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「三体」の版間の差分

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『'''三体'''』(さんたい)は、[[中華人民共和国]]のSF作家[[劉慈欣]]長編[[SF小説]]。[[2006年]]5月から12月まで、中国のSF雑誌『{{仮リンク|科幻世界|zh|科幻世界}}』で連載され、[[2008年]]1月に重慶出版社によって単行本が出版された。本作は「地球往事」三部作の第一作である。
『'''三体'''』(さんたい)は、[[中華人民共和国]]のSF作家[[劉慈欣]]による長編[[SF小説]]。2006年5月から12月まで、中国のSF雑誌『{{仮リンク|科幻世界|zh|科幻世界}}』で連載され、2008年1月に重慶出版社によって単行本が出版された。本作は「地球往事」三部作の第一作である。


本作、またこれを含む「地球往事」三部作(『三体』三部作ともいう)は中国において最も人気のあるSF小説の一つとされ、[[2015年]]時点で50万組以上を売り上げている<ref>{{Cite web|url = http://www.chinanews.com/cul/2015/03-04/7100995.shtml|title = 中国科幻小说红到欧美 《三体》获星云奖提名|accessdate = 2015-08-15 |author=[[:zh:齐鲁晚报|斉魯晚報]] |date =2015-03-04 |publisher =[[中国新聞社 (中華人民共和国)|中国新聞網]] |language=zh }}</ref>。また、本作は[[2014年]]11月に[[ケン・リュウ]]による英訳が出版され、これも複数のSF賞にノミネートされるなど高く評価されている。
本作、またこれを含む「地球往事」三部作(『三体』三部作ともいう)は中国において最も人気のあるSF小説の一つとされ、2015年時点で50万組以上を売り上げている<ref>{{Cite web|url=http://www.chinanews.com/cul/2015/03-04/7100995.shtml|title=中国科幻小说红到欧美 《三体》获星云奖提名|accessdate=2021-03-02 |author=斉魯晚報 |authorlink=:zh:齐鲁晚报 |date=2015-03-04 |publisher=[[中国新聞社 (中華人民共和国)|中国新聞網]] |language=zh }}</ref>。また、本作は2014年11月に[[ケン・リュウ]]による英訳が出版され、これも複数のSF賞にノミネートされるなど高く評価されている。2019年時点で全世界累計発行部数は2900万部を記録しており<ref name="businessnikkei20210517">{{Cite news|url=https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00291/051100006/|title=世界2900万部のブームはなぜ起きた? 『三体』が拓くSF新時代|work=日経ビジネス|date=2021-05-17|accessdate=2021-05-22}}</ref>、20か国以上の言語で翻訳されている<ref name="businessnikkei20210517" />


日本語版は[[2019年]][[7月4日]]に[[早川書房]]より発売された。日本語訳は、光吉さくらとワン・チャイの共訳による翻訳原稿を、中国語の分からない[[大森望]]が英訳版を読みながら改稿したものである<ref name="omori">{{Cite web|url =https://www.hayakawabooks.com/n/nc651a572444b |title = 【#三体ニュース】いよいよ発売! 翻訳・大森望氏によるあとがきを公開! |accessdate = 2019-07-06 |author =[[大森望]] |date =2019-07-04 |publisher =[[早川書房]] |language=ja }}</ref>。
日本語版は2019年7月4日に[[早川書房]]より発売された。日本語訳は、光吉さくらとワン・チャイの共訳による原書からの翻訳原稿を、語の翻訳が専門のSF翻訳家である[[大森望]]が、著者とケン・リュウの協議により変更の加えられた英訳版とも比較し改稿したものである<ref name="omori">{{Cite web|和書|url=https://www.hayakawabooks.com/n/nc651a572444b |title=【#三体ニュース】いよいよ発売! 翻訳・大森望氏によるあとがきを公開! |accessdate=2021-03-02 |author=大森望 |authorlink=大森望 |date=2019-07-04 |publisher=[[早川書房]] }}</ref>。


== 設定 ==
== 設定 ==
小説の基本設定には、[[ニュートン力学]]にある古典的な[[三体問題]]を取り込んだものがある。とある[[恒星系|三重星系]]には、生きと滅びを繰り返す[[三体星人]]があり、その中の最も新しい世代の三体星人は、地球文明の科学技術より数倍先端なものを有している。
小説の基本設定には、[[ニュートン力学]]にある古典的な[[三体問題]]を取り込んだものがある。とある[[恒星系#三重星系|三重星系]]には、生きと滅びを繰り返す[[三体星人]]があり、その中の最も新しい世代の三体星人は、地球文明の科学技術より数倍先端なものを有している。


== あらすじ ==
== あらすじ ==
[[文化大革命]]の時、[[天体物理学]]専攻の女子大生葉文潔は、[[清華大学]]の物理学教授である父・葉哲泰が[[紅衛兵]]の批判を受け嬲り殺されるのを目のあたりにした。その後、紆余曲折を経て[[大興安嶺山脈]]の奥地に巨大なパラボラアンテナを備える「紅岸基地」に入った。[[中国共産党中央委員会]]に直属する極秘基地である紅岸基地の目的は西側の衛星の情報収集や、高出力の[[マイクロ波]]を照射して衛星を破壊することだが、真の目的は[[地球外知的生命体探査|異星人の探索と交信]]であった。世界に先駆けて異星文明と接触して西側に対する圧倒的アドバンテージを得る。葉文潔はそこで偶然に太陽の増幅反射機能を発見し、遥かな遠方と電波で通信することを可能とした。彼女はこの機能を駆使して、密かに地球文明の情報が入った電波を宇宙に送り出し始めた。地球と最も近い[[ケンタウルス座アルファ星|恒星系]]の惑星に生きている異星人——「三体星人」がこの情報を受け取った。それから、三体の世界と地球の世界は、関わりを持ち始めた<ref group="注" name="outline_paragraph">葉文潔が最初に電波を送信した後、これを受信した三体星人の平和主義者が「二度と応答するな。さもなくば太陽系の位置座標は三体星人に晒され、地球文明が危機を迎える。」との警告信号を送り返した。しかし、文化大革命の打撃で人類に絶望していた葉文潔は、この警告を無視して再度三体星人に向けて信号を発信した。これを以って、三体星人は太陽系の座標を特定したのである。</ref>。


三体星人たちの世界は、地球人が想像しがたい、過酷極まりない世界である。その世界は質量がほぼ等しい3つの[[恒星]]からなるため、その運動は[[解析的]]に解くことはできない([[多体問題]])。三体星人たちが住む[[惑星]]は、この三つの恒星の引力で乱れた軌道を取る。もし一つの恒星が惑星を捕まえてその周囲に巡らせたら、三体星人は定期的な日夜を持つ温暖な環境を享受ししばらく穏やかな発展期を迎える。この時期を「恒紀」と呼ぶ。だがこの安定は続かず、やがて他の恒星の[[摂動]]をうけて周回軌道から剥ぎ取られた惑星は3つの恒星の織り成す不秩序で不安定な重力場の中を彷徨い、[[日の出]]・[[日没]]は定まらなくなり長期に渡り日照が続いたり日が昇らない夜が続き、恒星に接近して岩石が溶ける程に熱せられたり、遠ざかって窒素も凍る極寒の気候になる「乱紀」となる。もし惑星が複数の恒星に同時に近づけば、惑星は複数の引力を受けて裂けてしまう。三体星人は乱紀の高温による乾燥や低温による凍結を乗り越えるべく体液を排出し身体を繊維化する「脱水」機能を備えて環境の激変に耐え、恒紀を迎えれば「再水化」して肉体を取り戻す歴史を繰り返したが、それとて必ずしも環境の激変を乗り越えられるとは限らない。このため三体星人の文明は数百回の滅亡を避けられなかった。そして、さらに恐ろしいことに、彼らの住む惑星の質量は恒星に対して小さく、その運動は翻弄され、三体星系から弾き出されて極寒の虚空を永遠に彷徨うかもしれないし、最悪の場合は恒星に墜落するかも知れない。かつて三体星系には12個の惑星があったが、11個は既に恒星に呑み込まれ、三体星人の棲む惑星も数百万年後には恒星に吞み込まれると予測されている。そうなれば、三体星人とその文明は永遠に滅亡する。そのため、彼らにとって残った道は、宇宙に移民するのみである。三体星人は、常に激しい天変地異に脅かされているため、[[帝国主義]]的な社会体制と地球人の道徳を無視する価値観を取らざるを得なかった。そうしないと生き延びることができないからである<ref group="注" name="outline_paragraph" />。
[[文化大革命]]の時、[[中国共産党中央委員会]]に直属する「紅岸基地」という、異星人を探すために作られた極秘基地があった。[[清華大学]]の物理学教授である父親が[[紅衛兵]]の批判を受け、死を強いられたのを目にした[[天体物理学]]専攻の女子大生葉文潔は、色々な事情でこの極秘基地に入った。彼女はそこで偶然に太陽の増幅反射機制を究明した。その後、彼女はこの機制を駆使して、密かに地球文明の情報が入った電波を宇宙に送り出し始めた。地球と最も近い恒星系の惑星に生きている異星人——[[三体星人]]がこの情報を受け取った。それから、三体の世界と地球の世界は、関わりを持ち始めた。※


その様な状況の中に届いた葉文潔からの情報を得て、僅か4光年の近傍に、たった一つの恒星を巡り永遠に恒紀が続き豊かな水に恵まれ生命が栄える夢の様な楽園が存在することを知った最新の三体文明は、地球より遥かに進歩した科学技術を結集して1000隻の大型戦艦からなる艦隊を結成し、征服のため地球へと送り出した。
三体星人たちの世界は、地球人が想像しがたい、過酷極まりない世界である。その世界は3つの質量がほぼ一致な恒星からなるため、[[解析的]]に解くことはできないとされる([[多体問題]])。三体星人たちが住む[[惑星]]は、この三つの恒星の引力で乱れた軌道を取る。もし一つの恒星が惑星を捕まえて、それをその恒星に回らせたら、三体星人はしばらく穏やかな発展期を迎える。この時期を「恒紀元」と呼ぶ。もしそうでなかったら、日の昇りと暮れは一定の決まりでなくなる。この時期を「乱紀元」と呼ぶ。彼らは「乱紀元」に備えて臨時脱水機能を進化し、危機に対応したが、それはいつでも有効ではない。なぜなら、恒星の運動が乱れるせいで、時には惑星を近寄らせすぎたり、時には惑星を遠ざからせすぎたりして、それに伴って惑星の地表は数千度にまで熱され暑すぎる気候になったり、液体窒素の温度にまで達する寒すぎる気候になったりする。より恐ろしいことに、もし惑星が複数の恒星に同時に近づけば、惑星は複数の引力を受けて裂けてしまう。以上により、三体星人の文明は数百回の滅びを迎えざるを得なかった。しかし更に最も恐ろしいことがある。彼らの住む惑星は、恒星に対して質量が小さいので、いつかは軌道の乱れで、恒星に落ちる可能性がある。そうなれば、三体星人とその文明は永遠に滅亡する。だから彼らにとって残った選択は、宇宙に移民するのみである。三体人はいつも天災に脅かされているため、[[帝国主義]]的な社会体制と地球人の道徳を無視する価値観を取らざるを得なかった。そうしないと生き延びることができないからである。


三体星人と地球人が関わりを持ち始めた後、葉文潔は、富豪の子で環境破壊に心を痛めるマイク・エヴァンズに出会い、三体の高度な文明の存在を伝えた。後に膨大な遺産を受け継いだエヴァンズは三体の優れた文明を受け入れるべく「地球三体協会」(Earth Three-body Organization, 以下ETO)という組織を作り上げ、葉文潔を、この組織の精神的なリーダーとして迎えた。ETOには人類文明に絶望したり三体の高度な文明に憧れる地球人たちが集い、地球の文明を滅ぼし、三体の文明を取り入れようとした。また、ETOは、同志を見つけるために「三体」オンラインゲームを開発し、地球人の中に賛同する者を探し出した。
(※葉文潔が三体星人に対して1回目の電波を送信した後、三体星人の平和主義者が「二度と応答するな。さもなくば太陽系の位置座標は三体星人に晒され、地球文明が危機を迎える。」との警告信号を送り返した。しかし、文化大革命の打撃で人類に絶望していた葉文潔は、この警告を無視して再度三体星人に向けて信号を発信した。これを以って、三体星人は太陽系の座標を特定した。)


一方で、三体星人は地球に確実かつ順調に移民するために、地球文明と人類を消し去ることに決めた。しかし、既に出発した艦隊が地球に到着するまでおよそ450年かかるため、その間に地球の科学技術が三体と同じレベルになるかもしれないと危惧した三体星人は、後続の第2艦隊建造に代えて「智子」(sophon, ソフォン)プロジェクトを開始した。智子とは「智恵のある粒子」のことである。三体星人の科学者は、まず[[陽子]]の内包する11次元構造を2次元に展開させ、その2次元表面に[[強い相互作用]]を使って[[集積回路]]を刻み込んで計算機を構築し、再び陽子に縮退させた。即ちスーパーコンピューターを仕込んだ陽子である智子を4個作成した。複数の智子があれば、[[量子もつれ|エンタングル]]させることで光速に縛られずに智子同士の遠隔作用が可能になる。これを利用し、2個の智子を三体の世界に残して通信・制御用とし、もう2個の智子を加速器を使ってほぼ光速で飛ばし地球に送り込んだ。到着した智子は、まず高エネルギー[[加速器]]の研究を撹乱し、物質構造研究を阻止し、地球人の科学の発展を不可能にする。また、2個の智子を連携させることで外界の電磁波等を感知し、地球の情報収集を行う一方で、地球の優れた科学者に理論的に説明できない超自然現象を見せて絶望させて自殺に追い込んだ。それと相俟ってETOも科学者を暗殺し始め、科学に対する嫌悪感を煽るキャンペーンを行い、地球の科学の発展阻止を支援した。これで科学技術で地球人に追い付かれることはあるまい。
三体の世界と地球の世界が関わりを持ち始めた後、自然破壊に不満を抱いて人類文明に絶望した人たちは、「地球三体組織」(ETO)という組織を作り上げて,地球の文明を滅ぼし、三体の文明を取り入れようとした。葉文潔はこの組織の精神的なリーダーであった。それと同時に、三体星人は地球に確実かつ順調に移民するために、地球社会と人類を消し去ることに決めた。


相次ぐ科学者の謎の死をきっかけに諸国の政府も一つになって危機に対応し始めた。本作の主人公である汪淼は智子によってありえない現象を見せられ、同じ分野の研究者である申玉菲に相談し、紹介された「三体」オンラインゲームに参加した。警察官史強の要請もあって汪淼はゲームを継続してクリアし、ETOに招待されて潜入することに成功した。汪淼はETOの情報を得て、史強と連携し、[[多国籍軍]]の協力の下、[[パナマ運河]]でETOの中枢である船 "JUDGEMENT DAY" (「審判の日」号)をエヴァンズはじめETOメンバーごと[[ナノマテリアル]]でできたワイヤーで切り刻み、他のETOの残党も鎮圧した。その後、葉文潔らを捕縛した諸国の政府は、彼女への尋問と船のコンピュータから取り出したデータから、初めて三体の文明に関する詳細資料を手に入れた。しかし、三体文明の侵略者が450年後に地球に来ることに変わりはない。科学の発展が智子によって封じられた人類は、来たるべき戦いに備えなければならない。
しかし、艦隊出発から地球到着まではおよそ450年かかるから、その時の地球の科学技術が三体と同じレベルになるかもしれないと危惧した三体星人は、「智子」プロジェクトを開始した(「智子」とは“智恵のある粒子”のこと。三体星人の科学者は先ず、陽子を11次元から2次元に展開させ、その2次元表面で強い相互作用を使って集積回路を組み込む。これでその陽子を計算機にする。複数の「智子」があれば、「智子」同士の遠隔作用は利用可能。これを利用し、半分の「智子」を三体の世界に残してコントロール用とし、もう半分の「智子」を地球に送り込んで、高エネルギー加速器の研究結果を乱して、物質構造研究を邪魔し、地球人の科学の発展に桎梏を掛ける。これで地球人に科学技術が追い付かれることはなかろう)。それと相俟って、「地球三体組織」も全地球の科学者を暗殺し始めた。


三体星人は、智子を介して地球人に「お前たちは虫けらだ」のメッセージを送りつけた。既に圧倒的な科学力の差を見せつけられた上に地球の科学技術の発展も封じられ、最早太刀打ち出来ないと絶望して酒に溺れる汪淼らを、史強は蝗害に襲われる故郷に連れ出し、人類がこれまで数多の退治の手段を講じても、虫は決して滅ばなかったと諭す。
同志を見つけるために、「地球三体組織」が「三体」オンラインゲームを開発した。それと同時に、諸国の政府も一つになって危機に対応し始めた。本作の主人公である汪淼もこのゲームのプレイヤーになって、漸く「地球三体組織」に潜入することに成功した。史強警察官と連携して、[[多国籍軍]]の協力をも受けた汪淼らは、[[パナマ運河]]にてナノ材料でできたワイヤーで「地球三体組織」の中枢である船——『審判の日(The Judgement)』を切り刻んで、他の「地球三体組織」の残党をも無事に鎮圧。その後、葉文潔らを捕縛した諸国の政府は尋問と船にあるコンピュータに内蔵されたデータで、初めて三体の文明に関する詳細資料を手に入れた。しかし、三体文明の侵略者が450年後に地球に来ることにかわりはない。科学の発展がすでに「智子」によって桎梏を掛けられた人類は、来たるべき戦いを準備せねばならない。


== 改変 ==
== 登場人物 ==
{{see also|三体シリーズの登場人物}}
初めて『科幻世界』で連載された本小説の第一章「狂乱の時代」({{Lang-zh-Hans-short|疯狂年代}})には、[[文化大革命]]を描く一段落があり、それは[[:zh:清华大学井冈山兵团|清華大学の紅衛兵]]及び[[:zh:清华大学百日大武斗|百日大武闘(ゲバルト)]]を下敷きにする。中国本土で刊行される単行本では、この部分は「中国の政治・社会状況に照らして、文革から語り起こすのは得策ではないという判断」から第七章に移されたが、英語版及び日本語版では本来の順序に戻されている<ref name="omori"/>。

== 翻訳 ==
初めて『科幻世界』で連載された本小説の第一章「狂乱の時代」({{Lang-zh-short|瘋狂年代}})には、[[文化大革命]]を描く一段落があり、それは{{仮リンク|清華大学の紅衛兵|zh|清华大学井冈山兵团}}及び{{仮リンク|百日大武闘|zh|清华大学百日大武斗}}([[ゲバルト]])を下敷きとする。中国本土で刊行される単行本では、この部分は「中国の政治・社会状況に照らして、文革から語り起こすのは得策ではないという判断」から第七章に移されたが、英語版では著者が本来意図していた構成に戻され、日本語版もそれに準じている<ref name="omori" />。

ケン・リュウが翻訳した英語版は「中国人読者をして『原作より読みやすい』と言わしめた名訳」とされており<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3247401|title=韓国で売れなかった中国SF「三体」、日本での大ヒットが中国で話題に|accessdate=2021-03-02 |date=2019-10-11 |publisher=東方新報 }}</ref>、日本語版の翻訳者である大森は「ケン・リュウの英訳が原文に忠実でありながら非常に明解でわかりやすかった」として日本語版の目標にしたと述べている<ref>{{Cite web|和書|url=https://realsound.jp/book/2019/09/post-421244.html|title=大森望が語る、『三体』世界的ヒットの背景と中国SFの発展 「中国では『三体』が歴史を動かした」|accessdate=2021-03-02 |date=2019-09-29 |author=[[円堂都司昭]] |publisher=[[リアルサウンド (ニュースサイト)|リアルサウンド]] }}</ref>。また著者の劉慈欣は「[[中国文学]]が外国語に翻訳されると何かが失われやすいものですが、『三体』では、むしろ得ていると思います」とし、中国のSFファンに向けて、英語が理解できるのであれば英語版を読むよう勧めている<ref>{{Cite web|url=https://www.nytimes.com/2019/12/03/magazine/ken-liu-three-body-problem-chinese-science-fiction.html|title=How Chinese Sci-Fi Conquered America - The New York Times|accessdate=2021-03-02 |author=Alexandra Alter |date=2019-12-03 |publisher=[[ニューヨーク・タイムズ]] |language=en-US }}</ref>。


== その他 ==
== その他 ==
2015年、第73回[[ヒューゴー賞 長編小説部門|ヒューゴー賞]]の長編小説部門を受賞。アジア人作家の作品では初めての受賞となった<ref>{{Cite web|title=アジア人初の快挙!中国人SF作家、劉慈欣氏がヒューゴー賞を受賞―香港メディア|url=https://www.recordchina.co.jp/b117320-s0-c30-d63.html|website=Record China|accessdate=2019-08-02|language=ja|first=Record|last=china|publisher=|date=2015-08-25}}</ref>。
2015年、第73回[[ヒューゴー賞 長編小説部門|ヒューゴー賞]]の長編小説部門を受賞。アジア人作家の作品では初めての受賞となった<ref>{{Cite web|和書|title=アジア人初の快挙!中国人SF作家、劉慈欣氏がヒューゴー賞を受賞―香港メディア|url=https://www.recordchina.co.jp/b117320-s0-c30-d63.html|website=Record China|accessdate=2021-03-02|author=Record china|publisher=Record china|date=2015-08-25}}</ref>。


2015年、[[Facebook]]CEO[[マーク・ザッカーバーグ]]が、2週間ごとにお勧めの本を一冊紹介する企画「A Year of Books」で「三体」をその一冊に選んだ。ザッカーバーグは「最近読んだ重厚な経済学や社会科学の本からの楽しい休憩になる」と推薦した<ref>{{Cite web|title=Why Mark Zuckerberg wants everyone to read this book that caused a sensation in China|url=https://www.businessinsider.com/mark-zuckerberg-recommends-the-three-body-problem-2015-10|website=Business Insider|accessdate=2019-08-02|first=Richard|last=Feloni|publisher=|date=2015-10-21}}</ref>。
2015年、[[Facebook (企業)|Facebook社]][[最高経営責任者|CEO]][[マーク・ザッカーバーグ]]が、2週間ごとにお勧めの本を一冊紹介する企画「A Year of Books」で「三体」をその一冊に選んだ。ザッカーバーグは「最近読んだ重厚な経済学や社会科学の本からの楽しい休憩になる」と推薦した<ref>{{Cite web|title=Why Mark Zuckerberg wants everyone to read this book that caused a sensation in China|url=https://www.businessinsider.com/mark-zuckerberg-recommends-the-three-body-problem-2015-10|website=Business Insider|accessdate=2021-03-02|first=Richard|last=Feloni|publisher=|date=2015-10-21|language=en}}</ref>。


2017年1月16日、当時の[[アメリカ合衆国大統領|アメリカ大統領]][[バラク・オバマ]]は、米紙[[ニューヨーク・タイムズ]]のインタビューで、「三体」シリーズの愛読者であると自ら明かした。オバマは「とても想像力豊かで本当に面白かった。広大な宇宙の運命について読んでると、日々直面している議会の問題はかなり些細なもので心配するようなことではないと思えた」と語っ<ref>{{Cite news|title=Transcript: President Obama on What Books Mean to Him|url=https://www.nytimes.com/2017/01/16/books/transcript-president-obama-on-what-books-mean-to-him.html|work=The New York Times|date=2017-01-16|accessdate=2019-08-02|issn=0362-4331|language=en-US}}</ref>。
2017年1月16日、当時の[[アメリカ合衆国大統領|アメリカ大統領]][[バラク・オバマ]]は、米紙[[ニューヨーク・タイムズ]]のインタビューで、「三体」シリーズの愛読者であると自ら明かした。は「とても想像力豊かで本当に面白かった。広大な宇宙の運命について読んでると、日々直面している議会の問題はかなり些細なもので心配するようなことではないと思えた」と語っている<ref>{{Cite news|title=Transcript: President Obama on What Books Mean to Him|url=https://www.nytimes.com/2017/01/16/books/transcript-president-obama-on-what-books-mean-to-him.html|newspaper=The New York Times|date=2017-01-16|accessdate=2021-03-02|issn=0362-4331|language=en-US}}</ref>。


アメリカの[[映画監督]]である[[ジェームズ・キャメロン]]は劉慈欣との会見で三体三部作の愛読者であることを自ら明かした<ref>{{Cite web|title=Dialogue Between James Cameron and Liu Cixin|url=https://pandaily.com/dialogue-between-james-cameron-and-liu-cixin-science-is-the-ultimate-foundation-for-science-fiction/|website=Pandaily|author=Gabriel Li|date=2019-02-21|accessdate=2021-03-02|language=en}}</ref>。[[日本]]の[[ゲームデザイナー]]である[[小島秀夫 (ゲームデザイナー)|小島秀夫]]も「三体」シリーズの愛読者であり、日本語版に「普遍性と、娯楽性、そして文学性の、まさに『三体』の重力バランスの絶妙なる[[ラグランジュ点]]でこそ生まれた、奇跡の『超トンデモSFだ』」と推薦文を寄せている<ref>{{Cite web|title=『三体』日本語版が間もなく発売、小島秀夫氏も応援|url=http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2019-07/04/content_74951901.htm|website=[[中国網]]|date=2019-07-04|accessdate=2021-03-02}}</ref><ref>{{Cite web|title=「三体」が日本で人気!発売1週間で10刷 小島秀夫ら有名人がこぞって推薦|url=http://j.people.com.cn/n3/2019/0712/c206603-9596829.html|website=人民網日本語版|publisher=[[人民網]]|date=2019-07-12|accessdate=2021-03-02}}</ref>。
[[日本]]の[[ゲームデザイナー]]である[[小島秀夫]]も「三体」シリーズの愛読者であり<ref>{{Cite news|title=『三体』日本語版が間もなく発売、小島秀夫氏も応援
|url=http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2019-07/04/content_74951901.htm|work=[[中国網]]|date=2019-07-04|accessdate=2019-09-15}}</ref>、日本語版に「「普遍性と、娯楽性、そして文学性の、まさに『三体』の重力バランスの絶妙なるラグランジュ点でこそ生まれた、奇跡の『超トンデモSFだ』」と推薦文を寄せている<ref>{{Cite news|title=「三体」が日本で人気!発売1週間で10刷 小島秀夫ら有名人がこぞって推薦|url=http://j.people.com.cn/n3/2019/0712/c206603-9596829.html|work=[[人民網]]|date=2019-07-12|accessdate=2019-09-15}}</ref>。


== 受賞歴 ==
== 受賞歴 ==
* 2006年 - 第19回中国[[:zh:银|銀河賞]]特別賞
* 2006年 - 第19回中国[[賞 (文学賞)|銀河賞]]特別賞
* 2013年 - 第1回[[西湖・類型文学双年賞]]金賞
* 2013年 - 第1回[[西湖・類型文学双年賞]]金賞
* 2015年2月21日 - [[ネビュラ賞]]最終候補
* 2015年2月21日 - [[ネビュラ賞]]長編小説部門最終候補
* 2015年4月16日 - [[ヒューゴー賞]]受賞。
* 2015年4月16日 - [[ヒューゴー賞]]長編小説部門最終候補
* 2015年4月25日 - [[プロメテウス賞]]最終候補
* 2015年4月25日 - [[プロメテウス賞]]最終候補
* 2015年5月5日 - [[ローカス賞]]最終候補
* 2015年5月5日 - [[ローカス賞]]長編小説部門最終候補
* 2015年5月13日 - [[ジョン・W・キャンベル記念賞]]第3位
* 2015年5月13日 - [[ジョン・W・キャンベル記念賞]]第3位
* 2015年8月23日 - [[ヒューゴー賞]]長編小説部門賞<ref>{{cite web |author=ジョウ、小山 |url=http://japanese.cri.cn/2021/2015/08/24/141s240732.htm|title=SF小説「三体」第1部作品 ヒューゴー賞を受賞|accessdate=20151018 |publisher= [[中国国際放送]] |date=2015-08-24 |language=ja }}</ref>
* 2015年8月23日 - [[ヒューゴー賞]]長編小説部門賞<ref>{{Cite web |author=ジョウ、小山 |url=http://japanese.cri.cn/2021/2015/08/24/141s240732.htm|title=SF小説「三体」第1部作品 ヒューゴー賞を受賞|accessdate=2015-10-18 |publisher=[[中国国際放送]] |date=2015-08-24 |language=ja |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160304140339/http://japanese.cri.cn/2021/2015/08/24/141s240732.htm |archivedate=2016-03-04 }}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://diamond.jp/articles/-/212419?page=2 |title=発売1ヵ月で異例のベストセラー、中国SF『三体』は何がすごいのか |author=杉本りうこ |website=ダイアモンド・オンライン |page=2 |date=2019-08-21 |accessdate=2021-03-02 |language=ja}}</ref>
* 2020年 - [[星雲賞]]海外長編部門受賞

== 各言語への翻訳 ==
各言語名と各国版題名を発行年順にまとめる。
* {{lang-ko|삼체}} 2013年
* {{lang-en|The Three-Body Problem}} 2014年
* {{lang-tr|Üç Cisim Problemi}} 2015年
* {{lang-fr|Le Problème à trois corps}} 2016年
* {{lang-de|Die drei Sonnen}} 2016年
* {{lang-gr|Το πρόβλημα των τριών σωμάτων}} 2016年
* {{lang-hu|A Háromtest-probléma}} 2016年
* {{lang-pt|O Problema dos Três Corpos}} 2016年
* {{lang-ru|Задача трех тел}} 2016年
* {{lang-es|El problema de los tres cuerpos}} 2016年
* {{lang-th|ดาวซานถี่ อุบัติการสงครามล้างโลก}} 2016年
* {{lang-vi|Tam Thể}} 2016年
* {{lang-uk|Проблема трьох тіл}} 2016年
* {{lang-it|Il problema dei tre corpi}} 2017年
* {{lang-ro|Problema celor trei corpuri}} 2017年
* {{lang-cs|Problém tří těles}} 2017年
* {{lang-pl|Problem trzech ciał}} 2017年
* {{lang-fi|Kolmen kappaleen probleema}} 2018年
* {{lang-ja|三体}} 2019年

== 映像化 ==
=== 舞台 ===
2016年6月初演<ref>{{Cite web |publisher=[[中国網]] |url=http://ent.people.com.cn/n1/2016/0608/c1012-28422316.html |title=3D多媒体舞台剧《三体》盛大开演 |website=[[人民網]] |date=2016-06-08 |accessdate=2023-01-15 |language=zh-cn}}</ref>。『[[中国語!ナビ]]』([[NHK教育テレビジョン|NHK Eテレ]])Webサイト内の出演者情報欄において、ミュージカル俳優の劉鍾德のキャリアとして記載がある<ref>{{Citation|title=中国語!ナビ|last=日本放送協会|url=https://www.nhk.jp/p/ts/WLLM23M1P6/|language=ja|access-date=2023-01-15}}</ref>。『[[まいにち中国語]]』([[NHKラジオ第2放送|NHK第2]])2021年4月放送の中でも同様の言及があった<ref>{{Cite book|和書 |title=NHK CD ラジオ まいにち中国語 2021年4月号 |publisher=NHKサービスセンター |isbn=4143322897 |year=March 18, 2021}}</ref>。

=== アニメ ===
{{仮リンク|YHKT Entertainment |zh |艺画开天 |label=YHKT Entertainment(芸画開天)}}により制作された[[3DCG]]アニメ。2022年12月10日より[[bilibili]]にて順次配信開始。

同アニメは視聴者から酷評を受けた。中国の映像レビューサイトのdouban(豆瓣)にて、10点満点中5点未満と評価している<ref>{{Cite web |publisher=douban(豆瓣)|url=https://movie.douban.com/subject/34444648/ |title=三体 (2022) |accessdate=2023-01-14 |language=zh-cn}}</ref>。

=== ドラマ(中国) ===
三部作のうち、第一作の映像化<ref>[https://dramanavi.net/articles/234189 SF超大作『三体』圧巻のクライマックスへ!ドラマの世界観に没入できるVRコンテンツも配信に!] 海外ドラマNAVI 2024年2月15日閲覧。</ref>。霊河影視制作(上海)有限公司などにより制作され、2023年1月15日放送・配信開始。中国ではテンセント・ビデオによって配信され、記録的なヒットとなった<ref>[https://eiga.com/news/20230817/7/ テンセントビデオ版「三体」10月からWOWOWで日本独占初放送・配信] 映画.com 2024年2月10日閲覧。</ref>。日本ではまず[[WOWOW]]で2023年10月より放送・配信されたのち、[[U-NEXT]]、[[Amazonプライムビデオ]]でも配信された<ref>{{Cite web |title=ドラマ『三体』が「U-NEXT」にて配信開始。アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門を授賞するなど高く評価された作品の中国ドラマ版。謎の科学者の不審死をきっかけに壮大な物語が描かれる |url=https://news.denfaminicogamer.jp/news/2402052d |website=電ファミニコゲーマー |date=2024-02-06 |access-date=2024-04-22 |author=福山幸司}}</ref><ref>{{Cite news|url= https://www.cinra.net/article/202407-whn-threebody_edteam |title= テンセント版『三体』が本日からAmazon Prime Videoで配信 |newspaper= CINRA |date= 2024-07-01 |accessdate= 2024-07-06 }}</ref>。葉文潔に絡めて「[[三体II 黒暗森林]]」の主人公である羅輯を思わせる人物が登場する場面がある。

;キャスト
*汪淼(ワン・ミャオ):張魯一(チャン・ルーイー)
*史強(シー・チアン):于和偉(ユー・ホーウェイ)
*葉文潔(イエ・ウェンジエ):老年期 陳瑾(チェン・ジン)/青年期 王子文(ワン・ズーウェン)
*常偉思(チャン・ウェイスー):林永健(リン・ヨンジエン)
*申玉菲(シェン・ユーフェイ):李小冉(リー・シャオラン)

;スタッフ
*監督:楊磊(ヤン・レイ)
*脚本:田良良(ティエン・リャンリャン)、陳晨(チェン・チェン)

=== ドラマ(Netflix) ===
2020年9月1日、[[Netflix]]が地球往事三部作のドラマシリーズ製作を発表した<ref>{{Cite web|publisher=[[Netflix]] |url=https://media.netflix.com/en/company-blog/the-three-body-problem-netflix-original-series|title=International best-seller 'The Three-Body Problem' to be adapted as a Netflix original series|website=Netflix Media Center|author=Peter Friedlander|date=2020-09-01|accessdate=2021-03-02|language=en}}</ref>。2024年3月21日に配信が開始された<ref>{{cite web|title='3 Body Problem': Sci-Fi Drama Series From 'Game Of Thrones' Creators & Alexander Woo Gets Netflix Premiere Date, First Look Teaser|url=https://deadline.com/2023/06/3-body-problem-game-of-thrones-creators-netflix-premiere-date-teaser-trailer-1235419346/|website=[[Deadline Hollywood]]|last=Petski|first=Denise|date=June 17, 2023|access-date=June 17, 2023}}</ref>。[[劉慈欣]]の協力を得てストーリーを大幅に改変し、舞台をイギリスに変更している。登場人物も葉文潔やマイク・エヴァンズ、紅岸基地関係者等を除きイギリス人に変更され、汪淼や丁儀らにあたる科学者を5人の[[オックスフォード大学]]研究者としている。また、シーズン1では「[[三体II 黒暗森林]]」や「[[三体III 死神永生]]」のエピソードの一部を取り入れている。

中国ではNetflixによるサービスは提供されていないが、[[Virtual private network|VPN]]などを利用して視聴していると報じられており、本作品に関するレビューサイトも存在していた。しかし、文化大革命に関する演出が物議を醸す事態となり、[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]やレビューサイトでも賛否が分かれていた。その後、2024年4月にレビューサイトのコメント欄が閉鎖されたことが明らかになった<ref>{{Cite web |title=Netflix版「三体」の衝撃シーンが中国でも話題沸騰!軍メディアまでが「魔改造」と痛烈批判 |url=https://diamond.jp/articles/-/341582 |website=ダイヤモンド・オンライン |date=2024-04-07 |access-date=2024-04-22 |author=ふるまいよしこ}}</ref><ref>{{Cite web |title=ネトフリ版「三体」、コメント欄が閉鎖に 中国のレビューサイト |url=https://www.asahi.com/articles/ASS4P32G6S4PUHBI00TM.html |website=朝日新聞 |date=2024-04-22 |access-date=2024-04-22 |author=金順姫}}</ref>。

2024年5月、本ドラマシリーズの続編制作が発表された<ref>{{Cite web |title=Netflix「三体」続編決定 ─ 「観客を宇宙の果てまで連れていく」、ショーランナー意気込み |url=https://theriver.jp/3-body-problem-renewal/ |website=THE RIVER |date=2024-05-16 |access-date=2024-05-18 |author=KYOKO}}</ref>。

;キャスト
*オギー・サラザール:[[エイザ・ゴンザレス]](日本語吹替:[[白石涼子]])
*大史(ダー・シー):[[ベネディクト・ウォン]](日本語吹替:[[田中美央]])
*ジャック・ルーニー:[[ジョン・ブラッドリー (イングランドの俳優)|ジョン・ブラッドリー]](日本語吹替:[[落合福嗣]])
*ジン・チェン:ジェス・ホン(日本語吹替:[[坂本真綾]])
*葉文潔(イエ・ウェンジエ):[[ロザリンド・チャオ]]/青年期 ジーン・ツェン(日本語吹替:[[塩田朋子]])
*ソフォン:シー・シムーカ
*タチアナ:マーロ・ケリー(日本語吹替:[[森千晃]])
*トマス・ウェイド:[[リアム・カニンガム]](日本語吹替:[[三上哲]])
*ウィル・ダウニング:[[アレックス・シャープ]](日本語吹替:[[祐仙勇]])
*ソール・デュランド:ジョヴァン・アデポ(日本語吹替:[[三宅健太]])
*ラジ・ヴァルマ:サーメル・ウスマニ(日本語吹替:[[佐々木啓夫]])
*マイク・エヴァンズ:[[ジョナサン・プライス]]/若い頃 [[ベン・シュネッツァー]]
*ヴェラ・葉:ヴェデット・リム
*従者:イヴ・リドリー

;スタッフ
*製作総指揮・脚本:[[デイヴィッド・ベニオフ]]、[[D・B・ワイス]]、アレクサンダー・ウー
*監督:[[デレク・ツァン]](1・2話)、[[アンドリュー・スタントン]](3話)、ミンキー・スパイロ(4・5・6話)、ジェレミー・ポデスワ(7・8話)


== 翻訳本 ==
=== 映画 ===
2024年6月16日、第26回[[上海国際映画祭]]において、[[チャン・イーモウ]]監督によって映画化されることが製作スタジオの「Beijing Enlight Media」から発表された<ref>{{Cite web |title=中国SF「三体」映画化決定 巨匠チャン・イーモウ監督がメガホン |url=https://www.cinematoday.jp/news/N0143536 |website=シネマトゥデイ |date=2024-06-18 |access-date=2024-06-22}}</ref><ref>{{Cite web |title=Netflixでドラマ化され話題の「三体」、チャン・イーモウ監督が映画化へ |url=https://www.cinemacafe.net/article/2024/06/18/92152.html |website=cinemacafe.net |date=2024-06-18 |access-date=2024-06-22}}</ref><ref>{{Cite web |title=『三体』が中国で映画化、チャン・イーモウが監督へ |url=https://hollywoodreporter.jp/movies/50649/ |website=The Hollywood Reporter Japan |date=2024-06-18 |access-date=2024-06-22}}</ref><ref>{{Cite web |title=巨匠チャン・イーモウ監督が「三体」を映画化へ!開催中の上海国際映画祭で発表 |url=https://moviewalker.jp/news/article/1203820/ |website=MOVIE WALKER PRESS |date=2024-06-19 |access-date=2024-06-22}}</ref>。


== 脚注 ==
* 韓国:삼체 2013
{{脚注ヘルプ}}
* 英語:The Three-Body Problem 2014
=== 注釈 ===
* トルコ語:Üç Cisim Problemi 2015
{{Reflist|group="注"}}
* フランス語:Le Problème à trois corps 2016
=== 出典 ===
* ドイツ語:Die drei Sonnen 2016
{{Reflist}}
* ギリシャ語:Το πρόβλημα των τριών σωμάτων 2016
* ハンガリー語:A Háromtest-probléma 2016
* ポルトガル語:O Problema dos Três Corpos 2016
* ロシア語:Задача трех тел 2016
* スペイン語:El problema de los tres cuerpos 2016
* タイ語:ดาวซานถี่ อุบัติการสงครามล้างโลก 2016
* ベトナム語:Tam Thể 2016
* ウクライナ語:Проблема трьох тіл 2016
* イタリア語:Il problema dei tre corpi 2017
* ルーマニア語:Problema celor trei corpuri 2017
* チェコ語:Problém tří těles 2017
* ポーランド語:Problem trzech ciał 2017
* フィンランド語:Kolmen kappaleen probleema 2018
* 日本語:三体 2019


== 参考項目 ==
== 関連項目 ==
* [[劉慈欣]]
*[[三体II:黒暗森林]]
* [[三体II 黒暗森林]]
*[[劉慈欣]]
*{{仮リンク|地球往事三部作|zh|三体系列}}
* [[三体III 死神永生]]
* {{仮リンク|地球往事三部作|zh|三体系列}}
* <!-- [[:zh:科幻世界]] -->
*[[SF小説]]
* [[沈黙の春]]
*<!--[[:zh:科幻世界]]-->
* [[上山下郷運動]]
*[[:zh:三体III:死神永生|三体III:死神永生]]
* [[ロッシュ限界]]
* [[ケンタウルス座アルファ星]]
* [[大興安嶺山脈]]


{{劉慈欣}}
==註==
{{Hugo Award Best Novel}}
{{reflist}}
{{Normdaten}}


{{DEFAULTSORT:さんたい}}
{{DEFAULTSORT:さんたい}}
[[Category:中国の小説]]
[[Category:劉慈欣の小説]]
[[Category:SF小説]]
[[Category:中国のSF小説]]
[[Category:2007年の小説]]
[[Category:2006年の小説]]
[[Category:SF小説のシリーズ]]
[[Category:SF小説のシリーズ]]
[[Category:地球外生命体を題材とした小説]]
[[Category:地球外生命体を題材とした小説]]
[[Category:三部作]]
[[Category:三部作]]
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[[Category:ローカス賞受賞作品]]
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[[Category:北京を舞台とした小説]]
[[Category:内モンゴル自治区を舞台とした作品]]
[[Category:パナマを舞台とした作品]]

2024年7月6日 (土) 13:44時点における最新版

三体
著者劉慈欣
原題三体
翻訳者監修
立原透耶
翻訳
大森望光吉さくらワン・チャイ
中華人民共和国の旗 中華人民共和国
言語中国語簡体字
シリーズ「地球往事」三部作
ジャンルSF小説
出版社中華人民共和国の旗 重慶出版社
日本の旗 早川書房
出版日中華人民共和国の旗 2008年1月
日本の旗 2019年7月4日
出版形式単行本
ページ数中華人民共和国の旗 302
日本の旗 448
ISBN978-7-5366-9293-0 (中国語版)
978-4-15-209870-2 (日本語版)
次作三体II 黒暗森林

三体』(さんたい)は、中華人民共和国のSF作家劉慈欣による長編SF小説。2006年5月から12月まで、中国のSF雑誌『科幻世界中国語版』で連載され、2008年1月に重慶出版社によって単行本が出版された。本作は「地球往事」三部作の第一作である。

本作、またこれを含む「地球往事」三部作(『三体』三部作ともいう)は中国において最も人気のあるSF小説の一つとされ、2015年時点で50万組以上を売り上げている[1]。また、本作は2014年11月にケン・リュウによる英訳が出版され、これも複数のSF賞にノミネートされるなど高く評価されている。2019年時点で全世界累計発行部数は2900万部を記録しており[2]、20か国以上の言語で翻訳されている[2]

日本語版は2019年7月4日に早川書房より発売された。日本語訳は、光吉さくらとワン・チャイの共訳による原書からの翻訳原稿を、英語の翻訳が専門のSF翻訳家である大森望が、著者とケン・リュウの協議により変更の加えられた英訳版とも比較し改稿したものである[3]

設定[編集]

小説の基本設定には、ニュートン力学にある古典的な三体問題を取り込んだものがある。とある三重星系には、生きと滅びを繰り返す三体星人があり、その中の最も新しい世代の三体星人は、地球文明の科学技術より数倍先端なものを有している。

あらすじ[編集]

文化大革命の時、天体物理学専攻の女子大生葉文潔は、清華大学の物理学教授である父・葉哲泰が紅衛兵の批判を受け嬲り殺されるのを目のあたりにした。その後、紆余曲折を経て大興安嶺山脈の奥地に巨大なパラボラアンテナを備える「紅岸基地」に入った。中国共産党中央委員会に直属する極秘基地である紅岸基地の目的は西側の衛星の情報収集や、高出力のマイクロ波を照射して衛星を破壊することだが、真の目的は異星人の探索と交信であった。世界に先駆けて異星文明と接触して西側に対する圧倒的アドバンテージを得る。葉文潔はそこで偶然に太陽の増幅反射機能を発見し、遥かな遠方と電波で通信することを可能とした。彼女はこの機能を駆使して、密かに地球文明の情報が入った電波を宇宙に送り出し始めた。地球と最も近い恒星系の惑星に生きている異星人——「三体星人」がこの情報を受け取った。それから、三体の世界と地球の世界は、関わりを持ち始めた[注 1]

三体星人たちの世界は、地球人が想像しがたい、過酷極まりない世界である。その世界は質量がほぼ等しい3つの恒星からなるため、その運動は解析的に解くことはできない(多体問題)。三体星人たちが住む惑星は、この三つの恒星の引力で乱れた軌道を取る。もし一つの恒星が惑星を捕まえてその周囲に巡らせたら、三体星人は定期的な日夜を持つ温暖な環境を享受ししばらく穏やかな発展期を迎える。この時期を「恒紀」と呼ぶ。だがこの安定は続かず、やがて他の恒星の摂動をうけて周回軌道から剥ぎ取られた惑星は3つの恒星の織り成す不秩序で不安定な重力場の中を彷徨い、日の出日没は定まらなくなり長期に渡り日照が続いたり日が昇らない夜が続き、恒星に接近して岩石が溶ける程に熱せられたり、遠ざかって窒素も凍る極寒の気候になる「乱紀」となる。もし惑星が複数の恒星に同時に近づけば、惑星は複数の引力を受けて裂けてしまう。三体星人は乱紀の高温による乾燥や低温による凍結を乗り越えるべく体液を排出し身体を繊維化する「脱水」機能を備えて環境の激変に耐え、恒紀を迎えれば「再水化」して肉体を取り戻す歴史を繰り返したが、それとて必ずしも環境の激変を乗り越えられるとは限らない。このため三体星人の文明は数百回の滅亡を避けられなかった。そして、さらに恐ろしいことに、彼らの住む惑星の質量は恒星に対して小さく、その運動は翻弄され、三体星系から弾き出されて極寒の虚空を永遠に彷徨うかもしれないし、最悪の場合は恒星に墜落するかも知れない。かつて三体星系には12個の惑星があったが、11個は既に恒星に呑み込まれ、三体星人の棲む惑星も数百万年後には恒星に吞み込まれると予測されている。そうなれば、三体星人とその文明は永遠に滅亡する。そのため、彼らにとって残った道は、宇宙に移民するのみである。三体星人は、常に激しい天変地異に脅かされているため、帝国主義的な社会体制と地球人の道徳を無視する価値観を取らざるを得なかった。そうしないと生き延びることができないからである[注 1]

その様な状況の中に届いた葉文潔からの情報を得て、僅か4光年の近傍に、たった一つの恒星を巡り永遠に恒紀が続き豊かな水に恵まれ生命が栄える夢の様な楽園が存在することを知った最新の三体文明は、地球より遥かに進歩した科学技術を結集して1000隻の大型戦艦からなる艦隊を結成し、征服のため地球へと送り出した。

三体星人と地球人が関わりを持ち始めた後、葉文潔は、富豪の子で環境破壊に心を痛めるマイク・エヴァンズに出会い、三体の高度な文明の存在を伝えた。後に膨大な遺産を受け継いだエヴァンズは三体の優れた文明を受け入れるべく「地球三体協会」(Earth Three-body Organization, 以下ETO)という組織を作り上げ、葉文潔を、この組織の精神的なリーダーとして迎えた。ETOには人類文明に絶望したり三体の高度な文明に憧れる地球人たちが集い、地球の文明を滅ぼし、三体の文明を取り入れようとした。また、ETOは、同志を見つけるために「三体」オンラインゲームを開発し、地球人の中に賛同する者を探し出した。

一方で、三体星人は地球に確実かつ順調に移民するために、地球文明と人類を消し去ることに決めた。しかし、既に出発した艦隊が地球に到着するまでおよそ450年かかるため、その間に地球の科学技術が三体と同じレベルになるかもしれないと危惧した三体星人は、後続の第2艦隊建造に代えて「智子」(sophon, ソフォン)プロジェクトを開始した。智子とは「智恵のある粒子」のことである。三体星人の科学者は、まず陽子の内包する11次元構造を2次元に展開させ、その2次元表面に強い相互作用を使って集積回路を刻み込んで計算機を構築し、再び陽子に縮退させた。即ちスーパーコンピューターを仕込んだ陽子である智子を4個作成した。複数の智子があれば、エンタングルさせることで光速に縛られずに智子同士の遠隔作用が可能になる。これを利用し、2個の智子を三体の世界に残して通信・制御用とし、もう2個の智子を加速器を使ってほぼ光速で飛ばし地球に送り込んだ。到着した智子は、まず高エネルギー加速器の研究を撹乱し、物質構造研究を阻止し、地球人の科学の発展を不可能にする。また、2個の智子を連携させることで外界の電磁波等を感知し、地球の情報収集を行う一方で、地球の優れた科学者に理論的に説明できない超自然現象を見せて絶望させて自殺に追い込んだ。それと相俟ってETOも科学者を暗殺し始め、科学に対する嫌悪感を煽るキャンペーンを行い、地球の科学の発展阻止を支援した。これで科学技術で地球人に追い付かれることはあるまい。

相次ぐ科学者の謎の死をきっかけに諸国の政府も一つになって危機に対応し始めた。本作の主人公である汪淼は智子によってありえない現象を見せられ、同じ分野の研究者である申玉菲に相談し、紹介された「三体」オンラインゲームに参加した。警察官史強の要請もあって汪淼はゲームを継続してクリアし、ETOに招待されて潜入することに成功した。汪淼はETOの情報を得て、史強と連携し、多国籍軍の協力の下、パナマ運河でETOの中枢である船 "JUDGEMENT DAY" (「審判の日」号)をエヴァンズはじめETOメンバーごとナノマテリアルでできたワイヤーで切り刻み、他のETOの残党も鎮圧した。その後、葉文潔らを捕縛した諸国の政府は、彼女への尋問と船のコンピュータから取り出したデータから、初めて三体の文明に関する詳細資料を手に入れた。しかし、三体文明の侵略者が450年後に地球に来ることに変わりはない。科学の発展が智子によって封じられた人類は、来たるべき戦いに備えなければならない。

三体星人は、智子を介して地球人に「お前たちは虫けらだ」のメッセージを送りつけた。既に圧倒的な科学力の差を見せつけられた上に地球の科学技術の発展も封じられ、最早太刀打ち出来ないと絶望して酒に溺れる汪淼らを、史強は蝗害に襲われる故郷に連れ出し、人類がこれまで数多の退治の手段を講じても、虫は決して滅ばなかったと諭す。

登場人物[編集]

翻訳[編集]

初めて『科幻世界』で連載された本小説の第一章「狂乱の時代」(: 瘋狂年代)には、文化大革命を描く一段落があり、それは清華大学の紅衛兵中国語版及び百日大武闘中国語版ゲバルト)を下敷きとする。中国本土で刊行される単行本では、この部分は「中国の政治・社会状況に照らして、文革から語り起こすのは得策ではないという判断」から第七章に移されたが、英語版では著者が本来意図していた構成に戻され、日本語版もそれに準じている[3]

ケン・リュウが翻訳した英語版は「中国人読者をして『原作より読みやすい』と言わしめた名訳」とされており[4]、日本語版の翻訳者である大森は「ケン・リュウの英訳が原文に忠実でありながら非常に明解でわかりやすかった」として日本語版の目標にしたと述べている[5]。また著者の劉慈欣は「中国文学が外国語に翻訳されると何かが失われやすいものですが、『三体』では、むしろ得ていると思います」とし、中国のSFファンに向けて、英語が理解できるのであれば英語版を読むよう勧めている[6]

その他[編集]

2015年、第73回ヒューゴー賞の長編小説部門を受賞。アジア人作家の作品では初めての受賞となった[7]

2015年、Facebook社CEOマーク・ザッカーバーグが、2週間ごとにお勧めの本を一冊紹介する企画「A Year of Books」で「三体」をその一冊に選んだ。ザッカーバーグは「最近読んだ重厚な経済学や社会科学の本からの楽しい休憩になる」と推薦した[8]

2017年1月16日、当時のアメリカ大統領バラク・オバマは、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、「三体」シリーズの愛読者であると自ら明かした。彼は「とても想像力豊かで本当に面白かった。広大な宇宙の運命について読んでると、日々直面している議会の問題はかなり些細なもので心配するようなことではないと思えた」と語っている[9]

アメリカの映画監督であるジェームズ・キャメロンは劉慈欣との会見で三体三部作の愛読者であることを自ら明かした[10]日本ゲームデザイナーである小島秀夫も「三体」シリーズの愛読者であり、日本語版に「普遍性と、娯楽性、そして文学性の、まさに『三体』の重力バランスの絶妙なるラグランジュ点でこそ生まれた、奇跡の『超トンデモSFだ』」と推薦文を寄せている[11][12]

受賞歴[編集]

各言語への翻訳[編集]

各言語名と各国版題名を発行年順にまとめる。

映像化[編集]

舞台[編集]

2016年6月初演[15]。『中国語!ナビ』(NHK Eテレ)Webサイト内の出演者情報欄において、ミュージカル俳優の劉鍾德のキャリアとして記載がある[16]。『まいにち中国語』(NHK第2)2021年4月放送の中でも同様の言及があった[17]

アニメ[編集]

YHKT Entertainment(芸画開天)中国語版により制作された3DCGアニメ。2022年12月10日よりbilibiliにて順次配信開始。

同アニメは視聴者から酷評を受けた。中国の映像レビューサイトのdouban(豆瓣)にて、10点満点中5点未満と評価している[18]

ドラマ(中国)[編集]

三部作のうち、第一作の映像化[19]。霊河影視制作(上海)有限公司などにより制作され、2023年1月15日放送・配信開始。中国ではテンセント・ビデオによって配信され、記録的なヒットとなった[20]。日本ではまずWOWOWで2023年10月より放送・配信されたのち、U-NEXTAmazonプライムビデオでも配信された[21][22]。葉文潔に絡めて「三体II 黒暗森林」の主人公である羅輯を思わせる人物が登場する場面がある。

キャスト
  • 汪淼(ワン・ミャオ):張魯一(チャン・ルーイー)
  • 史強(シー・チアン):于和偉(ユー・ホーウェイ)
  • 葉文潔(イエ・ウェンジエ):老年期 陳瑾(チェン・ジン)/青年期 王子文(ワン・ズーウェン)
  • 常偉思(チャン・ウェイスー):林永健(リン・ヨンジエン)
  • 申玉菲(シェン・ユーフェイ):李小冉(リー・シャオラン)
スタッフ
  • 監督:楊磊(ヤン・レイ)
  • 脚本:田良良(ティエン・リャンリャン)、陳晨(チェン・チェン)

ドラマ(Netflix)[編集]

2020年9月1日、Netflixが地球往事三部作のドラマシリーズ製作を発表した[23]。2024年3月21日に配信が開始された[24]劉慈欣の協力を得てストーリーを大幅に改変し、舞台をイギリスに変更している。登場人物も葉文潔やマイク・エヴァンズ、紅岸基地関係者等を除きイギリス人に変更され、汪淼や丁儀らにあたる科学者を5人のオックスフォード大学研究者としている。また、シーズン1では「三体II 黒暗森林」や「三体III 死神永生」のエピソードの一部を取り入れている。

中国ではNetflixによるサービスは提供されていないが、VPNなどを利用して視聴していると報じられており、本作品に関するレビューサイトも存在していた。しかし、文化大革命に関する演出が物議を醸す事態となり、SNSやレビューサイトでも賛否が分かれていた。その後、2024年4月にレビューサイトのコメント欄が閉鎖されたことが明らかになった[25][26]

2024年5月、本ドラマシリーズの続編制作が発表された[27]

キャスト
スタッフ

映画[編集]

2024年6月16日、第26回上海国際映画祭において、チャン・イーモウ監督によって映画化されることが製作スタジオの「Beijing Enlight Media」から発表された[28][29][30][31]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 葉文潔が最初に電波を送信した後、これを受信した三体星人の平和主義者が「二度と応答するな。さもなくば太陽系の位置座標は三体星人に晒され、地球文明が危機を迎える。」との警告信号を送り返した。しかし、文化大革命の打撃で人類に絶望していた葉文潔は、この警告を無視して再度三体星人に向けて信号を発信した。これを以って、三体星人は太陽系の座標を特定したのである。

出典[編集]

  1. ^ 斉魯晚報 (2015年3月4日). “中国科幻小说红到欧美 《三体》获星云奖提名” (中国語). 中国新聞網. 2021年3月2日閲覧。
  2. ^ a b “世界2900万部のブームはなぜ起きた? 『三体』が拓くSF新時代”. 日経ビジネス. (2021年5月17日). https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00291/051100006/ 2021年5月22日閲覧。 
  3. ^ a b 大森望 (2019年7月4日). “【#三体ニュース】いよいよ発売! 翻訳・大森望氏によるあとがきを公開!”. 早川書房. 2021年3月2日閲覧。
  4. ^ 韓国で売れなかった中国SF「三体」、日本での大ヒットが中国で話題に”. 東方新報 (2019年10月11日). 2021年3月2日閲覧。
  5. ^ 円堂都司昭 (2019年9月29日). “大森望が語る、『三体』世界的ヒットの背景と中国SFの発展 「中国では『三体』が歴史を動かした」”. リアルサウンド. 2021年3月2日閲覧。
  6. ^ Alexandra Alter (2019年12月3日). “How Chinese Sci-Fi Conquered America - The New York Times” (英語). ニューヨーク・タイムズ. 2021年3月2日閲覧。
  7. ^ Record china (2015年8月25日). “アジア人初の快挙!中国人SF作家、劉慈欣氏がヒューゴー賞を受賞―香港メディア”. Record China. Record china. 2021年3月2日閲覧。
  8. ^ Feloni, Richard (2015年10月21日). “Why Mark Zuckerberg wants everyone to read this book that caused a sensation in China” (英語). Business Insider. 2021年3月2日閲覧。
  9. ^ “Transcript: President Obama on What Books Mean to Him” (英語). The New York Times. (2017年1月16日). ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2017/01/16/books/transcript-president-obama-on-what-books-mean-to-him.html 2021年3月2日閲覧。 
  10. ^ Gabriel Li (2019年2月21日). “Dialogue Between James Cameron and Liu Cixin” (英語). Pandaily. 2021年3月2日閲覧。
  11. ^ 『三体』日本語版が間もなく発売、小島秀夫氏も応援”. 中国網 (2019年7月4日). 2021年3月2日閲覧。
  12. ^ 「三体」が日本で人気!発売1週間で10刷 小島秀夫ら有名人がこぞって推薦”. 人民網日本語版. 人民網 (2019年7月12日). 2021年3月2日閲覧。
  13. ^ ジョウ、小山 (2015年8月24日). “SF小説「三体」第1部作品 ヒューゴー賞を受賞”. 中国国際放送. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月18日閲覧。
  14. ^ 杉本りうこ (2019年8月21日). “発売1ヵ月で異例のベストセラー、中国SF『三体』は何がすごいのか”. ダイアモンド・オンライン. p. 2. 2021年3月2日閲覧。
  15. ^ 3D多媒体舞台剧《三体》盛大开演” (中国語). 人民網. 中国網 (2016年6月8日). 2023年1月15日閲覧。
  16. ^ 日本放送協会『中国語!ナビhttps://www.nhk.jp/p/ts/WLLM23M1P6/2023年1月15日閲覧 
  17. ^ 『NHK CD ラジオ まいにち中国語 2021年4月号』NHKサービスセンター、2021年3月18日。ISBN 4143322897 
  18. ^ 三体 (2022)” (中国語). douban(豆瓣). 2023年1月14日閲覧。
  19. ^ SF超大作『三体』圧巻のクライマックスへ!ドラマの世界観に没入できるVRコンテンツも配信に! 海外ドラマNAVI 2024年2月15日閲覧。
  20. ^ テンセントビデオ版「三体」10月からWOWOWで日本独占初放送・配信 映画.com 2024年2月10日閲覧。
  21. ^ 福山幸司 (2024年2月6日). “ドラマ『三体』が「U-NEXT」にて配信開始。アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門を授賞するなど高く評価された作品の中国ドラマ版。謎の科学者の不審死をきっかけに壮大な物語が描かれる”. 電ファミニコゲーマー. 2024年4月22日閲覧。
  22. ^ “テンセント版『三体』が本日からAmazon Prime Videoで配信”. CINRA. (2024年7月1日). https://www.cinra.net/article/202407-whn-threebody_edteam 2024年7月6日閲覧。 
  23. ^ Peter Friedlander (2020年9月1日). “International best-seller 'The Three-Body Problem' to be adapted as a Netflix original series” (英語). Netflix Media Center. Netflix. 2021年3月2日閲覧。
  24. ^ Petski, Denise (2023年6月17日). “'3 Body Problem': Sci-Fi Drama Series From 'Game Of Thrones' Creators & Alexander Woo Gets Netflix Premiere Date, First Look Teaser”. Deadline Hollywood. 2023年6月17日閲覧。
  25. ^ ふるまいよしこ (2024年4月7日). “Netflix版「三体」の衝撃シーンが中国でも話題沸騰!軍メディアまでが「魔改造」と痛烈批判”. ダイヤモンド・オンライン. 2024年4月22日閲覧。
  26. ^ 金順姫 (2024年4月22日). “ネトフリ版「三体」、コメント欄が閉鎖に 中国のレビューサイト”. 朝日新聞. 2024年4月22日閲覧。
  27. ^ KYOKO (2024年5月16日). “Netflix「三体」続編決定 ─ 「観客を宇宙の果てまで連れていく」、ショーランナー意気込み”. THE RIVER. 2024年5月18日閲覧。
  28. ^ 中国SF「三体」映画化決定 巨匠チャン・イーモウ監督がメガホン”. シネマトゥデイ (2024年6月18日). 2024年6月22日閲覧。
  29. ^ Netflixでドラマ化され話題の「三体」、チャン・イーモウ監督が映画化へ”. cinemacafe.net (2024年6月18日). 2024年6月22日閲覧。
  30. ^ 『三体』が中国で映画化、チャン・イーモウが監督へ”. The Hollywood Reporter Japan (2024年6月18日). 2024年6月22日閲覧。
  31. ^ 巨匠チャン・イーモウ監督が「三体」を映画化へ!開催中の上海国際映画祭で発表”. MOVIE WALKER PRESS (2024年6月19日). 2024年6月22日閲覧。

関連項目[編集]