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「コーカソイド」の版間の差分

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== 他人種との関わり ==
== 他人種との関わり ==
===北アフリカ===
===北アフリカ===
[[アフリカ人]]は[[ネグロイド]]に分類されるが、北東部アフリカは[[サハラ砂漠]]以南の西南部アフリカ(ブラックアフリカ)とは異なった遺伝子的特徴を持っている。スーダン南部に広がる大湿地帯のボトルネック効果と中世以降のアラブ人による入植のためで、北アフリカの先住民である[[ベルベル人]]はコーカソイド系に属するためである<ref>Carleton S. Coon, The Living Races of Man, New York: Alfred A Knopf, 1965, p.115</ref><ref>Luigi Luca Cavalli-Sforza, Genes, Peoples and Languages, Penguin, 2001, p.122</ref>。
[[アフリカ人]]は[[ネグロイド]]に分類されるが、北東部アフリカは[[サハラ砂漠]]以南の西南部アフリカ(ブラックアフリカ)とは異なった遺伝子的特徴を持っている。スーダン南部に広がる大湿地帯の[[ボトルネック効果]]と中世以降のアラブ人による入植のためで、北アフリカの先住民である[[ベルベル人]]はコーカソイド系に属するためである<ref>Carleton S. Coon, The Living Races of Man, New York: Alfred A Knopf, 1965, p.115</ref><ref>Luigi Luca Cavalli-Sforza, Genes, Peoples and Languages, Penguin, 2001, p.122</ref>。


===東欧===
===東欧===

2014年1月19日 (日) 09:31時点における版

コーカソイド(Caucasoid)は、自然人類学における人種分類の概念の一つ。欧州人を指すために使われてきたため白色人種白人とも訳されるが、日照量の多い中東インド亜大陸に居住したコーカソイドは肌が浅黒い者も多い。

ファイル:Europaeid types.jpg
コーカソイドの類型(「Meyers Blitz-Lexikon」)

由来

コーカソイド (Caucasoid) とは、カスピ海黒海に挟まれた所に実在するカフカース地方にある「コーカサス」(コーカサス山脈)に「…のような」を意味する接尾語のoidをつけた造語で、「コーカサス系の人種」という意味であり、インドから北西アジア(中近東)へ拡散し東ヨーロッパまで広範囲に拡散した[1]

元々はドイツの哲学者クリストフ・マイナースが提唱した用語であった。彼に影響を受けた人類学者ブルーメンバッハが生物学上の理論として五大人種説を唱えた際、ヨーロッパに住まう人々を「コーカシアン」なる人種と定義した事で世界的に知られるようになった。

人類学が成立したヨーロッパは20世紀の半ばまで、ユダヤ教やそこから派生したキリスト教に由来する価値観が今以上に重んじられていた。そのため、『創世記』のノアの方舟がたどり着いたとされたアララト山があるコーカサス地方はヨーロッパ人の起源地と考えられ、神聖視されていた(アルメニア教会に至っては聖地とされている)。

また聖典である『旧約聖書』の創世記1〜6章では、白い色は・昼・人・善を表し、黒い色は・夜・獣・悪を表していた。これらから初期の人類学を主導したヨーロッパ人学者は、自分たちヨーロッパ人を「ノアの箱舟でコーカサス地方にたどり着いた人々の子孫で、白い肌を持つ善なる人」と定義し、それを表した呼称として「コーカソイド」を用いたのである[2]。もっともアラブ人やペルシャ人も、宗教はアブラハムの宗教の1つであるイスラム教であり、コーカソイドという宗教用語を当てはめることもできるが、ヒンドゥー教を信仰するアーリア人は語源に合わないことになる。

定義とその変遷

トマス・ヘンリー・ハクスリーによる人種の分布図(1870年[3]

コーカソイドとはヨーロッパ人がキリスト教的価値観に基づいて自己を定義するために創出された概念である。そのため、その範囲は基本的に東ヨーロッパ西ヨーロッパの双方を合わせた全ヨーロッパ地域に限定される場合がほとんどであった。

戦後しばらくまでの人類学は科学的根拠に乏しい、偏見や先入観に満ちた内容であることが多く、人種差別的な思想を多分に含んでいた。事実、提唱者であるブルーメンバッハもさまざまな人間の集団の中で「コーカサス出身」の「白い肌の人々」が最も美しい、人間集団の「基本形」で、他の4つの人類集団はそれから「退化」したものだと考えていた[4]。つまり最初の時点で白人至上主義的な考えが基盤に存在していたのである。その後、他の人類学者によって(白人が他に優越しているという原則の上で)コーカソイドを更に細分化しての分類が試みられた。ウィリアム・Z・リプリーによる北方人種地中海人種アルプス人種の三分類などが有名である他、東ヨーロッパ人種ディナール人種という分類も存在する。

初期の人類学の人種判別は外見の違い(特に肌の色)による判断という、かなり原始的な考察を頼りとしていた。また上述されている通りキリスト教への信仰心が深く関与している概念であり、風貌的に似通っていても異教徒である場合は意図的に範囲から除外された。

人種分類はその性質上、優生学などの差別的な思想と結び付きやすく、実際にクー・クラックス・クランナチスのような勢力を生み出す遠因となった。そのため、現在の生物学における人種に関する研究は、現生人類は一種一亜種であるという前提の上で慎重に行われている。あくまで人種とは現生人類の遺伝的多様性の地域的・個体群的偏りに過ぎず、人種相互に明瞭な境界はないとする。

なお、近年の国際的な学会では、人種分類としてのコーカソイドという名称から、地域集団の一つとしての「西ユーラシア人」という名称が一般的になりつつある(詳しくは人種を参照)。「コーカソイド」は、日本語中での用法は白人・白色人種のヨーロッパ風の表現として認識されることが多い。

特徴

モンゴロイドやネグロイドにも言えるが、コーカソイドもまた非常に広い範囲に分布しているため、人種的特徴は一概に言えない。

セント・アンドルーズ大学が発表した金髪の分布図(2006年)。黄色は80%以上、明るいだいだい色は50%~79%、薄い黄土色は20%~49%、濃い黄土色は1%~20%の地域を指している。その他(こげ茶色)の部分は0%、つまり全く金髪が存在しないとされる。

  • 目元のくぼみが深い。いわゆる「彫りが深い」。
  • (まぶた)はほぼ全員二重。モンゴロイドの二重とは構造的に異なる(白人は眉下の皮膚が上瞼に被さっている状態)
  • モンゴロイドの蒙古ひだがないので、目が大きく見える傾向がある
  • 虹彩の色が多種多様で最も暗い茶色から最も明るい青色まで幅広く存在する。

  • 鼻が顔の中央にある。長期にわたって温暖な乾燥地域で居住すると、呼吸時に吸気を湿らす必要性から鼻腔が拡がる。
  • おでこ(眉間上部)より立体的に鼻が垂れ下がっている者が存在する。そのため目元がくぼんで見える。
  • 日本人が抱く白人のイメージに「鼻が高い・大きい」というものがあるが、南ほど高く北へ行くほど低い。

頭部

  • 個体差が大きい。
  • 頭髪の色が多種多様。メラニン色素形成は年齢によって変わるが、最も明るい金髪や赤毛から暗い黒髪まで存在する。また髪と虹彩の明るさは必ずしも関連しない[5]
  • 毛髪は丸くて細い。そのためウェーブ(天然パーマ・クセ毛)が多い。

皮膚

各地域における先住民の肌色(フェリックス・ルスチャン
  • 体毛が多くひげの濃い者が多い。
  • 肌の色は「白人」の名称の由来の一つではあるが、薄褐色~褐色の個体が最多数派を形成する。
    • もともと人類の皮膚色は濃かったのにもかかわらず(熱帯で産まれた人類は毛皮のかわりに紫外線から身体を保護するためにメラニン色素を沈着した)、白人がなぜ薄い皮膚色をしているのかについては諸説あるが、分子人類学者の尾本恵一の説によれば、コーカソイドの祖先集団は約一万五千年前の後氷期にインドから北西へ向かったが、当時の気候は氷河の溶ける水分蒸発により曇り空が多く、太陽光線は弱かった。そのため過剰な紫外線から体を保護するメラニン色素の厚い層は不要になった。一方、紫外線を浴びることが少ないと人類はビタミンDの不足に陥るため、紫外線の少ない環境下では、メラニン色素の産出にあずかる遺伝子の突然変異によって皮膚色が薄くなった個体・集団が有利となった。図にもあるようにヨーロッパにおける淡色頭髪の出現頻度が最も高い地域はスウェーデンフィンランドなどの北欧地域である。[6]

体格

  • 体格は個体差が大きい。
  • これも地域によって差があるが、おおむねモンゴロイド系に属する諸民族の平均身長よりも高く、世界の平均身長上位30位は全て欧米で埋まっている[7]。しかし、中世東欧人の平均身長は150cm程度と低い、北部がコーカソイドであるインドの平均身長は低く、欧米の豊かな栄養状態など後天的な要素が大きい。(ただ、中部・南部はドラヴィダ人などと混血しているため低い。他の人種との混血の度合いが低いパンジャブ人などは比較的長身である。)
平均身長・最上位国 平均身長・その他の国
男性平均 女性平均 地域 白人比率
オランダの旗 オランダ 184.3cm 170.2cm 西欧 大半
 スウェーデン 181.5cm 166.8cm 北欧 大半
ドイツの旗 ドイツ 181.0cm 167.0cm 中欧 大半
 フィンランド 180.0cm 166.0cm 北欧 大半
男性平均 女性平均 地域 白人比率
日本の旗 日本 172.15cm 158.84cm 北東アジア ---
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 177.6cm 163.2cm 北米 79.96%
ブラジルの旗 ブラジル 173.1cm 161.1cm 南米 53.7%
インドの旗 インド 164.5cm 152.0cm 南アジア ---

分布の歴史

アフリカ大陸で誕生した現生人類は、アラビア半島経由でユーラシア大陸に進出し、大陸全域に居住地域を拡大する。このうちコーカソイドはユーラシア大陸のインド北西部から東ヨーロッパに居住していた人々の末裔である。

ヨーロッパ系コーカソイドのうち、ギリシャイタリア等の地中海諸国のコーカソイドは、エジプト・リビアから海路を経てその地域に定住した人々とされているが、フランスから北欧に至る大西洋沿岸(イギリス東欧を含む)に住むコーカソイドはインド北西地域から中央アジアに進出したグループが、ユーラシア大陸の内陸を経由してヨーロッパに定住した人々とされている。

また15世紀以降は特にヨーロッパ系コーカソイドが征服地への入植により大きく居住地域を拡大し、世界的に拡散した。

他人種との関わり

北アフリカ

アフリカ人ネグロイドに分類されるが、北東部アフリカはサハラ砂漠以南の西南部アフリカ(ブラックアフリカ)とは異なった遺伝子的特徴を持っている。スーダン南部に広がる大湿地帯のボトルネック効果と中世以降のアラブ人による入植のためで、北アフリカの先住民であるベルベル人はコーカソイド系に属するためである[8][9]

東欧

これは図表の再生である。 それは酵素の科学者によってナロパンツ・アッパジ・ラオ(Naropantul Appaji Rao) (ヒンディー語:अप्पाजी राव)なされた。 教授のインド理科大学院。 ラオはインドの先住民のドラヴィダ人の遺伝学がコーカソイドとモンゴロイドの間にあることを言った。 ラオは29の遺伝の位置を見た。[10]

東欧ではハンガリー人(マジャール人)がモンゴロイド(黄色人種)であるフン族の子孫であるという説が存在したが、現在では否定されている[11][12]

ハンガリーという国名はフン族との関連を連想させるが、「ハンガリー」の語源については諸説あるものの、「フン族」との間に特別の因果関係はないと考えられている。フン族は離散集合を繰り返す部族連合体であり、全員が必ずしもモンゴロイド系とは言えないとする見方もある。ただ、フン族の首長アッチラと会見したローマ側の使節(ローマカトリック教会の僧侶)による報告書では、「アッチラと彼を取り巻く将兵たちの目は小さくて、ひげが薄く、かつ身長も低く、胴長短足である」と記されていて、ヨーロッパ人が初めて見たモンゴロイドが奇怪な容貌に見えたことと、タタール人という言葉が、当時のキリスト教でいう「地獄のタルタロス」を連想させて、恐怖心を一層つのらせたことが、今に伝えられている。また言語学見地からウラル・アルタイ語族という仮説の語族に属すると考えられた時期もあるが、現在ではウラル語族アルタイ諸語の関係は否定されている。モンゴル帝国の西進及びムガール帝国の南進によって、東ヨーロッパやロシア及び中央アジア南アジアの一部がモンゴロイドの支配下に置かれた。その際征服された地域では、顕著ではないものの混血が認められる。ロシアは何百年もの間テュルク系国家やモンゴルによって征服されたため混血は多かった。ただし、それらのモンゴロイドは遊牧民族であるため土着の農耕民より人口が少なく、さほど混血の影響は高くないともされる。

北欧

フィンランド人フィン人)やサーミ人リーヴ人ヴェプス人もハンガリー同様にモンゴロイド起源説が唱えられ、遺伝子学見地から東南アジアに起源を持つモンゴロイドであるとされる[13]が、ハンガリー(マジャル)人同様に、モンゴロイド説は否定されている。

アジア

北海道樺太千島列島に住むアイヌは、かつては白色人種に分類されることもあったが、その後否定され、大和民族に最も近いとされた。いずれも縄文人を基盤とするが、生活習慣の差、周辺民族との混血などにより形質が変化するに至ったとされる。

否定された下位分類

関連項目

脚注

  1. ^ 人類学の権威としてコーカソイドの概念を広めたドイツの医師ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハヨーロッパ地方に居住する人々を「コーカソイド」と定義した。
  2. ^ 竹沢泰子「人種とは何か考える
  3. ^ T. H. Huxley, On the Geographical Distribution of the Chief Modifications of Mankind, 1870.
  4. ^ 竹沢泰子『人種概念の普遍性を問う』他
  5. ^ http://cogweb.ucla.edu/ep/Frost_06.html
  6. ^ 尾本恵一『分子人類学と日本人の起源』裳華房,1996年,82-3頁
  7. ^ http://web.archive.org/web/20031206022727/www.kurabe.net/average_height/
  8. ^ Carleton S. Coon, The Living Races of Man, New York: Alfred A Knopf, 1965, p.115
  9. ^ Luigi Luca Cavalli-Sforza, Genes, Peoples and Languages, Penguin, 2001, p.122
  10. ^ Rao, N.A. (1998). The Indian Heritage. Universities Press (India) Limited. Page 51. ISBN 8173711283.
  11. ^ 下戸遺伝子とは、アセトアルデヒド脱水素酵素 (ALDH) の487番目のアミノ酸を決める塩基配列がグアニンからアデニンに変化したもので、モンゴロイド特有の遺伝子である。白人・ネグロイド(黒人)・オーストラロイド(オーストラリア原住民等)には存在しない。この遺伝子を持つということは、モンゴロイドであるかモンゴロイドとの混血であることの証明となるが、モンゴロイドでないかモンゴロイドと混血していないことの証明にはならない[1]
  12. ^ 北方モンゴロイドの標識遺伝子で黒人・白人には存在しないとされるab3stは、日本人で26%、大陸の朝鮮民族では14.5%持っているが、北欧のラップ人でも4%であり、東欧の諸族に至っては存在しないか、極めて少ない。これは同じくハンガリー在住のテュルク系クマン族ブルガリアに同じくテュルク系ブルガリア人ブルガール人)とトルコ共和国トルコ人(広義のテュルク族)も同様である。
  13. ^ http://www.nature.com/ejhg/journal/v15/n2/abs/5201748a.html