疑存島

1558年のZeno mapにはFrislandという北大西洋の幻島が描かれている

幻島（まぼろしとう、英：Phantom islands）は、一度はその存在が信じられ、有史以来のある期間（数世紀に渡る場合もある）に渡って地図（海図）上にも記載されたが、後代の調査でその存在が否定され、地図上から削除された島（島嶼）である。その当時での存在が信じられていたという点で、有史以前に存在していたと一部の人々に信じられている島や大陸であり通常は神話や伝説が伴う失われた地 (en:lost lands) とは毛色が異なる。

幻島は、通常は未知の海域を探検した航海者の報告に端を発する。 そのうちのいくつかは実在の島々の位置を誤った場合、あるいは地理学上の錯誤が原因である。 例えばピープス島 (en:Pepys Island) は実際にはフォークランド諸島を見誤ったものであった。 また、バハ・カリフォルニア半島 は初期のいくつかの地図では島（カリフォルニア島）として描かれているが、後代に北アメリカ本土と陸続きであることが発見されている。 極北の島トゥーレは、実際にはおそらく紀元前4世紀に発見されたとみられるが後に見失われ、近代になって、古代の探検者がシェトランド諸島、アイスランド、スカンディナヴィアへと到達したものと再同定されるか、あるいは最初から実在しない伝説だったとも見なされることになった。

他の幻島はたぶん航海術上の錯誤か、氷山を見誤ったか、厚い層を成す霧か、光学的な錯覚に起因するものであろう。ニュー・サウス・グリーンランド (en:New South Greenland) は、1823年にウェッデル海で観測されたが、その後二度と観測されることはなく、上位蜃気楼によるものと信じられている。

いくつかの「エラー」は、後代では意図的なものと考えられている。探検者の地図上に長年の間載っていたスペリオル湖のIsle Phelipeaux、Isle Pontchartrain 両島 (en:Isles Phelipeaux and Pontchartrain)は、Louis Phélypeaux, marquis de La Vrilliere, comte de Pontchartrain に由来する名前である。Phélypeaux はフランス政府の大臣職にあった人物であり、探検航海のための追加資金の割り当てにおいて大きな影響力を持っていた。

多数の幻島が存在しないと見なされている一方で、少数の島（例えば恐らくトンプソン島 en:Thompson Island）は実在した島であったが、後に火山爆発、地震、海面下の地すべりなどで破壊されたか、海面下の砂州となってしまったと考えられている。

参考文献

• Henry Stommel|Stommel, Henry Lost Islands: The Story of Islands That Have Vanished from Nautical Charts, University of British Columbia Press, 1984. ISBN 0-7748-0210-3
• Gaddis, Vincent. Invisible Horizons, Chilton Books. New York. 1965.
• Clark Barnaby Firestone, The Coasts of Illusion: A Study of Travel Tales, Harper Books, 1924.
• William Shepard Walsh, A Handy Book of Curious Information, J. B. Lippincott, 1913.
• Ramsay, Raymond (1972). No Longer on the Map. New York: Viking Press. ISBN 0670514330 
• 近野 不二男　『幻島の謎―北極奇談』　社会思想社 〈現代教養文庫〉、1972年。

関連項目

• サンニコフ島
• 中ノ鳥島

外部リンク

• 幻想諸島航海記／サンニコフ島