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「ヤード・ポンド法」の版間の差分

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* 1[[チェーン (単位)|チェーン]](chain) = 4ポール = 20.116 8 m
* 1[[チェーン (単位)|チェーン]](chain) = 4ポール = 20.116 8 m
* 1[[ハロン (単位)|ハロン]](furlong) = 10チェーン = 201.168 m
* 1[[ハロン (単位)|ハロン]](furlong) = 10チェーン = 201.168 m
* 1[[マイル]](mile, ml) = 8ハロン = 1760ヤード = 1.609 344 km
* 1[[マイル]](mile, ml) = 8ハロン = 1 760ヤード = 1.609 344 km
* 1[[リーグ (単位)|リーグ]](league) = 3マイル = 4.828 032 km
* 1[[リーグ (単位)|リーグ]](league) = 3マイル = 4.828 032 km



2009年8月7日 (金) 13:37時点における版

ヤード・ポンド法は、英語圏諸国で使用されている単位系である。

概説

「ヤード・ポンド法」という名称は、長さはヤード、質量はポンドを基本となる単位としていることによる日本での名称である。英語では、イギリスの大英帝国時代に定められたことからImperial unit(帝国単位)と呼んでいる。アメリカ合衆国で使われている単位系はU.S. customary unit(米慣習単位)といい、歴史的経緯により同じ単位名称でも値が異なるものもある。本項では、イギリスの帝国単位とアメリカ合衆国の米慣習単位の両方について説明する。

歴史

ヤード・ポンド法は、西洋で古代から使われ変遷してきた単位の延長線上にあるものである。すなわち、イギリス以外のヨーロッパ諸国でも、かつてはヤード・ポンド法と発祥を同じくする、それと似たような単位(ただし名称は言語により異なる)を使用していた。それらの国は早いうちにメートル法へ完全移行したため、20世紀までには、ヤード・ポンド法およびそれに類する単位系を常用する国は、主要国ではイギリスとアメリカ合衆国を残すのみとなった。

イギリス

イギリスの帝国単位は、1824年の度量衡法(Weights and Measures Act)によって初めて法的に定義され、以降改正が加えられた。その単位系はイギリスの当時の植民地および英連邦諸国でも使われたが、その時すでにアメリカ合衆国はイギリスから独立しており英連邦にも入っていなかったため、イギリスの度量衡法は導入されていない。

イギリスとアメリカ合衆国とで基本となる単位の値にわずかな違いがあったため、1958年にSI単位系(メートル法)の単位によって定義された同じ値(1ポンド=0.453 592 37キログラム、1ヤード=0.914 4メートル)を採用することを協定した。その意味ではヤード・ポンド法はもはやSI単位系なしには存在しえないといえる。

イギリスでは1995年にSI単位系に移行し、ヤード・ポンド法の単位は一部を除いて2000年から使用を禁止しているが、現在でもメートル法の使用に反対する人たちがいる(Anti-metric movement)。

アメリカ

アメリカ合衆国は、1875年に締結されたメートル条約の原加盟国であり、以降、法律上はメートル法を公式の単位系としている。ヤード・ポンド法をcustomary unit(慣習的な単位)と呼んでいるのはそのためである。

しかし、メートル条約加盟から1世紀以上たっているが、今日でもアメリカ合衆国では一般にはヤード・ポンド法の方が広く使用されている。1992年以降、日常的に使用する単位をメートル法(国際単位系)へ移行するための政府の取り組みもあるが、法的にはヤード・ポンド法の使用は禁止されていない。アメリカ合衆国でも、メートル法への移行に反対する運動が起きている。

今日、ヤード・ポンド法の使用が禁止されていないのは、アメリカ合衆国のほかミャンマーリベリアのみで、後者2か国でも民間主導でメートル法への移行が行われ、今日ではヤード・ポンド法はほとんど使用されていない。

アメリカ合衆国がいまだにヤード・ポンド法を使用しているため、メートル法に移行した国の多くでも、アメリカ合衆国の強い影響下にある分野(航空、宇宙分野など)に限定して、ヤード・ポンド法の使用を法的に認めざるを得なくなっている。また、それ以外の分野についても、ヤード・ポンド法の単位が使用されていたり、メートル法であってもヤード・ポンド法の単位の整数倍の値が使われていたりする。

日本

日本では、明治42年(1909年)にヤード・ポンド法の使用が認められた。大正10年(1921年)に使用が禁止されたものの、戦後、再び使用が認められた。昭和34年(1959年)1月1日より計量法によりメートル法のみを使用することとなり、尺貫法とともにヤード・ポンド法の使用は禁止された。

単位

長さ

ヤードが基本単位とされているが、実際にはフィートを元に組み立てた単位の方が多い。

  • 1バーレイコーン(barleycorn) = 1/3インチ = 約8.467 mm
  • 1インチ(inch, in) = 1/12フィート = 2.54 cm
  • 1フィート(foot (複feet), ft) = 1/3ヤード = 30.48 cm
  • 1ヤード(yard, yd) = 0.914 4 m (定義)
  • 1ポール(pole) = 5.5ヤード = 5.029 2 m
  • 1チェーン(chain) = 4ポール = 20.116 8 m
  • 1ハロン(furlong) = 10チェーン = 201.168 m
  • 1マイル(mile, ml) = 8ハロン = 1 760ヤード = 1.609 344 km
  • 1リーグ(league) = 3マイル = 4.828 032 km

面積

長さの単位の平方(平方フィート、平方マイルなど)が使用されるが、それとは別の定義による以下の単位がある。

  • 1ルード(rood, ro) = 1ポール×1ハロン = 1 210平方ヤード(yd2) = 1 011.714 105 6 m2
  • 1エーカー(acre, ac) = 1チェーン×1ハロン = 4ルード = 4 840平方ヤード(yd2) = 4 046.856 422 4 m2

容積

ガロンを基本の単位とする。ヤード・ポンド法では、液体用(液量ガロン)と穀物用(乾量ガロン)で異なるガロンを用いている(乾量単位・液量単位を参照)。さらに、イギリスとアメリカではガロンの値が異なる。イギリスでは液体用と穀物用の単位を統一しているので、全部で3種類のガロンがあることになる。さらに、それぞれのガロンの分量・倍量単位として、同じ名前の異なる単位が存在することになる。

以下に示すのは英ガロンによる値である。

米液量ガロンでは以下のようになる。

  • 1液量オンス = 29.573 529 562 5 mL
  • 1パイント = 1/2クォート = 16液量オンス = 473.176473 mL
  • 1クォート = 1/4ガロン = 946.352 946 mL
  • 1ガロン = 3.785 411 784 L(定義)
  • 1バレル = 31.5ガロン = 119.240 471 196 L

国際的に原油の計量に用いられるバレルは、42米液量ガロン(158.987 294 928 L)である。

質量

ポンドを基本単位とする。質量の単位には常衡トロイ衡(金衡)・薬衡の3つの系統がある。普段用いられるのは常衡による単位であり、トロイ衡・薬衡については「トロイ」「薬用」を単位名称の前につける(常衡であることを明示する場合には「常用」をつける)。どの系統でもグレーンの値は同じであり、ポンドがその何倍であるかが異なる。薬衡は今日ではほとんど用いられておらず、トロイ衡もトロイオンス以外は用いられていない。

ハンドレッドウェイトは100ポンドであることに由来する名称だが、イギリスでは間にストーンが挿入されたため、1ハンドレッドウェイトは112ポンドとなっている。アメリカでは今でも100ポンドである。その上のトンの値の違いは、ハンドレッドウェイトの違いによるものである。区別のため、イギリス(英トン)のものはlong/gross、アメリカ(米トン)のものはshort/netが単位名称の前につけられることがある。

  • 1グレーン(grain) = 0.064 798 91 g
  • 1ドラム(drachm) = 1/16オンス = 1.7718451953125 g
  • 1オンス(ounce, oz) = 1/16ポンド = 28.349 523 125 g
  • 1ポンド(pound, lb) = 7000グレーン = 0.453 592 37 kg(定義)
  • 1ストーン(英)(stone) = 14ポンド = 6.350 293 18 kg
  • 1クォーター(英)(long quarter) = 2ストーン = 28ポンド = 12.700 586 36 kg
  • 1クォーター(米)(short quarter) = 25ポンド = 11.339 809 25 kg
  • 1ハンドレッドウェイト(英)(long hundredweight) = 4クォーター = 112ポンド = 50.802 345 44 kg
  • 1ハンドレッドウェイト(米)(short hundredweight) = 4クォーター = 100ポンド = 45.359 237 kg
  • 1トン(英)(long ton) = 20ハンドレッドウェイト = 2240ポンド = 1 016.046 908 8 kg
  • 1トン(米)(short ton) = 20ハンドレッドウェイト = 2000ポンド = 907.184 74 kg

単位系

ヤード・ポンド法はメートル法同様、度量衡である。一方、メートル法の中にMKS単位系CGS単位系などさまざまな単位系があるように、ヤード・ポンド法の中にもさまざまな単位系が(理論上は)ありうる。

ただしヤード・ポンド法の単位系はメートル法のようには混乱しておらず、基本的にFPS単位系(fps単位系)だけが使われている。そのため、度量衡と単位系をメートル法ほど厳格に区別する必要はない。

FPS単位系は、長さにフィート (feet)、質量にポンド (pound)、時間に (second) を使う単位系である。組立単位はそれらを乗除して作られる。体積の単位として立方フィートはよく使うのに立方ヤードはめったに使わないのはこのためである。

ただしFPS単位系のバリエーションとして、質量のポンドに代えてポンド重を基本単位にする重力単位系がある。

なお、ヤード・ポンド法の長さの単位は伝統的にヤードが基準とされているが、FPS単位系での長さの基本単位はフィートである。メートル法の中にセンチメートルを基本単位とするCGS単位系があるように、この2つは違ってもいいのである。

MKS単位系やCGS単位系は電磁気を扱うためにさまざまな拡張がなされた(国際単位系もその延長上にある)が、FPS単位系にはそのような拡張はない。そのためヤードポンド法には基本的に電磁気の単位がなく、ヤード・ポンド法を使っていても電磁気に関してはメートル法を使ったり、「ボルト毎フィート」のような単位系をまたがった組立単位を使うことになる。

日本でヤード・ポンド法が使われている分野

※正式には日本国内の商取引でインチやフィートなどの単位は使えないため、テレビ受像機などの商品などへの記載は「42型」などという表記をしている。

  • 電気製品
    • IC、LSI、関連電子部品(端子間隔でインチを単位としているものとミリメートルを単位としているものが混在している)
    • テレビ受像機ディスプレイモニタ(ブラウン管や液晶などの表示部の対角寸法でインチ)
    • 固体撮像素子(その呼びに相当する大きさの撮像管の撮像面サイズ)
    • ディスクメディアの媒体の直径。12 in = 304.8 mm、10 in = 254 mm、8 in = 203.2 mm、7 in = 177.8 mm、5.25 in = 133.35 mm、3.5 in = 88.9 mm、2.5 in = 63.5 mm、1.8 in = 45.75 mm など。ただし、CDの 120 mm はメートル法である。
    • 磁気テープ(媒体幅でインチ。長さの単位ではフィート)。たとえばVHSはハーフインチ(½ in = 12.7 mm)。
    • コンピュータ関連の、コネクタなど多くの構成部品、19インチラック
  • 自動車
  • その他の工業製品
    • 一部の食品の容量。1 US pt ≒ 473.176 ml は、アイスクリーム他、アメリカ占領時代の名残として沖縄に多くみられる。ジュース、ビールなどの350 cc 缶(アメリカンサイズ)は 12 fl oz ≒ 354.88 ml に由来。
    • 映画フィルム(媒体の長さをフィートで表す。幅はミリ)
    • 印刷関係(用紙のサイズ、ドットピッチ(dpi)等)。
    • トイレットペーパーのサイズ。標準的な幅 114 mm ≒ 4½ in、内径 38 mm ≒ 1½ in。
    • 軌間鉄道の線路の幅)。ごく一部を除きフィートが基準になっている。標準軌 = 1435 mm ≒ 4 ft 8½ in、狭軌 = 1067 mm ≒ 3 ft 6 in。
    • ジーンズなどのウエストサイズ(cm表示ではあるが、基本的にサイズは1インチ = 2.54 cm刻みで変えられており、それらをcmの近似値に換算表示している)
    • 拳銃口径(100分の1インチを単位として、100分の40インチ=40口径などと表現する)
  • スポーツ
  • その他
    • 航空交通管制飛行機の飛行高度をフィートで表現)
    • アメリカを発着する民間航空機の荷物重量制限(キログラムでも表示されるが、本来ポンド単位で決められている重量制限をキロ換算したもの。50ポンド→23kg 70ポンド→32kgなど。)
    • 航空会社マイレージプログラム。ヤード・ポンド法を使用している(あるいは過去使用していた)国との間の国際線だけでなく、その他の国との間の国際線および国内線、さらに他の方法によるポイント加算も全てマイル単位に換算し積算。

関連項目