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「Q熱」の版間の差分

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* {{PDFlink|[http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0903_01.pdf Q熱(コクシエラ症)起因菌Coxiella burnetiiの最近の知見 安藤匡子]}} モダンメディア 2009年3月号(第55巻3号)
* {{PDFlink|[http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0903_01.pdf Q熱(コクシエラ症)起因菌Coxiella burnetiiの最近の知見 安藤匡子]}} モダンメディア 2009年3月号(第55巻3号)
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* 大塚薬報 2013年1.2月号 3月号 4月号 5月号
* 大塚薬報 2013年[http://zoonosis.jp/docs/oh_19.pdf 1.2月号] [http://zoonosis.jp/docs/oh_20.pdf 3月号] [http://zoonosis.jp/docs/oh_21.pdf 4月号] [http://zoonosis.jp/docs/oh_22.pdf 5月号]


== 外部リンク ==
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2013年8月6日 (火) 15:12時点における版

Q熱(きゅーねつ、Q fever)とは、人獣共通感染症のひとつ。ニュージーランドを除く全世界で発生が見られる。Q熱という病名は、英語の「不明(Query)熱」に由来している。1935年にオーストラリアの屠畜場の従業員の間で原因不明の熱性疾患が流行したのが最初の報告である。日本に於いても年間30例程度のヒトの症例報告がある。獣医学領域ではコクシエラ症とも呼ばれる。

病原体

Coxiella burnetii

偏性細胞内寄生体であるレジオネラ目コクシエラ科コクシエラ属コクシエラ菌(Coxiella burnetii)によって発症する。感染力が強く、たった1個吸い込んだだけでも感染・発病を起こす可能性がある。自然界においてはウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの動物体内に存在する。65℃、30分では完全に不活化されるが、62℃、30分及び63℃、30分では一部が病原性を失わない。また、乾燥に強いため、塵埃と共に空気中に存在する可能性が高い。実験室内感染しやすく危険度クラス3に指定されている。

感染

ヒトには、コクシエラ菌に感染している家畜ペットの糞便、乳、卵などを通じて感染するが、希に保菌ダニの糞塵吸入や咬傷などからも感染する。但し、鳥類は不顕性感染。日本国外では食肉解体処理場、羊毛処理場、乳肉加工場などでの爆発的集団発生(パンデミック)が記録されている。病原体の宿主からの完全な消失は容易ではなく、症状回復後も長期間網内系細胞に生残する。

症状

感染者の50%は不顕性感染に留まり、残りの50%で急性のQ熱を発病する。2~4週の潜伏期の後、高熱(37℃-40℃)、頭痛、悪寒、筋肉痛、咽頭痛、全身の倦怠感などのインフルエンザ様症状が出現し、そのうちの20%が肺炎肝炎の症状を呈する。これらの症状は1~2週間で改善し、予後は良好である。急性のQ熱の死亡率は1~2%で、回復した場合は終生にわたる免疫を獲得する。また、回復した後に慢性疲労症候群に類似した症状を呈することがある。子供がこの病気を発症した場合は引きこもりと勘違いされる事が多く、発見が遅れる事もある。

慢性のQ熱は、6ヶ月以上にわたる感染がみられるもので、急性のQ熱に比べて症状が重い。急性Q熱から慢性Q熱に移行する頻度は5%程度とされている。慢性のQ熱では、慢性肝炎、骨髄炎、心内膜炎をおこすことが多く、予後は不良である。慢性のQ熱になりやすいのは、心臓弁膜症のある人、臓器移植を受けている人、や慢性腎臓病に罹っている人などである。

抑うつ症状を呈する症例が多数報告されているが、Q熱との因果関係は科学的に証明されてはいない。しかしながら、起死念慮から遺書を作成したり、検査によりQ熱陽性との結果が出た後に自殺した症例も報告されており、今後の検討課題ともなっている。

診断

A:非感染者
B:感染者のX線写真

原因不明の発熱、肺炎、肝炎はQ熱を疑う所見である。確定診断は病原体の分離および検出または血清学的診断(間接蛍光抗体法(IF)、酵素抗体法(ELISA)など)による。病原体分離は治療前血液をマウス,ラット、モルモット、発育鶏卵あるいはBGM細胞に接種して行う。

治療・予防

急性Q熱の治療においてはテトラサイクリン系抗菌薬が第一選択薬であるがニューキノロン系を使用することもあり、大抵は投与後2~3日以内に解熱するが、長期化した場合はリファンピシンなどと併用される。β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシドは無効である。Q熱の再燃や慢性化を予防するため、症状が改善したのちも3~4週間ほど継続投与することが望ましい。動物の治療にもテトラサイクリン系の抗生物質が使用される。治癒した場合、免疫を獲得する。

オーストラリアでは、ヒト用のQ熱のワクチンが開発され、獣医師などの職業的にQ熱に感染するリスクが高いと考えられる人々に使用され、予防に成果をあげている。以前にQ熱に感染したことがある人では、ワクチンの注射部位に激しい局所反応を起こすことがあるため、接種の前に皮膚テストが行われる。

Q熱は感染症法における4類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要がある。

食品の衛生管理

Coxiella burnetiiを不活化するために、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)において、生乳又は生山羊乳を使用して食品を製造する場合は、その食品の製造工程中において、生乳又は生山羊乳を保持式により63 度で30 分間加熱殺菌するか、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない。」とされている。

その他

オウム真理教の元幹部、遠藤誠一が教団内で呼吸困難を訴える信者が多数発生した際、Q熱と誤診した事もあった。 林郁夫が再検査し、誤診と発覚したが麻原彰晃は、米軍による生物兵器攻撃を受け、Q熱に罹患したと主張していた。

関連法規

出典及び脚注

外部リンク