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「ヌマエビ科」の版間の差分

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==おもな種類==
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;[[オニヌマエビ]] ''Atyopsis spinipes'' (Newport, [[1847年|1847]])
;[[オニヌマエビ]] ''Atyopsis spinipes'' (Newport, [[1847年|1847]])
:体長2-5cmほど。額角が短く、体は太くずんぐりしている。前の2対の歩脚に長い[[毛]]が生えて[[筆]]のように変化しており、流下物を捕えて食べる習性を持つ。[[南西諸島]]から熱帯[[太平洋]]、[[インド洋]]に広く分布し、近縁種が多い。
:体長2-5cmほど。額角が短く、体は太くずんぐりしている。前の2対の歩脚に長い[[毛]]が生えて[[筆]]のように変化しており、流下物を捕えて食べる習性を持つ。[[南西諸島]]から熱帯[[太平洋]]、[[インド洋]]に広く分布し、近縁種が多い。「ロックシュリンプ」という名称でアクアリウムで飼育されるエビもオニヌマエビの近縁種である
;[[ヤマトヌマエビ]] ''Caridina multidentata'' [[ウィリアム・スティンプソン|Stimpson]], [[1860年|1860]]
;[[ヤマトヌマエビ]] ''Caridina multidentata'' [[ウィリアム・スティンプソン|Stimpson]], [[1860年|1860]]
:体長3-4cmほど。額角が短く、複眼が黒くて大きい。体側には赤い斑点が4列の線状に並んでいるが、オスでは点線に、メスでは破線になる。動きは活発で、網ですくうと跳ねずに歩きだす。西日本から[[フィジー]]、[[マダガスカル]]まで分布し、川の上流から中流にかけて生息する。観賞用としても人気がある。
:体長3-4cmほど。額角が短く、複眼が黒くて大きい。体側には赤い斑点が4列の線状に並んでいるが、オスでは点線に、メスでは破線になる。動きは活発で、網ですくうと跳ねずに歩きだす。西日本から[[フィジー]]、[[マダガスカル]]まで分布し、川の上流から中流にかけて生息する。観賞用としても人気がある。

2008年10月21日 (火) 15:34時点における版

?ヌマエビ科 Atyidae

ヤマトヌマエビ Caridina multidentata
分類
 :動物界 Animalia
 :節足動物門 Arthropoda
亜門 :甲殻亜門 Crustacea
 :エビ綱(軟甲綱) Malacostraca
 :エビ目(十脚目) Decapoda
亜目 :エビ亜目 Pleocyemata
(抱卵亜目)
下目 :コエビ下目 Caridea
上科 :ヌマエビ上科 Atyoidea
De Haan, 1849
 :ヌマエビ科 Atyidae
De Haan, 1849
下位分類
本文参照

ヌマエビ科(Atyidae)は、エビの分類群の一つ。ヌマエビヤマトヌマエビミナミヌマエビなど、淡水に生息するエビを含む分類群である。一科のみでヌマエビ上科(Atyoidea)を構成する。

概要

エビとしては南方系で、熱帯から亜熱帯にかけて多く分布する。日本でも南西諸島や暖流に面した西日本の太平洋側で多くの種類が見られるが、日本海側や東日本では少ない。

体の大きさはどれも数cmほどの小型のエビである。5対の歩脚のうち前の2対が短い鋏脚に変化しており、餌をつまむのに用いる。歩くときは後ろの3対を使う。

「沼蝦」の名のとおり、などの淡水域で見られるが、洞窟内の地下水中に生息する種類もいる。また、汚染に弱く、生息地に農薬などが流入するとメダカなどよりも先に死滅してしまう。逆にいうと、ヌマエビ類がいる環境は豊かな自然が残っているという証明にもなる。

カワリヌマエビ属(Neocaridina属)など、一生を淡水で過ごす陸封型の種類もいるが、幼生時にで成長する両側回遊型の種類の方が多い。これらは幼生が海流に乗って運ばれるため分布域が非常に広く、マダガスカルフィジー諸島などの河川でも日本と共通した種類が見られる。また、目立った河川が無い島嶼などでも、海岸のわずかな湧水などに生息していることがある。

食性は雑食性で、生物の死骸や藻類デトリタスなどを食べる。生きた動物を捕食することはほとんどないが、ヤマトヌマエビなどは自分より小さい小魚やエビを捕食することがある。

飼育対象として

ヌマエビ類はほとんどの種類が泥臭くて食用には向かず、釣り餌などに利用される程度だったが、現在は観賞用やタンクメイトとして、熱帯魚飼育者の間で脚光を浴びるようになった。

特にヤマトヌマエビは丈夫で飼育しやすいこと、水槽内の藻類を食べて回ること、大型で見栄えがすることなどから、現在は海外の熱帯魚愛好家にもその名が知られている。トゲナシヌマエビミナミヌマエビもわりと丈夫だが、ミゾレヌマエビヒメヌマエビはやや長期飼育が難しい。

しかしそれに伴った野生個体の乱獲と繁殖の難しさはヌマエビ類飼育の大きな問題点である。ミナミヌマエビは陸封型で繁殖は割と簡単だが、ヤマトヌマエビなど両側回遊型のエビは成長に海水が必要で、産卵してもなかなか成長させることができないのが多くの飼育者の現状である。

分類

4亜科・36属があり、このうち日本には7属・約20種が分布する。

  • ヒメヌマエビ亜科 Atyinae
  • ヌマエビ亜科 Paratyinae
    • Atyaephyra
    • Dugastella
    • Palaemonias
    • ヌマエビ属 Paratya - ヌマエビ、ヌカエビ、オガサワラヌマエビ
    • Syncaris
    • Troglocaris
  • チカヌマエビ亜科 Caridellinae
    • Atyella
    • Caridella
    • Caridinides
    • Caridinopsis
    • Edoneus
    • Halocaridina 属 - オパエウラ
    • チカヌマエビ属 Halocaridinides - チカヌマエビ
    • Jolivetya
    • Limnocaridella
    • Limnocaridina
    • Micratya
    • Parisia
    • Puteonator
    • Pycneus
    • Pycnisisa
    • Typhlocaridina
  • ドウクツヌマエビ亜科 Typhlatyinae
    • ドウクツヌマエビ属 Antecaridina - ドウクツヌマエビ
    • Spelaeocaris
    • Stygiocaris
    • Typhlatya
    • Typhlopatsa

おもな種類

オニヌマエビ Atyopsis spinipes (Newport, 1847)
体長2-5cmほど。額角が短く、体は太くずんぐりしている。前の2対の歩脚に長いが生えてのように変化しており、流下物を捕えて食べる習性を持つ。南西諸島から熱帯太平洋インド洋に広く分布し、近縁種が多い。「ロックシュリンプ」という名称でアクアリウムで飼育されるエビもオニヌマエビの近縁種である。
ヤマトヌマエビ Caridina multidentata Stimpson, 1860
体長3-4cmほど。額角が短く、複眼が黒くて大きい。体側には赤い斑点が4列の線状に並んでいるが、オスでは点線に、メスでは破線になる。動きは活発で、網ですくうと跳ねずに歩きだす。西日本からフィジーマダガスカルまで分布し、川の上流から中流にかけて生息する。観賞用としても人気がある。
トゲナシヌマエビ C. typus H. Milne Edwards, 1837
体長2-3cmほど。額角が短く、体型も他のヌマエビ類よりずんぐりしている。体色は一様に褐色がかって地味な個体が多いが、黒や青緑色の個体、背中に白っぽい縦線が走る個体もいる。網ですくうとヤマトヌマエビと同じように歩きだす。西日本から東南アジア、フィジーまで分布する。
ミゾレヌマエビ C. leucosticta Stimpson, 1860
体長2-3cmほど。トゲナシヌマエビとは逆に額角が長くまっすぐ伸び、体型もスマートだが、ヌマエビやツノナガヌマエビとの区別がつけにくい。メスの成体は灰褐色を帯び、体じゅうに小さな白点がたくさんあるのでこの和名がある。遡上する習性はあまり強くなく、下流域に多く生息する。西日本から南西諸島に分布する。
ツノナガヌマエビ C. longirostris H. Milne Edwards, 1837
体長2-3cmほど。和名通り額角が長く、上へ反るが、ヌマエビやミゾレヌマエビと区別がつけにくい。南西諸島、台湾、中国、ニューカレドニア、マダガスカルまで分布する。
ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man, 1892
体長1-2cmほど。小型だが赤、茶、紫など体色が変異に富む。背中に白っぽい縦線が走る個体と、数本の白い横しまがある個体とがいる。色鮮やかな種類だが小型であまり活発ではなく、物かげに隠れる性質が強い。ミゾレヌマエビと同じく下流域に多い。西日本から東南アジア、オーストラリア北部、マダガスカルまで分布する。
オパエウラ Halocaridina rubra Holthuis, 1963
体長1.2-1.5cmほど。赤い個体から白い個体まで幅がある。成体は淡水から海水まで広く適応するが、繁殖には汽水と隠れ場所が必要。ハワイ諸島の anchialine pool 「陸封潮溜まり」と呼ばれる汽水域にのみ分布する固有種。ハワイアンレッドシュリンプ、スカーレットシュリンプ、ピクシーシュリンプ等、多くの名前で呼ばれている。
ミナミヌマエビ Neocaridina denticulata denticulata De Haan, 1849
体長1-2.5cmほど。上から見ると背中に白っぽい線があり、線をはさむように「ハ」の字型のもようがたくさんある。成体は褐色や緑黒色など体色が変異に富む。発生に塩分を必要とせず、一生を川で過ごす。西日本に分布するが、朝鮮半島や中国に多くの別亜種がいる。
ヌマエビ Paratya compressa compressa De Haan, 1844
体長は2-3cmほど。額角とは別に、目の上に小さなとげ(眼上棘)がある。両側回遊をおこなう「小卵型」と、淡水域で一生を過ごす「大卵型」とがいる。西日本に分布するが、亜種のヌカエビ P. c. improvisa Kemp, 1917 は東日本に分布する。

参考文献

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