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平成7年に発生した[[阪神・淡路大震災]]は、高度に集積した近代都市を直撃した初めての地震であり、犠牲者が6,400人を超える大災害となった。阪神・淡路大震災の最大の教訓の一つは「災害の規模が大きい場合には行政機関も被災するために、初動の救助救出、消火活動等が制限され、限界がある」ということであった。阪神・淡路大震災当時、国の対応の実務責任者は[[石原信雄]]([[内閣官房]]副長官)であり、[[兵庫県]]の責任者は[[貝原俊民]]([[知事]])であった。
平成7年に発生した[[阪神・淡路大震災]]は、高度に集積した近代都市を直撃した初めての地震であり、犠牲者が6,400人を超える大災害となった。阪神・淡路大震災の最大の教訓の一つは「災害の規模が大きい場合には行政機関も被災するために、初動の救助救出、消火活動等が制限され、限界がある」ということであった。阪神・淡路大震災当時、国の対応の実務責任者は[[石原信雄]]([[内閣官房]]副長官)であり、[[兵庫県]]の責任者は[[貝原俊民]]([[知事]])であった。


防災士制度は、阪神・淡路大震災を教訓として、民間の防災リーダーを可及的速やかに養成する目的で、石原信雄、貝原俊民の両氏をリーダーとする民間組織「防災士制度推進委員会」によって創設され、制度設計は、国の専門調査会や各種検討会で座長経験豊富な[[廣井脩]](元[[東京大学]]大学院情報学環教授)らの学識経験者が行った。そして、防災士制度の推進母体としてNPO法人日本防災士機構(東京都千代田区、現会長 [[古川貞二郎]](元内閣官房副長官))が平成14年7月に内閣府によってNPO法人として認証され設立された。
防災士制度は、阪神・淡路大震災を教訓として、民間の防災リーダーを可及的速やかに養成する目的で、石原信雄、貝原俊民をリーダーとする民間組織「防災士制度推進委員会」によって創設され、制度設計は、国の専門調査会や各種検討会で座長経験豊富な[[廣井脩]](元[[東京大学]]大学院情報学環教授)らの学識経験者が行った。そして、防災士制度の推進母体としてNPO法人日本防災士機構(東京都千代田区、現会長 [[古川貞二郎]](元内閣官房副長官))が平成14年7月に内閣府によってNPO法人として認証され設立された。


==== 制度確立までの沿革 ====
==== 制度確立までの沿革 ====

2010年6月22日 (火) 11:49時点における版

防災士
実施国 日本の旗 日本
資格種類 民間資格
分野 防災
試験形式 研修講座受講、筆記(三者択一)試験、救急救命実技講習修了証取得
認定団体 特定非営利活動法人日本防災士機構
認定開始年月日 2003年
等級・称号 防災士
公式サイト http://www.bousaisi.jp/
ウィキプロジェクト ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル ウィキポータル 資格
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防災士(ぼうさいし)とは、特定非営利活動法人日本防災士機構が定めたカリキュラムを防災士教本による自宅学習(履修確認レポート)と会場研修講座の受講で履修し、履修証明を得て資格取得試験に合格し、消防署または日本赤十字社等の公的機関が主催する「救急救命実技講習」を受け、その修了証または認定証を取得した者に認定される民間資格。防災士証の有効期限や写真の書換え更新はなく終身資格である。

概要

防災士とは「”自助””互助””協働”を原則として、かつ、”公助”との連携充実につとめて、社会の様々な場で減災と社会の防災力向上のための活動が期待され、さらに、そのために十分な意識・知識・技能を有する者として認められた人」のことである。(日本防災士機構の定義による。2010年平成22年)5月末現在で39,914人がその資格を取得している)。

防災士の活動は、主として地震水害火山噴火土砂災害などの災害において、公的機関や民間組織、個人と力を合わせて、以下の活動を行うとしている。

  • 平常時においては防災意識・知識・技能を活かして、その啓発に当るほか、大災害に備えた自助・共助活動等の訓練や、防災と救助等の技術の練磨などに取り組む。また、時には防災・救助計画の立案等にも参画。
  • 災害時にはそれぞれの所属する団体・企業や地域などの要請により避難や救助・救命、避難所の運営などにあたり、地域自治体など公的な組織やボランティアの人達と協働して活動。
日本経団連の政策提言

日本経済団体連合会2003年平成15年)7月22日(当時は奥田碩が会長)、行政への要望として「地域防災の担い手を育成するために、防災に関する専門知識や技術、経験を有し、実践的な訓練を受けた者に防災士の称号を授与し、地域の防災リーダーあるいは調整員(コーディネーター)として活躍してもらおうというNPOの試みがある。こうした新たな取組みへの支援や、行政による教育訓練プログラムなどを充実することによって、防災対策を担う人材の質的・量的充実を図ることが必要である。」と、地域の防災力の強化を提言している。2009年平成21年)6月12日現在、トヨタ自動車は日本防災士機構賛助会員。2010年平成22年)1月1日現在、日本経済団体連合会の御手洗冨士夫会長は日本防災士機構評議員。

日本防災士会会員の活動内容
  1. 平時の活動
    会員及び各支部の平常時の防災活動は、原則として次に掲げる事項に基づいて行動するものとする。
    1. スキルアップ
    2. 会員相互の連携等
    3. 地域との連携(市区町村等)
    4. 自主防災の取り組み
    5. 災害活動訓練(災害想定等)
  2. 災害発生時の活動
    災害の程度や状況に応じて必要な項目から随時実施する。なお、職域での業務(復旧、復興、地域貢献など)に従事する場合は、職場の指示に従い、本指針には含まない。
    1. 被災した地域の会員の活動
      1. 公的支援が来るまで被災地の被害拡大を軽減するために、初期消火、救出救護、避難誘導等の互助活動を効果的に行う。
      2. 地域防災会、自治体など公的組織や災害ボランティアと協働して避難所運営をはじめとする被災者支援のために活動する。その際、要援護者等の支援活動には特に留意する。
      3. 被災地内の防災士と直接連絡を取り合い、できるだけ情報の共有化に務める。
      4. 市区町村との災害時相互応援計画が策定されている場合は、それに従う。
    2. 被災地支部の活動
      支部単位で災害時相互応援計画、県や市区町村との応援計画及び避難所の運営等の計画が策定されている場合は、これを尊重する。策定されていない場合は、災害対策基本法に基づく地域防災計画との整合性を考慮して活動する。
    3. 被災地外会員の活動
      1. 日本防災士会および被災地支部等からの協力要請があれば、可能な範囲で協力する。
      2. 被災者支援ボランティアについては、日本防災士会から要請のない限り個人資格で参加する。

制度発足の背景

平成7年に発生した阪神・淡路大震災は、高度に集積した近代都市を直撃した初めての地震であり、犠牲者が6,400人を超える大災害となった。阪神・淡路大震災の最大の教訓の一つは「災害の規模が大きい場合には行政機関も被災するために、初動の救助救出、消火活動等が制限され、限界がある」ということであった。阪神・淡路大震災当時、国の対応の実務責任者は石原信雄(内閣官房副長官)であり、兵庫県の責任者は貝原俊民(知事)であった。

防災士制度は、阪神・淡路大震災を教訓として、民間の防災リーダーを可及的速やかに養成する目的で、石原信雄、貝原俊民をリーダーとする民間組織「防災士制度推進委員会」によって創設され、制度設計は、国の専門調査会や各種検討会で座長経験豊富な廣井脩(元東京大学大学院情報学環教授)らの学識経験者が行った。そして、防災士制度の推進母体としてNPO法人日本防災士機構(東京都千代田区、現会長 古川貞二郎(元内閣官房副長官))が平成14年7月に内閣府によってNPO法人として認証され設立された。

制度確立までの沿革

防災士の国家資格化

2009年平成21年)6月7日に開催された第5回日本防災士会定期総会の質疑応答東京都の防災士から「防災士の資格を取得した時、今は民間資格であるが将来は国家資格を目指すと聞いたが、今どのようになっているか」と質問があった。小宮多喜次代表幹事は「今すぐに国家資格化されるかというと、現在は諸般の情勢からすぐに実現しないが、いずれは防災士の重要性や必要性、地域住民に及ぼす安心安全等これらを考えてみると国家資格になる日も来ると考えている」と答えている。

防災士制度の発足を決めた防災士制度推進委員会は、第一段階として自治体や企業、学校、自主的な防災組織などで約40万人を育成。将来は国家資格をめざす、としていた。2002年平成14年)6月1日(朝日新聞)

防災士の位置づけ

災害が発生した際の活動は、「自助:自らを守る行動」「共助:地域市民とともに助け合う行動」「公助:国や自治体による行動」の3種類がある。

このうち公助活動の実際は、自治体職員によって行われる他、高度の専門的活動については専門の資格保有者[1]や、それらを擁する学協会・業界団体・専門会社が、国や自治体からの要請を受けて、活動が行われる。

一方、災害の発生直後から初期段階における活動(公助の動き出す前の活動)については、自らの力と、近隣住民同士の協働で切り開いていかねばならない。この自助・共助の活動を災害発生時に実践する人材として日本防災士機構は「防災士」の資格を位置づけしている。また平常時についても、これら自助・共助による防災活動について、その重要性等を啓蒙する活動の担い手としても期待したいとしている。

このような自助・共助の防災活動に対する考え方は、もともと江戸時代に上杉鷹山が提唱したとされているが、阪神・淡路大震災以降、急速に発達した。この考え方を実践的に整理してきたのは災害ボランティア達である。この震災以降、災害ボランティアの組織化、大規模災害時の減災知識の集約化が進んできた。しかしそれでもなお、発生がある程度切迫している宮城県沖地震[2]首都圏直下地震[3](東京湾北部地震)が実際におきた際には、これらの災害ボランティアらの活動だけでは、対応しきれないと予想されている。このため市民・国民の一人一人に、防災知識を持つよう育成が急がれているが、その反面、いわゆる資格商法ではないかと考える防災関係者も少なくないのも事実である。

地域防災活動のリーダー

防災士として最低限修得すべき防災知識・技能(日本防災士会幹事会)

  • 事前対策に必要な知識・技能
    • 地域における災害リスクの把握
    • 家具転倒防止策の理解と指導要領
    • 備蓄品、防災器具等の理解と指導要領
    • 簡易耐震診断の説明と実施要領
    • 耐震補強法の理解と実施要領
    • 各種防災訓練の企画・立案・指導要領
    • DIG(災害図上演習)の理解と指導要領
    • 自主防災組織の結成、活動計画の策定の手順
    • BCP策定の手順
  • 応急対策に必要な知識・技能

展開

近年、企業による地域社会への貢献が、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)として期待されている。この社会的背景を受け、災害時の初期段階における共助の活動を指向する企業が増えてきている。この受け皿として、防災士制度を活用して欲しいとしている(例えば郵便局やコンビニエンスストアなど)。 特に、郵政民営化議論がなされていた時に、特定郵便局長が、郵便局の公益性を見出すために積極的に防災士を取得したとも言われている。 また企業における災害時の事業継続計画(または緊急時企業存続計画、BCP:Business Continuity Plan)においても、企業内での防災知識を保有する人材の育成として、防災士制度に期待が寄せられている。ただ、防災士の研修プログラムは、事業継続計画の策定ができるほどの内容からはほど遠く、NPO法人事業継続推進機構が主として企業担当者向けに行っている「事業継続初級管理者」「事業継続主任管理者」などにより期待が寄せられており、防災士は「きっかけ作り」であると考える方が適当である。

地域における防災リーダーの育成が急務であるとの観点から、防災士養成事業を実施したり、市民の受講に対して補助制度を設ける自治体も増えつつある。 これらの自治体では、硬直化しがちな自主防災組織を防災士によって活性化し、実効ある地域防災力の構築を図っているとしている。

そもそも防災士制度が生まれた背景の一つとして、各地の自治体や各種の団体が、個別の基準で「防災リーダー」「防災コーディネーター」「セーフティーリーダー」(災害救援ボランティア推進委員会)等の称号を与えている状況の中で、「全国標準の一定レベルを有する防災リーダーが必要」という声が上がったとしているが、しかしながら、地域防災は、「自助」「共助」「公助」のルーツが江戸時代の「三助」に表されるように、地域が本来持っていたものであり、地域ごとに異なる文化風土があるわけで、そもそも地域防災に必要なのは、普段からお祭りや町内清掃等の自治会活動の参加による地域コミュニケーションであり、「地域防災に『全国標準』の『一定レベル』が必要なのか」「地域防災に『称号』や『肩書き』は必要なのか」と言う防災関係者からの根強い批判があり、「標準化」や「資格」 と言う枠組みで括ることについては、実は賛否両論である。

また「防災士」についても「資格」と称してはいるが、結局のところ「京都検定」やセーフリーダーなど、民間称号の枠を超えるものではない。防災士教本の学習と3日間の座学、7割から8割の合格率程度の知識、普通救命講習で十分なのかという指摘も一部にはある。これに対して関係者は、「まず裾野を広げることが重要で、将来さらにスキルアップした中級、上級、防災士を育てたい」としている。

再教育と上級資格

2009年平成21年)5月20日に開催された日本防災士機構総会において、平成21年度事業計画が決定した。事業計画には、平成23年度期までに防災士5万名を養成すること。日本防災士会を通じて最新の防災情報を提供すること。防災士資格取得者の再訓練や指導者としての役割を担える人材の育成をすることなどが盛り込まれた。古川貞二郎会長は「再教育や上級資格も検討し進めていきたい。国民運動の王道を歩んでいきたい。」と言及している。

防災士資格の認定申請時には、救急救命実技講習の修了証または認定証の取得を必要とし、有効期限を超過している場合は再受講が必要となるが、認証登録後に救命技能認定証の有効期限切れがあっても防災士資格は無効とならない。救急救命実技講習実施機関は、救命技能を維持向上するため2年から3年の間隔で定期的に再受講することを努めるように促していて、修了証の裏面に再講習の受講記録を記載するようになっている。救急救命実技講習で使用される教本は、日本版救急蘇生ガイドラインとして国際ガイドラインの内容を踏まえて編集されて発行している。この国際ガイドラインは、2000年自動体外式除細動器(AED)の操作方法が追加され、2005年には心肺蘇生法胸骨圧迫人工呼吸の比率が変更されており、国際ガイドラインの更新に合わせて教本も改訂されている。応急手当普及員や赤十字救急法救急員は有効期限までに再講習を受講して資格を維持していることや、2003年平成15年)10月の防災士第1号認証から相当な年数が経過していることなどから、防災士資格取得者の救命技能の維持に再教育の必要性があると判断されるものである。

資格取得後の講座

福岡県と福岡県災害ボランティア連絡会では、県とNPO法人男女・子育て環境改善研究所の協働により、防災士が子どもや親子向け防災教室を開催するノウハウを身につけるためのスキルアップ講座を開催している。

  • 子ども向けわが家の避難ルートワークショッププログラム模擬体験
  • 子ども向け防災講座開催のための企画を考える(講師による講話)
  • 子ども向け防災講座の企画書を作り上げる(小グループ単位でプレゼンテーション

防災士登録までの手順

防災士研修講座受講、防災士資格取得試験合格、救急救命実技講習修了証取得の総てを充たして認証登録となる。

  1. 日本防災士機構が認定した研修機関、または自治体が実施する防災士養成事業による研修を受けて「履修証明」を得ること。
  2. 日本防災士機構の「防災士資格取得試験」を受験し、合格すること。
  3. 各自治体、消防本部日本赤十字社等公的機関又はそれに準ずる団体の主催した「救急救命実技講習」(普通救命講習ⅠまたはⅡ、赤十字救急法基礎講習)を受け、その修了証または認定証を取得すること。防災士資格の認定申請時に救命技能認定証の有効期限を超過している場合は再受講が必要となる。
  • 防災士研修講座申込後、研修講座が実施される約1ヶ月前に教本が届く。添削方式の通信教育で自宅学習を行い履修検定レポートを研修講座の受講第1日目に提出する。
  • 防災士資格取得試験は研修講座日程の最終日に研修講座と同じ会場で行われる。特例規定の受験申請者は希望する地域の試験会場で資格取得試験のみ受験する。
  • 救急救命実技講習の修了は研修講座の受講前でも受講後でも構わない。研修講座の会場で行われる場合もある。
防災士養成カリキュラム構成と内容
科目 内容事例 目安時間・講座数
  • 序論
  • 防災士の役割
  • 12時間
    (8講座)
  • 過去や最近の自然災害のまとめと教訓
  • 1. いのちを自分で守る
    (自助)
    ・個人
    ・企業
  • 個人の平常時対策(家庭防災対策会議、備蓄品、避難計画、安否確認計画)
  • すまいの耐震化(耐震診断、家具固定、建物耐震化、耐震規定)
  • 個人の災害発生時対応(身体防護、火気管理 、脱出、救援、避難、安否確認連絡、外出時対応などの要領)
  • ライフライン電力ガス上水道電話鉄道道路)の被害想定と断絶時対応
  • 災害医療(心理ケア、PTSD)、高齢者乳幼児対応
  • 2. 地域で活動する
    (互助・協働)
    ・自主防災組織
    ・自治体
  • 地域の防災活動(自主防災組織、学校での防災活動、防災教育・訓練、普及活動、各地の活動例)
  • 11時間
    (7講座)
  • 行政の平常時対策(関連法令、防災計画、被害想定、避難計画、防災拠点、生活弱者対策、行政支援制度、相互応援協定)
  • 行政の災害発生時対応(情報の収集・伝達、要援護者避難、消防活動、救助活動などの要領)
  • 避難所(標示、開設・運営要領、物資調達・分配)
  • ボランティア(活動の流れ、活動要領、具体的活動例)、緊急救助技術を身につける(災害現場における救出・防火技術、要援護者の救助・誘導技術)
  • 災害復旧・支援制度(人・企業・産業)
  • 3. 災害発生のしくみを学ぶ
    (科学)
  • 地震活断層群発地震液状化現象
  • 9時間
    (6講座)
  • 津波高潮
  • 市街地大火火災旋風
  • 火山噴火火砕流溶岩流
  • 風水害台風集中豪雨洪水竜巻豪雪
  • 土砂災害土石流崖崩れ地滑り
  • 4. 災害に係わる情報を知る
    (情報)
  • 気象予報警報注意報
  • 8時間
    (5講座)
  • 警戒宣言避難勧告
  • 安否情報、被害情報の発信・伝達・収集
  • 災害報道、インターネットの活用
  • 流言蜚語風評被害
  • 最新の地震活動、地震危険情報
  • 被害想定、ハザードマップ
  • 災害観測・防災システム(防災GIS、リアルタイム地震学など)
  • 5. 新たな減災や危機管理の手法を身につける
    (予防・復興)
  • 危機管理の基本概念
  • 8時間
    (5講座)
  • 都市災害の特徴、都市防災計画・技術
  • 企業の防災活動・BCP・危機管理、地域協力
  • 災害と損害保険共済
  • 災害復興(住宅再建・復興まちづくり)
  • 6. いのちを守る
    (救急)
    ・応急手当
    ・救命手当
  • 応急手当の基礎知識
  • 3時間
    (2講座)
  • 心肺蘇生法AEDの操作方法、大出血時の止血法、傷病者管理法、けが・骨折の応急手当、運搬法等
  • 救急救命実技講習認定基準
    実施機関、対象者等 講習・資格名の例示 認定基準
  • 1. 地域消防署等の主催講習
  • 普通救命講習Ⅰ
  • 普通救命講習Ⅱ
  • 上級救命講習
  • 応急手当普及員講習
  • 認定対象とする
  • 2. 日本赤十字社(支部)の主催講習
  • 救急法一般講習
  • 救急法基礎講習
  • 救急法救急員養成講習
  • 認定対象とする
  • 3. 地方自治体が防災教育の中で実施する講習
  • 救急救命講習
  • 認定対象とする
  • 4. 消防吏員
  • 認定対象とする
  • 5. 医師
  • 履修済みの場合は、自己申告を認定対象とする
  • 6. またはその指定機関、または、これに準ずる機関が実施する講習
  • 救急救命士厚生労働省
  • BLSコース(日本ACLS協会
  • ACLSコース(日本ACLS協会)
  • CPR(心肺蘇生法)ベーシックセミナー(国際救急救命協会)
  • JPTECプロバイダーコース(日本救急医学会)
  • JPTECインストラクター養成コース(日本救急医学会)
  • 個別審査対象とし、「普通救急救命講習」と同等以上に相当すると判断される講習は認定対象とする

    資格取得試験

    試験前に10分間の説明がある。試験問題、解答用紙、合否通知用封筒が配布される。合否通知用封筒に、郵便番号、住所、氏名を記入する。試験時間は50分。三者択一の筆記試験。解答用紙にはアラビア数字で答を書き込む。問題は30問で7割以上の正解率で合格となる。解答を終えれば試験会場を退室できる。試験問題は持ち帰れない。試験問題、解答用紙、合否通知用封筒の3点を試験官に手渡して退室する。

    試験の難易度

    防災士養成カリキュラムの構成と内容は広範囲であるが、試験問題は防災士教本の内容からのみ出題されている。実技を除いて31ある講座ごとに学習のポイントが総括されているので、出題率の高い要点を効率良くチェックできる。ひっかけ問題も無く三者択一の試験方式であることから、難易度は極めて易しいといえる。

    試験の合格率

    日本防災士機構では、防災士30万人の認証登録を目標にしており、認証登録の状況や認証者数累計の推移を公開しているが、防災士資格取得試験の応募者数、受験者数、合格率は公開していない。2009年平成21年)12月23日の毎日新聞(東京朝刊)で、防災士資格取得試験の合格率は約98%と報道された。

    試験の合否通知

    試験日から1週間以内に郵便で試験結果が届く。満点合格者の試験結果通知書には全問正解であったことが記される。合格の場合は防災士資格申請の手順書が同封されるので認証登録申請の手続きを進める。

    資格取得試験の再受験

    防災士資格取得試験で不合格となった場合は、研修講座の受講は免除され後日に実施される試験会場にて資格取得試験のみを再受験できる。

    認証登録申請

    資格取得試験合格者は、試験結果通知書と一緒に送られる日本防災士機構宛の封筒に、申請に必要なものを封入し郵送する。研修機関における会場研修3日目(2日間コースの場合は2日目)の資格取得試験合格者は、研修機関に申請書類を預けて手続きを代行してもらう。

    申請に必要なもの
    1. 防災士認証登録申請書
    2. 防災士資格取得試験合格通知(写)
    3. 申請に要する費用を支払った「振替払込請求書兼受領証」(写)
    4. 防災士証印刷用カラー写真2枚(縦30mm 横25mm)
    登録から交付まで

    申請書類の受付は、前月16日から当月15日までの期間となっている。申請書類に不備がなければ、当月の末日までに認証委員会によって防災士認証が行われ、防災士登録台帳への氏名登載と防災士認証状および防災士証が発行される。防災士認証状および防災士証は、月末日付の郵便で申請者に送付される。

    研修実施機関

    日本防災士機構では、30万人の防災士を生み出すことを目標としている。そこで防災士資格取得の条件の一つである「防災士研修講座」については、同機構が直接行うのではなく、広く研修実施機関を募り、全国各地で講座を開催できる態勢を整えたいとしている。

    平成15年6月に愛知県が自治体として始めて防災士養成事業に参加してから全国の自治体で養成研修が行われている。平成21年12月現在で、37の地方公共団体のほか9つの民間および教育機関が実施している。平成22年2月末現在では、全防災士38,489名のうち22,240名が防災士研修センターの研修講座を受講して防災士になっている。日本全国で研修講座を開催している研修実施機関は防災士研修センターだけである。

    受講料は防災士研修センターを利用した場合は、防災士教本、資料、会場研修、履修確認レポート(添削式)の費用が5万円3千円となる。自動車安全運転センターから発行されたSDカード(発行後2年以内)の写しを受講申込書に添付して提出することで2千円の優遇割引を受けることができる。履修証明を得た後は、受験料3千円が必要である。

    防災士研修民間機関

    • 防災士研修センター
      • 会場:東京都大阪市名古屋市
      • 受講料:61,000円(試験料・登録料・消費税込み)。SDカード優遇割引で、59,000円。
    • NTTラーニングシステムズ
      • 会場:東京都、大阪市
      • 受講料:63,000円(試験料・登録料・消費税込み)。個人の早期入金は、57,750円。2名~4名の団体は、57,750円。5名以上の団体は、54,600円。
    • 財団法人日本経営教育センター
      • 会場:東京都
      • 受講料:61,000円(試験料・登録料・消費税込み)。
    • ユアーズ
      • 会場:大分県宮崎県
      • 受講料:60,000円(試験料・登録料・消費税込み)。
    • 財団法人高速道路調査会
      • 会場:東京都
      • 受講料:62,000円(試験料・登録料・消費税込み)。賛助会員は、55,800円。
    過去の実施民間機関

    防災士研修教育機関

    防災士資格取得の特例

    日本防災士機構では、既に防災に関しての一定の知識または実践力を身に付けていると認定された特定の資格者に対して、防災士資格取得の特例規定を定めている。

    消防吏員に関する認証規定

    平成16年9月、消防官(退職者を含む)にかかる防災士資格取得基準を決定し、全国消防長会に「消防職員にかかる特例」制度の制定を通知している。消防吏員は、救急救命実技講習認定基準の認定対象となる。

    赤十字救急法救急員の特例

    日本赤十字社の赤十字救急法救急員、または、赤十字救急法指導員は、防災士資格取得特例コース申込書(防災士認証書式日本赤十字社用1号)を機構に通知すると養成研修が免除される。申請した場合、機構が試験会場および試験日程を選定し、申請者に対して防災士資格取得試験実施通知書および試験受験申請書(防災士認証書式日本赤十字社用2号)等の書類が郵送される。防災士教本代2千円と受験料3千円を払い込み試験日の1ヶ月前までに必要な書類を返送すると教本が届き受験まで自宅学習となる。

    赤十字救急法救急員は、赤十字救急法基礎講習および救急員養成講習が2.5日間(約18.5時間)で受講証が発行される。最終日の認定試験(学科および効果測定)に合格すると資格有効期限のある認定書が郵送される。赤十字の教材費は3千円程度。

    防災士養成研修講座と救急員養成講習の内容が全く違うという理由から、この特例コースの設定に対して既修得者の一部から異論が出ていた。平成21年6月7日に開催された第5回日本防災士会定期総会に全国各地から220名の防災士が参加。総会の質疑応答で長野県の防災士から「日赤は特例で安く資格を取れるのか」「総会の質疑応答は公開されるのか」といった発言があった。この質問に対して、日赤特例で認証された防災士も認証委員会により十分な知識があると認められていると回答していたが、現行の特例コースの適用期限は平成22年3月31日までとなり改定後の特例コースでは機構が別途定める予定の養成研修の履修が条件となった。

    防災士資格取得試験受験料3千円と防災士資格認証登録料5千円は同じである。

    警察職員に関わる特例

    平成19年12月、警察職員にかかる防災士資格取得基準について検討を行い、警察庁に「警察職員にかかる特例」制度の制定を通知している。

    履修による取得

    徳島大学では、全学共通教育の教養科目として「災害を知る」前期2単位「災害に備える」後期2単位の2科目を4月の開講から翌年2月まで週1回32週にわたって講義や実習を受講し修得することで、環境防災研究センター長から徳島大学防災リーダーとして認定され、徳島大学防災リーダーには防災士受験資格が付与される。防災リーダー講座修了式と合わせて防災士試験模擬テストが行われる。翌週、防災士資格取得試験に臨む。

    千葉科学大学では、薬学部の1~3年次に特定の3科目6単位を履修、または危機管理学部の1~3年次に5科目7単位を履修することで、防災士資格取得試験の受験資格を得ることができる。学内で実施される認定試験に合格することで防災士の資格が得られる。

    環境学園専門学校は、防災士の資格取得指定校であり、卒業と同時に防災士の資格を取得できる。

    富士常葉大学の環境防災学部は、防災士資格の課程が認定されている。

    香川大学産学官連携推進機構危機管理研究センターでは、2010年平成22年)秋頃から、防災士養成講座の短期コースの開講を予定している。

    防災士育成事業

    新潟県妙高市では、防災士の資格取得の経費に対して講座受講の40日前までに補助金交付の申請を行うことで必要経費の全額補助を受けることができる。また、茨城県守谷市龍ケ崎市千葉県我孫子市、新潟県糸魚川市上越市長野県小諸市山梨県韮崎市岐阜県瑞浪市中津川市福井県勝山市岡山県備前市等、一部経費の補助をし、防災士育成事業もしくは自主防災組織育成事業として助成を行っている自治体もあるが、補助金交付の対象となる経費は、防災士養成研修講座受講料、資格取得試験受験料、資格認証登録料および旅費の一部。その他、交付対象として自主防災組織自治会に所属または推薦を受けた者とされていることが多い。

    愛媛県西条市は、平成18年から各地区の自主防災組織のリーダーを対象に受講料など資格取得費用を市が全額負担する防災士養成講座を開設している。石川県金沢市や愛媛県松山市でも資格取得費用を全額補助する制度を導入している。(2007年平成19年)10月9日公明新聞

    栃木県日光市では、市内在住または市内在勤者を対象に日光市防災士養成講座を無料で開講している。

    平成21年6月7日現在、14県32の自治体が実施した防災士育成事業によって養成された防災士は約7,000名である。

    受験資格が付与される無料講座

    奈良県自主防犯・防災リーダ研修の修了者には防災士資格取得試験の受験資格が与えられる。受講料は無料。教本代は必要。平成18年度の修了者は145人(うち防災士登録者は98人)、平成19年度の修了者は135人(うち防災士登録者は104人)。

    和歌山県地域防災リーダー育成講座「紀の国防災人づくり塾」の全講座を受講し修了した者には修了証(知事名)が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が付与される。受講料は無料。教本代は必要。

    茨城県では、防災士制度が確立される以前より防災に関する幅広い知識と技術を身につけるための、いばらき防災大学を開催していている。防災の専門家による講義だけでなく、消火用ポンプ救助用機材を使った実技講習も取り入れている。必要な課程を受講することでいばらき防災大学の修了証が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が与えられる。受講料は無料。平成13年度の受講者127名(修了者115名)、平成14年度の受講者108名(修了者96名)、平成15年度の受講者74名(修了者70名)、平成16年度の受講者61名(修了者59名)、平成17年度の受講者45名(修了者43名)、平成18年度の受講者35名(修了者33名)、平成19年度の受講者56名(修了者48名)、平成20年度の受講者39名(修了者36名)。

    長崎県防災推進員(自主防災リーダー)養成講座を修了した者には知事名の修了証が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が付与される。講座を3日間受講し、かつ、防災士教本による事前学習を行い、レポートを提出した者は、3日目に実施される防災士資格取得試験を受講できる。受講料は無料。

    熊本県地域防災リーダー養成講座火の国ぼうさい塾の3日間の講義を全て受講した者には熊本県知事からの修了証が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が認められる。受講料は無料。

    三重大学自然災害対策室と三重県協働で、みえ防災コーディネーター育成講座が開講されている。全32講座のうち26講座以上受講した者は、みえ防災コーディネーターとして認定され、防災士資格取得試験の受験資格が得られる。受講料は無料。

    受験資格に官民格差の問題

    2005年平成17年)4月18日神戸新聞によると、防災士の資格取得試験を受験する際に修了しておくことが必要な研修講座をめぐって官民格差が問題になっている。自治体で研修講座を受講すれば無料で済む受講料が民間実施機関で受講すると5万円以上かかるため、すでに民間実施機関で研修講座を修了した受講生から「あまりに不公平」と反発の声が上がっている。県が講座を開く前に民間実施機関の研修講座を経て資格を取得した県内の男性会社員は「同じ県で同じ資格を取るのに、費用が違い過ぎる」と反発。同様に資格を取った男性公務員も「資格を生かす場が少ない現実を考えると、民間実施機関の受講料は高過ぎる」と本音を漏らした。そうした実情に、日本防災士機構は「地域の防災力を高めたい自治体と、需要を求める民間機関は目的が違う」と官民格差を容認した上で「多様なニーズにこたえられる方が、関心の広がりにつながるのでは」としている。

    認証登録状況

    日本防災士機構では、ホームページのTOPに都道府県別の防災士認証者数を1位から3位まで、4位から10位まで、11位以下を色分けして、全国の都道府県ごとの防災士認証者数を表記した図を掲載している。防災士認証者数30万人を目標に国民運動として防災士の育成を推進したいと呼びかけている。東京都の防災士認証者数が突出している理由として民間による防災士研修講座の開催が東京会場に集中している現状がある。地方での防災士研修講座の開催は自治体の防災士養成事業への取り組みに依存する傾向となっている。2010年平成22年)1月18日の毎日新聞によると、日本防災士機構の玉田三郎専務理事が「広島をはじめ中国地方では、他の地方と比べて防災への認識が低い感は否めない。震災発生前の近畿地方の認識に近いのではないか。」と話したとしている。

    防災士認証者数都道府県別順位表
    順位 都道府県名 認証者数 順位 都道府県名 認証者数
    1位 東京都 4,222名 1位 東京都 4,244名
    2位 愛知県 2,799名 2位 愛知県 2,805名
    3位 愛媛県 2,139名 3位 愛媛県 2,143名
    4位 神奈川県 1,739名 4位 神奈川県 1,740名
    5位 埼玉県 1,651名 5位 埼玉県 1,660名
    6位 千葉県 1,603名 6位 千葉県 1,609名
    7位 静岡県 1,551名 7位 静岡県 1,558名
    8位 福岡県 1,511名 8位 福岡県 1,513名
    9位 兵庫県 1,333名 9位 兵庫県 1,422名
    10位 新潟県 1,282名 10位 大阪府 1,358名
    (平成22年2月末現在) (平成22年3月末現在)
    防災士認証者数の推移

    2002年平成14年)6月1日の法律文化に掲載されたインタビューの中で、貝原俊民会長(当時)は、向こう10年間で40万人くらいの防災士を誕生させることができると予測を述べている。

    防災士認証登録者数一覧表
    2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
    1月
    2月 10,000名 38,489名
    3月 1,581名 5,008名 10,620名 16,955名 21,485名 30,000名 39,204名
    4月 39,820名
    5月 39,914名
    6月 5,900名 11,810名 17,888名 22,983名 31,824名
    7月 2,272名 12,324名 24,633名
    8月 12,847名 18,655名
    9月 6,911名 13,605名 19,231名 25,595名 33,739名
    10月 216名
    11月 8,187名 14,817名 20,000名
    12月 4,075名 9,008名 15,569名 20,666名 27,732名

    2009年平成21年)3月16日フジサンケイビジネスアイによると、防災士認証登録者は2009年3月に3万人に到達したが、そのうち1万人超は全国特定郵便局の局長である。

    2009年平成21年)5月20日の日本防災士機構通常総会において、古川貞二郎会長は、平成23年度中に防災士認証者数5万名達成という目標を掲げている。

    認証登録者の内訳

    2007年平成19年)1月17日の読売新聞で、防災士の資格取得者の内訳が報道された。内訳は平成18年12月末現在の認証登録者の男女比と年齢層である。全国の資格取得者のうち、50歳以上が過半数を占めている。

    防災士認証者の男女比
    男(93.1%) 女(6.9%)
    (平成18年12月末現在)
    防災士認証者の年齢層
    30歳未満3.7%

    30歳代13.0%

    40歳代26.5%

    50歳代38.1%

    60歳代16.0%

    70歳以上2.7%

    (平成18年12月末現在)

    産経新聞2007年平成19年)9月6日)によると、資格取得者の最年少は12歳の小学6年生、最年長は90歳代の男性である。また、読売新聞2007年平成19年)12月4日)では、全国最年少は小学5年生(認定当時)と報じている。

    自治体職員の資格取得

    栃木県栃木市は、2007年平成19年)10月25日に日向野義幸市長はじめ全職員618人を対象に防災士資格を取得させると発表している。当時、東京都荒川区が一部職員に防災士資格の取得を実施していたが、全職員が資格の取得を目指すのは全国で初めてであった。約700万円をかけて5ヵ年で全職員が防災士資格を取得することを決め、2007年平成19年)11月に実施された防災士資格取得試験では、日向野義幸市長以下53人の職員が防災士資格を取得している。

    防災士の組織化

    防災士の有志で組織する日本防災士会は、「自助」、「共助」の原則のもと、会員のネットワークを構成し、防災士としての活動と技術研鑽を支援することを目的として、小宮多喜次、浦野修の2名を代表幹事とした20名の役員体制で平成16年10月12日に設立された。地域等の特性等に対応する活動を通じて日本防災士会の目的達成に寄与するために各地で支部を結成し、地元自治体防災関連団体との連携を深め、会員相互のネットワークを構築して有為の活動を推進している。平成22年3月末現在、防災士認証登録者総数は39,204名であるが、日本防災士会の会員数は一割強の4,939名となっている。会員数の伸び悩みは、災害ボランティア活動をするために年会費5,000円が必要なのかという疑問の声も上がっており、会員になるメリットが少なく、入会後の具体的な会員活動が明確になっていないことが原因とされている。また、研修など会のイベントは都心部で開催されることが多く、地方の会員は会の活動に参加する機会が乏しいことなどから、各地で支部を発足させる動きが広がり、今では全国37の都府県に支部が存在する。千葉県2支部6ブロック、東京都8支部、神奈川県3支部、大阪府2支部5ブロック、広島県2支部、福岡県2支部3分科会と、複数の支部、支部の下にブロックや分科会が存在する都府県もあるが、元々少ない会員数に対して支部が多く結成されたこともあって、各支部の会員数は増えないままの現状がある。会員拡大にあたり、滋賀県支部ならびに福井県防災士会では、防災士の資格は入会後でも構わないとしている。東京都世田谷支部では、防災士の資格がなくても準会員になれる。また、大阪府支部では、防災士の資格がなくても役員会の承認により入会できるように取り決めている。

    鳥取県では日本防災士会鳥取県支部と鳥取県庁とが協定を結び、鳥取県内で開催される各種防災啓発イベントに、講師や運営リーダーを派遣することとなっている。そのほか、消防機関との合同訓練、機関誌の発行を行っている支部も少なくない。

    また、消防、警察、自衛隊などで救助活動の経験を有する防災士などが中核となって、「日本防災士会災害救援チーム」を立ち上げ、大規模災害時における支援活動に備えているとしているが、中越沖地震の際には発災から2日目に、まだ混乱している柏崎市役所や柏崎市災害ボラティアセンターに押し掛けて、被害状況を説明させたりして顰蹙を買っていたのも事実である。

    さらに消防団との連携を深めて地域の人々を守ろうと、防災士が「機能別消防団員」に個人的に加入しようという動きもあるが、地域防災の担い手である消防団員が減少している現状で、「なぜ地域防災活動に関心があるのなら、最初から消防団に加入していないのか?」という声もある。

    法人化の方針

    2009年平成21年)9月、日本防災士会の橋本茂常任幹事(事務統括)は、全国の都道府県で支部が結成され揃って法人化することが望ましいことは言うまでもないとしており、都道府県で未結成11道府県の支部結成を呼びかけ、法人化を進める上で支部の意見を聞きたいとしている。

    日本防災士会は既存会員に向けて、NPO法人になった場合は「防災士の括動を涌じて地域の安全に貢献する」という趣旨から鑑みて、防災士以外の一般市民の入会(賛助会員など)は決して否定されるべきことではないと、本部の法人化に関する方針を報告しており、今後は支部と同様に防災士有志の団体ではなくなる可能性がある。

    本部の法人化

    日本防災士会は、平成18年定期総会で法人化の提案がなされ、翌年の平成19年定期総会で公益社団法人に移行する準備が決定されるものの公益法人制度改革の煽りを受け再び検討した結果、一般社団法人への移行に変更して平成21年の定期総会までの設立を表明していたが、総会の前に支部長会議を開催して深く議論するとしている。

    支部の独立

    日本防災士会東京都世田谷支部の支部長は、日本防災士会が特定非営利活動法人に移行するための準備を進めていることに対する会員の意見を世田谷支部の会員交流ボード(電子掲示板)で求めている。法人化の予定は本部のみで、支部は別団体とする方向で検討されていることから、支部ごとに法人化準備の動きが散見されるようになった。既に、日本防災士会の支部としながらも青森県防災士会および福井県防災士会は独立した名称の防災士会として団体を立ち上げている。また、青森県防災士会は平成20年3月5日、日本防災士会湘南支部は平成20年4月15日に、それぞれNPO法人として認証されている。日本防災士会には役員会で承認されたシンボルマーク・キャラクター・ロゴタイプがあるが、NPO法人青森県防災士会では県の地形をモチーフとする独自のロゴを使用している。

    支部結成の実情

    支部の結成については、本部に会員個人情報開示申請書の提出をすることで日本防災士会の会員名簿を入手して、名簿に記載された会員の連絡先に電話をして支部設立の協力を要請している。10人以上の人数確保が見込めた段階で支部設立準備会員によって役員を定め支部結成届出書を本部に提出する。その際に支部結成活動支援金申請書と支部結成時の構成員となる防災士名簿(防災士番号記載)を提出することで1名あたり2,000円の支部結成活動協力金が本部から交付される。

    日本防災士会は、防災士の資格を有する者で会費を納入した会員により構成しているが、日本防災士会の支部規定において、支部の承認申請では支部構成員名簿に防災士番号を記載する必要があるが、支部設立後の構成員の資格については触れていない。そのため、一部の支部については、防災士の資格がなくても入会できる現状が存在する。

    日本防災士会の組織委員会では、支部活動アンケートを実施している。支部からの回答率は第1回目と第2回目と共に6割前後であったが集計された結果が出ている。支部運営の問題点および課題については、運営費用不足を挙げる回答が飛び抜けて多かった。支部会費の状況については、15件の回答のうち支部設立初年度から不足しているという回答が5件、今後不足するという回答が9件、わからないという回答が1件、しばらくは不足しないという回答は0件だった。活動費確保の方策の問いには、日本防災士会からの支援を要請や会員の増加を求める回答が多かった。支部の厳しい財政事情をアンケート結果が裏付けている。

    任意団体の設立

    • 2007年平成19年)5月26日宮崎県内在住の防災士31名によって宮崎県防災士ネットワークが結成された。同年8月には県央支部が設立されている。平成20年5月24日現在、宮崎県防災士ネットワークの会員は防災士74名。宮崎県は、宮崎県地震減災計画における自主防災組織の充実に向けた具体的な取り組みとして、防災士ネットワーク加入者300名を目標に掲げ、自主防災組織のリーダー育成を推進している。
    • 2007年平成19年)6月17日、新潟県上越市の防災士養成講座で資格を取得した防災士が中心となり上越市防災士会が結成された。防災士の資格がなくても入会できる。上越市防災士会は、地域づくり団体新潟県協議会に登録されている。新潟県上越市では、安全・安心、環境保全プロジェクト自主防災組織整備事業として上越市防災士会の活動をサポートし、より効果的な地域防災活動の推進を目指したいとしている。
    • 2007年平成19年)8月和歌山県橋本市で防災士ら有志による橋本防災士の会が立ち上げられた。偶数月の第2日曜日の午後に市役所の会議室を借りて勉強会を開催している。防災士の資格がなくても参加できる。
    • 2007年平成19年)12月、東京土建一般労働組合世田谷支部の防災士7名が、職人の技を大地震対策のために生かしたいとして世田谷防災士の会を設立した。
    • 2008年平成20年)2月埼玉県草加市では、地域が主催する防災訓練などで消防との連携を図るために、草加市防災士の会が発足した。会長には警察庁OBが就任している。
    • 2008年平成20年)3月9日宮城県の女性防災士らで輝く女性隊が結成された。女性の視点で防災活動することを目的としている。平成18年5月1日現在、宮城県内の婦人防火クラブは1,966組織でクラブ員の総数は303,283名。ともに全国一を誇っている。
    • 2009年平成21年)9月1日東京国際大学はTIU防災士団を結成している。防災士の資格を有する教職員学生で構成される。同大学の1年次から3年次の在学生は、防災士資格取得講座を30,000円で受講できる。資格取得者は自動的にTIU防災士団に加入し、災害ボランティア活動に加わる。同大学は欧米人初の防災士を輩出していて、現在、TIU防災士団で防災地図の英訳などの活動を始めている。

    課題

    日本防災士機構、日本防災士会は、平成20年8月に、宮城県が条例制定を目指している「震災対策推進条例(案)」に、「宮城県防災指導士」を制度化する動きがあることに反発し、名称が類似しているばかりか、「防災士」資格の上位上級資格を容易に連想させる。また、「防災士」は特許庁により商標原簿に登録された商標登録(登録第4833713号・登録日平成17年1月21日)であるとして、「防災指導員」等、「士」の名称を外すようにと、宮城県内の防災士にも呼び掛けて組織的に意見を提出し、宮城県では、「宮城県防災指導員」と変更することになった。

    更に、総務省消防庁が行った「消防法施行令・施行規則改正案」をめぐるパブリックコメントにおいて、「防災管理者」の取得に際しては、「防災士」の取得者に優遇措置を講じてほしいと言う意見を提出した。総務省消防庁も回答で「公的資格取得に際して、民間資格の取得者を優遇はできない」としている。

    上記2つの行動に対して、地域防災組織や災害ボランティアの中には、いち民間資格である防災士が自分達の利益のために地域の防災行政制度や国の資格に対して、名称変更要求や優遇措置の要求を行うのは行きすぎなのではないかとの声も少なくないが、これについて日本防災士会や日本防災士機構は特にコメントを出していない。

    脚注

    1. ^ 防災のための専門的資格:例えば地すべりなどの地盤災害においては、技術士(応用理学地質や土質及び基礎)やシビルコンサルティングマネージャー(応用理学地質や土質及び基礎)などの資格を保有する個人の専門家がいる。他に、建築士ライフライン保守等の専門家もいる。
    2. ^ 宮城県沖地震は、地震調査研究推進本部により、今後30年以内の地震発生確率を99%としている。
    3. ^ 東京湾北部地震による被害は、死者約1万1千人、経済的損失約112兆円に上ると予想されている。

    関連項目

    参考文献

    外部リンク