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*[[1993年]](平成5年)[[9月3日]]、抗[[ウイルス]]剤の商品名「ユースビル」を発売。しかし、発売後1ヶ月足らずで[[フルオロウラシル]]系[[抗癌剤]]との併用で重篤な副作用が発生する。[[10月8日]]に中央薬事審議会の副作用報告調査会が開催され、厚生省(現・[[厚生労働省]])から医療機関に対する「緊急安全性情報(ドクターレター)」の配布指示がある。[[10月2日]]に「相互作用で7人が重い副作用、うち3人が死亡」と報道機関へ発表。[[10月3日]]、大阪証券記者クラブにて重篤な副作用の発現と製品の一時出荷停止を発表。代理店に対して一時出荷停止を指示。[[10月12日|12日]]に「自主的安全性情報」、[[10月13日|13日]]に「緊急安全性情報」を医療機関に配布し、[[11月1日]]より自主回収を実施。結果23例で副作用発現(うち死亡14例)となった。 |
*[[1993年]](平成5年)[[9月3日]]、抗[[ウイルス]]剤の商品名「ユースビル」を発売。しかし、発売後1ヶ月足らずで[[フルオロウラシル]]系[[抗癌剤]]との併用で重篤な副作用が発生する。[[10月8日]]に中央薬事審議会の副作用報告調査会が開催され、厚生省(現・[[厚生労働省]])から医療機関に対する「緊急安全性情報(ドクターレター)」の配布指示がある。[[10月2日]]に「相互作用で7人が重い副作用、うち3人が死亡」と報道機関へ発表。[[10月3日]]、大阪証券記者クラブにて重篤な副作用の発現と製品の一時出荷停止を発表。代理店に対して一時出荷停止を指示。[[10月12日|12日]]に「自主的安全性情報」、[[10月13日|13日]]に「緊急安全性情報」を医療機関に配布し、[[11月1日]]より自主回収を実施。結果23例で副作用発現(うち死亡14例)となった。 |
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*[[1994年]](平成6年)[[3月5日]]、「ソリブジン」による同社株の[[インサイダー取引]]疑惑が持ち上がる。「ソリブジン」の相互作用による[[副作用]]で死亡事故が発生したことが公表されるまでに、日本商事社員や関係者が当社株式を売却し株価下落の損失を回避したことが[[証券取引法]]違反([[インサイダー取引]]禁止)に問われた。この為、日本商事社長の服部孝一が辞任する。 |
*[[1994年]](平成6年)[[3月5日]]、「ソリブジン」による同社株の[[インサイダー取引]]疑惑が持ち上がる。「ソリブジン」の相互作用による[[副作用]]で死亡事故が発生したことが公表されるまでに、日本商事社員や関係者が当社株式を売却し株価下落の損失を回避したことが[[証券取引法]]違反([[インサイダー取引]]禁止)に問われた。この為、日本商事社長の服部孝一が辞任する。 |
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== 参考資料 == |
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ファルマシア 1993年10月号 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2008年2月26日 (火) 04:43時点における版
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IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
投与経路 | 経口 |
薬物動態データ | |
代謝 | Viral thymidine kinase |
排泄 | 腎臓 |
識別 | |
CAS番号 | 77181-69-2 |
ATCコード | J05AB15 (WHO) |
PubChem | CID: 5282192 |
別名 | BV-araU,Bromovinyl araU,5-Bromovinyl-araU |
化学的データ | |
化学式 | C11H13BrN2O6 |
分子量 | 349.14 g/mol |
ソリブジン (sorivudine) は、ウイルス感染症の治療薬で、特に単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルスに有効である。1979年(昭和54年)にヤマサ醤油により合成され、1993年(平成5年)9月3日に日本商事(現・アルフレッサ)より商品名ユースビル錠が上市された。なお、ブリストル・マイヤーズ スクイブが海外での販売権を持っていた。(商品名Brovavir)
効果・効能
- ソリブジンは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、EBウイルスに効果のある抗ヘルペスウイルス剤で、当時のヘルペス治療の第一選択薬だったアシクロビル(Zovirax、Activir)よりVZVへのウイルス活性が強い。また、有効な治療方法がないEBウイルスにも効果がある。
- 消化管吸収に優れ、消化管から吸収された後は大半が分解されることなく尿として排出される。
- 帯状疱疹に対する服用量は成人1日50mg3回で、アシクロビル内服(1日4g)の20分の1以下である。
特徴
ソリブジンがアシクロビルよりHSV-1、VZV、EBウイルスに強い活性を示すのは、ソリブジンはチミジンのアナログであり、アシクロビルは非環状グアニンヌクレオシドである構造を異にすることと、アシクロビルの活性化とは異なり、ソリブジン1リン酸は細胞のキナーゼではリン酸化されず、ソリブジンの2段階目のリン酸化もウイルスのチミジンキナーゼにより行われることによる。 HSV-2のチミジンキナーゼはチミジル酸キナーゼ活性が微弱なためソリブジンのHSV-2に対する作用は著しく弱い。
薬理
ソリブジンはチミジンキナーゼでリン酸化されて活性体となりウイルスのDNAに取り込まれ、ウイルスのDNAポリメラーゼを阻害しDNAの複製を失敗させることでウイルスの増殖を阻害する。
副作用
副作用発現率は3.5%で内訳は発熱、悪心・嘔気、嘔吐、食欲不振、上腹部痛、発疹となっている。しかし、このデータには後述する5-FU系代謝拮抗薬との相互作用による副作用は含まれていない。日本国内では治験段階で3人、1993年9月の発売後1年間に15人の死者を出している。
5-FUとの併用
ソリブジンは体内でブロモビニルウラシルに代謝される。このブロモビニルウラシルはフルオロウラシル(5-FU)の代謝酵素と結合して不可逆的に阻害し、5-FUの血中濃度が上がり、5-FUの副作用である白血球減少、血小板減少などの血液障害を引き起こす。後述する薬害事件の生じる原因であるが、相互作用の生じることは構造式からも予測可能であり、治験設定段階で5-FU系代謝拮抗薬を併用禁忌にすれば薬害事件を防ぐことができた。
ソリブジン薬害事件
- 1979年(昭和54年)ヤマサ醤油が「ソリブジン」を合成し、1985年(昭和60年)からエーザイ・日本商事と共同開発を進めた。
- 1993年(平成5年)9月3日、抗ウイルス剤の商品名「ユースビル」を発売。しかし、発売後1ヶ月足らずでフルオロウラシル系抗癌剤との併用で重篤な副作用が発生する。10月8日に中央薬事審議会の副作用報告調査会が開催され、厚生省(現・厚生労働省)から医療機関に対する「緊急安全性情報(ドクターレター)」の配布指示がある。10月2日に「相互作用で7人が重い副作用、うち3人が死亡」と報道機関へ発表。10月3日、大阪証券記者クラブにて重篤な副作用の発現と製品の一時出荷停止を発表。代理店に対して一時出荷停止を指示。12日に「自主的安全性情報」、13日に「緊急安全性情報」を医療機関に配布し、11月1日より自主回収を実施。結果23例で副作用発現(うち死亡14例)となった。
- 1994年(平成6年)3月5日、「ソリブジン」による同社株のインサイダー取引疑惑が持ち上がる。「ソリブジン」の相互作用による副作用で死亡事故が発生したことが公表されるまでに、日本商事社員や関係者が当社株式を売却し株価下落の損失を回避したことが証券取引法違反(インサイダー取引禁止)に問われた。この為、日本商事社長の服部孝一が辞任する。
参考資料
ファルマシア 1993年10月号