日本の民族問題

日本の民族問題（にほんのみんぞくもんだい）は、日本における民族政策や民族差別などに関する問題である。この記事においては、現代の日本におけるそれらの問題の実情を、歴史的背景等に言及しながら概説する。個々の問題に関してはより詳しい解説が他の項目に存在する場合がある。

人種的にはアジア系のモンゴロイドが大半を占める日本にあっては、とくに近隣諸国にエスニシティのルーツを持つ人々や日系人帰国者などでは容姿では見分けが付き難く顕在化しにくい傾向が強い。しかしそれらの人々に固有の文化も存在し、この文化に対する周囲の理解といった問題や、公人の人種差別的な発言によって一気に浮上してくる事がある。また、日本の政策や民族差別事例に対する日本政府などの対応は国際人権規約や人種差別撤廃条約に違反しているとして、国連人権委員会から勧告を受けることもある。

概要

日本国内においてはたびたび「単一民族」と唱えられることが多いが、その日本人に関しても、他の海に囲まれた国家の例に漏れず、古代から近年にかけての全時代を通して、北方・大陸（主にユーラシア大陸）・南方より渡来、または移住などにより様々な民族が在住している。これは国内で重大な対立・衝突が起きず、それが為にその存在が顕在化しなかったためであろうと見られる。

その一方で日系人は数多く海外に移住し、数多くの民族と関わっている。彼等は海外では「日本人」としての扱いを受けることもあるが、日系帰国者の場合日本に来ると母国人としてのアイデンティティを持つ場合が多い。

ところが第二次世界大戦前に行われた、主に植民地(外地)における、日本文化への同化政策（皇民化政策）などによって、大日本帝国を構成する大和民族以外のマイノリティ(外地人や内地人に含まれるウィルタ、琉球人、アイヌなど)の民族性は著しく否定されていた。このためその歴史的経緯や文化人類学上によって指摘されている多民族国家としての立場を忘れ、または気付かずに、近年でもしばしば日本が「単一民族」であるとしてしまう（あるいは意図的に唱える）人は後を断たず、これらへの反発などから朝鮮半島などでは日本統治時代の日本文化への嫌悪感も少なからず残っている。皇民化政策については、「たしかに現在の民族自決の思想に反するものであるが、同時期に他国の植民地で行われていた愚民政策や人種差別政策と比較すれば穏当、人道的なものであった｣とする意見もある。この歴史的反動によって現在でも「単一民族論」が殊更問題視されるケースも見られる。ただし文化多元主義に根強く反対する人々も一部に見られる。

2005年7月国連人権委員会特別報告者（人種差別・外国人恐怖症担当）のドゥドゥ・ディエン及び国連人権高等弁務官事務所人権担当官が日本政府の合意の上で日本を公式訪問し、京都の在日朝鮮人集落であるウトロ地区を始め、被差別部落、各行政当局を訪問。また、法務省入国管理局の実施している不法滞在の電子メール通報制度を、「外国人排斥の風土を助長」しているから撤廃するよう主張した。さらに、アイヌ民族や朝鮮半島出身者への差別解消策として、歴史教科書を改善するよう主張。9日間の滞在で、「日本では被差別部落や在日韓国・朝鮮人などに対し深刻な差別があり、政府は（包括的な反差別法などの）対応措置を講じる必要がある」との報告書をまとめ、国連総会に提示する考えを示した。また、取材に対し「日本政府は今回の訪問に協力的だったが、当局者の多くは民族主義と人種差別の深刻さを理解していない。また、政治家が民族主義的な態度で民衆の感情を煽っていることを憂慮する」と述べた。

その一方で、この問題は別の意味の深刻な要素を孕んでいる。 2005年11月、国連人権委員会のドゥドゥ・ディエン特別報告者（セネガル）により、国連総会第3委員会（人権）で、日本における人種差別が問題にされ、包括的に人種差別禁止法の制定が訴えられた。

しかしドゥドゥ･ディエン氏は、一度しか来日経験がなく、それもわずか9日間である。この9日間の来日を日本側でサポートしたのが国連ＮＧＯに登録されているＩＭＡＤＲ（反差別国際運動）という団体。この団体の日本委員会の理事長である武者小路公秀という人物は、「チュチェ思想国際研究所」という北朝鮮の体制を礼賛する組織の理事も兼ねており、ドゥドゥ・ディエン氏を巻き込んだ、国際的な反日キャンペーンを企図している可能性があると指摘する声もある。

日本国内の多数以外の民族

日本国内で生活し、あるいは日本国籍を有するものの中にも、日本固有の民族意識(「日本人」としての意識或いは単一思想又は大和民族)とは異なった民族的自覚を持ち続ける人々がある。以下は日本国内にあっていわゆる日本民族とは異なった民族的自覚を持って暮らしている人々の例である。

• アイヌ民族　
• ウィルタ・ニヴフ
• 琉球民族
• 小笠原諸島の欧米系島民等　-開拓・移民の末裔
• 在日華僑、華人、華裔（在日中国人、在日台湾人)
• 在日コリアン（在日韓国・朝鮮人）　-元朝鮮籍など。国籍に関わらず同胞コミュニティが存在。
• 元ヴェトナム・インドシナ難民とその家族
• いわゆる日本籍フィリピン人
• 在日フィリピン人
• 日系ブラジル人

日本においてこれらの人々は、いわゆる少数民族であり、個別の文化を伝承している。

民族問題事件と同化政策

民族問題に絡んで、一般にも問題視される事件が発生する事がある。

朝鮮民族

詳細は在日コリアン参照

日本人と朝鮮民族の関係は長く深いが、その一方で鮮人社会への無理解が顕著化する事がある。朝鮮人社会は古くから、日本文化とは一定の距離をおいて独自の学校教育制度や宗教、また縁故による就労が行われているが、近年になって国際的にも特異性が問題視される北朝鮮に絡む事件が起こった際に、普段より日本社会と距離をおいているこれらの人々と日本人の間に衝突が生じることがある。

これが政治的な駆け引きに収まっている分は兎も角として、個人攻撃が派生する事がある。たとえば、拉致問題は国家犯罪であると共に、朝鮮人による日本人に対する攻撃であるし、朝鮮人学校に通う児童や生徒が暴行されるという事態も報告されている。度々発生する不審船の領海侵犯事件や1998年の長距離ミサイル（北朝鮮側は「人工衛星打ち上げ」と主張）発射事件、また近年になって事実関係が明らかになってきた日本人拉致問題が社会的に話題となると、これら事件が発生しやすると主張する声がある。

とくに、電車の中でチマチョゴリが切られたとの報告が多くなされ、同問題を重く見た朝鮮学校側は、従来は民族文化教育の一環として制服に採用していた民族衣装のチマチョゴリ（女生徒用）がこれら事件で「日本人と朝鮮人を見分ける目印」になっているとして、1999年より、これに平行してブレザーを第2制服として採用、生徒の自由選択に任せるという対策をとっている。

しかし、この問題では、報告された例のなかで暴行の実行犯が実際に捕まり調べられたものはなく、日本人が実際に差別意識の元におこなったというのを断定するのは問題がある。にもかかわらず、朝日新聞等を中心とする報道で、朝鮮総連や被害者の発言の裏付けもなさず報道がなされたことは批判の声も挙がった。

なお、チマチョゴリ事件を朝鮮総連の自作自演の可能性があるとするルポタージュを別冊宝島に発表した、在日朝鮮人三世のキム・ムイ（金武義）氏は記事を発表後の1995年、アパートの自室で不審な死を遂げている。しかし実行犯が実際に捕まったり調べられたりしたものはいない状態での告発には裏付けがないとして批判の声も挙がった。

琉球民族

詳細は琉球民族及び沖縄の歴史参照

• 沖縄戦

関連項目

• 人権擁護法
• 日本帝国主義
• 日本の戦争賠償と戦後補償
• 在日外国人
• 社会的少数者
• 国籍条項
• 渡来人

外部リンク

• アイヌ民族博物館