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[[中国]]では[[書道]]という言葉は使わず、'''書学'''という語を用いている。書学とは書の形式である書法を集成したものである。書法は中国の[[天才]]が創造したものだが、この書法の体得には、その天才たちの書(法書)を手本にして[[習字]]すること([[臨書]])が必要となる。<ref name="kaiduka">貝塚茂樹 P.9</ref> |
[[中国]]では[[書道]]という[[言葉]]は使わず、'''書学'''という語を用いている。書学とは書の形式である書法を集成したものである。書法は中国の[[天才]]が創造したものだが、この書法の体得には、その天才たちの書(法書)を手本にして[[習字]]すること([[臨書]])が必要となる。<ref name="kaiduka">貝塚茂樹 P.9</ref> |
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書法の要素には、[[#筆法|筆法]]・[[#間架結構法|間架結構法]]・[[#布置章法|布置章法]]がある。また、姿勢と机の高さも書法の体得への大切な要素である。背筋をよく伸ばし、机に対して握りこぶし一つぐらい空けて向かい、机の面が[[臍]]の位置にくるか、またはそれより少し低目する。紙面全体を上から見渡せるようにして、[[肩]]と[[手首]]の力を抜き、無理のない運筆ができるようにする。<ref>安原皐雲 P.24</ref><ref>書の技法用語100 P.68</ref> |
書法の要素には、[[#筆法|筆法]]・[[#間架結構法|間架結構法]]・[[#布置章法|布置章法]]がある。また、姿勢と[[机]]の高さも書法の体得への大切な要素である。背筋をよく伸ばし、机に対して握りこぶし一つぐらい空けて向かい、机の面が[[臍]]の位置にくるか、またはそれより少し低目する。紙面全体を上から見渡せるようにして、[[肩]]と[[手首]]の力を抜き、無理のない運筆ができるようにする。<ref>安原皐雲 P.24</ref><ref>書の技法用語100 P.68</ref> |
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== 書法の三大要素 == |
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'''腕法'''(わんほう)とは、腕の構え方である。'''大字や中字を書く場合'''は[[#懸腕法|懸腕法]]にし、'''小字を書く場合'''は[[#枕腕法|枕腕法]]、または[[#提腕法|提腕法]]を用いるのが適しているといわれているが、字の大きさに拘らず懸腕法のみを用いる人も少なくはない。筆は自分の前に来るようにする。 |
'''腕法'''(わんほう)とは、[[腕]]の構え方である。'''大字や中字を書く場合'''は[[#懸腕法|懸腕法]]にし、'''小字を書く場合'''は[[#枕腕法|枕腕法]]、または[[#提腕法|提腕法]]を用いるのが適しているといわれているが、字の大きさに拘らず懸腕法のみを用いる人も少なくはない。筆は自分の前に来るようにする。 |
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* <span id="懸腕法">'''懸腕法'''(けんわんほう)</span>とは、右腕を机につけず、腕と机がほぼ平行になるように構えて運筆する方法である。[[肘]]は突っ張らずに脇の下は適当にあけて、腕が自由に動かせるようにする。左手は[[半紙]]の左下端を軽くおさえ、[[体重]]をかけてはいけない。 |
* <span id="懸腕法">'''懸腕法'''(けんわんほう)</span>とは、右腕を机につけず、腕と机がほぼ平行になるように構えて運筆する方法である。[[肘]]は突っ張らずに脇の下は適当にあけて、腕が自由に動かせるようにする。左手は[[半紙]]の左下端を軽くおさえ、[[体重]]をかけてはいけない。 |
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* <span id="俯仰法">'''俯仰法'''(ふぎょうほう)</span>とは、左払いなど左に筆を運ぶ場合は筆管を左に傾けて手の甲を上にし('''俯''')、右払いなど右に筆を運ぶ場合は筆管を右に傾けて掌を上にする('''仰''')用筆法をいう。[[#側筆|側筆]]の一種。[[大師流]]と称する人が用いることが多い。<ref>書の技法用語100 P.146</ref><ref>書道辞典 P.110</ref> |
* <span id="俯仰法">'''俯仰法'''(ふぎょうほう)</span>とは、左払いなど左に筆を運ぶ場合は筆管を左に傾けて手の甲を上にし('''俯''')、右払いなど右に筆を運ぶ場合は筆管を右に傾けて掌を上にする('''仰''')用筆法をいう。[[#側筆|側筆]]の一種。[[大師流]]と称する人が用いることが多い。<ref>書の技法用語100 P.146</ref><ref>書道辞典 P.110</ref> |
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* <span id="折法">'''折法'''(せっぽう)</span>とは、[[点画]]における運筆上のリズムのこと。[[楷書体|楷書]]の'''三折法'''([[#起筆|起筆]]・[[#送筆|送筆]]・[[#収筆|収筆]])を基準とし、篆書などの一折法、隷書などの二折法、そして、多折法がある。<ref>書の技法用語100 P.90</ref> |
* <span id="折法">'''折法'''(せっぽう)</span>とは、[[点画]]における運筆上のリズムのこと。[[楷書体|楷書]]の'''三折法'''([[#起筆|起筆]]・[[#送筆|送筆]]・[[#収筆|収筆]])を基準とし、[[篆書体|篆書]]などの一折法、[[隷書体|隷書]]などの二折法、そして、多折法がある。<ref>書の技法用語100 P.90</ref> |
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=== 間架結構法 === |
=== 間架結構法 === |
2010年6月5日 (土) 10:13時点における版
書法(しょほう)とは、文字を書く方法である。その三大要素として、筆法・間架結構法・布置章法がある。[1][2]
概要
中国では書道という言葉は使わず、書学という語を用いている。書学とは書の形式である書法を集成したものである。書法は中国の天才が創造したものだが、この書法の体得には、その天才たちの書(法書)を手本にして習字すること(臨書)が必要となる。[3]
書法の要素には、筆法・間架結構法・布置章法がある。また、姿勢と机の高さも書法の体得への大切な要素である。背筋をよく伸ばし、机に対して握りこぶし一つぐらい空けて向かい、机の面が臍の位置にくるか、またはそれより少し低目する。紙面全体を上から見渡せるようにして、肩と手首の力を抜き、無理のない運筆ができるようにする。[4][5]
書法の三大要素
筆法
筆法(ひっぽう)とは、筆の使い方であり、腕法・執筆法・用筆法がある(以下、記述の便宜上、右手で筆を持つことを前提として記す)。
腕法
腕法(わんほう)とは、腕の構え方である。大字や中字を書く場合は懸腕法にし、小字を書く場合は枕腕法、または提腕法を用いるのが適しているといわれているが、字の大きさに拘らず懸腕法のみを用いる人も少なくはない。筆は自分の前に来るようにする。
- 懸腕法(けんわんほう)とは、右腕を机につけず、腕と机がほぼ平行になるように構えて運筆する方法である。肘は突っ張らずに脇の下は適当にあけて、腕が自由に動かせるようにする。左手は半紙の左下端を軽くおさえ、体重をかけてはいけない。
- 提腕法(ていわんほう)とは、懸腕法の構えの状態で、そのまま腕を下げて机に腕または手首をつけて運筆する方法である。
- 枕腕法(ちんわんほう)とは、左手の指をそろえて枕にし、右手の手首を軽くのせて運筆する方法である。両肘に体重をかけず、上体は腰でささえるようにして書く。
執筆法
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0c/Ink_brushes_write.jpg/150px-Ink_brushes_write.jpg)
執筆法(しっぴつほう)とは、筆の持ち方である。大字や中字を書く場合は双鉤法にし、小字を書く場合は単鉤法を用いるのが適しているといわれているが、字の大きさに拘らず単鉤法のみを用いる人も少なくはない。筆を持つ位置は、楷書を書くときは筆管の下部を、行書を書くときは中程を、草書を書くときは上部を持つのがよいとされてるが、これもかなり個人差がある。筆はペンや鉛筆などの硬筆のように斜めに寝かせないで、ほぼ垂直に立てて構え、手に力が入らないように心掛け、上体で調子をとりながら、指と手首を固定して、肘から腕全体を大きく旋回させて肩で書く。
- 単鉤法(たんこうほう)とは、人差し指のみを筆管にかけ、親指は指先を軸にあて、中指で軸を下からあてがって持つ方法である。正しく箸を持ったとき、親指の指先があたる方の箸の持ち方と同じである。指1本のみが筆管にかかるため自由がきき、変化のある線が表現できる。
- 双鉤法(そうこうほう)とは、人差し指と中指を筆管にかけ、親指は指先を軸にあて、薬指で軸を下からあてがって持つ方法である。指2本が筆管にかかるため力強い線が表現できる。
- 撥鐙法(はっとうほう)
- 握管法(あつかんほう)とは、手全体で筆管を握って持つ方法である。指全てが筆管にかかるため非常に力強い線が表現できる。
- 四指斉頭法(ししせいとうほう)とは、親指を筆管に当てて、残りの四本の指を反対側から当てて、筆管を挟んで持つ方法である。親指と人差し指の上を水平にし、指頭に力を集中する。
用筆法
用筆法(ようひつほう)とは、点画を書くときの筆の用い方や筆遣いをいう。運筆法(筆の運び方、筆の動かし方[6][7])も含む。主な用筆法・運筆法は以下のとおり。
- 基本
- 永字八法(えいじはっぽう)
- 起筆
- 直筆(ちょくひつ)とは、墨線の中央を筆の穂先が通る(中鋒(ちゅうほう)という)運筆法。側筆に対する語。
- 応用
- 円勢(えんせい、円筆(えんぴつ)とも)とは、起筆や収筆の形が丸みを帯びた線で書かれた書風のこと。鄭道昭の石刻や顔真卿の楷書などは多く円勢を帯びている。篆書の用筆法は円勢をなしているものが多い。方勢に対する語。[13][14]
- 逆入平出(ぎゃくにゅうへいしゅつ)とは、横画でいうと、右方向から左方向に強く逆筆ぎみに起筆し(逆入)、筆圧を変えないで筆管を左に倒し、そのまま逆筆で送筆する。最後に筆管を立て、素直に筆を抜いて収筆する(平出)。包世臣が唱えた運筆法で、趙之謙がその書法を立証した。[16][17][18]
- 俯仰法(ふぎょうほう)とは、左払いなど左に筆を運ぶ場合は筆管を左に傾けて手の甲を上にし(俯)、右払いなど右に筆を運ぶ場合は筆管を右に傾けて掌を上にする(仰)用筆法をいう。側筆の一種。大師流と称する人が用いることが多い。[19][20]
間架結構法
間架結構法(かんかけっこうほう)とは、楷書を主体とした造形理論のことで、点画の間隔や点画の組み合わせ方を考えて、つり合いよく造形する方法をいう。間架とは、点画と点画の間の空け方のこと。結構とは、点画の組み合わせ方、形のとり方のことである。向背法(背勢と向勢)などがある。[22][2][23]
- 背勢(はいせい)とは、縦画が互いに背くように内側にそりあうことをいう。向勢に対する語。
- 向勢(こうせい)とは、縦画が互いにふくらみあうことをいう。背勢に対する語。
布置章法
布置章法(ふちしょうほう)とは、文字の配置具合により作品全体の構図・構成を決め、変化と調和のある書作品にすることをいう。 布置法と章法に区分される。[24][2][25]
脚注
- ^ 書道辞典 P.69
- ^ a b c d e 城所湖舟 P.82
- ^ 貝塚茂樹 P.9
- ^ 安原皐雲 P.24
- ^ 書の技法用語100 P.68
- ^ 書道辞典 P.14
- ^ 書の技法用語100 P.14
- ^ 書の技法用語100 P.38
- ^ 書道辞典 P.35
- ^ 書の技法用語100 P.97
- ^ 書道辞典 P.62
- ^ 書の技法用語100 P.72
- ^ 書の技法用語100 P.16
- ^ 書道辞典 P.16
- ^ 書道辞典 P.115 - 116
- ^ 書道辞典 P.35
- ^ 書の技法用語100 P.40
- ^ 高木聖雨 P.37
- ^ 書の技法用語100 P.146
- ^ 書道辞典 P.110
- ^ 書の技法用語100 P.90
- ^ 書道辞典 P.30
- ^ 書の技法用語100 P.34
- ^ 書の技法用語100 P.148
- ^ 宮負丁香 P.114
- ^ 書道辞典 P.112
- ^ 書の技法用語100 P.148
- ^ 鈴木翠軒 P.75
出典・参考文献
- 「中国書道史」(『書道藝術』別巻第3 中央公論社、1977年2月)
- 貝塚茂樹 「序説 -書学・書法・法書-」
- 西川寧ほか 「書道辞典」(『書道講座』第8巻 二玄社、1969年7月)
- 『書の技法用語100ハンドブック』(可成屋、2004年7月)ISBN 4-8393-8725-7
- 「書の技法指南」(『墨』芸術新聞社、1994年8月臨時増刊)
- 安原皐雲 「筆法とは」
- 城所湖舟 「間架結構法」
- 宮負丁香 「布置章法とは」
- 高木聖雨 「順筆と逆筆」
- 鈴木翠軒・伊東参州 『新説和漢書道史』(日本習字普及協会、1996年11月)ISBN 978-4-8195-0145-3