コンテンツにスキップ

「北方艦隊」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
タグ: ビジュアルエディター モバイル編集 モバイルウェブ編集
軍管区昇格を加筆。内部リンク追加や出典補強。
1行目: 1行目:
{{ロシア海軍}}
{{ロシア海軍}}
'''北方艦隊'''(ほっぽうかんたい、[[ロシア語]]:'''{{lang|ru|Северный флот}}''' <small>スィェーヴィェルヌィイ・フロート</small>、略称:'''{{lang|ru|СФ}}''')は、[[ムルマンスク]]に司令部を置く[[ロシア海軍|ロシア連邦海軍]]の[[艦隊]]である。[[白海]]や[[バレンツ海]]など[[北極]]の防を担当している。艦隊主力[[セヴェロモルスク]]に置かれており、このためセヴェロモルスクは[[閉鎖都市]]となっている。
'''北方艦隊'''(ほっぽうかんたい、[[ロシア語]]:'''{{lang|ru|Северный флот}}''' <small>スィェーヴィェルヌィイ・フロート</small>、略称:'''{{lang|ru|СФ}}''')は、[[ムルマンスク]]に司令部を置く[[ロシア海軍|ロシア連邦海軍]]の[[艦隊]]の一つ。[[白海]]や[[バレンツ海]]など[[北極]]の防を担うほか、[[大西洋]]へも進出す<ref>[http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2008/2008/html/kc121000.html (解説)ロシア軍による地中海・北大西洋方面での大規模演習の実施]『[[防衛白書]]』2008年版([[防衛省]])2021年5月12日閲覧</ref>。艦隊主力が駐留する[[軍港]]都市[[セヴェロモルスク]]は[[閉鎖都市]]となっている。


== 概要 ==
== 概要 ==
8行目: 8行目:
しかし、[[ソビエト連邦の崩壊]]後には逆にこれらの大型艦が重荷となった。北方艦隊では原子力潜水艦や[[キーロフ級ミサイル巡洋艦|キーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦]]の維持を優先したことから、有力な[[ソヴレメンヌイ級駆逐艦]]はじめ他の艦船の多くが活動不可能な状態に陥った。一部の艦船は整備を受けられないまま退役を余儀なくされ、北方艦隊の勢力は大きくそがれることとなった。
しかし、[[ソビエト連邦の崩壊]]後には逆にこれらの大型艦が重荷となった。北方艦隊では原子力潜水艦や[[キーロフ級ミサイル巡洋艦|キーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦]]の維持を優先したことから、有力な[[ソヴレメンヌイ級駆逐艦]]はじめ他の艦船の多くが活動不可能な状態に陥った。一部の艦船は整備を受けられないまま退役を余儀なくされ、北方艦隊の勢力は大きくそがれることとなった。


[[2000年代]]に入り[[ロシア|ロシア連邦]]の経済状況が改善する中でこうした危機的状況も徐々に改善しつつあり、活動を休止していた艦船も一部が戦列に復帰している。
[[2000年代]]に入り[[ロシア連邦]]の経済状況が改善する中でこうした危機的状況も徐々に改善しつつあり、活動を休止していた艦船も一部が戦列に復帰している。


2007年11月27日、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキー大将は、北方艦隊基地へ出張中に「ロシア北方艦隊の行動海域は、大幅に拡大される」と発言した。
2007年11月27日、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキー大将は、北方艦隊基地へ出張中に「ロシア北方艦隊の行動海域は、大幅に拡大される」と発言した。


この発言は、海外では注目されなかったが、ヴィソツキー発言から8日後の12月5日、第43ロケット艦師団所属の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ、第2対潜艦師団所属の大型対潜艦アドミラル・レーフチェンコアドミラル・チャバネンコ、第16支援艦旅団所属の大型海上給油艦セルゲイ・オシポフ、救助曳航艦ニコライ・チケルで構成される戦闘艦艇グループがセヴェロモルスクを抜錨、2ヶ月間の北東大西洋及び地中海への遠征へと出発した。戦闘艦艇グループは北方艦隊司令官ニコライ・マクシーモフ中将が率い、艦隊運用は第43ロケット艦師団司令官アレクサンドル・トゥリーリン少将が行
この発言は、海外では注目されなかったが、ヴィソツキー発言から8日後の12月5日、第43ロケット艦師団所属の[[アドミラル・クズネツォフ (空母)|重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ」]](実質的には[[空母]])、第2対潜艦師団所属の大型[[対潜艦]][[ウダロイ級駆逐艦#同型艦|「アドミラル・レーフチェンコ」「アドミラル・チャバネンコ」]]、第16支援艦旅団所属の大型海上[[給油艦]][[ボリス・チリキン級補給艦#同型艦|セルゲイ・オシポフ]]、救助曳航艦ニコライ・チケルで構成される戦闘艦艇グループがセヴェロモルスクを抜錨、2ヶ月間の北東大西洋及び[[地中海]]への遠征へと出発した。戦闘艦艇グループは北方艦隊司令官ニコライ・マクシーモフ中将が率い、艦隊運用は第43ロケット艦師団司令官アレクサンドル・トゥリーリン少将が行った


北方艦隊は2010年9月20日に発足した[[西部軍管区 (ロシア)|西部軍管区]]の傘下とされていたが、2014年12月1日には北極防衛の強化のため北方艦隊が新たに独立した作戦・戦略司令部 (OSK)とされそれまで西部軍管区に所属していた戦力の一部を含め統一指揮することとなった<ref>[http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4562?page=1 急速に北極の防衛強化を進めるロシアあくまでも「既存の兵力の更新」を主張]WEDGE Infinity2014年12月19日</ref>。
北方艦隊は2010年9月20日に発足した[[西部軍管区 (ロシア)|西部軍管区]]の傘下とされていたが、2014年12月1日には北極防衛の強化のため北方艦隊が新たに独立した作戦・戦略司令部(OSK)とされそれまで西部軍管区に所属していた戦力の一部を含め統一指揮することとなった<ref>[http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4562?page=1 急速に北極の防衛強化を進めるロシア あくまでも「既存の兵力の更新」を主張] [[WEDGE]] Infinity(2014年12月19日配信)2021年5月12日閲覧</ref>。

2021年には北方艦隊自体が独立した[[軍管区]]に昇格し、[[コミ共和国]]、[[アルハンゲリスク州]]、[[ムルマンスク州]]、[[ネネツ自治管区]]も管轄している<ref name="SANKEIBIZ20210115">[https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210115/mcb2101150613004-n1.htm 「露北方艦隊、軍管区に昇格 北極圏実効支配へNATO牽制」][[フジサンケイビジネスアイ|SankeiBiz]](2021年1月15日配信)2021年5月12日閲覧</ref>。
{{-}}
{{-}}


== 構成 ==
== 構成 ==
[[Image:Map of Northern Fleet bases ENG.svg|thumb|300px|Map of naval bases, shipyards and spent fuel storage sites operated by the Northern Fleet]]
[[Image:Map of Northern Fleet bases ENG.svg|thumb|300px|Map of naval bases, shipyards and spent fuel storage sites operated by the Northern Fleet]]
[[2007年]]現在ロシア連邦の北方艦隊は連邦海軍の中で最有力の艦隊であるとされている。
[[2021年]]時点、北方艦隊はロシア連邦海軍で最有力の艦隊であるとされている<ref name="SANKEIBIZ20210115"/>


攻撃部隊は、[[原子力船|原子力]]あるいは[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]]動力の潜水艦と航空母艦を主力に、[[巡洋艦]]、駆逐艦、[[大型対潜艦]]など一通りの水上戦闘艦艇を保有している。北方艦隊所属の重航空巡洋艦[[アドミラル・クズネツォフ_(空母)|アドミラル・クズネツォフ]]は、2021年現在ロシア海軍にとって唯一の航空母艦である。
攻撃部隊は、[[原子力船|原子力]]あるいは[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]]動力の潜水艦と航空母艦を主力に、[[巡洋艦]]、駆逐艦、[[大型対潜艦]]など一通りの水上戦闘艦艇を保有している。北方艦隊所属の重航空巡洋艦[[アドミラル・クズネツォフ_(空母)|アドミラル・クズネツォフ]]は、2021年現在ロシア海軍にとって唯一の航空母艦である。
97行目: 99行目:
=== 海軍歩兵・沿岸防衛部隊 ===
=== 海軍歩兵・沿岸防衛部隊 ===
* 第61独立海軍歩兵旅団:スプートニク町
* 第61独立海軍歩兵旅団:スプートニク町
* 第536独立沿岸ミサイル・砲兵旅団:スニェジュノゴルスク
* 第536独立[[地対艦ミサイル|沿岸ミサイル]][[沿岸砲|砲兵]][[旅団]]:スニェジュノゴルスク
* 第215独立電波電子戦連隊:セヴェロモルスク
* 第215独立電波電子戦連隊:セヴェロモルスク


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[太平洋艦隊 (ロシア海軍)]]
* [[継続戦争]]
* [[バルチック艦隊]]
* [[黒海艦隊]]
* [[第二次世界大戦中の北極海における輸送船団]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2021年5月12日 (水) 01:52時点における版

北方艦隊(ほっぽうかんたい、ロシア語:Северный флот スィェーヴィェルヌィイ・フロート、略称:СФ)は、ムルマンスクに司令部を置くロシア連邦海軍艦隊の一つ。白海バレンツ海など北極海の防衛を担うほか、大西洋へも進出する[1]。艦隊主力が駐留する軍港都市セヴェロモルスク閉鎖都市となっている。

概要

北方艦隊の徽章
北方艦隊の徽章

北方艦隊は、ロシアでは最も若い艦隊である。設置されたのは1933年のことであり、当時は赤色海軍、のちソ連海軍に所属した。ソ連時代後半には多数の原子力潜水艦を擁したことで知られ、最大で200 隻の潜水艦が所属していた。また、航空母艦や大型のミサイル巡洋艦も保有し、ソ連海軍の中でも特に有力な艦隊であった。

しかし、ソビエト連邦の崩壊後には逆にこれらの大型艦が重荷となった。北方艦隊では原子力潜水艦やキーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦の維持を優先したことから、有力なソヴレメンヌイ級駆逐艦はじめ他の艦船の多くが活動不可能な状態に陥った。一部の艦船は整備を受けられないまま退役を余儀なくされ、北方艦隊の勢力は大きくそがれることとなった。

2000年代に入りロシア連邦の経済状況が改善する中でこうした危機的状況も徐々に改善しつつあり、活動を休止していた艦船も一部が戦列に復帰している。

2007年11月27日、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキー大将は、北方艦隊基地へ出張中に「ロシア北方艦隊の行動海域は、大幅に拡大される」と発言した。

この発言は、海外では注目されなかったが、ヴィソツキー発言から8日後の12月5日、第43ロケット艦師団所属の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」(実質的には空母)、第2対潜艦師団所属の大型対潜艦「アドミラル・レーフチェンコ」「アドミラル・チャバネンコ」、第16支援艦旅団所属の大型海上給油艦セルゲイ・オシポフ、救助曳航艦ニコライ・チケルで構成される戦闘艦艇グループがセヴェロモルスクを抜錨、2ヶ月間の北東大西洋及び地中海への遠征へと出発した。戦闘艦艇グループは北方艦隊司令官ニコライ・マクシーモフ中将が率い、艦隊運用は第43ロケット艦師団司令官アレクサンドル・トゥリーリン少将が行った。

北方艦隊は2010年9月20日に発足した西部軍管区の傘下とされていたが、2014年12月1日には北極防衛の強化のため北方艦隊が新たに独立した作戦・戦略司令部(OSK)とされ、それまで西部軍管区に所属していた戦力の一部を含め統一指揮することとなった[2]

2021年には北方艦隊自体が独立した軍管区に昇格し、コミ共和国アルハンゲリスク州ムルマンスク州ネネツ自治管区も管轄している[3]

構成

Map of naval bases, shipyards and spent fuel storage sites operated by the Northern Fleet

2021年時点、北方艦隊はロシア連邦海軍で最有力の艦隊であるとされている[3]

攻撃部隊は、原子力あるいはディーゼル動力の潜水艦と航空母艦を主力に、巡洋艦、駆逐艦、大型対潜艦など一通りの水上戦闘艦艇を保有している。北方艦隊所属の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは、2021年現在ロシア海軍にとって唯一の航空母艦である。

この他、北方艦隊には対潜哨戒機ヘリコプターを中心とした海軍航空隊も所属し、これらは水上艦艇と協力して敵潜水艦や不審船の脅威から国土を守る任務についている。第61海軍歩兵旅団という陸戦部隊も所属し、複数の大型揚陸艦からなる上陸部隊も構成されているが、規模はあまり大きくなく、輸送力は限られている。

なお、この他に北方艦隊の担当領域ではロシア国境軍の艦艇も活動している。これは海軍艦艇ではなく、北方艦隊とは別組織である。

艦艇部隊



海軍航空隊

  • 第924独立親衛海軍ミサイル搭載機航空連隊:オレネゴールスク、オレーニヤ湾。Tu-22M3
  • 第279独立艦載戦闘機航空連隊:セヴェロモルスク3。Su-25UTGSu-33
  • 第830独立艦載対潜ヘリ連隊:セヴェロモルスク1。Ka-27
  • 第403独立混成航空連隊:セヴェロモルスク1。An-12An-26Il-38Tu-134
  • 第73独立長距離対潜航空飛行隊:キペロヴォ。Tu-142MK、Tu-142MR

海軍歩兵・沿岸防衛部隊

  • 第61独立海軍歩兵旅団:スプートニク町
  • 第536独立沿岸ミサイル砲兵旅団:スニェジュノゴルスク
  • 第215独立電波電子戦連隊:セヴェロモルスク

関連項目

脚注

外部リンク