コンテンツにスキップ

「メスバウアー効果」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
編集の要約なし
8行目: 8行目:
:<math>E_R = \frac{E_\gamma^2}{2Mc^2}</math>
:<math>E_R = \frac{E_\gamma^2}{2Mc^2}</math>


ここで E<sub>&gamma;</sub>はガンマ線のエネルギー、M は放射または吸収を行う物体の質量、c は光速度である。気体の場合、吸収放射を行うのは原子であり、質量は非常に小さい。その結果気体によるガンマ線の共鳴は起りにくい。X線の場合、光子のエネルギーはガンマ線のエネルギーに比べてずっと小さいので、失われるエネルギーも小さい。
ここで E<sub>&gamma;</sub>はガンマ線のエネルギー、M は放射または吸収を行う物体の質量、c は光速度である。気体の場合、吸収放射を行うのは原子であり、質量は非常に小さい。その結果気体によるガンマ線の共鳴は起りにくい。X線の場合、光子のエネルギーはガンマ線のエネルギーに比べてずっと小さいので、失われるエネルギーも小さい。


固体では[[フォノン]]のエネルギーが反跳エネルギーよりも大きいので、ガンマ線を共鳴吸収できる。メスバウアー効果はメスバウアー分光法として、固体の結合状態を調べるのに利用される。例えばよく用いられるFeの分光では、Feの価数、高スピンなのか低スピンなのか、またその配位数などに応じてピーク位置が変わるため、得られた結果を標準的なピークの足し合わせとして解釈することで試料中でFeがどのような状態にいるのかを解明することが出来る。
固体では[[フォノン]]のエネルギーが反跳エネルギーよりも大きいので、ガンマ線を共鳴吸収できる。メスバウアー効果はメスバウアー分光法として、固体の結合状態を調べるのに利用される。例えばよく用いられるFeの分光では、Feの価数、高スピンなのか低スピンなのか、またその配位数などに応じてピーク位置が変わるため、得られた結果を標準的なピークの足し合わせとして解釈することで試料中でFeがどのような状態にいるのかを解明することができる。


{{DEFAULTSORT:めすはうああこうか}}
{{DEFAULTSORT:めすはうああこうか}}

2010年6月9日 (水) 06:30時点における版

57Fe のメスバウアースペクトル。

メスバウアー効果(メスバウアーこうか、Mössbauer effect)は1957年にルドルフ・メスバウアーによって発見された物理現象で、固体の状態の原子によるガンマ線共鳴吸収現象のことである。

X線が気体分子によって共鳴吸収、放射されることは、すでに知られていた。原子核内のエネルギー準位の遷移によって放射されるガンマ線についても同様な現象が予想されていたが、気体によるガンマ線の共鳴吸収は、反跳によってエネルギーが失われることによって観測されなかった。1957年にメスバウアーが固体のインジウムにおいてガンマ線の共鳴吸収を観測した。

反跳によって失われるエネルギーERは:

ここで Eγはガンマ線のエネルギー、M は放射または吸収を行う物体の質量、c は光速度である。気体の場合、吸収・放射を行うのは原子であり、質量は非常に小さい。その結果気体によるガンマ線の共鳴は起こりにくい。X線の場合、光子のエネルギーはガンマ線のエネルギーに比べてずっと小さいので、失われるエネルギーも小さい。

固体ではフォノンのエネルギーが反跳エネルギーよりも大きいので、ガンマ線を共鳴吸収できる。メスバウアー効果はメスバウアー分光法として、固体の結合状態を調べるのに利用される。例えばよく用いられるFeの分光では、Feの価数、高スピンなのか低スピンなのか、またその配位数などに応じてピーク位置が変わるため、得られた結果を標準的なピークの足し合わせとして解釈することで、試料中でFeがどのような状態にいるのかを解明することができる。