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[[ファイル:Marianela Nunez 1.JPG|thumb|right|320px|<center>次代を担うプリンシパル、マリアネラ・ヌニェス</center>]]
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'''ロイヤル・バレエ団'''('''The Royal Ballet''')は、[[イギリス]]の王立[[バレエ]]団。[[フランス]]の[[パリ国立オペラ|パリ・オペラ座]]、ロシアの[[ショ劇場]]と並び、世界三大バレエ団の一つと称される。名誉総裁は[[チャールズ (プリンス・オブ・ウェールズ)|チャールズ王太子]]、芸術監督は元プリンシパルのモニカ・メイソン。
'''ロイヤル・バレエ団'''('''The Royal Ballet''')は、[[イギリス]]の王立[[バレエ]]団。[[フランス]]の[[パリ国立オペラ|パリ・オペラ座]]、ロシアの[[リインスキー・バレエ]]の2大バレエ団に加えて、世界三大バレエ団の一つと称されることもある。2011年現在の名誉総裁は[[チャールズ (プリンス・オブ・ウェールズ)|チャールズ王太子]]、芸術監督は元プリンシパルのモニカ・メイソン。


== 概要 ==
== 概要 ==
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=== 特色 ===
=== 特色 ===
ショイやパリ・オペラ座バレエ団が[[王室]]の命によって設立され200年近い歴史を持つのとは対照的に、ロイヤル・バレエの設立は個人によるものであり、そのために当初から演劇的で大衆受けする作品が作られていた。王立バレエ団となってからも前述のアシュトンに加え[[ジョン・クランコ|J・クランコ]]、[[ケネス・マクミラン|K・マクミラン]]など個性的な振付家が輩出され、『[[ラ・フィユ・マル・ガルデ|ラ・フィユ・マル・ガルデ(リーズの結婚)]]』、『[[マノン (バレエ)|マノン]]』、『[[うたかたの恋]]』、『パゴタの王子』など演劇性の高い作品が生まれた。演劇の伝統の色濃いイギリスのバレエ団らしく古典作品においてもマイム(パントマイム)を多く残す振付を上演するほか、演技に重きを置くプリンシパル・キャラクター・アーティストという階級をダンサー最高位のプリンシパルと並び設けている点もとりわけ特徴的である。
リインスキー・バレエやパリ・オペラ座、あるいはそれに匹敵する[[ボリショイ劇場|ボリショイバレエ団]]が[[王室]]の命によって設立され200年近い歴史を持つのとは対照的に、ロイヤル・バレエの設立は個人によるものであり、そのために当初から演劇的で大衆受けする作品が作られていた。王立バレエ団となってからも前述のアシュトンに加え[[ジョン・クランコ|J・クランコ]]、[[ケネス・マクミラン|K・マクミラン]]など個性的な振付家が輩出され、『[[ラ・フィユ・マル・ガルデ|ラ・フィユ・マル・ガルデ(リーズの結婚)]]』、『[[マノン (バレエ)|マノン]]』、『[[うたかたの恋]]』、『パゴタの王子』など演劇性の高い作品が生まれた。演劇の伝統の色濃いイギリスのバレエ団らしく古典作品においてもマイム(パントマイム)を多く残す振付を上演するほか、演技に重きを置くプリンシパル・キャラクター・アーティストという階級をダンサー最高位のプリンシパルと並び設けている点もとりわけ特徴的である。


また前記2バレエ団が地元出身の舞踊手団員を構成する(ボリショイならばロシアおよび旧[[ソビエト連邦|ソ連]]国家、オペラ座ならフランスもしくその周辺国)のとは対照的に、[[1980年]]代後半から海外出身の舞踊手を積極的に入団させているのも特徴としてあげられよう。結果、[[日本]]の[[熊川哲也]]・[[吉田都]]、[[フランス]]の[[シルヴィ・ギエム|S・ギエム]]、[[スペイン]]の[[タマラ・ロホ|T・ロホ]]、[[キューバ]]の[[カルロス・アコスタ|C・アコスタ]]、[[ルーマニア]]の[[アリーナ・コジョカル|A・コジョカル]]、[[アルゼンチン]]の[[マリアネラ・ヌニェス|M・ヌニェス]]など国際色豊かな多士が揃うようになった。反面、安易に他国の優秀ダンサーを引き抜いてばかりで自国のダンサーを育成していないという指摘もある。また『[[マノン (バレエ)|マノン]]』、『[[ロメオとジュリエット (プロコフィエフ)|ロミオとジュリエット]]』など1960~70年代に製作された新古典上演を重んじるあまり、[[ウィリアム・フォーサイス|W・フォーサイス]]などコンテンポラリー、モダン系の演目を取り入れるのが遅れ、レパートリーが旧態依然となっているという批判もある。
また前記フランスやロシアの3バレエ団が自国子供を付属のバレエ学校で育てた舞踊手を中心に団員を構成マリンスキーとボリショイならばロシアおよび旧[[ソビエト連邦|ソ連]]国家、オペラ座ならフランス)外国人少ないのとは対照的に、[[1980年]]代後半から他国でバレエ教育を受けすでに高いレベルに成長した舞踊手を積極的に入団させているのも特徴としてあげられよう。結果、[[日本]]の[[熊川哲也]]・[[吉田都]]、[[フランス]]の[[シルヴィ・ギエム|S・ギエム]]、[[スペイン]]の[[タマラ・ロホ|T・ロホ]]、[[キューバ]]の[[カルロス・アコスタ|C・アコスタ]]、[[ルーマニア]]の[[アリーナ・コジョカル|A・コジョカル]]、[[アルゼンチン]]の[[マリアネラ・ヌニェス|M・ヌニェス]]など国際色豊かな多士が揃うようになった。反面、安易に他国の優秀ダンサーを引き抜いてばかりで自国のダンサーを育成していないという指摘もある。また『[[マノン (バレエ)|マノン]]』、『[[ロメオとジュリエット (プロコフィエフ)|ロミオとジュリエット]]』など1960~70年代に製作された新古典上演を重んじるあまり、[[ウィリアム・フォーサイス|W・フォーサイス]]などコンテンポラリー、モダン系の演目を取り入れるのが遅れ、レパートリーが旧態依然となっているという批判もある。


=== 日本との関わり ===
=== 日本との関わり ===

2011年5月14日 (土) 04:33時点における版

次代を担うプリンシパル、マリアネラ・ヌニェス

ロイヤル・バレエ団The Royal Ballet)は、イギリスの王立バレエ団。フランスパリ・オペラ座、ロシアのマリインスキー・バレエの2大バレエ団に加えて、世界三大バレエ団の一つと称されることもある。2011年現在の名誉総裁はチャールズ王太子、芸術監督は元プリンシパルのモニカ・メイソン。

概要

歴史

バレエ・リュスで活躍していたアイルランド出身のバレリーナ、ニネット・ド・ヴァロア1931年ロンドンで始めたヴィック・ウェルズ・バレエ(Vic Wells Ballet)が濫觴である。英国にはまだ国立のバレエ団は存在せず、全くの私立カンパニーとしての始まりであった。1942年までにバレエ団はロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場を本拠地とするサドラーズ・ウェルズ・バレエ団となり、先に設立していたバレエ学校でM・フォンテインM・シアラーなど自前の舞踊手を育てていった。初期作品にはド・ヴァロアの振付によるものもあったが、やがて舞踊手出身のフレデリック・アシュトンが振付を開始して数々の名作品を生み出すようになる。第二次世界大戦が始まるとヨーロッパ各国への公演、駐留軍への慰問公演などを積極的に行い、集客力と知名度を上げていった。

1946年、戦争で閉鎖していたロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスは再開にあたってサドラーズ・ウェルズ・バレエ団を傘下に置くことになり、バレエ団はコヴェント・ガーデンに本拠地を移した。旧本拠地のサドラーズ・ウェルズ劇場はその代償として分派させたバレエ団の一部を姉妹カンパニーとして手元に留まらせ、その名称はサドラーズ・ウェルズ・シアター・バレエ団となった(移転した方の名称は旧来のまま)。

1956年、王室勅書によりマーガレット王女を名誉総裁とする王立バレエ団となる。2つのバレエ団はそれぞれロイヤル・バレエ団、サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団の名称が冠せられた。なお1991年にサドラーズ・ウェルズ・ロイヤルはバーミンガムに移転し、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団と改称して現在に至っている。

特色

マリインスキー・バレエやパリ・オペラ座、あるいはそれに匹敵するボリショイバレエ団王室の命によって設立され200年近い歴史を持つのとは対照的に、ロイヤル・バレエの設立は個人によるものであり、そのために当初から演劇的で大衆受けする作品が作られていた。王立バレエ団となってからも前述のアシュトンに加えJ・クランコK・マクミランなど個性的な振付家が輩出され、『ラ・フィユ・マル・ガルデ(リーズの結婚)』、『マノン』、『うたかたの恋』、『パゴタの王子』など演劇性の高い作品が生まれた。演劇の伝統の色濃いイギリスのバレエ団らしく古典作品においてもマイム(パントマイム)を多く残す振付を上演するほか、演技に重きを置くプリンシパル・キャラクター・アーティストという階級をダンサー最高位のプリンシパルと並び設けている点もとりわけ特徴的である。

また前記フランスやロシアの3バレエ団が自国の子供を付属のバレエ学校で育てた舞踊手を中心に団員を構成し(マリンスキーとボリショイならばロシアおよび旧ソ連国家、オペラ座ならフランス)外国人は少ないのとは対照的に、1980年代後半から他国でバレエ教育を受けすでに高いレベルに成長した舞踊手を積極的に入団させているのも特徴としてあげられよう。結果、日本熊川哲也吉田都フランスS・ギエムスペインT・ロホキューバC・アコスタルーマニアA・コジョカルアルゼンチンM・ヌニェスなど国際色豊かな多士が揃うようになった。反面、安易に他国の優秀ダンサーを引き抜いてばかりで自国のダンサーを育成していないという指摘もある。また『マノン』、『ロミオとジュリエット』など1960~70年代に製作された新古典上演を重んじるあまり、W・フォーサイスなどコンテンポラリー、モダン系の演目を取り入れるのが遅れ、レパートリーが旧態依然となっているという批判もある。

日本との関わり

1961年以来数年に一度来日公演を行っており (来日公演一覧参照)、日本国内でも高い人気を維持している。傘下におくロイヤル・バレエ学校がこれまでに優れた舞踊手を輩出していることもあり、ロイヤル・バレエ団は国際的なバレエダンサーを目指す者にとって究極の目標と見なされているといっても過言ではない。

在籍した主な舞踊手

主なレパートリー

ロイヤル・オペラハウスは1946年以来の本拠地
フレデリック・アシュトン振付
ケネス・マクミラン振付
  • ロミオとジュリエット』 (Romeo and Juliet)
  • マノン』 (Manon)
  • うたかたの恋』 (Meyerling)
  • 春の祭典』 (Rite of Spring)
  • 『パゴタの王子』 (Prince of Pagoda)
  • 『アナスタシア』 (Anastasia)
  • 『大地の歌』 (Song of the Earth)
  • 『グロリア』 (Gloria)
  • 『招待』 (The Invitation)
  • 『エリート・シンコペーション』 (Elite Syncopations)
  • 『ダンセズ・コンチェルタンテス』 (Danses Concertantes)
  • 『ユダの樹』 (Judas Tree)
ニネット・ド・ヴァロア演出・振付
  • コッペリア』 (Coppélia)
  • 『チェックメイト』 (Checkmate)
  • 『放蕩者のなりゆき』 (Rake's Progress)
ピーター・ライト演出・振付

来日公演一覧

演目
主な出演者
芸術監督
公演場所
1961 白鳥の湖』 (ヴァロア改訂版)
ジゼル
レ・シルフィード』 『チェックメイト
ソリティア』ほか
M・フォンテイン
M・ソムズ
L・シーモア
ニネット・ド・ヴァロア 東京文化会館ほか
1975 眠れる森の美女』 (マクミラン振付)
リーズの結婚』(アシュトン振付)
A・ダウエル
M・パーク
L・コリアー
ケネス・マクミラン
東京・名古屋・大阪ほか
1983 マノン』(マクミラン振付)
『スケートをする人々』
『田園の出来事』 (アシュトン振付)
ほか
A・ダウエル
M・パーク
L・コリアー
M・メイソン
ノーマン・モリス
東京・名古屋・大阪・
広島・福岡
1987 うたかたの恋』 (マクミラン振付)
眠れる森の美女
L・コリアー
M・メイソン
F・チャドウィック
M・コールマン
アンソニー・ダウエル
東京・横浜・名古屋・
大阪・福岡・鹿児島
1992 『三人姉妹』
真夏の夜の夢』 (アシュトン振付)
ラ・バヤデール
D・バッセル
L・コリアー
V・デュランテ
S・ギエム
熊川哲也
同上
東京・横浜・名古屋・
大阪・広島・岡山・
多摩・相模大野・長野・
勝田・札幌
1995 ジゼル
眠れる森の美女
D・バッセル
S・ギエム
V・デュランテ
I・ムハメドフ
J・コープ
熊川哲也
同上
東京・富士・名古屋・
大阪・和歌山・市川・
ひたちなか・札幌
1997 ロメオとジュリエット』 (マクミラン振付)
ドン・キホーテ』(バリシニコフ振付)
A・クーパー
S・ギエム
J・コープ
熊川哲也
吉田都
I・ムハメドフ
同上
東京・大阪
1999 マノン』 (マクミラン振付)
白鳥の湖』 (ヴァロア改訂版)
リーズの結婚』(アシュトン振付)
D・バッセル
S・ギエム
V・デュランテ
吉田都
J・コープ
B・サンソム
I・ゼレンスキー
同上
東京・大阪・名古屋・
札幌・浜松・横浜
2005 シンデレラ』 (アシュトン振付)
マノン
D・バッセル
S・ギエム
吉田都
A・コジョカル
J・コボー
T・ロホ
モニカ・メイソン
東京文化会館
2008 シルヴィア』 (アシュトン振付)
眠れる森の美女
ヴァロア演出版復元)
ガラ(大阪)
M・ヌニェス
J・コボー
T・ロホ

R・マルケス
D・マッカテリ
T・ソアレス
同上
東京文化会館・大阪
2010 リーズの結婚』(アシュトン振付)
うたかたの恋』 (マクミラン振付)
ロメオとジュリエット』 (マクミラン振付)
M・ヌニェス
T・ロホ
A・コジョカル
R・マルケス
吉田都
C・アコスタ
J・コボー
S・マックレー
E・ワトソン
同上
東京文化会館

※初来日は1961年。竣工直後の東京文化会館で行われた。

外部リンク

Royal Ballet 公式サイト