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2011年12月9日 (金) 22:49時点における版
学習性無力感(がくしゅうせいむりょくかん、learned helplessness)は、長期にわたって、ストレス回避の困難な環境に置かれた人は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという見解。学習性絶望感ともいう。
日本に紹介されたばかりの頃には、直訳に近い「獲得された無力感」と呼ばれていた。
概要
心理学者のマーティン・セリグマン(Martin Seligman)が、1960年代にリチャード・ソロモンの元で学生生活をしていた時期に思いつき、それ以来10年間近くの研究をもとに発表した。
それによると、長期にわたり、抵抗や回避の困難なストレスと抑圧の下に置かれた犬は、その状況から「何をしても意味がない」ということを学習し、逃れようとする努力すら行わなくなるというものである。
実験は1967年にセリグマンとマイヤーが犬を用いて行った。 予告信号のあとに床から電気ショックを犬に与えるというものである。犬のいる部屋は壁で仕切られており、予告信号の後、壁を飛び越せば電気ショックを回避できるようにした。 また、前段階において次の二つの集団を用意した。 電気ショックを回避できない状況を用意し、その状況を経験した犬と足でパネルを押すことで電気ショックを終了させられる状況を経験した犬である。 実験ではその二つの集団に加え、なにもしていない犬の集団で行った。 実験の結果、犬の回避行動に差異が見られた。前段階において電気ショックを回避できない犬はその他の集団に比べ回避に失敗したのである。具体的にはその他の集団が平均回避失敗数が実験10回中約2回であるのに対し、前段階において電気ショックを回避できない犬は平均回避失敗数が実験10回中約7回である。 これは犬が前段階において、電気ショックと自分の行動が無関係であると学習しそれを認知した為、実験で回避できる状況となった場合でも何もしなくなってしまったと考えられる。これをセリグマンらは学習性無力感と呼んだ。
鬱病に至る背景(心理モデル)の一つとして有力視されているが、詳しいことは分かっていない。
症状
長期に渡り、人が監禁されたり、暴力を振るわれたり、自分の尊厳や価値がふみにじられるような場面に置かれた場合、次のような徴候が現れるという。
- 被験者は、その圧倒的に不愉快なストレスが加えられる状況から、自ら積極的に抜け出そうとする努力をしなくなる。
- 実際のところ、すこしばかりの努力をすれば、その状況から抜け出すのに成功する可能性があったとしても、努力すれば成功するかもしれないという事すら考えられなくなる。
- ストレスが加えられる状況、又ストレッサーに対して何も出来ない、何も功を奏しない、苦痛、ストレス、ストレッサーから逃れられないという状況の中で、情緒的に混乱をきたす。
人の行動は、良かれ悪しかれ何らかの学習の成果として現れてくるものである、という学習理論を土台とした理論である。拉致監禁の被害者や、長期の家庭内虐待の被害者などの、行動の心理的根拠を説明する理論として、注目されている。
参考文献
- クリストファー・ピーターソン、スティーブン・F・マイヤー『学習性無力感 パーソナル・コントロールの時代をひらく理論』二瓶社 2000年 ISBN 4931199690
- M.E.P.セリグマン『うつ病の行動学―学習性絶望感とは何か』(1985) ISBN 4414302552
- 野村総一郎『うつ病の動物モデル』(1984) ISBN 9784875250289
- 北尾倫彦、中島実、井上毅、石王敦子『グラフィック心理学』(1997) ISBN 478190825X