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2008年10月30日 (木) 09:46時点における版

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中華人民共和国香港特別行政区
中華人民共和國香港特別行政區
Hong Kong Special Administrative Region of the People's Republic of China
香港の旗 香港区徽
地域の旗 地域の紋章
地域の標語:無し
地域の歌:中華人民共和国の国歌(地域の歌は無し)
香港の位置
公用語 中国語英語
本文参照)
主都 中西区
最大の都市 沙田区
政府
国家主席 胡錦濤
行政長官 曽蔭権
面積
総計 1,104km2183位
水面積率 4.6
人口
総計(2007年 6,963,100人(98位
人口密度 6,350人/km2
GDP(PPP
合計(2007年2067.07 億ドル(37位
1人あたり 29,650ドル
イギリスから中華人民共和国返還
状態の確立1997年7月1日
通貨 香港ドルHKD
時間帯 UTC+8 (DST:なし)
ISO 3166-1 不明
ccTLD .hk
国際電話番号 852
香港
中国語 香港
発音記号
標準中国語
漢語拼音Xiānggǎng
ウェード式Hsiang1-kang3
粤語
イェール粤拼Hēunggóng
粤拼hoeng1 gong2
閩南語
閩南語白話字Hiong-kang
ビルマ語
ビルマ語ɕjáŋkàŋ

香港(ホンコン、正式には香港特別行政区)は、中華人民共和国特別行政区の一つであり、アジアの世界都市である。

概要

香港島・太平山山頂(ビクトリアピーク)からの夜景

1842年南京条約などによりからイギリスに割譲された土地と租借地で、以降はイギリスの植民地となったが、1997年7月1日午前0時(CST)に、イギリスから中華人民共和国へ返還され、特別行政区となった。

古くから東南アジアにおける交通の要所であり、また、自由港であることからイギリスの植民地時代から金融流通の要所でもある。また、ショッピングや食通の街として栄えているということもあり、世界中から観光客が訪れる。超高層ビルが立ち並ぶ近代的な街並みだけでなく、離島や丘陵地帯などの自然に触れられる場所などの様々な見どころが、領地が狭いために隣接しているのが特徴である。また、マカオ深圳市などの近隣地域と組み合わせて観光するケースも多く見られる。

名称

香港(英語: ホンコン、広東語: ヒョンゴン、北京語: シァンガン)という名称は珠江デルタ東莞周辺から集められた香木の集積地となっていた湾および沿岸の村の名前に由来する。現在の香港島南部の深湾と黄竹坑にあたる。 「香港」と書いて「ホンコン」と読むが、これは前述の通り、広東語の発音が英語化したものである。

正式名称
1997年6月30日までは "The Crown Colony of Hong Kong"
1997年7月1日からは 「中華人民共和国香港特別行政区」 "Hong Kong Special Administrative Region of the People's Republic of China"
繁体字:「中華人民共和國香港特別行政區
簡体字:「中华人民共和国香港特别行政区

歴史

イギリス植民地時代の旗
イギリス植民地時代の紋章

地理

九龍からの香港島のパノラマ。左端が北角で右端が湾仔
香港の地図
香港の地図

現在の「香港特別行政区」は、香港島九龍半島、新界及び周囲の南シナ海に浮かぶ235余の島を含めた地域を指す。面積は東京23区の約2倍程度。

ランタオ島(大嶼山)は領域内で最大の島であり、香港島の約2倍の面積を持ち、香港国際空港の空港島が隣接している。2005年9月には島内にディズニーランドが開園した。香港の地形は全体に山がちであり、最高点は標高958メートルの大帽山である。中華人民共和国本土との境辺りを除き平地は少なく、主なものに元朗平原があり、付近の海岸には湿原がある。

気候

温暖冬季少雨気候サバナ気候 - 温暖湿潤気候移行部型)に属し、秋・冬は温暖で乾燥しており、春・夏は海からの季節風と熱帯低気圧の影響で高温湿潤という気候である。

秋はしばしば台風に襲われ、スターフェリーやマカオへ行く水中翼船などの海の便や航空便、2階建てトラムが運行停止になることもある。台風の警報がでると、各種イベントが中止となるだけでなく、学校や企業、官公庁も休みとなる。

冬は北風が中国大陸から吹くため、中華人民共和国本土の埃や環境対策が進んでいない工場からの排気や自動車の排気ガスなどで汚染された空気が入り込んで来ることが多く、そのために近年は霧や靄が発生することが多くなっている。


香港の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C°F 18.6
(65.5)
18.6
(65.5)
21.5
(70.7)
25.1
(77.2)
28.4
(83.1)
30.4
(86.7)
31.3
(88.3)
31.1
(88)
30.2
(86.4)
27.7
(81.9)
24.0
(75.2)
20.3
(68.5)
25
(77)
平均最低気温 °C°F 14.1
(57.4)
14.4
(57.9)
16.9
(62.4)
20.6
(69.1)
23.9
(75)
26.1
(79)
26.7
(80.1)
26.4
(79.5)
25.6
(78.1)
23.4
(74.1)
19.4
(66.9)
15.7
(60.3)
21
(70)
降水量 mm (inch) 24
(0.94)
52
(2.05)
71
(2.8)
188
(7.4)
329
(12.95)
388
(15.28)
374
(14.72)
444
(17.48)
287
(11.3)
151
(5.94)
35
(1.38)
34
(1.34)
2,382
(93.78)
出典:香港天文台[1] 2008年

人口

香港島ビクトリアピークの山頂のからビクトリア・ハーバーを眺める。香港は平地は少ないが人口は多い。そのため市街区の人口密度は極めて高く、数十階を有する高層ビルが多数ある

香港特別行政区政府統計処が公開したデータによれば、香港の人口は2007年6月現在で692万1700人、前年同期比0.9%の増加であったという。香港の大部分は居住困難な山岳地域にも拘らず、わずかな平地に膨大な人口を抱えるため、緑豊かな山岳地域のわずかな平地部分に超高層ビル群が林立する奇抜な景観を有する。全世界で最も人口密度が高い地方の一つで、1平方キロメートルあたりの人口密度は6,270人であるが、平地部分に限定すれば、20万人以上にもなる。香港の出生率は1000人あたり9.6人(2006年)で、世界でも低水準にある。

香港島北部のわずかな居住地域と九龍半島への人口の集中が著しい。面積は両者を合わせて127.4平方キロメートルと香港全体の面積の12%足らずにすぎないが、この範囲の中に香港の総人口のおよそ半分にあたる約350万人が居住している。九龍地区の1平方キロメートルあたりの人口密度は43,030人、同じく香港島は15,920人である(何れも2006年)。

香港の人口で最も多いのは「華人」と呼ばれる中国系で、全体の95%近くを占める。華人以外で多いのはメイドなどの出稼ぎ労働者として多くが働いているフィリピン人やインドネシア人で、その次に多いのがアメリカ人、次いで元宗主国のイギリス人である。日本人は約2万人いる。

行政区分

香港には、18の行政上の下部地域(区(繁体字表記では「區」))がある。1982年区議会が設置されたのが、区の由来である。その後、九龍地区から新界への人口移動に伴い、区の再編が行われている。1985年に、荃湾区から葵青区が分離した。1994年には、油尖区と旺角区が合併し、現在の油尖旺区となった。

政治

香港の政治は今日、イギリス植民地時代の行政府官僚主導の政治から、中国共産党率いる中華人民共和国へ返還、移譲された後の一国二制度(香港行政区基本法)下においての民主化および政党政治への移行期にある。香港は、1997年に中華人民共和国に返還され、香港特別行政区および同政府が成立した。香港特別行政区は中華人民共和国において、省や直轄市と同等で並ぶ地方行政区とされる。ただし、中華人民共和国憲法31条および1990年に制定された香港特別行政区基本法に基づき、返還後50年間、自治権の付与と本土と異なる行政・法・経済制度の維持が認められている。また、「中国香港」の名義により、経済社会分野における国際組織や会議への参加も認められている。

しかし、香港は「高度な自治権」を享受しているが、「完全な自治権」を認められているわけではない。首長である行政長官は職域組織や業界団体の代表による間接選挙で選出されることになっており、その任命は中央政府(国務院)が行う。

現在、行政長官ならびに立法会議員の「直接選挙(普通選挙)による選出を何時からにするか」が議論の焦点になっており、民主派2012年からを、親中派2024年からを主張している。長官選については、2007年12月29日に全国人民代表大会(全人代)常務委員会が2017年に実施される選挙において「直接選挙を先行実施してよい」と容認姿勢を表明、一方で立法会議員の直接選挙については時期は定めていない。

司長や局長(英語ではいずれもSecretary、閣僚に相当する)は、行政長官の指名を受けて、中央政府が任命する。行政長官と司長局長クラスのみは中国籍の人物でなければ就任できないが、それ以外の高級官僚(部長クラスなど)にはイギリス人英連邦諸国出身も少なくなく、新規の採用も妨げられていない。一例を挙げると主要地区の警察署長には現在もイギリス人が多い。

また、香港行政区基本法の改正には全人代の批准が必要であり、香港特区内では手続きを完了できない。同基本法の解釈権も、全人代常務委員会が持っている。このように全人代が基本法の制定権と解釈権を併せ持っているために、2007年の完全民主化を事実上阻んだ2004年4月の全人代による基本法解釈のように、恣意的な拡大解釈すら可能である。香港の司法府たる終審法院は香港特区内の事柄について限定的にしか行うことができない。これは、香港が独立という選択肢をもたない従属領域であり、また中国当局がそれを防ぐため香港に完全な自治権を与えないとの方針を持っているためである[2]

このように香港の政治は、中国共産党の一党独裁の下にある中華人民共和国当局の制限の元に運営されている。だが、香港の社会は植民地時代から民主主義がないまま、言論や結社の自由を享受してきた。また、香港は中華人民共和国本土経済にとっても、企業の株式上場や資金調達、諸外国との貿易、投資の中継地として重要である。そのため、中華人民共和国当局も香港の民主主義や自由そのものを否定すれば、諸外国の香港に対する法治や経済制度に対する信頼まで失う恐れがある。さらに香港における民主化の試みには、中華人民共和国本土での民主化の実験として、近代の中華人民共和国の政治の文脈においても大きな意義がある。

司法

中華人民共和国内とは異なり、『香港特別行政区基本法』に基づき、英米法(コモン・ロー)体系が施行されている。基本法の規定により、中華人民共和国内の法律は「別段の定め」がない限り香港では施行されない。よって、基本法の解釈問題以外の法体系はイギリス領時代と全く同一である。したがって、死刑制度も存在しない。

さらに、返還によりイギリス領ではなくなったためにロンドンに終審法廷を求めることはできなくなった。そのために1997年7月の返還と同時に裁判も原則として、香港域内で完結する必要性が生じた。そのため、返還後、最高裁判所に相当する終審法院が設置された。この時点で新たに設置の終審法院判事のために5名以上のベテラン裁判官がイギリスから招聘された。返還後の司法体制のために旧宗主国から高官にあたるイギリス人の人材を新たに招くという「珍事」は中華人民共和国が英米法を厳格に適用するための人材について不足していることを率直に認めたことを現しており、意外な「柔軟性」あるいは「現実適応性」を持つ面を確認する事象であったといえる。

終審法院の下には高等法院(高裁)、区域法院(地裁)、裁判法院(刑事裁判所)などがある。裁判は三審制である。ただし、基本法の「中央に関する規定」および「中央と香港の関係にかかわる規定」につき、条文の解釈が判決に影響を及ぼす場合、終審法院が判決を下す前に全人代常務委員会に該当条文の解釈を求めることとされる。(香港司法機構を参照。)

対外関係

香港特別行政区は、基本法の定めにより、経済社会分野の条約を締結したり、国際会議や国際機構に参加することができる。しかし、外交は中央政府の権限である。そのため、外交部駐香港特派員公署が設置され、香港の外交事務を管轄している。

ただし、香港政府も独自の在外駐在機関を設けている。国外の香港経済貿易弁事処は工商及科技局下の工業貿易署が形式上管轄する。中華人民共和国本土にある駐広東香港経済貿易弁事処と香港特別行政區政府駐北京辦事處は、政制事務局が管轄している。しかし、前者も実際には、工商及科技局の本来業務の枠を超えた活動をしている。そのため、政制事務局が実質的に香港の対外事務を扱っていると考えられる。

香港域内でも、香港政府に外交権限がないことの不利益が次第に認識されている。香港特別行政區政府駐北京辦事處も以前は政務司長(政務長官)の管轄であったが、2005年の行政長官施政方針において対中央(中華人民共和国本土)政策を政制事務局に集中することが打ち出され、現在のようになった。

なお、中華人民共和国と対立している中華民国航空会社や船舶の香港への乗り入れや、同国民の香港への渡航条件は返還、譲渡前と変わらない。

軍事

返還前はイギリス軍が昂船洲(ストーンカッタース)や赤柱(スタンレー)などの基地に正規兵のほかにグルカ兵などの傭兵を含む海軍、陸軍部隊(駐香港イギリス軍)を駐留させていた。同司令官は香港総督の下に位置した。

返還後にはイギリス軍に替わり人民解放軍駐香港部隊が駐留している。人民解放軍駐香港部隊の司令部は、返還前まではイギリス軍の司令部が置かれていたセントラルのプリンス・オブ・ウェールズ・ビル(現在は「中国人民解放軍駐香港部隊大厦」)にある。人民解放軍駐香港部隊司令官は、中央軍事委員会および国務院国防部の下にある。香港行政長官には部隊への指揮権がない。

基本法の規定により、イギリスやイギリスの同盟国であるオーストラリアアメリカを含む外国艦艇の休暇上陸(レスト&レクリエーション)を含む寄港は返還後も中央政府の同意を経て可能とされている。ただし、中央政府の意向により寄港が許可されないケースもある。

経済

ファイル:2 International Financial Centre.jpg
香港国際金融中心
中環のビジネス街

その成立背景から、規制が少なく低税率な自由経済を特徴とする。食料や日用品などの対外依存度が高い。もともとイギリスの対中国貿易の拠点であったことから中継貿易が盛んであった。第二次世界大戦後の1949年に中国共産党率いる中華人民共和国が成立すると、中国大陸本土からの移民が押し寄せた。そのため、安い労働力を活用した繊維産業やプラスティック加工を中心とする製造業へ産業構造を転換した。

1970年代からは、香港政庁が新界の住宅団地開発や地下鉄建設などインフラ建設を開始し(詳細は積極的不介入を参照)し、香港経済は急速な発展を遂げる。そして、1970年代後半になると労働コストの上昇や工業用地不足などの問題にも直面し始めた。

しかし、中華人民共和国の改革開放を受け、1980年代、従来の製造業は広東省の深圳市や東莞市を初めとする珠江デルタへと移転した。こうして香港は、中華人民共和国を後背地とする金融センター・物流基地へ転換した。

1997年の返還後も中華人民共和国本土への依存は深まり、2003年には中国本土・香港経済連携緊密化取決めの第一段(CEPAⅠ)が中華人民共和国本土と香港の間で調印され、その後も補充協議が実施・締結されている。さらに広東省のイニシアティブによる汎珠江デルタ協力(9+2協力)にも参加している。

なお、イギリス時代から高度に整備された民法と税制上の優遇措置、高い教育程度と豊富な英語人口などから、オフィスや住宅の家賃がアジア地域のみならず世界でも最も高いとされる。にもかかわらず、多くの欧米企業は中華人民共和国や日本を含む東アジア全域またはアジア全域を管轄する地域統括本部を香港に設けることが多い。

香港のGDPの80%をサービス産業が占める。また観光産業がGDPの約5%を占める他、古くから映画産業が盛んである。香港経済界の代表的人物は長江集団を率いる李嘉誠である。

企業

電力や通信などのインフラストラクチャーから建設や運輸、金融や流通、サービス業やマスコミまで、様々な業種の大企業が揃っており、東南アジア圏内や中華人民共和国、日本へ進出している企業も多い。

主な財閥・企業グループは、イギリス系、華人(香港人)系、中国本土系の三つに大まかな分類ができる。華人系には長江集団や会徳豊などがある。また、伝統的にはイギリス系のジャーディン・マセソンスワイヤー・グループ香港上海銀行が有力だが、前二者は1970年代以降、華人系財閥による買収などで勢力を縮小させている。さらに中国本土系の企業としては、華潤集団、招商局、中国銀行 (香港)、中国旅行社やCITICがある。

金融

貨幣・金利

ファイル:HongKong10dolar.jpg
香港ドル

貨幣である香港ドルは、イギリス系の香港上海銀行スタンダード・チャータード銀行(香港渣打銀行)、中国銀行 (香港)によって発行されている。ただし、10香港ドル紙幣の一部と硬貨は、香港金融管理局が発行している。また、イギリスの植民地時代に発行されたエリザベス2世女王の横顔入りのコインも引き続き使用している。

なお、返還後の2001年に金利が自由化されたものの、2005年5月18日にアメリカドルとのペッグ制から目標相場圏制度に移行されたことにより、金利は基本的にアメリカ合衆国の金利動向に追従する。

外貨準備高
1,360億USドル(2007年5月末、世界第9位)

証券

主要な証券取引所として、1891年に開設された香港証券取引所(香港交易所/Hong Kong Stock Exchange)があり、東京証券取引所シンガポール証券取引所と並び、アジアを代表する証券取引所となっている。市場の動きを表す指数として、代表36銘柄を対象として時価総額加重平均で算出した「ハンセン指数(恒生指數/Hang Seng Index)」がある。

株式市場
上場株式時価総額:1兆6,922億USドル(2007年2月)

運輸

海運
コンテナ取扱量 1,914万TEU(20フィートコンテナ換算,2002年)
空運
取扱貨物 248万トン(2002年)

建築

超高層建築

香港上海銀行・香港本社ビル
中国銀行タワー

香港では、特に中心部の市街である香港島北部において、山がちで狭い地勢からヴィクトリア湾沿いに超高層建築が林立している。1972年に建てられた中環 (Central) のジャーディーン・ハウス(怡和大廈: Jardine House: 地上52階建・高さ178.5m)を皮切りに、現在では世界第5位の高さを持つ、2003年竣工でシーザー・ペリ (Ceser Pelli) 設計による国際金融中心・第二期(地上88階建、高さ415.8m)を筆頭に数多くの超高層建築が見られ、中には1985年竣工のノーマン・フォスター (Sir Norman Foster) 設計による香港上海銀行 (HSBC) ・香港本店ビルや、1988年竣工のポール・ルドルフ (Paul Rudolph) 設計によるリッポーセンター(力寶中心:Lippo Centre)、1990年竣工のイオ・ミン・ペイ(I・M・Pei、貝聿銘)設計による中国銀行タワー(中銀大廈:Bank of China Tower)など世界的に著名な建築も含まれる。

2010年には、西九龍 (West Kowloon) 地区のユニオンスクエアKPF設計の環球貿易廣場(International Commerce Centre:地上108階建、高さ484.0m)が完成し、これは今後香港で最も高い建物となる予定である。

加えて香港島の向い、ヴィクトリア湾を挟んだ九龍半島側にも超高層建築郡ができつつある。これは九龍市街の埋立てが近年急速に進んだこと、そして1998年に九龍灣地区にあった啓徳空港 (KaiTak Airport) が廃港となり、九龍上空の建設規制が大幅に緩和されたことによる(「再開発」の項で詳述)。

現在、香港の超高層建築の集積率は世界で2番目に多く、これはアメリカ合衆国ニューヨーク市、マンハッタン地区に次ぐものである。

主な香港の超高層建築は次の通り。

現在完成している主な超高層建築
現在建設中の主な超高層建築
  • 環球貿易廣場 (International Commerce Centre) :地上108階建・高さ484.0m…2010年竣工予定/箇所:西九龍
  • 港島東中心 (One Island East) :地上69階建・高さ280.0m…2008年竣工予定/箇所:太古
  • 河内道重建項目 (Hanoi Road Redevelopment Project) :地上64階建・高さ275.0m…2007年竣工予定/箇所:尖沙咀
  • 天璽 (The Cullinan) :地上68階建・高さ265.0m…2007年竣工予定/箇所:西九龍

またビル建設時に用いる作業員の足場として、殆どの建設現場で大量の材が使用される。これは香港に隣接する広東省などで、丈夫で安価な竹が大量に入手できるからである。この竹材の足場を用いて高層ビルを建設すると言う方法は香港の他、マカオ特別行政区、台湾、中国大陸などで見られ、アジアの一部地域特有の光景となっている。

再開発

香港国際金融中心

近年は啓徳空港が廃止されランタオ島沖の新香港国際空港に移転したことで、九龍地区の高さ規制が外され再開発事業が活発に行われている。九龍・旺角地区の『ランガムプレイス』(朗豪坊:Langham Place、地上59階建て、高さ255.1m)などはその代表格である。

また西九龍地区ではオフィス住居ショッピングモールホテルなどを兼ね備えた巨大複合施設の『ユニオンスクエア』 (Union Square) が2010年に向け建設中であり、ここに隣接して『西九龍文化施設群』 (West Kowloon Cultural District Project) と呼ばれる現代美術館劇場ホール展示場スタジアムなどを兼ね備えた文化施設が建設される見込みである。啓徳空港跡地のある九龍城地区や九龍湾地区では、空港用地跡の敷地を利用して、オフィスと住居を主体とした複合施設を建設する計画がある。

香港島北部の市街地、特に灣仔 (Wan Chai) 地区でも環境整備と言う名目で再開発が進められているが、ここでは古くからの街区と言うこともあり抗議活動が展開され、急激な開発は元来居住している住民の同意を必ずしも得られていない実情も垣間見られる。

住居

コロニアル・スタイル様式を残す香港文物探知館
ショップハウス型住宅(西營盤)
香港の高層住宅(九龍・大角咀)

伝統的な村落の形式は、外部の者の攻撃や盗難を防げる「圍」(ワイ)と呼ばれる城壁の中に切妻の家を立てるのが普通であった。この形式は、現在も新界の客家集落に一部残されている。また、現在では見掛ける機会はほとんど無くなったが、香港島南部の香港仔や九龍の深水埗、新界の西貢などでは、古くから蛋民などと呼ばれる、水上生活を営むものも見られた。

イギリスの統治が始まると、洋風建築もでき、第二次世界大戦以前の中心地区ではコロニアル・スタイルの建築が印象的だったが、大戦以後は国共内戦後の中華人民共和国からの難民によって建築様式が変更された。

1950年代までは1階が店舗で、2階が住居である伝統的なショップハウスと呼ばれるスタイルを踏襲していたが、1950年代以降はそれまでのショップハウスの柱廊を取り払い、中層化したペンシルビルになった。また急激な人口増加に対応するため、1950年代から1960年代には九龍などの郊外に、政庁はプレハブ方式による下層が工場、上層がアパートである同規格の建築群を大量に建設した。また香港への難民の流入による住居の特異な例として、九龍の九龍城地区に存在し1994年に取り壊された、九龍寨城などの例も挙げることができる。

この時期までの、香港の住環境は必ずしも良好と呼べるものではなく、この状況を改善するべく1980年代以後は政庁主体で計画的な大規模開発が行われ、低層部に商業施設を造り、その上に庭園付きの高層住宅を造るスタイルが一般的になった。

現在では、政府と民間開発業者の主導で九龍地区や新界地区の沙田、元朗、将軍澳、青衣、そしてランタオ島の東涌などを中心に超高層住宅を伴う大規模なニュータウンが建設され、同時に鉄道網も整備されている。また、香港島や九龍地区などでも超高層マンションが数多く建設されており、中には高さが250mを超える建物も幾つか完成している。

香港の住宅価格は非常に高く、ニューヨークロンドン東京など世界的に高値と認識されている都市の水準に迫るか、場合によってはそれを上回る価格で取引が行われることもある。これはオフィスや工業用地など、香港の不動産全体に対し共通して言える現象でもある。

香港は元々狭小な領域しかない上、山がちで不動産開発の容易な平地が少なく、また駐車場用地や関税の問題から自家用車などの容易な所有が難しいため、公共交通機関の発達している市街中心部や要衝へと需要が集中している。このため不動産の価格が押し上げられ、結果的に海岸部の埋立てが加速的に進み、市中に超高層建築が林立した。半山区や跑馬地などの高級住宅地では、隣接する山地の中腹に山自体を越える様な高さの超高層住宅を建設することも珍しくない。

香港の主な超高層住宅
  • 擎天半島 (The Sorrento) :地上74階建・高さ256.3m…2003年竣工/箇所:西九龍
  • 君臨天下 (The HarbourSide) :地上74階建・高さ255.0m…2003年竣工/箇所:西九龍
  • 曉盧 (Highcliff) :地上74階建・高さ252.4m…2003年竣工/箇所:跑馬地
  • 海名軒 (Harbourfront Landmark) :地上66階建・高さ232.6m…2001年竣工/箇所:紅磡
  • 凱旋門 (The Arch) :地上65階建・高さ231.0m…2005年竣工/箇所:西九龍

観光

ウォーターフロント・プロムナード
香港島の繁華街(中環
香港島の繁華街(銅鑼湾
スターフェリー
ジャンボキングダム
香港ディズニーランド
ラマ島(南丫島)

観光産業が経済的に大きな位置を占めるということもあり、香港政府観光局とによる海外での宣伝、誘致活動が大々的に行われており、現在、観光親善大使を香港出身のハリウッドスターであるジャッキー・チェンが務めている。

香港島中西區には香港上海銀行 (HSBC) や中国銀行・香港分行、香港国際金融中心 (IFC) などをはじめとする超高層オフィスビルホテルが、九龍城區、油尖旺區等の繁華街には大規模なショッピングモールや様々なジャンルのレストラン、高級ブランドのブティックやエステサロンなどが立ち並び、活況を見せている。

また、古くから「100万ドルの夜景」の異名を持つほど夜景が美しいことで世界的に知られており、特に香港島のビクトリア・ピークからの夜景や、油尖旺區のビクトリア・ハーバーにあるウォーターフロント・プロムナード近辺から見る香港島の夜景は壮観である。12月のクリスマスシーズンから旧正月にかけては、ビクトリア・ハーバー沿いに建つビルに特別のイルミネーションが施される。

郊外や島嶼部に行くと昔ながらの風景を楽しむことができる他、自然が多く残されており、ハイキングなどを楽しむことができる。また、2005年9月に香港の新たな名所として香港ディズニーランドがオープンした。

近い上に観光資源が豊富なことから、1970年代の海外旅行ブームのときより日本人の間で人気の旅行先としての地位を保っている。また、それに対し近年は日本が香港市民の人気の旅行先として定着しており、当初は東京東京ディズニーランド原宿など)を主な旅行先とするケースが多かったものの、近年は東北地方温泉地巡りや、北海道でのスキー大阪九州テーマパークなど、その目的地が日本全国へと広がっており、香港市民の日本へ対しての興味の幅広さがうかがわれる。

観光スポット

ホテル

ザ・ペニンシュラ香港(左)とシェラトン・香港(右)

コンデナスト・トラベラーやインスティテューショナル・インベスターなどのホテルランキングで高い評価を受ける超高級ホテルや国際的チェーンホテルから、長期滞在者向けの低価格宿泊施設までさまざまなホテルが揃っている。

交通

通信

香港では郵便電話インターネットなど地球上で使用可能な通信手段は概ね全て享受でき、サービス品質も世界の国と地域の中で最も高い部類に入る。ただし、電報は利用者が減り、サービスが終了した。電話に措いては多数の通信運営会社が設立され、各社の自由な競合の結果、香港の固定電話携帯電話市場で消費者は安価で良質なサービスが受けられるようになっている。

郵便

香港郵政総局

香港での郵便事業は香港郵政 (Hongkong Post) が行っており、これはイギリス統治時代から引き継がれたものである。1997年の中華人民共和国への返還後も、中国郵政とは切り離して運営されている。ただし返還にあたっては、香港郵政のCIが変更されるなどの変化が見られた。現在、香港にある郵便ポストの色は「深緑」であり、これはコーポレートカラーにもなっている(イギリス統治のロイヤルメール時代は、香港郵政のコーポレートカラーは「赤」であった)。万国郵便連合 (UPU) に準拠する。

電話(固定電話)

固定電話同士の市内間通話料金は、基本的に無料である(データ通信は課金対象となる)。香港の固定電話事業のサービスは数社が行っている。最大手は電訊盈科(PCCW)で、その後に和記電訊 (Hutchison Telecom) や新世界電訊 (New World Telecom) などが続く。香港では固定電話にもナンバーポータビリティ制度が存在するため、各社の競合が見られる。

香港の主な電話会社
  • 電訊盈科(電訊盈科有限公司、Pacific Century Cyberworks Limited)
  • 和記環球電訊(和記環球電訊有限公司、Hutchison Global Communications Limited)
  • 九倉新電訊(九倉電訊有限公司、Wharf T&T Limited)
  • 新世界電訊(新世界電訊有限公司、New World Telecommunications Limited)
  • 香港寬頻(香港寬頻網絡有限公司、Hong Kong Broadband Network Limited)
※2007年6月現在。

国際電話に至っては、香港ではその運営会社が数十社があると言われており、料金からサービス品質まで、消費者にとっては様々な選択が可能となっている。

市内には公衆電話が多数設置されている。中には、クレジットカードが使用できたり、公衆電話端末の液晶ディスプレイからインターネットを閲覧できる高機能型のものもあるが、携帯電話などの普及によりその数は減少傾向にある。

電話(携帯電話)

現在香港では、多数の携帯電話運営会社が乱立している状態にあり、その間で競合が激化している。香港の携帯電話普及率は概ね人口比の8割~9割で、世界で最も高い水準にある。各社とも電波受信エリアの人口カバー率はほぼ100%であり、地下鉄やトンネル、超高層ビルなどを含む香港のほとんどの箇所で発着信が可能である。

香港の主な携帯電話会社

香港で最も使用されている携帯電話は、第二世代携帯電話 (2G) と呼ばれるGSM方式である。現在、CDMA方式などの第三世代携帯電話 (3G) へ徐々に切り替えが移行している。月極めによる一般的な契約形態に加えて、プリペイド式携帯電話の様な前払い料金制での契約も多い。

香港の携帯電話では、欧米諸国と同様に着信にも課金が行われる。

また、日本国内で契約された国際ローミングを対象としている携帯電話(またはPHS端末)のうち、香港で使用可能なローミングサービスはNTTドコモauソフトバンクモバイルの3社から提供されている。国際ローミングを対象としていない日本の携帯電話は、香港では使用できない。

日本国内で契約された国際ローミングを対象としている携帯電話の通話料金は非常に高いため、香港によく渡航する人はプリペイド式携帯電話を香港で購入した方が経済的。契約にはパスポートのみ必要。香港以外に渡航した場合でも、渡航した国にてSIMカードを購入すれば日本、韓国以外の全世界で利用可能。

インターネット

香港でのインターネット接続は、普及率の高いケーブルテレビADSLなどのブロードバンドが主流である。また、FTTH光ファイバー接続)も普及してきている。香港のインターネット普及率は、概ね8割程度と高水準である。数多くのサービスプロバイダーが事業を展開しており、日本の企業ではSo-netNTTKDDIなどが進出している。

香港では個人のインターネット普及率が高く、市街の至る箇所に無線LANホットスポットが設置されているが、いわゆるインターネットカフェの様な公共性のあるネット環境は比較的少ない。ホテルもブロードバンド有料の例が多い。

1997年の『一国二制度』の方針により特別行政区として高度な自治権を有する香港では、中華人民共和国政府によるインターネット接続のいかなる言論及び表現の規制や統制、監視も行われない事となっており、現在はその方針が遵守されている。ただし、香港の捜査当局が犯罪捜査のため盗聴を行うことは一定程度認められている。

この一国二制度の遵守により香港は、中華人民共和国領内に及ぶ広域ファイアーウォールである『金盾』のネットワークからはマカオ特別行政区も含めて除外され、イギリス統治時期同様に日本や欧米各国と変わらない自由で干渉のない情報交流の環境が整えられている。またこれとは逆に、本土側から閲覧や検索のできない香港のニュースメディアやサイトが多数存在する事が確認されている。

WWWにおける、香港の国別コードトップレベルドメインは『.hk』である。香港で登録されるウェブサイトの中で、現在ではセカンドレベルドメインによるものが最も一般的となっている。

報道・メディア

香港基本法は言論および報道の自由や通信の秘密を規定している。言論及び報道の自由が極度に制限されている中華人民共和国本土と異なり、香港基本法の存在のためにこれらの規定は比較的遵守されている。ただし、広告主となる企業の多くは、中華人民共和国本土で活動するうえで、中央政府の意向を気にせざるを得ない。香港経済における本土系企業のプレゼンスも増大している。そのため、広告収入に依存するメディアには、自主規制する傾向が出ているといわれる。また、有力なメディアが中華人民共和国よりの企業に買収されるケースも起こっている。低価格路線が、独立したメディアの存続を危機にさらし、広告収入への依存を強めているという側面もある。

主な新聞には、中道および右派として『信報財経新聞』、『明報』、『東方日報』、『蘋果日報』などがある。『蘋果日報』が最も中国共産党政府に批判的といわれるが、最近は遠慮がちになってきたとも言われる。『信報財経新聞』は経済専門誌、『明報』は高級紙だが、それ以外は日本のスポーツ新聞に近い内容が多い。一方、左派の新聞としては、『文匯報』『大公報』『香港商報』などがある。左派の新聞は、一般読者が少ないものの、中国共産党政府の強い影響下にあり、本土系企業の広告収入も多く得ているといわれる。

テレビに関しては、テレビの記述を参照)

言語

公用語

香港で使用される言葉-右上から逆時計回りに:広東語、香港風英語北京語朝鮮語、香港風日本語タガログ語

公用語英語中国語であるが、事実上の共通語は、方言の一つである広東語である。人口の 95.2%が広東語を常用もしくは理解し、38.1%が英語を常用もしくは理解する。英語は中国語に対する上位言語であり、イギリスの統治が始まってから1974年までの間、唯一の公用語とされていたが、中国語(普通話に近い形で書いて広東語で発音する)も事実上の公用語であった。香港が中国に返還された後(1997年以降)は、香港特別行政区基本法第9条により、香港の行政・立法・司法の場において、中国語に並ぶ正式な言語として英語を用いることができると規定されている。なお、香港で最も広く用いられている言語が広東語であるのは前述のとおりであるが、基本法同条の規定では単に「中国語」(中国語:「中文」、英語:「Chinese language」)とのみ書かれており、普通話・広東語の別については規定されていない。

香港はイギリス領(植民地)であると同時に国際自由港であるため社会的上昇の手段として英語の取得は重要であり、英語教育の指向性は高かった。2003年より、学科の内容理解を深めることを目標に、中学・高校で中国語を用いて授業を行なうことを奨励する政策(母語教学)を実施している。

中華人民共和国の改革開放政策により、1980年代後半から中華人民共和国との往来が盛んになったことから、普通話北京語をベースにした中国語の標準語。「国語」とも呼ぶ)が普及しつつある。かつては北京語で授業を行う学校は、中国共産党系ないしは中国国民党系の学校だけであったが、中華人民共和国への返還を控えた1990年代からは、大部分の小中学校で普通話会話の授業を導入している。返還後、政府の会議も、北京語の同時通訳が用意されるのが当たり前になっている。

一般的に中国語は繁体字で表記されるが、中国返還後、政府関係の資料は簡体字でも提供される例が増えている。香港では広東語を表記するための方言字も多く使われており、政府も香港増補字符集という文字セットを制定している。

歴史上の経緯から、香港で使われている英語はイギリス英語の影響を強く受けている。そのため、日本でよく目にするアメリカ英語による表記と比べて、例えば下記のような違いがある。

  • "centre"、"colour"など、単語の一部がイギリス風の表記をされる場合が多い。
  • 建物の階層の数え方は、地上階(日本の1階)を"ground floor (G/F)"と呼び、その上の階層を"first floor (1/F)"、"second floor (2/F)"…の様に数える。
  • 「地下道」を"subway"、「エレベーター」を"lift"、「小学校」を"primary school"と呼ぶ(アメリカ英語ではそれぞれ"underpass"、"elevator"、"elementary school")。

(詳細は、イギリス英語アメリカ英語の項を参照)

他の言語

広東語以外の中国語集団としては、北京語客家語潮州語上海語閩南語などを母語とする人たちがいる。また、香港手話を母語とする中国系の人たちがいる。外国出身者では、タガログ語インドネシア語ヒンディー語日本語タイ語などを母語とする人たちが比較的多い。

香港における人名

かつてイギリスを宗主国としていたことから、香港には本名とは別に英語名を持つ人が多く存在する。これは、例えば「陳(チャン・Chan)」と「張(チャン・Cheung)」の様に中国語の人名が英語を母語とする者にとって区別が困難であったり、発音し難いものであったりするために個人識別の補助手段としてイギリス人が現地人の使用人や生徒等に名付けたのが起源であるといわれている。また、同姓が多いため混乱を避けるためや広東語と北京語では同じ苗字でも発音が違うため混乱をさけるため香港の人達が使い始めたのでありイギリス人がつけたものではないともいわれている。香港人の名乗る英語名のほとんどは、役所への届出を経て名付ける正式な名前では無く(例外として、中国語圏以外に出自を持つ香港人が中国語名と外国語名を共に正式な名前とする場合など)通称のようなものであるため、IDカードパスポートなどへの記載は各自の選択に任されている。またそれ故、自由に名乗り、名乗ることを止め、または改名することができる。

香港人の英語名は、学校で英語の授業を受ける際に教師などによって名付けられたり、家庭によってはそれ以前の幼少期から本名と並んで名付けられたりする。ほかに、仕事上の必要(欧米人とのビジネスの機会が多いなど)に応じて自ら名乗るケースもある。もちろん、その者の社会的な地位や考え方などによっては英語名を持たない場合もありうる。

具体的な名乗り方は、多くの場合「英語名-姓」の順に名乗る(例:陳港生(本名)=ジャッキー(英語名)・チャン(姓)/日本ではジャッキー・チェン)が、会話上では英語名のみで呼び合うことが多い。ビジネスの名刺など、中国語名と姓名のアルファベット表記を併記する様な場合は、漢字で本名を記載し、それに併せて「英語名-名(または名のイニシアル)-姓」(例:張卓立・Charles C.L. Cheung)と記載する。また、姓を真ん中にした表記も見られる。

ちなみに、欧米圏の言語を母語としない者が欧米風の名を名乗る他のケースにクリスチャンネームがあるが、前述のとおり香港人の英語名はこれとは別の由来によるものなので、英語名を名乗っていることとその者の信仰には関係が無い場合が多い。 香港人の中にはトマトやフルーツなど野菜や果物の名前などを英語名として使っている人もいるし、自分の名前を英訳してそれを英語名としている人もいる。 また最近では、日本ブームにのり、一部の親日香港人の間で、日本風の名前 をファーストネームにする人もいる。

教育

香港科技大学

学年度は9月に開始され7月までの2学期制で、1学期目は9月から2月で、2学期目は3月から7月までとなっている。

幼稚園

2006年、香港政府は幼稚園児を持つ家庭への「学券」(教育バウチャー)の配布を発表した。当初は、非営利の幼稚園に限定するとしていたが、営利の幼稚園や子供をそこに預けている人々から反発され、政府は2007年9月以前に限って時限適用することを発表した。

初中等教育

イギリスの制度に準じ、初等教育6年間、中等教育7年間(前期中等教育3年間、後期中等教育2年間、予科2年間)となっている。義務教育は、初等教育と前期中等教育の合計9年間で、その間の授業料は無料となっている。

高等教育

政府認可を受けた法定大学(公立)が8校ある。1911年に創立された香港初の総合大学であり、香港の最高学府である香港大学や、1963年に3学院の合併により設立された香港中文大学が国際的に著名である。長らく、香港の大学は、この2校だけであった。その後、1984年に香港城市大学、1991年に香港科技大学、1994年に香港理工大学香港浸会大学、1999年に嶺南大学が成立した。新設された香港科技大学以外は、いずれも既存の学院からの昇格である。他に香港公開大学がある。さらに2006年12月、樹仁学院が正式な大学への昇格を認可され、香港初の私立大学(政府からの資金援助を受けない)である香港樹仁大学となった。

大学以外の高等教育機関としては、法定学院(公立)が2校、註冊専上学院(私立)が2校ある。詳細は中国語Wikipedia「香港の高等教育」の項を参照。

また、2000年からは「副学士」制度が導入された。アメリカのコミュニティー・カレッジが授与する準学士や日本の短期大学士に相当するが、香港では大学などが実施する2年もしくは3年のコースとして実施されている。

3+3+4学制

3+3+4学制は、返還後、董建華行政長官が推進した教育制度改革(中国語)の一環である。中等教育における予科(2年間)を廃止し、1年間ずつ後期中等教育と大学に振り分ける。その結果、前期中等教育が3年間、後期中等教育が3年間、大学が4年間となる。新制前期中等教育は2006年度から、新制後期中等教育は2009年度から、新制大学は2012年度から開始される。

改革の理由は二つある。従来の予科の教科内容が専門的かつ高度すぎ、むしろ大学入学後に学習するのが適切な部分が多いとの批判があった。また、3+3+4学制のほうが、アメリカ合衆国など主要な諸外国の教育制度と親和性が高いとされた。

後期中等教育(日本の高校に相当)から理科系と文科系に分かれるため、前期中等教育の3年生で選択が求められる。従来の後期中等教育修了テスト「香港中學會考」と予科修了テスト「香港高級程度會考」は、「香港中學文憑考試(中国語)」に一本化される。

文化

映画

ジャッキー・チェン(成龍)

映画産業がイギリスの植民地時代から盛んであり、ゴールデン・ハーベストなどの大手映画制作会社の本拠地があるなど、中国語圏における映画産業の一大拠点として君臨しているだけでなく、日本や韓国と並びアジアの映画産業における中心の一つとなっている。

また、1960年代から現在に至るまで、ブルース・リージャッキー・チェンサモ・ハン・キンポーチョウ・ユンファなど数多くの世界的に有名な映画スターを生み出してきているほか、ウォン・カーウァイジョン・ウーレナード・ホー などの世界的に有名な映画監督を輩出しており、その存在感は非常に高い。

テレビ

地上波では、TVBATVの2局があり、広東語英語による放送が各2チャンネルずつ、合計4チャンネルである。広東語放送はマカオ広東省各地で受信されているだけでなく、マレーシアシンガポールオーストラリアでも一部番組が放送されており、香港文化伝搬のメディアとなっている。

鳳凰衛視などの香港系の衛星放送チャンネルもあるが、法規制を受けて、英語または国語で放送している。中国国内の衛星放送もおおむね受信可能であるが、個人で受信する例は多くない。

主なホテルでは、客室で日本の民放NHKの国際放送や欧米、中華人民共和国本土を含むアジア各国の番組を見られるようにしている例が多い。

ちなみに香港の多くの芸能人はTVBまたはATVの専属となっており、TVB専属のタレントはATVに出演できない(その逆もできない)。

美術

香港藝術館

九龍の尖沙咀にある香港藝術館 (Hong Kong Museum of Art) や、新界の沙田にある香港文化博物館 (Hong Kong Heritage Museum) などの美術館や博物館では、新旧の作家の作品を鑑賞することができる。また、香港の各地にも個人法人の経営などによるギャラリーが点在しており、灣仔の香港藝術中心 (Hong Kong Arts Centre) では最近の作家を中心とした作品の展示が行われている。

2年に一度、香港の美術の祭典である『香港ビエンナーレ』が開かれる。また、イタリアヴェネツィアで2年に一度開かれる『ヴェネツィア・ビエンナーレ』にも、香港出身のアーティストによる作品が香港代表として出展がされる。

香港の著名な作家としては、トリコロールシートを使用した作品で知られるスタンレー・ウォン(又一山人)や、グラフィックデザイナーのアラン・チャン(陳幼堅)などが挙げられる。特にアラン・チャンは日本三井住友銀行ロゴなど、香港以外での企業CIインテリアをデザインしていることでも知られる。

また香港発のデザイン情報誌Idn』が発行されるなど、香港はアジアの中でも美術に関する意識は比較的高い位置にあると考えられる。香港は広告産業が盛んである土地柄、香港の美術は各種コマーシャルと密接に関わりがあることも多い。近年では造形作家のマイケル・ラウ(劉建文)やエリック・ソー(蘇勲)、鐵人兄弟 (brothersfree) などを筆頭としたフィギュアなどの立体造形作品、『時空冒険記ゼントリックス』(時空冒險記ZENTRIX)や『春田花花幼稚園』シリーズに代表される香港製アニメーションなどの製作も盛んになっている。

香港の生活や歴史、文化などからインスパイアされた作品が多いが、ヨーロッパや日本、アメリカなどの文化から受けた印象を作品に反映させる例も多く見られ、貿易都市ならではの一面も伺わせる。

その中で、特に香港での日本からの影響は大きい。これは香港で放映される番組などで、日本のアニメーションやドラマなどのコンテンツが数多く提供されていることが考えられる。これは若年層の中では既に文化の中心のひとつともなり、しばしば若手作家による作品の題材となることもある。

音楽

香港大会堂

台湾に並ぶ中国語広東語圏内のポピュラー音楽の流行発信地の一つとして、アジア圏内で人気が高い多くの歌手を多数輩出している。また、粤劇国楽の演奏団や、イギリスから伝わったバグパイプの楽団などの特徴ある音楽団体も多い。なお、アメリカやイギリスのポピュラー音楽の人気も高いが、平井堅浜崎あゆみなどの日本人歌手、アーティストも安定した人気を保っており、CDショップにはJ-POPのコーナーもある。

2006年7月10日 - 7月13日にかけて、香港文化中心 (Hong Kong Cultural Centre) と香港市民大会堂 (City Hall) で、国際青少年合唱祭がアジアでは初めて開催された。

ファッション

東京と並ぶアジアにおけるファッションの発信地として君臨しており、上海灘ジョルダーノジョイスなどの有名ブランドセレクトショップの他、アラン・チャンジョアンナ・ホーなどの世界的に著名なデザイナーやクリエイターを多数輩出している。地元デザイナーやブランドが多数いる上、中華人民共和国本土やアジア諸国など広大なマーケットを持つことから、香港ファッションウイーク(香港時装節春夏系列/秋冬系列)や香港国際毛皮時装展覧会(香港ファーファッションフェア)などのファッション関連のフェアやトレードショーなども定期的に行なわれている。

スポーツ

香港ジョッキークラブ

香港の国内オリンピック委員会(NOC)である香港体育協会及びオリンピック委員会は大陸のNOCである中国オリンピック委員会とは別個に国際オリンピック委員会の承認を得ている。このため香港のスポーツは1997年に香港が中国に復帰してからも、大陸のスポーツから完全に独立しており、国際大会には「チャイナホンコン」として出場する。大陸で盛んなスポーツでは選手選抜が大陸より容易であるため卓球選手など、本土から香港へ移住して出場する選手も少なくない。なお、香港出身のオリンピック金メダリストはヨットミストラル級リー・ライ・シャン(李麗姍)選手だけである。

近年に香港で行われる大規模なスポーツイベントとしては、「香港セブンス」と呼ばれる7人制ラグビーの大会や、市民約3万人が参加するスタンダード・チャータード香港マラソンなどがある。

香港はイギリス植民地であった影響から競馬が盛んである。このためウマの輸出入に対する検疫の制度整備は大陸より進んでいる。一方で大陸はこの検疫が厳重であるため2008年北京オリンピック馬術競技は大陸での開催ではなく、香港の沙田競馬場及び隣接した施設で開催される予定となっている。既述の通り大陸と香港ではNOCの掌握が異なるが、オリンピック競技の一部が異なるNOCの領域で実施されるのは1956年メルボルンオリンピック以来である。(競馬に関する詳細については香港の競馬を参照

2009年には第5回東アジア競技大会が開催される。

宗教

ビル入口にまつられている祠

仏教道教、ついでキリスト教徒(1993年ではプロテスタント 25 万 8,000 人、カトリック 24 万 9,180 人)が多い。

道教に根ざした思想や風習がひろく市民の間に浸透している。関帝天后など道教の神を祀った寺院(道観)が、中心部・郊外を問わず、各所に建てられている。また、近代的なビルの一角やオフィス、店舗の片隅に関帝が祀られていたり、路傍などに土地神を祀る小さな祠がしつらえられていることも多く、そこには多くの場合、線香や供物が絶やさず供えられている。

イギリスによる長年の統治の影響により、キリスト教も比較的ひろく信仰されている。歴史的な建造物であるものから雑居ビルの一室のものまで含めた各宗派の教会や、キリスト教系の団体を母体とする福祉施設や学校などが数多く存在している。他にも仏教寺院やイスラム教モスクなどもある。

食文化

中華料理

飲茶

広東潮州四川上海北京台湾マカオ客家などをはじめとする中華料理店が香港中にある他、飲茶の本場として知られており、これらの料理を楽しむために訪れる観光客も多い。このためもあり、香港政府観光局は毎年「Best of the Best-香港料理大賞」を開催して、料理界の盛り上げに一役買っている。

その他の料理

イギリス統治時代の影響から食文化も欧米化されており、イタリア料理フランス料理ドイツ料理などの洋食の人気も高い。また、比較的古くから日本料理も高い人気を保っており、在留邦人向けでなく、地元住民を主なターゲットとした寿司屋やラーメン店、居酒屋なども多い。ただし日本料理店は大きく2種類に分けられ、日本人の経営者もしくは板前がいて、食材も日本から空輸して提供している「正規な」日本料理店と、香港人が、これが日本料理であろうということで調理したものを提供する「日本料理 もどき」と呼ばれる店がある。在港日本人に人気があるのは当然前者のほうであり日本企業間での接待の場所、各方面の在港日本人会の会合場所として利用されるが、後者の評判は邦人の間ですこぶる悪く、もっぱら香港人の舌に合う料理として、香港人の間ではやっている。

他にも、家政婦や警備員、IT関連の職種に従事するためフィリピンインドネシアインドタイなどからやってきている人たちも多く、これらの国の料理を中心としたエスニック料理店も多く、輸入食材を扱う店もあちこちにある。 また、韓国料理店も多くある。

軽食・ファストフード

洋風ファストフード店「Café de Coral(大家樂)」

洋風または中華風の軽食を「茶餐廳」と呼ばれるカフェで食べることも多く、各種ファストフード店や、「餅店」と呼ばれるケーキ屋、パン屋も香港中で見ることができる。また、コンビニエンスストアでも軽食を買える。かつて、多かった屋台は衛生上制限を受け、決められた場所でまとまって営業をしているにとどまる。

菓子

また、日本の菓子(「零食」と呼ばれる)の人気も高く、コンビニエンスストアスーパーマーケットでは「ポッキー」や「コアラのマーチ」、「かっぱえびせん」などの日本直輸入や現地生産の日本ブランドの菓子を多く見かける上、「零食物語/OKASHI LAND」や「優の良品/AJI ICHIBAN」など、日本語表記の菓子チェーン店も存在する。

映画の中の香港

美しい風景と生活観溢れる風景が隣り合わせにある香港を、香港で製作された映画だけでなく、ヨーロッパ日本アメリカで製作された多くの映画作品が舞台に、または劇中の一場面として描いている。

関連項目

脚注

  1. ^ Monthly Meteorological Normals for Hong Kong”. Hong Kong Observatory. 2008年2月1日閲覧。
  2. ^ 「『基本法解釈の正しい認識を』全人代常委副秘書長」人民網日本語版2004年04月09日

外部リンク

政府
日本政府
観光

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その他

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