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「等級 (天文)」の版間の差分

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rv: 実視等級は等級の一種に過ぎないのでわざわざ本項の定義に加えるのは不適当です。
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<tr><td>-12.6</td><td>-</td><td>満[[月]]</td></tr>
<tr><td>-12.6</td><td>-</td><td>満[[月]]</td></tr>
<tr><td>-4.4</td><td>-</td><td>[[金星]]の最大の明るさ</td></tr>
<tr><td>-4.7</td><td>-</td><td>[[金星]]の最大の明るさ</td></tr>
<tr><td>-2.8</td><td>-</td><td>[[火星]]の最大の明るさ</td></tr>
<tr><td>-3.0</td><td>-</td><td>[[火星]]の最大の明るさ</td></tr>
<tr><td>-1.5</td><td>+1.45</td><td>太陽の次に明るい恒星[[シリウス]]</td></tr>
<tr><td>-1.46</td><td>+1.45</td><td>太陽の次に明るい恒星[[シリウス]]</td></tr>
<tr><td>-0.7</td><td>-5.54</td><td>3番目に明るい恒星[[カノープス]]</td></tr>
<tr><td>-0.72</td><td>-5.54</td><td>3番目に明るい恒星[[カノープス]]</td></tr>
<tr><td>+0.03</td><td>+0.58</td><td>変光星[[ベガ]]の標準的明るさ</td></tr>
<tr><td>+0.03</td><td>+0.58</td><td>変光星[[ベガ]]の標準的明るさ</td></tr>
<tr><td>+6.0</td><td>-</td><td>肉眼で見える最も暗い[[恒星]]</td></tr>
<tr><td>+6.0</td><td>-</td><td>肉眼で見える最も暗い[[恒星]]</td></tr>

2006年2月24日 (金) 10:49時点における版

天文学において等級とうきゅうmagnitude)とは、天体の明るさを表す尺度である。整数または小数を用いて「1.2等級」あるいは省略して「1.2等」などと表す。恒星の明るさを表す場合には「2等星」などと呼ぶ場合もある。等級の値が大きいほど暗い天体であることを示す。また、0等級よりも明るい天体の場合の明るさを表すには負の数を用いる。

等級が1等級変わると明るさは100の5乗根、すなわち約2.512倍変化する。よって等級差が5等級の場合に明るさの差が正確に100倍となる。言い換えれば等級とは天体の明るさを対数スケールで表現したものであり、1等級の明るさの差は正確に4デシベルに等しい。これは、人間の目の光に対する感度が対数的であるため、この性質が等級の定義に結果的に反映していると言える。

歴史

恒星の明るさを段階的に分類する方法を始めたのは古代ギリシア天文学者ヒッパルコスである。この時代は明るさを定量的に計測する手段がなかったため、目安として最も明るい恒星を1等星とし、かろうじて肉眼で見える暗い星を6等星として、間を分ける形で6段階に分けられた。この時点での等級には1.2等などの細かな段階分けは用いられていなかった。その後、プトレマイオスの著書『アルマゲスト』でこの方法が採用されて広く使われることとなった。

その後16世紀望遠鏡が発明されると、6等星よりも暗い恒星が観測できるようになった。6等よりも暗い星は7等星、8等星などと分けられたが、その分類は天文学者によって異なっていた。

19世紀の天文学者ポグソンは、定量的に測定した場合、1等星と6等星は明るさの差がおよそ100倍であるという結果から、等級が5等級変化するごとに明るさが100倍になる、すなわち1等級が1001/5 ≒ 2.512倍に相当すると定義した。現代でも等級にはこの定義が用いられている。

これにより、それまで整数でしか表されなかった等級が1.2等星や3.5等星などと小数を使って表せることになった。また、等級の値に0や負の数も取ることができるようになった。全天で太陽の次に明るい恒星シリウスは-1.5等級である。

また、ポグソンの元々の定義では等級の基準値として北極星を2.0等と定義していたが、その後北極星が変光星であることが明らかになったため、こと座ベガを0等と定めた。現在では、定められた色フィルターで複数の基準星を撮影して得られた光度を基準にして等級を決定している。

等級と波長

19世紀以降、天体が写真に撮られるようになると、人間の目と写真乾板では明るさの感度に違いがあることが明らかになった。写真では青い色により強く感光するが黄色には感光しにくい。したがって、写真の像から等級を測定すると肉眼での観測から求めた等級と異なることになる。このため、肉眼での観測で得られた等級を実視等級または視等級 (visual magnitude)、写真によって判定された等級を写真等級(photographic magnitude) と呼んで区別するようになった。

現在では光電管電荷結合素子(CCD)などの電気的な測光手段により星の明るさを測定しているが、その際には、人間の視感度分布に近い、主に緑色の光を通すVフィルターを用いて測定した際の等級をV等級、写真乾板の感度分布に近い青い光を通すBフィルターを用いて測定した際の等級をB等級などと呼称している。この他にも、紫色の光でのU等級、赤い光でのR等級、赤外線でのI等級など、様々な波長域を透過するフィルターを用いて測光を行っている。また、同じ天体を複数のフィルターで測光してその等級の差を取ると、その天体の色を定量的に表すことができる。これを色指数と呼ぶ。B-V や U-V などの値がしばしば用いられる。特に U,B,V の3色のフィルターで行う測光システムをジョンソンの UBV システムと呼び、天文学測光システムの標準として広く使われている。

これに対して、天体が放射する電磁波のエネルギーを全波長にわたって足し合わせた光度から求められる等級値を放射等級 (bolometric magnitude) または輻射等級と呼ぶ。

見かけの等級・絶対等級

我々が観測で得る天体の等級は地球から見た時の見かけの明るさであり、天体までの距離に依存している値である。すなわち、天体の明るさは距離の2乗に反比例するため、明るさが同じ天体を10倍遠くに置くと見かけの明るさは5等級暗くなる。また、天体の見かけの明るさは途中にある星間物質による光の吸収などの影響も受けている。

このため、天体を地球から10パーセク(32.6光年)の距離に置いたものと仮定したときの明るさを絶対等級(absolute magnitude) と呼び、天体の絶対的な明るさの指標として用いる。例えば太陽の絶対等級は4.8等である。これに対して観測したままの等級を見かけの等級 (apparent magnitude) と呼ぶ。また、全波長の総エネルギー量を反映した絶対等級を放射絶対等級 (bolometric absolute magnitude) という。

地球から d パーセクの距離にある天体の見かけの等級 m と絶対等級 M の間には、

M = m + 5 - 5log10d

の関係がある。

この式から分かるように、ある天体の絶対等級を何らかの方法で見積もることができれば、その天体の見かけの等級との差から、その天体までの距離を見積もることができる。このため、見かけの等級と絶対等級の差 m - M のことを特に距離指数と呼ぶ。

彗星小惑星などの太陽系天体については、太陽からの光を反射して輝いているので、明るさは太陽からの距離にも依存する。そのため太陽と地球の両方から1天文単位の位置に置いたものと仮定したときの明るさを絶対等級と呼ぶ。ただしこの太陽系天体の絶対等級は上記の絶対等級と混同しやすいため、標準等級や標準光度、絶対光度などと呼ぶのが普通である。

等級の表現

通常、整数値で「2等星」などと言った場合には等級 m が1.5≦m<2.5の範囲にあることを意味する。しかし2.0等を意味する場合と混同しやすいため、混乱を防ぐためには小数までつけることが望ましい。また、等級の値は大きいほど暗いことを表すため、「3.0等以上」などと言った場合に3.0等よりも明るい範囲を指すのか暗い範囲を指すのかで誤解しやすい場合がある。通常は不等式で「m < 3.0」と表記した場合には 3.0等より明るい範囲を指す。

主な天体の等級
実視等級絶対等級天体名
-26.8+4.8太陽
-12.6-
-4.7-金星の最大の明るさ
-3.0-火星の最大の明るさ
-1.46+1.45太陽の次に明るい恒星シリウス
-0.72-5.543番目に明るい恒星カノープス
+0.03+0.58変光星ベガの標準的明るさ
+6.0-肉眼で見える最も暗い恒星
+7.9-海王星の平均の明るさ
+12.6 最も明るいクエーサー
+30-ハッブル宇宙望遠鏡で観測できる
最も暗い天体

関連項目