「サヴィトリ」の版間の差分
m ロボットによる 追加: id:Sawitri |
編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
'''サヴィトリ'''('''Savitr''')は、[[インド神話]]における[[太陽神]]の1つ。「鼓舞者」、「激励者」、「刺激者」などの意で、[[太陽]]が陽光によって万物を刺激、鼓舞し、活動を促す1側面を神格化したもの。そのため[[バラモン]]階級の人間が最も神聖視し、毎朝唱える讃歌[[ガーヤトリー]]は'''サーヴィトリー'''とも呼ばれる。 |
'''サヴィトリ'''('''Savitr''')は、[[インド神話]]における[[太陽神]]の1つ。「鼓舞者」、「激励者」、「刺激者」などの意で、[[太陽]]が陽光によって万物を刺激、鼓舞し、活動を促す1側面を神格化したもの。そのため[[バラモン]]階級の人間が最も神聖視し、毎朝唱える讃歌[[ガーヤトリー]]は'''サーヴィトリー'''とも呼ばれる。また、[[ブラフマー]]の妃ともいわれる。 |
||
『[[リグ・ヴェーダ]]』では10篇ないし11篇の讃歌を持ち、[[ヴァルナ (神)|ヴァルナ]]や[[アリヤマン]]、[[バガ]]といった神々と結びつけられている。サヴィトリは黄金の眼と、黄金の両腕を持ち、黄金の車に乗る。サヴィトリは生物、無生物を問わず万物を刺激し、それによって宇宙を維持するが、1日の終わりには人々に眠りをもたらす。 |
『[[リグ・ヴェーダ]]』では10篇ないし11篇の讃歌を持ち、[[ヴァルナ (神)|ヴァルナ]]や[[アリヤマン]]、[[バガ]]といった神々と結びつけられている。サヴィトリは黄金の眼と、黄金の両腕を持ち、黄金の車に乗る。サヴィトリは生物、無生物を問わず万物を刺激し、それによって宇宙を維持するが、1日の終わりには人々に眠りをもたらす。 |
||
神話ではサヴィトリは、バガ、[[プーシャン]]とともに身体毀損の伝承を持つ。彼は[[ダクシャ]]の祭祀か、あるいは別の重要な祭祀の場で両腕を失ってしまう。『[[マハーバーラタ]]』などでは彼の腕を切り落とすのは[[シヴァ]](ルドラ)神であるが、『[[カウシータキ・ブラーフマナ]]』では神々が行ったある重要な祭祀のおり、神聖な供物(プラーシトラ)をサヴィトリに捧げると、供物はサヴィトリの両腕を切断し、続いてバガの両眼をつぶし、プーシャンの歯を全て吹き飛ばしたとされる。神話学者[[ジョルジュ・デュメジル]]はこの神話におけるサヴィトリ、バガを、[[隻眼]]、[[隻腕]]の神と比較している。 |
神話ではサヴィトリは、バガ、[[プーシャン]]とともに身体毀損の伝承を持つ。彼女は[[ダクシャ]]の祭祀か、あるいは別の重要な祭祀の場で両腕を失ってしまう。『[[マハーバーラタ]]』などでは彼女の腕を切り落とすのは[[シヴァ]](ルドラ)神であるが、『[[カウシータキ・ブラーフマナ]]』では神々が行ったある重要な祭祀のおり、神聖な供物(プラーシトラ)をサヴィトリに捧げると、供物はサヴィトリの両腕を切断し、続いてバガの両眼をつぶし、プーシャンの歯を全て吹き飛ばしたとされる。神話学者[[ジョルジュ・デュメジル]]はこの神話におけるサヴィトリ、バガを、[[隻眼]]、[[隻腕]]の神と比較している。 |
||
『マハーバーラタ』の中では、彼女は貞淑な妻である。ある時、マドラという国のアシュヴァパティ王に、サーヴィトリーという美しい娘が生まれた。年頃になった彼女は、森林に追放されたシャールヴァ王国の王子サティヤヴァットとの結婚を望んだ。 |
|||
はじめは祝福された結婚だったが、ナーランダ聖仙がサティヤヴァットの命は後一年であると予言した事により、周囲はその結婚に反対する。しかし彼女の思いは強く、二人は深い森の中で結ばれたのである。 |
|||
幸せな生活は瞬く間に過ぎ、予言された日、サティヤヴァットは森の奥で倒れた。死の神[[ヤマ]]が、その魂を持ち去ったのである。彼女は、必至になって夫の命を助けてくれるようにヤマに祈った。さすがのヤマも、その涙に心を打たれ、サティヤヴァットの魂を解放したのである。 |
|||
サヴィトリは後世、[[アーディティヤ|アーディティヤ神群]]の1つとされるようになった。 |
サヴィトリは後世、[[アーディティヤ|アーディティヤ神群]]の1つとされるようになった。 |
2011年4月30日 (土) 15:50時点における版
サヴィトリ(Savitr)は、インド神話における太陽神の1つ。「鼓舞者」、「激励者」、「刺激者」などの意で、太陽が陽光によって万物を刺激、鼓舞し、活動を促す1側面を神格化したもの。そのためバラモン階級の人間が最も神聖視し、毎朝唱える讃歌ガーヤトリーはサーヴィトリーとも呼ばれる。また、ブラフマーの妃ともいわれる。
『リグ・ヴェーダ』では10篇ないし11篇の讃歌を持ち、ヴァルナやアリヤマン、バガといった神々と結びつけられている。サヴィトリは黄金の眼と、黄金の両腕を持ち、黄金の車に乗る。サヴィトリは生物、無生物を問わず万物を刺激し、それによって宇宙を維持するが、1日の終わりには人々に眠りをもたらす。
神話ではサヴィトリは、バガ、プーシャンとともに身体毀損の伝承を持つ。彼女はダクシャの祭祀か、あるいは別の重要な祭祀の場で両腕を失ってしまう。『マハーバーラタ』などでは彼女の腕を切り落とすのはシヴァ(ルドラ)神であるが、『カウシータキ・ブラーフマナ』では神々が行ったある重要な祭祀のおり、神聖な供物(プラーシトラ)をサヴィトリに捧げると、供物はサヴィトリの両腕を切断し、続いてバガの両眼をつぶし、プーシャンの歯を全て吹き飛ばしたとされる。神話学者ジョルジュ・デュメジルはこの神話におけるサヴィトリ、バガを、隻眼、隻腕の神と比較している。
『マハーバーラタ』の中では、彼女は貞淑な妻である。ある時、マドラという国のアシュヴァパティ王に、サーヴィトリーという美しい娘が生まれた。年頃になった彼女は、森林に追放されたシャールヴァ王国の王子サティヤヴァットとの結婚を望んだ。 はじめは祝福された結婚だったが、ナーランダ聖仙がサティヤヴァットの命は後一年であると予言した事により、周囲はその結婚に反対する。しかし彼女の思いは強く、二人は深い森の中で結ばれたのである。 幸せな生活は瞬く間に過ぎ、予言された日、サティヤヴァットは森の奥で倒れた。死の神ヤマが、その魂を持ち去ったのである。彼女は、必至になって夫の命を助けてくれるようにヤマに祈った。さすがのヤマも、その涙に心を打たれ、サティヤヴァットの魂を解放したのである。
サヴィトリは後世、アーディティヤ神群の1つとされるようになった。