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2012年5月6日 (日) 05:55時点における版
文学 |
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『マルタの鷹』(マルタのたか、The Maltese Falcon )は、ダシール・ハメット作の1930年の探偵小説。私立探偵サム・スペードの登場する唯一の長編。いわゆるハードボイルド派を確立した作品として名高い。3度にわたって映画化され、特に1941年のジョン・ヒューストン監督、ハンフリー・ボガート主演のものが有名。
概要
単純な家出娘さがしと思われた依頼に端を発して、莫大な価値を持つ「マルタの鷹」像の争奪戦が展開する。
徹底して心理描写と説明を排した簡潔な文体で構成され、登場人物が今何を考えているのか、どうしてそうするのかを地の文で明かされず、癖のある登場人物ともあいまって、やや読者を突き放した作風になっている。本格派推理小説の読者にも、カルチャーショックを与えた。
もう一つの特徴として、歪曲表現を多用することで、当時の出版倫理では活字化不可能だった俗語、隠語の類を登場人物に喋らせる手法を用いているため、全体的に荒っぽい雰囲気である。
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
あらすじ
サンフランシスコの私立探偵サム・スペードは、家出した妹を連れ戻したいという女性の依頼を受けて、相棒のマイルズ・アーチャーに、フロイド・サースビーという男を尾行させる。しかし、その夜サースビーとアーチャーは死体となって発見される。スペードはアーチャーの妻と密通しており、警察は彼に嫌疑をむける。
スペードはジョエル・カイロという男の訪問を受ける。彼はスペードが何かを握っていると考えており、それを探ろうとしている様だった。
女依頼人に再会したスペードは、彼女が最初に名乗ったのは偽名で本名はブリジッド・オショーネシーであること、カイロとも関係していることを知る。ふたりを引き合わせたスペードは、彼らの会話からその関心がある鳥の彫像にあること、「G」なる人物もまたそれを求めているらしいことを知る。
やがて「G」ことガットマンもスペードに接触してくる。スペードははったりをしかけて、彼らの捜し求めるマルタ騎士団にゆかりを持つ「マルタの鷹」の存在を聞きだす。ガットマンは、ロシアの将軍が「鷹」を所持していることを知り、カイロ、サースビー、オショーネシーの3人を代理人として派遣したが、「鷹」の価値に勘付いた3人はそれを秘匿してしまったのだという。
やがて、オショーネシーの意を受けて、貨物船「ラ・パロマ」号の船長がスペードの事務所を訪れる。彼は「鷹」をスペードに託して息絶える。「鷹」を手に入れたスペードはそれを切り札にガットマンらと交渉し、すべてのいきさつをあぶりだす。「鷹」の取り分をめぐる仲間割れから、アーチャーも殺されたのだった。
それをめぐって3人の男が殺されることになった「鷹」は模造品だった。ガットマンらの態度からそれが高価なものだと気付いた持ち主のロシア人が、偽物をつかませたのだった。落胆しながらも、再び「鷹」を求めて出立していったガットマンらを、スペードはあっさりと警察に密告する。
そして、アーチャーを射殺した実行犯であったオショーネシーも、必死の哀願にもかかわらず、無慈悲に警察につきだされるのだった。
映画化作品
すべてワーナー・ブラザーズにより、3度にわたって映画化されている。
- 『魔王が婦人に出遭った』(Satan Met A lady)(1936年)
- 監督 ウィリアム・ディターレ
- 脚色 ブラウン・ホームズ
- 出演 ウォーレン・ウィリアム(スペード)・アリソン・スキップワース(ガットマン)
- 内容は大幅に改変された。
- 『マルタの鷹』(1941年)
- 監督・脚本 ジョン・ヒューストン
- 出演 ハンフリー・ボガート(スペード)・メアリー・アスター(オショーネシー)
- 1940年代の名作のひとつに数えられ、ボガートの出世作としても知られる。当初ジョージ・ラフトを起用する予定であったが,本人談によると当時の契約の中に「再映画化作品には出演しない」という条項があった事から断ったという。
このほかパロディ作品も数多いが、そのほとんどがハメットの原作のというより、41年のヒューストン=ボガート版のパロディになっていることが多い。
関連書
- 直井明 『本棚のスフィンクス 掟やぶりのミステリ・エッセイ』 論創社 - 原作で説明されていない「ラ・パロマ」号で起きた「謎の銃音」の犯人について詳細に分析した文章が収録されている。