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ラムジェットエンジンよりより高速向きのエンジンとして[[スクラムジェットエンジン]]がある。ラムジェットエンジンは亜音速燃焼であるが、スクラムジェットエンジンは超音速燃焼である点が異なる。マッハ5以上においては、空気流の亜音速減速が困難となるため、その速度域に向けて開発が進められている。 |
ラムジェットエンジンより、より高速向きのエンジンとして[[スクラムジェットエンジン]]がある。ラムジェットエンジンは亜音速燃焼であるが、スクラムジェットエンジンは超音速燃焼である点が異なる。マッハ5以上においては、空気流の亜音速減速が困難となるため、その速度域に向けての開発が進められている。 |
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== 脚注 == |
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2009年12月21日 (月) 07:24時点における版
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6c/Ramjet_operation.svg/250px-Ramjet_operation.svg.png)
ラムジェットエンジン(Ramjet engine)は、ジェットエンジンの一種であり、一般には吸入した空気をラム圧(ram)により圧縮し、そこに燃料を噴射して燃焼させた排気の反動で推進力を得る。その構造より、英語ではストーブパイプエンジンとも呼ばれる。ターボジェットエンジンより構造が簡易・軽量になる利点がある。
概要
ジェットエンジンが十分な出力を得るためには吸入した空気を圧縮する必要があるため、一般的なジェットエンジンの燃焼室前段には圧縮機が備えられている。しかし航空機が搭載するエンジンの場合、ある程度高速になるとラム圧のみで十分な圧縮が得られる。これを利用したものがラムジェットエンジンである。運転には高速の気流が必要で、マッハ3から5程度の領域に適しているとされる。単体では静止状態からの始動はできない。始動には少なくともマッハ0.5程度まで加速する必要があり、ブースターなどにより初速が与えられる。
ラムジェットはときに外燃機関であると誤解されるが、一般的なラムジェットは機関内部で燃焼を行い高温の燃焼ガスを噴射して推力を得る、速度型の内燃機関である。例外として原子力ラムジェットは外燃機関である。
ラムジェットエンジン前段部には、可動式のスパイクが設けられている。スパイクおよびインレットにより高速空気流をより狭いところへ導き、空気を圧縮する。スパイクは衝撃波を発生させ、超音速空気流を亜音速まで減速させる役割も持つ。この際、ほぼ等エントロピーでの圧縮が行われ、非常に高い動圧が静圧へと変換される。亜音速空気流中での燃焼による排気を噴射し、その反動により推進力を得る。圧縮機を駆動する必要が無いため、タービンはない。
歴史・実用化
ラムジェットエンジンは1913年にフランスで考案された。ただし、この時のものは、パルスジェットに近いものであった。その後もソ連やドイツで開発が進められてきたが、本格的な実用化研究が開始されたのは第二次世界大戦後のことである。1949年にフランスでラムジェットエンジン搭載機であるレドゥク 010が飛行している。レドゥク 010は初速は母機により与えられた。1955年にはターボ・ラムジェットエンジンのノール 1500 グリフォンが初飛行した。
1950年にはYH32 ホーネットというラムジェット駆動のヘリコプターが試作されている。これはローター端にラムジェットを設置して回転させるというもので、ローター回転によるトルクが発生せずテールローターが不要というメリットがあったが、航続距離や隠密性の問題から実用性が低かったため導入には至らなかった。
戦後に萱場製作所が試作したラムジェット回転翼装備の機体は、セスナ170系の胴体と客席、エンジン、プロペラに回転翼ユニットを取り付けたものであり、ヘリコプターとは分類されない[1]。
萱場製作所による試作機はレシプロエンジン推進力による滑走と相対風による回転翼の回転を得て離陸し、飛行中に空中静止を行いたい場合、ラムジェットに燃料を流して点火、以後回転翼は自力回転した。燃料を節約したければ再び前進速度を得た後にラムジェットは停止し、オートジャイロとして飛行継続から着陸が可能だった。ラムジェット駆動のままヘリコプターに近い飛行状態で着陸も可能だったものと推測される。しかしながら、オートジャイロはほとんど地上滑走を伴わない着陸も可能であることから、実用上の利益はほとんどない。
ラムジェットエンジンのみを用いた実用航空機は存在せず、高速時にラムジェット出力が大きいプラット・アンド・ホイットニーJ58を用いたSR-71偵察機が近いものと言える。
ラムジェットは各種ミサイルの推進機関として応用されている。ラムジェットが動作するまでの加速用ブースターに固体燃料ロケットを使用しており、固体ロケット統合型ラムジェットエンジンや固体ロケット・ラムジェット統合推進システムなどと表記される。例を挙げると、アメリカのボマーク地対空ミサイル、イギリスのシーダート、フランスのASMP、旧ソ連では特に多用されており、2K11クルーグ、2K12クブ、P-270モスキート、P-800オーニクス、Kh-31などがある。P-800オーニクスやKh-31ではブースター用の固体燃料ロケットが燃え尽きた後に生じる空洞をラムジェット用の燃焼室として再利用する設計が特徴的である。酸化剤を搭載する必要が無いため、ロケットエンジンよりも重量軽減や航続距離増大が望める。
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世界初のラムジェット機レドゥク010
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ローター端にラムジェットを有するYH32ホーネット
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固体燃料ロケットとラムジェットの複合推進機関を持つP-800オーニクス
ターボ・ラムジェットエンジン
低速時と高速時の双方に対応したエンジンとして、ターボ・ラムジェットエンジンが考案されている。これは、圧縮機・タービンをも装備し、低速時と高速時の空気流入経路を変更することにより、低速時はターボジェットエンジン、高速時はラムジェットエンジンとして駆動するものである。流入空気をターボジェットへ回すか、バイパスしてラムジェットとして機能させるかは飛行速度に応じてバイパスフラップで制御する。ターボジェットの外周部にラムジェットの機能を付加する形式ともいえ、高バイパス比ターボジェット(high-bypass-ratio turbojet)とも呼ばれる。
現在のところ、上記のコンセプトに基づいて製作された実用エンジンはSR-71とその原型機(A-12やYF-12)に搭載されたプラット・アンド・ホイットニーJ58シリーズ[2]のみである。J58自身は完全なラムジェットとはならない。マッハ3.2での巡航時には、吸入した空気の一部は圧縮機途中に展開されたバイバスフラップにより燃焼室外周部へ通され、ターボジェット部を迂回してノズル部に達する。ノズル部ではターボジェットのアフターバーナーを燃焼室としてラムジェット出力を発生する。この時、ラムジェットにより推力の8割が生み出される[3]。製造元のPratt & Whitney社はJ58をターボジェットと分類している。
なお、ターボ・ラムジェット機としてしばしばMiG-25が挙げられることがあるが、同機は3000km/hの高速飛行時に得られるラム圧を考慮して圧縮機の圧縮比を低く抑えてあるだけで、ラムジェットとしてのエンジン動作は行っていない。
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SR-71に搭載されているJ58のバイパス経路の動作概要。バイパス経路へ抽出された空気は燃焼室内には流れない
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J58の外観(右側が排気口)
スクラムジェットエンジン
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/ed/Scramjet_operation.png/250px-Scramjet_operation.png)
ラムジェットエンジンより、より高速向きのエンジンとしてスクラムジェットエンジンがある。ラムジェットエンジンは亜音速燃焼であるが、スクラムジェットエンジンは超音速燃焼である点が異なる。マッハ5以上においては、空気流の亜音速減速が困難となるため、その速度域に向けての開発が進められている。
脚注
- ^ 上野の国立科学博物館にラムジェットと回転翼ユニットの試験に使用されたと思しき噴射ノズル(コールド・ジェット)が展示されているが、カードには後者もラムジェットと表記されているので観覧時には注意が必要である。
- ^ http://aerostories2.free.fr/acrobat/technique/J58/J58A_genesis_eng.pdf]
- ^ http://www.hill.af.mil/library/factsheets/factsheet.asp?id=5786 Pratt & Whitney J58 Turbojet
関連項目
- 宇宙機の推進方法
- バサード・ラムジェット:恒星間宇宙船のためのアイデア。宇宙空間航行時に恒星間物質を収集、燃料として用いる方式
- 原子力ラムジェット:ラム圧により圧縮された空気を原子炉の炉心で加熱して噴射するもの。実用化された例はないが、製作された実例としては1950年代から60年代にかけてにアメリカで実施されたプロジェクト・プルートのTory-IICがある。