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2012年5月25日 (金) 07:02時点における版
堅信(けんしん、ギリシア語: Χρίσμα[1], ラテン語: Confirmatio, 英語: Confirmation (or Chrismation), ドイツ語: Konfirmation, ロシア語: Миропомазание)とはキリスト教の教派のうち、正教会、東方諸教会、カトリック教会、聖公会で行われるもの[2]。プロテスタントにおける類似の行為に信仰告白式との語彙を用いる教会もある[3][4]。正教会では傅膏機密(ふこうきみつ、Chrismation[5])に相当する[6]。
教派によって堅信の概念・方法はかなり異なるが、洗礼と区別されること、洗礼後に受けることによって聖餐(領聖・聖体拝領)に参与する資格が信徒に与えられることといった共通点はある[2]。
洗礼と連続して行うか否か
正教会では幼児洗礼か成人洗礼の別を問わず、洗礼機密の直後に傅膏機密を行う[7]。
他方、カトリック教会・聖公会では幼児洗礼を受けた者が一定年齢に達してから堅信を受けるなど、洗礼後に一定期間を経て堅信に至ることも多い[2]。ただし洗礼と堅信を分離することが義務・規定として定められている訳ではなく、特に成人洗礼において洗礼と堅信を連続して行うことも可能であり、そうしたケースは現代のカトリック教会・聖公会では珍しくない[8][9]。
初代教会では洗礼と堅信は一つの儀礼としてまとめて行われていた。正教会は初代教会から現代に至るまでその形式を守り[10]、カトリック教会・聖公会でも古代の伝統を復興した現代では基本的に一つの儀礼として行われる[8][9]。
しかしカトリック教会・聖公会では、時代によっては洗礼とは別個に堅信を行うことが習慣化されていた。その由来としては、ローマ帝国でキリスト教弾圧が止んだ4世紀頃に幼児洗礼が激増したことが挙げられる。復活祭に司教によって執り行われていた洗礼式が、行われる頻度および場所が激増し、司教が洗礼式を行うことが不可能になったことから、個別の洗礼式を司祭が行い、堅信は後に一箇所に受洗者を集めて司教が行うという習慣が定着したものとされる[8]。
正教会でも洗礼機密(せんれいきみつ)・傅膏機密(ふこうきみつ)の件数の増加により、主教がいずれも個々に行うことが出来なくなった事情は同様であったが、正教会では洗礼と傅膏を分離せず、主教の按手に代えて傅膏を行うようになった。この傅膏の際に用いられる聖膏を調製・成聖するのは独立正教会の首座主教のみである。聖膏は各地教会に分配され、この聖膏を通し、首座主教の祝福が新信徒に与えられるとされる[11]。
堅信の概念
カトリック教会における堅信
カトリック教会では堅信は七つの秘跡の一つである。堅信はさらなる恵みを与え、個人の魂を神と結びつけるものであると考えられている。堅信は神からの恵み、知恵を受けるため『ヨハネによる福音書』の8章32節のイエスのことば「あなたたちは真理を知るようになる」の成就であるとされる。
堅信を受けるものは聖霊の恵みを受けることができるとされているが、現代では「キリストの証人」という意味づけが強調される。かつては堅信を受けることでキリスト教を守る「キリストの兵士」になるという意味づけがなされていたが、現代ではそのような考え方は用いられていない。
カトリック教会では堅信を授けることができるのは司教の権能であるとされている。司祭が堅信を授けるには司教からの特別な許可が必要になる。堅信を受けることができるのは秘跡の意味が十分に理解できるようになってからである。また、洗礼と同時に堅信を受ける際には行われないが、通常の堅信の際には男性なら代父、女性なら代母の付き添いを受け、洗礼名と同じように堅信名を選ぶ。堅信名は洗礼名と同じでも別のものでもかまわない。この堅信名を「霊名」と呼ぶ(教会が発行する堅信証明書の名前欄に、「霊名」と記載されている――洗礼証明書にはその記載はない)。
堅信の権能は12使徒に由来し、叙階を通じて連綿と続いていると考えられているため、カトリック教会では正教会と東方典礼教会で授けられた堅信も有効なものであるとみなしている。このような考え方にしたがって東方教会からの改宗者ですでに堅信を受けているものは堅信を受ける必要はないが、プロテスタントからの改宗者は堅信を受けることになっている。
カトリック教会では堅信をうけることによって魂に消えることのない霊的な印を受けると考えている。このため堅信を二度受けるということは秘跡に対する冒涜にあたるとみなされる。
堅信の一回性
基本的に堅信は一回のみ受けられる儀式である。特にカトリック教会では洗礼、堅信、叙階は一回しかうけられず、受けることで霊的な印をうけると考えるため、取り消すことができない秘跡であるとみなしている。すでに堅信を受けた東方教会の信徒がカトリックに改宗した場合、堅信を受けなおす必要はない。一方、洗礼がそうであるように、適切な形式をとっていない堅信(傅膏)が認められないことはありえる。プロテスタントの信仰告白式は秘跡ではなく、ローマ・カトリックはこれを認めない。逆にカトリック信徒として堅信を受けた場合であっても、正教会に改宗した場合は、正教会がカトリックの堅信を認めないため傅膏を受ける必要がある。
脚注
- ^ Τα ιερά Μυστήρια της Εκκλησίας μας
- ^ a b c 『キリスト教大事典』394頁、教文館、昭和48年 改訂新版第2版
- ^ 全国連合長老会における洗礼・聖餐についての基本的見解
- ^ 日本キリスト改革派関キリスト教会
- ^ 正教会では英語表記として"Confirmation"はあまり用いられず、"Chrismation"が用いられる。
- ^ 祈り-機密:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
- ^ 「教会」ってどういうところ? - 石巻教会教会報 ワシリイ田口三千男
- ^ a b c ★洗礼と堅信(六甲カトリック教会)
- ^ a b 『日本聖公会 祈祷書』283頁、日本聖公会、1991年6月20日 第一版
- ^ ◆第4世紀◆ - トマス・ホプコ神父著 “TheOrthodox Faith vol.3 Bible and Church History”, 1979 O.C.A.、Chuch History、翻訳:日本正教会 西日本主教教区 司祭 ゲオルギイ松島雄一
- ^ 府主教イラリオン・アルフェエフ著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』108頁 - 109頁、東京復活大聖堂教会(ニコライ堂) 2004年