ECU]]から得られた[[燃料噴射装置|燃料噴射]]信号を基にしており、瞬間値と平均値の切り替え表示ができるものが多い。]]
== 単位 ==
== 単位 ==
[[File:Chart MPG to L-100km v2009-10-08.svg|thumb|right|400px|MPGとL/100kmの換算表。青:米ガロン、赤:英ガロン]]
[[File:Chart MPG to L-100km v2009-10-08.svg|thumb|400px|MPGとL/100kmの換算表。青:米ガロン、赤:英ガロン]]
=== 燃料あたりの走行距離 ===
=== 燃料あたりの走行距離 ===
; km/L
; km/L
: 日本をはじめ[[アジア]]、[[オセアニア]]、[[北欧]]、[[ラテンアメリカ]]、[[アフリカ]]などで使用されている。
: [[メートル法]]を採用している[[日本]]をはじめ[[アジア]]、[[オセアニア]]、[[北欧]]、[[ラテンアメリカ]]、[[アフリカ]]などで使用されている。
; MPG(miles per gallon)
; MPG(miles per gallon)
: [[イギリス]]、[[カナダ]]、[[アメリカ合衆国]]で使用されている。イギリスカナダでは英[[ガロン]]が用いられるため、英ガロン(4.5L)か米ガロン(3.785L)かに注意が必要。
: [[ヤード・ポンド法]]を採用している[[イギリス]]、[[カナダ]]、[[アメリカ合衆国]]で使用されている。イギリスカナダでは英[[ガロン]]が用いられるため、英ガロン(4.5[[リットル]])か米ガロン(3.785リットル)かに注意が必要。


=== 一定距離の走行に必要な燃料 ===
=== 一定距離の走行に必要な燃料 ===
; L/100km
; L/100km
: [[ヨーロッパ|欧州]]や[[南アフリカ]]、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]、[[中国]]などで使用されている。[[イギリス]]、[[カナダ]]では<ref>{{Cite web |url=http://www.oee.nrcan.gc.ca/transportation/tools/fuelratings/ratings-search.cfm?attr=8 |title=Fuel Consumption Ratings |accessdate=8 June 2011 |date=January 2011 |publisher=Government of Canada}}</ref><ref>[http://www.tc.gc.ca/eng/programs/environment-fcp-faq-139.htm]</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.legislation.gov.uk/uksi/2001/3523/schedule/1/made |title=The Passenger Car(Fuel Consumption and CO2 Emissions Information) Regulations 2001
: [[ヨーロッパ|欧州]]や[[南アフリカ]]、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]、[[中華人民共和国]]などで使用されている。[[イギリス]]、[[カナダ]]では<ref>{{Cite web |url=http://www.oee.nrcan.gc.ca/transportation/tools/fuelratings/ratings-search.cfm?attr=8 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110706181822/oee.nrcan.gc.ca/transportation/tools/fuelratings/ratings-search.cfm?attr=8 |title=Fuel Consumption Ratings |publisher=Natural Resources Canada(カナダ天然資源省)|date=January 2011 |accessdate=2011-06-08 |archivedate=2011-07-06 |url-status=dead|url-status-date=2021-03-27 }}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.tc.gc.ca/eng/programs/environment-fcp-faq-139.htm |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120903133543/tc.gc.ca/eng/programs/environment-fcp-faq-139.htm |title=FAQs |publisher=[[運輸省 (カナダ)|Transport Canada(カナダ運輸省)]] |accessdate=2012-11-06 |archivedate=2012-09-03 |url-status=dead|url-status-date=2021-03-27 }}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.legislation.gov.uk/uksi/2001/3523/schedule/1/made |title=The Passenger Car(Fuel Consumption and CO2 Emissions Information) Regulations 2001
|date=2001 |accessdate=2014-11-11}}</ref>「mpg」での表記も法律で許されている。
|date=2001 |accessdate=2014-11-11}}</ref>「mpg」での表記も法律で許されている。
; GPM(gallons per 100 mile)
; GPM(gallons per 100 mile)
: アメリカでは2013年モデル以降の新車に貼られる燃費ステッカーに表記されるようになっている<ref>[http://www.fueleconomy.gov/feg/label/learn-more-gasoline-label.shtml Learn More About the Fuel Economy Label for Gasoline Vehicles] 2015-09-27閲覧</ref>。
: アメリカでは2013年モデル以降の新車に貼られる燃費ステッカーに表記されるようになっている<ref>[http://www.fueleconomy.gov/feg/label/learn-more-gasoline-label.shtml Learn More About the Fuel Economy Label for Gasoline Vehicles] 2015-09-27閲覧</ref>。


右のグラフにもある通り、mpgやkm/Lは数値が大きくなるにつれて、一定距離の走行に必要な燃料は減らなくなっていく。このため[[消費者]]が燃費の良い車に買い換えるときに、どれだけ燃料代を[[節約]]できるかがわかりにくい欠点がある<ref>[http://www.bloomberg.com/bw/articles/2014-01-14/not-all-fuel-efficiency-is-equal-understanding-the-miles-per-gallon-illusion Not All Fuel Efficiency Is Equal: Understanding the Miles-Per-Gallon Illusion - Businessweek] 2015-09-27閲覧</ref>。例えば燃費10km/Lの車から燃費15km/Lの車に買い換えるケースと、15km/Lの車から燃費20kml/Lの車に買い換えるケースでは、前者のほうが節約できる燃料代は大きい。
右のグラフにもある通り、mpgやkm/Lは数値が大きくなる[[反比例]]して、一定距離の走行に必要な燃料は減らなくなっていく。このため[[消費者]]が燃費の良い車に買い換えるときに、どれだけ燃料代を[[節約]]できるかが直感的に把握しにくい欠点がある<ref>[http://www.bloomberg.com/bw/articles/2014-01-14/not-all-fuel-efficiency-is-equal-understanding-the-miles-per-gallon-illusion Not All Fuel Efficiency Is Equal: Understanding the Miles-Per-Gallon Illusion - Businessweek] 2015-09-27閲覧</ref>。例えば燃費10km/Lの車から燃費15km/Lの車に買い換えるケース(燃費は2/3になる)と、15km/Lの車から燃費20kml/Lの車に買い換えるケース(燃費は3/4になる)では、前者のほうが節約できる燃料代は大きい。


=== 換算方法 ===
=== 換算方法 ===
* 235/mpg<sub>US</sub>=L/100km
{| class="wikitable"
|235/mpg<sub>US</sub>=L/100km
* 282/mpg<sub>Imp.</sub>=L/100km
* 0.425×mpg<sub>US</sub>=km/L
|-
|282/mpg<sub>Imp.</sub>=L/100km
* 0.354×mpg<sub>Imp.</sub>=km/L
* 100/km/L=L/100km
|-

|0.425×mpg<sub>US</sub>=km/L
=== 単位時間の燃料消費率 ===
|-
; L/h{{sfn|自動車総論|1967|p=90-91}}
|0.354×mpg<sub>Imp.</sub>=km/L

|-
=== 燃料あたりの輸送重量 ===
|100/km/L=L/100km
; ton-km/L
|}
輸送効率を表す値で、1リットルの燃料で走行できる距離に車両総重量、もしくは積載重量を掛けたもの{{sfn|自動車総論|1967|p=90-91}}。


== 測定・表記方法 ==
== 測定・表記方法 ==
日本では[[平地]]を一定速度で走行した場合の「定地走行燃費」と、実際の[[公道]]走行を想定して、発進、停止、[[アイドリング]]を含めた「モード走行燃費」とがある。
日本では[[平地]]を一定速度で走行した場合の「定地走行燃費」と、実際の[[公道]]走行を想定して、発進、停止、[[アイドリング]]を含めた「モード走行燃費」とがある。


[[2018年]](平成30年)[[10月]]から、新型車の燃費については、市街地・郊外・高速道路の3つの走行モードを平均的な仕様時間配分で構成した、国際的なWLTCモードでの測定が義務化される。それに先立ち、[[2017年]](平成29年)7月には、WLTCモード値に加え、3つそれぞれの試験モード値も[[カタログ]]に併記することが[[義務]]化された<ref>[https://www.mlit.go.jp/common/001177550.pdf WLTCモード] - [[国土交通省]](平成29年7月4日発表)2018年7月10日閲覧</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/jidosha_wg/2016/pdf/002_s01_00.pdf |archiveurl=https://web.archive.org/web/20180713104734/meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/jidosha_wg/2016/pdf/002_s01_00.pdf |format=PDF |title=燃費の表示内容が変わります! |publisher=国土交通省 |date= |accessdate=2018-07-10 |archivedate=2018-07-13 |url-status=dead|url-status-date=2021-03-27}}</ref>。なお、2018年(平成30年)9月以前に型式認定を受けた継続生産車においても、[[2021年]](令和3年)[[1月]]以降は{{efn2|当初のWLTCモードの完全移行予定年月は2020年9月であったものの、2020年上半期時点での日本国内におけるCOVID-19の感染状況を鑑み、国土交通省が特例措置として4ヶ月間の延長を認めた為。}}、WLTCモードのみでの測定および表記の義務化により、新型車同様、[[JC08モード]]での型式審査・表記は廃止される。
2016年(平成28年)現在、[[乗用車]]の場合は「[[JC08モード]]」で測定した燃費を、[[二輪車]]の場合は30km/h([[原付自転車]])および60km/h(自動二輪車)での定地燃費を示すことが義務付けられている。また、二輪車メーカーによる自主的な取り組みとして[[2013年]](平成25年)[[7月]]より「WMTCモード」による表示の併記も順次行われている。


かつては、日本モード走行燃費は[[東京都]]の[[甲州街道]]での[[市街地]]走行を想定した「10モード燃費」が用いらていたがその後に[[首都高速道路]]など[[都市高速道路]]の走行も加えた「[[10・15モード燃費]]」が策定された。[[2011年]](平成23年)[[4月]]以降の型式認定車については[[JC08モード]]に燃費の表示義務付けられ、[[2013年]]3月以降はすべての車につてJC08モードでの表記となった
かつて日本カタログに燃費性能が記された当初60 [[キロメートル毎時|km/h]]定地燃費が採用されており、[[1973年]](昭和48年)から[[東京都]]の[[甲州街道]]での[[市街地]]走行を想定した「10モード燃費」が導入され、[[1991年]](平成3年)[[首都高速道路]]など[[都市高速道路]]の走行も加えた「[[10・15モード燃費]]」が策定された。10・15モードは[[自動車専用道路]]走行が加わり10モードよりやや(1割程度)燃費い。


10・15モードは[[自動車専用道路]]走行が加わり10モードよりやや(1割程度)燃費良く、JC08モードは試験時間をこれまでの2倍とし、平均車速を高めた上で加速時間を短縮、さらに初めて冷間始動(コールドスタート)が試験対象となるなど、実情との乖離が少なく、かつ、より厳しい内容となるなどの特徴を持つ。
[[2011年]](平成23年)[[4月]]以降の型式認定車についてはJC08モード燃費の表示義務付けられ[[2013年]](平成25年)[[3月]]以降はすべての車についてJC08モードでの表記となった。JC08モードは試験時間をこれまでの2倍とし、平均車速を高めた上で加速時間を短縮、さらに初めて[[冷間始動|冷間始動(コールドスタート)]]が試験対象となるなど、実情との乖離が少なく、かつ、より厳しい内容となるなどの特徴を持つ。[[乗用車]]の場合はJC08モードで測定した燃費を、[[二輪車]]の場合は30 km/h([[原付自転車]])および60 km/h(自動二輪車)での定地走行燃費を示すことが義務付けられている


二輪車で導入されたWMTCモードは、元々[[2012年]](平成24年)[[10]]より日本でも導入された「国連の車両等の世界技術規則協定」における[[自動車排出ガス規制|排出ガス規制]]の排出ガス数値測定法であるが、その測定試験において燃費も算出していたことから、燃費の数値も公表することにしたものである。
また、二輪車メーカーによる自主的な取り組みとして2013年[[7月]]より「WMTCモード」による表示の併記も順次行われている。
二輪車で導入されたWMTCモードは、元々[[2012年]](平成24年)10月より日本でも導入された「国連の車両等の世界技術規則協定」における[[自動車排出ガス規制|排出ガス規制]]の排出ガス数値測定法であるが、その測定試験において燃費も算出していたことから、燃費の数値も公表することにしたものである。


いずれも[[テストコース]]や[[シャシダイナモ]]での状態の良い車両とプロドライバーの組み合わせによる測定であり、カタログデータはその車両であるため、市中での一般的なドライバーの運転より良い値となる。また、測定時期のばらつきによる[[気温]]や[[湿度]]、[[気圧]]などの差は補正されている。
いずれも[[テストコース]]や[[シャシダイナモ]]での状態の良い車両とプロドライバーの組み合わせによる測定である<ref>{{Cite web|author=[[国沢光宏]]|date=2016-04-28|url=https://autoc-one.jp/mitsubishi/special-2691125/|title=三菱自「燃費不正」問題の測定方法『惰行法』と『高速惰行法』の違いとは|publisher=[[MOTA]]|accessdate=2024-04-05}}</ref> <ref>{{Cite web|author=Avanti Yasunori|date=2016-05-22|url=https://clicccar.com/2016/05/22/372757/|title=スズキの報告から見えてくる燃費試験「惰行法」の課題とは?|publisher=[[三栄|clicccar]]|accessdate=2024-04-05}}</ref>。カタログデータはその車両が機械実現可能なに近く、市中での一般的なドライバーの運転よりは概ね良い値となる。また、測定時期のばらつきによる[[気温]]や[[湿度]]、[[気圧]]などの差は補正されている。


なお燃費測定に際しては、[[電装]]品([[カーエアコン|エアコン]]、ランプ{{efn2|[[前照灯]]、[[尾灯]]、[[方向指示器]]など。}}、[[ワイパー]]等)が消費する燃料分は考慮されていない。このため、実燃費との乖離率は低燃費車ほど大きくなる傾向がある<ref>{{Cite web|和書|author=丸山 尚文:東洋経済記者 |date=2013-05-08 |url=http://toyokeizai.net/articles/-/13892 |title=燃費はカタログの4割落ち、エコカーの実状 |publisher=東洋経済 |accessdate=2013-05-09}}</ref>。
現在の日本では燃費率が高いことを表す言葉として燃料消費率が低い、または燃料購入にかかる費用が低く抑えられているという意味で一般的に低燃費という表現が普及しているが、メーカーや発言者によっては効率が高いという意味で高燃費、省[[エネルギー資源|資源]]化が図らているという意味で省燃費という言葉が使われ、単純に燃費が良いという表現も行われる。


=== カタログ燃費と実燃費の乖離 ===
なお燃費測定に際しては、[[電装]]品([[カーエアコン|エアコン]]、ランプ<ref>[[前照灯]]、[[尾灯]]、[[方向指示器]]など。</ref>、[[ワイパー]]等)が消費する燃料分は考慮されていない。このため、実燃費との乖離率は低燃費車ほど大きくなる傾向がある<ref>{{Cite web |author=丸山 尚文:東洋経済記者 |date=2013-05-08 |url=http://toyokeizai.net/articles/-/13892 |title=燃費はカタログの4割落ち、エコカーの実状 |publisher=東洋経済 |accessdate=2013-05-09}}</ref>。
上述のように、実際にドライバーが走行した場合の燃費(実走行燃費)は、カタログに掲載されている燃費に比べて劣る(燃料単位量あたりで走行できる距離がカタログ値より短い)場合が殆どで、このことが各種メディアで報道されることがある<ref name="diamond">{{cite news | author = 浅島亮子 | url = http://diamond.jp/articles/-/47340 | title = エコカー苛烈競争で浮上する知られざる“燃費偽装”問題 | newspaper = [[週刊ダイヤモンド]] | publisher = [[ダイヤモンド社]] | date = 2014-01-20 | accessdate = 2016-07-29 }}</ref><ref name="nikkeibusiness">{{cite news | author = 村沢義久 | url = http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/225434/053100008/ | title = 三菱不正事件の裏に不都合な日本の燃費基準 | newspaper = [[日経ビジネス]] | publisher = [[日経BP]] | date = 2016-06-02 | accessdate = 2017-06-29 }}</ref>。


燃費のカタログ値は各国・各地域が制定した走行パターン(テストサイクル)に基づき、テストドライバーが走行させて計測されているが、実際の走行では同じ距離でも天候や道路状況・交通状況が異なること、運転する一般の運転手テストドライバーほど高い運転技術を持たないこと、エアコンやランプなどの各種電装品を作動させるためにも、[[オルタネーター]]の負荷で燃料が消費されることなどにより、燃料消費量が変化する<ref name="diamond"/>
=== カタログ燃費と実際の燃費の乖離 ===
上述のように、実際にドライバーが走行した場合の燃費(実走行燃費)は、カタログに掲載されている燃費に比べて低い(燃料単位量あたりで走行できる距離がカタログ値より短い)場合が多く、このことが各種メディア等で報道されることがある<ref>[http://diamond.jp/articles/-/47340 エコカー苛烈競争で浮上する知られざる“燃費偽装”問題] - [[タイヤモンド社|ダイヤモンドオンライン]](2014年1月20日版/2016年5月15日閲覧)</ref>。燃費のカタログ値は各国・各地域が制定した走行パターン(テストサイクル)に基づき、テストドライバーが走行させて計測されているが、実際の走行では同じ距離でも天候や道路状況・交通状況が異なること、運転する一般のドライバーはテストドライバーほど高い運転技術を持たないこと、エアコンやランプなどの各種電装品を作動させるためにも、燃料が消費されることなどにより、燃料消費量が変化する。


カタログ燃費値を、実走行燃費に近づけるためのテストサイクルの改定も各国で行われており、日本では先述のように10モードから[[10・15モード]]、そして[[JC08モード]]へと切り替えられているほか、[[欧州連合]]が中心となり、[[世界]]で導入を進めている[[WLTP]]などの例がある<ref>[http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1206/28/news008.html JC08モードでもまだまだ甘い:カタログ燃費と実燃費の差をなくせ! 欧州が燃費計測の世界標準策定に動く] - 朴尚洙、[[ITmedia|@IT MONOist]]、2012年6月28日</ref>。なおWLTPは、[[2018年]]より日本でも採用される予定<ref>[http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20160328_750387.html 国交省と経産省、乗用車等の燃費試験法に国際基準「WLTP」を導入] - インプレスCarWatch・2016年3月28日</ref>。
カタログ燃費値を、実走行燃費に近づけるためのテストサイクルの改定も各国で行われており、日本では先述のように10モードから[[10・15モード]]、そして[[JC08モード]]へと切り替えられているほか、[[欧州連合]]が中心となり、[[世界]]で導入を進めている[[WLTP]]などの例がある<ref>[https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1206/28/news008.html JC08モードでもまだまだ甘い:カタログ燃費と実燃費の差をなくせ! 欧州が燃費計測の世界標準策定に動く] - 朴尚洙、[[ITmedia|@IT MONOist]]、2012年6月28日</ref>。なおWLTPは、[[2018年]][[10月1日]]より日本でも'''WTLCモード'''として導入され<ref>[https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/750387.html 国交省と経産省、乗用車等の燃費試験法に国際基準「WLTP」を導入] - インプレスCar Watch・2016年3月28日</ref>。


[[日本自動車工業会]]が2013年(平成25年)5月8日に作成した冊子[http://www.jama.or.jp/user/pdf/jitsunenpi.pdf 「気になる乗用車の燃費〜カタログとあなたのクルマの燃費の違いは?〜」]では、日本車の平均的な値として、実走行燃費は10・15モードのカタログ値より約3割、JC08モードのカタログ値より約2割程度低いとしている<ref>[http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1305/30/news004.html もう止めないか? 実態と違う、日本独自の燃費“規格”] - [[ITmedia]](2013年5月30日 8時2分 更新/2016年10月23日閲覧)</ref>。
[[日本自動車工業会]]が2013年(平成25年)5月8日に作成した冊子[http://www.jama.or.jp/user/pdf/jitsunenpi.pdf 「気になる乗用車の燃費〜カタログとあなたのクルマの燃費の違いは?〜」]では、日本車の平均的な値として、実走行燃費は10・15モードのカタログ値より約3割、JC08モードのカタログ値より約2割程度低いと説明している<ref>[https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1305/30/news004.html もう止めないか? 実態と違う、日本独自の燃費“規格”] - [[ITmedia]](2013年5月30日 8時2分 更新/2016年10月23日閲覧)</ref>。


== 燃費表示の傾向 ==
== 燃費表示の傾向 ==
* 定地燃費(平坦かつ水平な直線舗装路を定速走行)は、走行中の加速による燃料消費が無く(部分負荷=パーシャルスロットルの状態)、実質的な走行より良い数値となる。
* 定地燃費(平坦かつ水平な直線舗装路を定速走行)は、走行中の加速による燃料消費が無く(部分負荷=パーシャルスロットルの状態)、実質的な走行より良い数値となる。
** これは車両総重量に対し、[[トルク]]の小さいエンジンを搭載する場合に顕著であり、[[普通自動車]]が大きくても数割増程度の差であるのに対し、[[原動機付自転車|原付]]50cc[[オートバイ]]では数倍程度にもなる。
** これは車両総重量に対し、[[トルク]]の小さいエンジンを搭載する場合に顕著であり、[[普通自動車]]が大きくても数割増程度の差であるのに対し、[[原動機付自転車|原付]]50 cc[[オートバイ]]では数倍程度にもなる。
* モード燃費値は、定地燃費値より実走燃費値に近いが、モード燃費値の測定モードにあわせた[[チューニング]](エンジン特性や変速タイミングなどの設定)をすることで、実走行より不自然によい値となる車両があることが指摘されている。また、測定モードに近い走行(メーカー推奨の省燃費運転)ができないドライバーの場合も、この数値からかけ離れて悪くなる。
* モード燃費値は、定地燃費値より実走燃費値に近いが、モード燃費値の測定モードにあわせた[[チューニング]](エンジン特性や変速タイミングなどの設定)をすることで、実走行より不自然によい値となる車両があることが指摘されている。また、測定モードに近い走行(メーカー推奨の省燃費運転)ができないドライバーの場合も、この数値からかけ離れて悪くなる。
* 「低燃費」とは「'''低燃'''料消'''費'''率」の略で、距離に対して燃料消費量が少ない(='''燃費が良い''')という意味である。燃費の数値低い(=燃費という意味ではないので注意必要である。[[誤用]]防止の燃費」と言う場合もある。
* 「低燃費」とは「'''低燃'''料消'''費'''率」の略で、[[仕事 (熱力学)|仕事]]に対して燃料消費量が少ない(='''燃費が良い''')という意味であるが、省[[エネルギー資源|資源]]/[[省エネルギー|省エネ]]化図られてという意味で「'''省燃費'''」としたり単純に燃費良いという表現も行われる。「高[[性能]]」「高[[効率]]」といっ言葉からの類推によるものか、「燃費が良い」「燃費を良くすることを誤って「高燃費」「燃費向上」などと表現していることもあり、注意が必要である。
* 日本及び米国等では燃費を表示するのに、「km/liter」や「mile/gallon」といった単位燃料量あたりの走行距離を用いるのに対し、欧州各国では「liter/100km」のように一定距離を走行するのに必要な燃料量を用いる。前者はその数値が「大きいほど燃費が良い」ことになるが、後者では「小さいほうが燃費の良い」ことになる。
* 日本及び米国等では燃費を表示するのに、「km/liter」や「mile/gallon」といった単位燃料量あたりの走行距離を用いるのに対し、欧州各国では「l iter/100 km」のように一定距離を走行するのに必要な燃料量を用いる。前者はその数値が「大きいほど燃費が良い」ことになるが、後者では「小さいほうが燃費の良い」ことになる。
* アメリカ合衆国では、2012年、韓国の[[現代自動車]]と傘下の[[起亜自動車]]が販売した自動車の'''燃費'''の偽装表示が発覚。後に、購入者から[[損害賠償]]請求を起こされほか、[[大気浄化法]]違反の制裁金として1億ドルを支払うなど大きな痛手を受けることとなり、他社も含めて燃費示の厳格さが求められる結果となった<ref>{{Cite News|url=http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141104/frn1411040937002-n1.htm|title=現代、起亜 燃費過大表示で巨額制裁金 米当局に|work=zakzak|publisher=夕刊フジ|date=2014-11-04|accessdate=2014-11-11}}</ref>{{出典無効|date=201411月12日 (水) 09:51 (UTC)|title=リンク先に掲載されていない事実・考察を含む。}}。
* [[アメリカ合衆国]]では、2012年、韓国の[[現代自動車]]と傘下の[[起亜自動車]]が販売した自動車の燃費性能を過大表示問題で[[大気浄化法]]違反の[[民事訴訟|民事]]制裁金として1億ドルを支払うことで和解したた<ref>{{Cite News |author=[[共同通信社]] |url=http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141104/frn1411040937002-n1.htm |archiveurl=https://web.archive.org/web/20141111180824/zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141104/frn1411040937002-n1.htm |title=現代、起亜 燃費過大表示で巨額制裁金 米当局に |work=zakzak |publisher=夕刊フジ |date=2014-11-4 |accessdate=2014-11-11 |archivedate=2014-11-11 }}</ref>


== 燃費と速度 ==
== 燃費と速度 ==
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実際に、日本の10・15モード走行で良好な結果を出した車がECE15では他の欧州メーカーの小型車より燃費が大幅に劣るといったことも多い([[ホンダ・フィット]]は10・15モードで24km/LだがECE15では17.5km/Lである)。
実際に、日本の10・15モード走行で良好な結果を出した車がECE15では他の欧州メーカーの小型車より燃費が大幅に劣るといったことも多い([[ホンダ・フィット]]は10・15モードで24km/LだがECE15では17.5km/Lである)。


== 市販車世界最燃費 ==
== 市販車世界最燃費 ==
=== 実走行 ===
=== 実走行 ===
; オートバイ(イギリス1周低燃費記録走行)
; オートバイ(イギリス1周低燃費記録走行)
: [[ディーゼルエンジン]]搭載[[オートバイ]] - [[エンフィールド=ロビン・D-R400D|エンフィールド=ロビン・D-R400D]](66.7km/リットル、[[1995年]]、現在製造中止)
: [[ディーゼルエンジン]]搭載[[オートバイ]] - [[エンフィールド=ロビン・D-R400D|エンフィールド=ロビン・D-R400D]](66.7km/リットル、[[1995年]]、現在製造中止)
: ガソリンエンジン搭載オートバイ - [[ホンダ・CG125]](74.44km/リットル、[[2001年]])
: ガソリンエンジン搭載オートバイ - [[ホンダ・CG125]](74.44km/リットル、[[2001年]])
; 四輪車
: フォルクスワーゲン・XL1 (プロトタイプ) {{cvt|0.89|L/100km|km/L}} <ref>{{cite web|url=https://www.derstandard.at/story/1363706923043/piech-im-1-liter-auto-am-anfang-war-der-pinguin |title=Piëch im 1-Liter-Auto: Am Anfang war der Pinguin |publisher=DER STANDARD |date=2013-04-05 |access-date=2024-02-05 }}</ref>


=== カタログ値 ===
=== カタログ値 ===
; オートバイ(30km/hにおける定地燃費)
; オートバイ(30 km/hにおける定地燃費)
: ガソリンエンジン搭載オートバイ - [[ホンダ・カブ]](180km/リットル、[[1983年]]当時)
: ガソリンエンジン搭載オートバイ - [[ホンダ・カブ]](180 km/リットル、[[1983年]]当時 50スーパーカスタムにおいて
; 自動車([[JC08モード]])
; 自動車
: [[ハイブリッドカー]]
: [[ハイブリッドカー]]
:: [[トヨタ・アクア]] NHP10型(37.0km/リットル
:: [[トヨタ・プリウス]] (発売時・40.8 km/L [[JC08モード]]・審査値
:: [[フォルクスワーゲン・XL1]] (ディーゼルPHEV・限定販売車・{{cvt|0.866|L/100km|km/L|disp=out }}) <ref>{{cite web|url=http://www.autoexpress.co.uk/volkswagen/62839/volkswagen-xl1-revealed#ixzz2La5vADJ1 |archive-url=https://web.archive.org/web/20130224003504/http://www.autoexpress.co.uk/volkswagen/62839/volkswagen-xl1-revealed#ixzz2La5vADJ1 |archive-date=2013-02-24 |title=Volkswagen XL1 revealed |publisher=Auto Press |access-date=2024-02-05 }}</ref>
:: [[ホンダ・フィットハイブリッド]] GP5型(36.4km/リットル)
: [[ガソリンエンジン]]単独車 - [[スズキ・アルト]](37.0km/リットル
: [[ガソリンエンジン]]単独車 - [[スズキ・アルト]](37.0km/L [[JC08モード]]・審査値


== モータースポーツ ==
== 低燃費競技 ==
{{Main|低燃費競技}}
{{Main|低燃費競技}}
'''低燃費競技'''とは特別に製作された車両や改造された車両を用いて行う低燃費を競う競技である。[[Honda エコ マイレッジ チャレンジ]]や[[:en:Eco-marathon|エコマラソン]]が世界各地で開催されている。
'''低燃費競技'''とは特別に製作された車両や改造された車両を用いて行う低燃費を競う競技である。

また一般的な速さを競うタイプのレースでも、耐久色の強いレースでは燃費がものを言うことも多い。例として[[インディ500]]の記念すべき第100回大会(2016年)では、チームメイトの[[スリップストリーム]]を最大限に活用するなど燃費走行に徹し、ライバルよりピットイン回数を減らした[[アレクサンダー・ロッシ]]がルーキーながら大逆転優勝を果たしている。

=== 主な大会 ===
=== 主な大会 ===
; エコカーカップ
: 年2回、[[富士スピードウェイ]]で開催される。[[トヨタ自動車]]が協賛であるが、マシンはどのメーカーのものでも良く、クラス分けが細かくされている。
; プリウスカップ
: [[トヨタ・プリウス]]で、ガソリン1Lどれだけの距離を走れるかを競うディーラー対抗戦。
; [[Honda エコ マイレッジ チャレンジ]]
; [[Honda エコ マイレッジ チャレンジ]]
: ホンダのエンジンを使用する。参加者が多く参加者同士の交流の場でもある。
: ホンダのエンジンを使用する。参加者が多く参加者同士の交流の場でもある。
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
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'''注釈'''
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'''出典'''
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[燃費向上グッズ]]
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* [[エネルギーの使用の合理化等に関する法律]](省エネ法)
* [[エネルギーの使用の合理化等に関する法律]](省エネ法)
* [[燃費基準]]
* [[重量車燃費基準]]
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* [[自動車]]
* [[自動車]]
* [[10・15モード燃費]]
* [[10・15モード燃費]]
* [[JC08モード]]
* [[JC08モード]]
* [[WLTP]]
* [[気筒休止エンジン]]
* [[気筒休止エンジン]]
* [[スクラップインセンティブ (自動車)]] - 米国で燃費の悪い車両の淘汰に用いられた措置
* [[スクラップインセンティブ (自動車)]] - 米国で燃費の悪い車両の淘汰に用いられた措置
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr10_000024.html 自動車燃費一覧(平成27年3月)] - 国土交通省(2015年8月14日閲覧)
* [https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr10_000024.html 自動車燃費一覧(平成27年3月)] - 国土交通省(2015年8月14日閲覧)
* [http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.february/08020801.pdf 公正取引委員会 自動車の燃費向上等を標ぼうする商品の製造販売業者ら19社に対する排除命令について]
* {{PDFlink|[http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.february/08020801.pdf 公正取引委員会 自動車の燃費向上等を標ぼうする商品の製造販売業者ら19社に対する排除命令について]}}
* [http://www.mlit.go.jp/jidosha/roadtransport.htm 自動車交通局トップページ]
* [https://www.mlit.go.jp/jidosha/roadtransport.htm 自動車交通局トップページ]
* [http://www.mlit.go.jp/jidosha/nenpi/nenpilist/nenpilist.html 燃費リスト(内部はPDF)]
* [https://www.mlit.go.jp/jidosha/nenpi/nenpilist/nenpilist.html 燃費リスト(内部はPDF)]
* [http://www.eccj.or.jp/world/standard/03/honbun.pdf 主要国におけるエネルギー消費効率基準の 比較等にする調査 報告書(PDF)]
* {{PDFlink|[http://www.eccj.or.jp/world/standard/03/honbun.pdf 主要国におけるエネルギー消費効率基準の 比較等にする調査 報告書]}}
* [http://www.eccj.or.jp/ ECCJ 省エネルギーセンター(Japanese) Home]
* [http://www.eccj.or.jp/ ECCJ 省エネルギーセンター(Japanese) Home]
* [http://www.swissinfo.org/jpn/front/detail.html?siteSect=105&sid=7190556&cKey=1161681679000 スイスで開発100km/L車]
* [http://www.swissinfo.org/jpn/front/detail.html?siteSect=105&sid=7190556&cKey=1161681679000 スイスで開発100km/L車]
* {{PDFlink|[http://www.jama.or.jp/user/pdf/jitsunenpi.pdf 気になる乗用車の燃費〜カタログとあなたのクルマの燃費の違いは?〜]}} - 日本自動車工業会、2013年5月8日
* {{PDFlink|[http://www.jama.or.jp/user/pdf/jitsunenpi.pdf 気になる乗用車の燃費〜カタログとあなたのクルマの燃費の違いは?〜]}} - 日本自動車工業会、2013年5月8日
* {{PDFlink|[http://www.jama.or.jp/motorcycle/WMTC/WMTC.pdf 二輪車の燃費「WMTCモード値」〜国内二輪車メーカー4社の自主的取り組みについて〜]}} - 日本自動車工業会、2013年7月
* {{PDFlink|[http://www.jama.or.jp/motorcycle/WMTC/WMTC.pdf 二輪車の燃費「WMTCモード値」〜国内二輪車メーカー4社の自主的取り組みについて〜]}} - 日本自動車工業会、2013年7月
* [http://carlifenavi.com/ 燃費ランキング・ガソリン・車種情報の共有コミュニティ - カーライフナビe燃費] - 個人が自分の自動車を実際に使用した際の燃費を入力し、インターネット上に公開するサイト。
* [https://e-nenpi.com 燃費ランキング・ガソリン・車種情報の共有コミュニティ - e燃費] - 所有者が自分の自動車を実際に使用した際の燃費を入力し、インターネット上で情報共有する[[ウェブサイト]]


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2024年7月15日 (月) 05:29時点における最新版

燃費(ねんぴ)は、燃料(ガソリン軽油など)の単位容量あたりの走行距離、もしくは一定の距離をどれだけの燃料で走れるかを示す指標である。

使用する燃料タイヤ空気圧、路面状況、エンジンオイルの種類、積載重量、走行パターンなどで変化する。

自動車のメーターに表示された燃費値。
ECUから得られた燃料噴射信号を基にしており、瞬間値と平均値の切り替え表示ができるものが多い。

単位

[編集]
MPGとL/100kmの換算表。青:米ガロン、赤:英ガロン

燃料あたりの走行距離

[編集]
km/L
メートル法を採用している日本をはじめ、アジアオセアニア北欧ラテンアメリカアフリカなどで使用されている。
MPG(miles per gallon)
ヤード・ポンド法を採用しているイギリスカナダアメリカ合衆国で使用されている。イギリスとカナダでは、英ガロンが用いられるため、英ガロン(4.5リットル)か米ガロン(3.785リットル)かに注意が必要。

一定距離の走行に必要な燃料

[編集]
L/100km
欧州南アフリカオーストラリアニュージーランド中華人民共和国などで使用されている。イギリスカナダでは[1][2][3]「mpg」での表記も法律で許されている。
GPM(gallons per 100 mile)
アメリカでは2013年モデル以降の新車に貼られる燃費ステッカーに表記されるようになっている[4]

右のグラフにもある通り、mpgやkm/Lは数値が大きくなるのに反比例して、一定距離の走行に必要な燃料は減らなくなっていく。このため消費者が燃費の良い車に買い換えるときに、どれだけ燃料代を節約できるかが直感的に把握しにくい欠点がある[5]。例えば燃費10km/Lの車から燃費15km/Lの車に買い換えるケース(燃費は2/3になる)と、15km/Lの車から燃費20kml/Lの車に買い換えるケース(燃費は3/4になる)では、前者のほうが節約できる燃料代は大きい。

換算方法

[編集]
  • 235/mpgUS=L/100km
  • 282/mpgImp.=L/100km
  • 0.425×mpgUS=km/L
  • 0.354×mpgImp.=km/L
  • 100/km/L=L/100km

単位時間の燃料消費率

[編集]
L/h[6]

燃料あたりの輸送重量

[編集]
ton-km/L

輸送効率を表す値で、1リットルの燃料で走行できる距離に車両総重量、もしくは積載重量を掛けたもの[6]

測定・表記方法

[編集]

日本では平地を一定速度で走行した場合の「定地走行燃費」と、実際の公道走行を想定して、発進、停止、アイドリングを含めた「モード走行燃費」とがある。

2018年(平成30年)10月から、新型車の燃費については、市街地・郊外・高速道路の3つの走行モードを平均的な仕様時間配分で構成した、国際的なWLTCモードでの測定が義務化される。それに先立ち、2017年(平成29年)7月には、WLTCモード値に加え、3つそれぞれの試験モード値もカタログに併記することが義務化された[7][8]。なお、2018年(平成30年)9月以前に型式認定を受けた継続生産車においても、2021年(令和3年)1月以降は[注 1]、WLTCモードのみでの測定および表記の義務化により、新型車同様、JC08モードでの型式審査・表記は廃止される。

かつて日本車のカタログに燃費性能が記された当初は60 km/h定地燃費が採用されており、1973年(昭和48年)から東京都甲州街道での市街地走行を想定した「10モード燃費」が導入され、1991年(平成3年)には首都高速道路など都市高速道路の走行も加えた「10・15モード燃費」が策定された。10・15モードは自動車専用道路走行が加わり、10モードよりやや(1割程度)燃費値が良い。

2011年(平成23年)4月以降の型式認定車については、JC08モードによる燃費の表示が義務付けられ、2013年(平成25年)3月以降はすべての車についてJC08モードでの表記となった。JC08モードは試験時間をこれまでの2倍とし、平均車速を高めた上で加速時間を短縮、さらに初めて冷間始動(コールドスタート)が試験対象となるなど、実情との乖離が少なく、かつ、より厳しい内容となるなどの特徴を持つ。乗用車の場合はJC08モードで測定した燃費を、二輪車の場合は30 km/h(原付自転車)および60 km/h(自動二輪車)での定地走行燃費を示すことが義務付けられている。

また、二輪車メーカーによる自主的な取り組みとして2013年7月より「WMTCモード」による表示の併記も順次行われている。 二輪車で導入されたWMTCモードは、元々2012年(平成24年)10月より日本でも導入された「国連の車両等の世界技術規則協定」における排出ガス規制の排出ガス数値測定法であるが、その測定試験において燃費も算出していたことから、燃費の数値も公表することにしたものである。

いずれもテストコースシャシダイナモでの状態の良い車両とプロドライバーの組み合わせによる測定である[9] [10]。カタログデータはその車両が機械として実現可能な最良値に近く、市中での一般的なドライバーの運転よりは概ね良い値となる。また、測定時期のばらつきによる気温湿度気圧などの差は補正されている。

なお燃費測定に際しては、電装品(エアコン、ランプ[注 2]ワイパー等)が消費する燃料分は考慮されていない。このため、実燃費との乖離率は低燃費車ほど大きくなる傾向がある[11]

カタログ燃費と実燃費の乖離

[編集]

上述のように、実際にドライバーが走行した場合の燃費(実走行燃費)は、カタログに掲載されている燃費に比べて劣る(燃料単位量あたりで走行できる距離がカタログ値より短い)場合が殆どで、このことが各種メディアで報道されることがある[12][13]

燃費のカタログ値は各国・各地域が制定した走行パターン(テストサイクル)に基づき、テストドライバーが走行させて計測されているが、実際の走行では同じ距離でも天候や道路状況・交通状況が異なること、運転する一般の運転手は、テストドライバーほど高い運転技術を持たないこと、エアコンやランプ類などの各種電装品を作動させるためにも、オルタネーターの負荷で燃料が消費されることなどにより、燃料消費量が変化する[12]

カタログ燃費値を、実走行燃費に近づけるためのテストサイクルの改定も各国で行われており、日本では先述のように10モードから10・15モード、そしてJC08モードへと切り替えられているほか、欧州連合が中心となり、世界で導入を進めているWLTPなどの例がある[14]。なおWLTPは、2018年10月1日より日本でもWTLCモードとして導入された[15]

日本自動車工業会が2013年(平成25年)5月8日に作成した冊子「気になる乗用車の燃費〜カタログとあなたのクルマの燃費の違いは?〜」では、日本車の平均的な値として、実走行燃費は10・15モードのカタログ値より約3割、JC08モードのカタログ値より約2割程度低いと説明している[16]

燃費表示の傾向

[編集]
  • 定地燃費(平坦かつ水平な直線舗装路を定速走行)は、走行中の加速による燃料消費が無く(部分負荷=パーシャルスロットルの状態)、実質的な走行より良い数値となる。
    • これは車両総重量に対し、トルクの小さいエンジンを搭載する場合に顕著であり、普通自動車が大きくても数割増程度の差であるのに対し、原付50 ccオートバイでは数倍程度にもなる。
  • モード燃費値は、定地燃費値より実走燃費値に近いが、モード燃費値の測定モードにあわせたチューニング(エンジン特性や変速タイミングなどの設定)をすることで、実走行より不自然によい値となる車両があることが指摘されている。また、測定モードに近い走行(メーカー推奨の省燃費運転)ができないドライバーの場合も、この数値からかけ離れて悪くなる。
  • 「低燃費」とは「低燃料消率」の略で、仕事に対して燃料消費量が少ない(=燃費が良い)という意味であるが、省資源/省エネ化が図られているという意味で「省燃費」としたり、単純に燃費が良いという表現も行われる。「高性能」「高効率」といった言葉からの類推によるものか、「燃費が良い」「燃費を良くする」ことを誤って「高燃費」「燃費向上」などと表現していることもあり、注意が必要である。
  • 日本及び米国等では燃費を表示するのに、「km/liter」や「mile/gallon」といった単位燃料量あたりの走行距離を用いるのに対し、欧州各国では「l iter/100 km」のように一定距離を走行するのに必要な燃料量を用いる。前者はその数値が「大きいほど燃費が良い」ことになるが、後者では「小さいほうが燃費の良い」ことになる。
  • アメリカ合衆国では、2012年、韓国の現代自動車と傘下の起亜自動車が販売した自動車の燃費性能を過大表示した問題で大気浄化法違反の民事制裁金として1億ドルを支払うことで和解したと発表した[17]

燃費と速度

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自動車教習所の教本やエコドライブのガイドでは、燃費が最もよい速度は一般道では40 - 50 km/h高速道路では80km/hと記載されている。日本国内向けに生産された国産車は、エンジンのトルク特性や変速比(トランスミッションデフ歯車比、タイヤ径)、さらに、ATの場合は変速タイミングをこれらに合わせてあるものが多く(排気量により速度域が異なることがある)これらが当てはまるが、パワートレインに日本向けの変更が施されていない欧州車は、一般道、高速道ともに、やや高い速度域で燃費がよくなる傾向にある。

これは、日本で採用されている燃費測定法の10・15モード燃費における走行速度は市街地で20 - 40km/h、郊外自動車専用道路で50 - 70km/hであるのに対し、欧州における燃費測定法の欧州複合モード燃費では市街地40 - 60km/h、郊外70 - 90km/h、高速道路120km/hという速度で測定されるためである。欧州各国の規制速度値は日本より全般的に高く、実際の交通の流れも速い。また欧州仕様のディーゼル車においては、それらのガソリン車より、さらに高速燃費に優れている。

近年はATの多段化により80km/hを超える速度域で燃費を重視した車も登場している。例えば、LS460の燃費は100km/h走行時でも80km/h走行時のそれと変わらない。

実際に、日本の10・15モード走行で良好な結果を出した車がECE15では他の欧州メーカーの小型車より燃費が大幅に劣るといったことも多い(ホンダ・フィットは10・15モードで24km/LだがECE15では17.5km/Lである)。

市販車世界最低燃費

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実走行

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オートバイ(イギリス1周低燃費記録走行)
ディーゼルエンジン搭載オートバイ - エンフィールド=ロビン・D-R400D(66.7km/リットル、1995年、現在製造中止)
ガソリンエンジン搭載オートバイ - ホンダ・CG125(74.44km/リットル、2001年
四輪車
フォルクスワーゲン・XL1 (プロトタイプ) 0.89 L/100km (112 km/L) [18]

カタログ値

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オートバイ(30 km/hにおける定地燃費)
ガソリンエンジン搭載オートバイ - ホンダ・カブ(180 km/リットル、1983年当時 50スーパーカスタムにおいて)
自動車
ハイブリッドカー
トヨタ・プリウス (発売時・40.8 km/L JC08モード・審査値)
フォルクスワーゲン・XL1 (ディーゼルPHEV・限定販売車・115.5 km/L) [19]
ガソリンエンジン単独車 - スズキ・アルト(37.0km/L JC08モード・審査値)

モータースポーツ

[編集]

低燃費競技とは特別に製作された車両や改造された車両を用いて行う低燃費を競う競技である。

また一般的な速さを競うタイプのレースでも、耐久色の強いレースでは燃費がものを言うことも多い。例としてインディ500の記念すべき第100回大会(2016年)では、チームメイトのスリップストリームを最大限に活用するなど燃費走行に徹し、ライバルよりピットイン回数を減らしたアレクサンダー・ロッシがルーキーながら大逆転優勝を果たしている。

主な大会

[編集]
エコカーカップ
年2回、富士スピードウェイで開催される。トヨタ自動車が協賛であるが、マシンはどのメーカーのものでも良く、クラス分けが細かくされている。
プリウスカップ
トヨタ・プリウスで、ガソリン1Lどれだけの距離を走れるかを競うディーラー対抗戦。
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
ホンダのエンジンを使用する。参加者が多く参加者同士の交流の場でもある。
シェル エコマラソン
シェルが世界各国で開催している。1939年に初開催され、既に70年以上の歴史がある。日本国内では2000年まで開催された。また、ガソリンエンジン部門のほか、燃料電池部門、太陽電池部門、液化石油ガス部門、ディーゼル部門も設けられている。

脚注

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注釈

  1. ^ 当初のWLTCモードの完全移行予定年月は2020年9月であったものの、2020年上半期時点での日本国内におけるCOVID-19の感染状況を鑑み、国土交通省が特例措置として4ヶ月間の延長を認めた為。
  2. ^ 前照灯尾灯方向指示器など。

出典

  1. ^ Fuel Consumption Ratings”. Natural Resources Canada(カナダ天然資源省) (January 2011). 2011年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月8日閲覧。
  2. ^ FAQs”. Transport Canada(カナダ運輸省). 2012年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月6日閲覧。
  3. ^ The Passenger Car(Fuel Consumption and CO2 Emissions Information) Regulations 2001” (2001年). 2014年11月11日閲覧。
  4. ^ Learn More About the Fuel Economy Label for Gasoline Vehicles 2015-09-27閲覧
  5. ^ Not All Fuel Efficiency Is Equal: Understanding the Miles-Per-Gallon Illusion - Businessweek 2015-09-27閲覧
  6. ^ a b 自動車総論 1967, p. 90-91.
  7. ^ WLTCモード - 国土交通省(平成29年7月4日発表)2018年7月10日閲覧
  8. ^ 燃費の表示内容が変わります!” (PDF). 国土交通省. 2018年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月10日閲覧。
  9. ^ 国沢光宏 (2016年4月28日). “三菱自「燃費不正」問題の測定方法『惰行法』と『高速惰行法』の違いとは”. MOTA. 2024年4月5日閲覧。
  10. ^ Avanti Yasunori (2016年5月22日). “スズキの報告から見えてくる燃費試験「惰行法」の課題とは?”. clicccar. 2024年4月5日閲覧。
  11. ^ 丸山 尚文:東洋経済記者 (2013年5月8日). “燃費はカタログの4割落ち、エコカーの実状”. 東洋経済. 2013年5月9日閲覧。
  12. ^ a b 浅島亮子 (2014年1月20日). “エコカー苛烈競争で浮上する知られざる“燃費偽装”問題”. 週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社). http://diamond.jp/articles/-/47340 2016年7月29日閲覧。 
  13. ^ 村沢義久 (2016年6月2日). “三菱不正事件の裏に不都合な日本の燃費基準”. 日経ビジネス (日経BP). http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/225434/053100008/ 2017年6月29日閲覧。 
  14. ^ JC08モードでもまだまだ甘い:カタログ燃費と実燃費の差をなくせ! 欧州が燃費計測の世界標準策定に動く - 朴尚洙、@IT MONOist、2012年6月28日
  15. ^ 国交省と経産省、乗用車等の燃費試験法に国際基準「WLTP」を導入 - インプレスCar Watch・2016年3月28日
  16. ^ もう止めないか? 実態と違う、日本独自の燃費“規格” - ITmedia(2013年5月30日 8時2分 更新/2016年10月23日閲覧)
  17. ^ 共同通信社 (2014年11月4日). “現代、起亜 燃費過大表示で巨額制裁金 米当局に”. zakzak (夕刊フジ). オリジナルの2014年11月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141111180824/zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141104/frn1411040937002-n1.htm 2014年11月11日閲覧。 
  18. ^ Piëch im 1-Liter-Auto: Am Anfang war der Pinguin”. DER STANDARD (2013年4月5日). 2024年2月5日閲覧。
  19. ^ Volkswagen XL1 revealed”. Auto Press. 2013年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月5日閲覧。
  • 全国自動車整備学校連盟 編「2―6 燃料消費率」『自動車総論』山海堂、1967年、90-91頁。NDLJP:/2513848/55 


関連項目

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外部リンク

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