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「四重極磁石」の版間の差分

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'''四重極磁石'''(しじゅうきょくじしゃく、{{lang-en-short|quadrupole magnets}})は、場の平面[[多重極展開]]において、双極子項が打ち消され、場の方程式において有効な最低項が[[四極子]]となるように配置された4つの[[磁石]]によって構成されている。四重極磁石はその[[座標|縦軸]]からの[[半径]]距離に応じて強度が[[一次関数|急増する]][[磁場]]を形成するため有用である。この磁場は[[粒子線]]の集束に用いられている。
'''四重極磁石'''(しじゅうきょくじしゃく、{{lang-en-short|quadrupole magnets}})は、場の平面{{仮リンク|多重極展開|en|Multipole expansion}}において、[[双極子]]項が打ち消され、場の方程式において有効な最低項が[[四極子]]となるように配置された4つの[[磁石]]によって構成されている。四重極磁石はその[[座標|縦軸]]からの[[半径]]距離に応じて強度が[[一次関数|急増する]][[磁場]]を形成するため有用である。この磁場は[[粒子線]]の集束に用いられている。


最も単純な磁気四重極は、一方のN極がもう一方のS極に隣合うように互いに平行に配置した2つの同一な棒磁石である。こういった配置は双極子モーメントを持たず、その磁場は長距離において双極子よりも速く減少する。非常に小さな外部磁場を持つより強力な磁気四重極には''k''=3[[ハルバッハ配列|ハルバッハシリンダ]]が用いられる。
最も単純な磁気四重極は、一方のN極がもう一方のS極に隣合うように互いに平行に配置した2つの同一な棒磁石である。こういった配置は双極子モーメントを持たず、その磁場は長距離において双極子よりも速く減少する。非常に小さな外部磁場を持つより強力な磁気四重極には''k'' = 3{{仮リンク|ハルバッハシリンダ|en|Halbach cylinder}}が用いられる。


[[電磁石]]を用いた四重極の設計の一例では、4つの鋼製ポール先端金具(2つは向かい合った[[北磁極|N極]]、2つは向かい合った[[南磁極|S極]])が使われる。この鋼は、ポールに巻き付いたチューブのコイルを流れる大[[電流]]]によって磁化されている。他の設計としては、一方のコイルが逆向きになっている[[ヘルムホルツコイル]]配置がある<ref>[http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/Hbase/magnetic/magquad.html Quadrupole Magnetic Field<!-- Bot generated title -->]</ref>
[[電磁石]]を用いた四重極の設計の一例では、4つの鋼製ポール先端金具(2つは向かい合った[[北磁極|N極]]、2つは向かい合った[[南磁極|S極]])が使われる。この鋼は、ポールに巻き付いたチューブのコイルを流れる大[[電流]]]によって磁化されている。他の設計としては、一方のコイルが逆向きになっている{{仮リンク|ヘルムホルツコイル|en|Helmholtz coil}}配置がある<ref>[http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/Hbase/magnetic/magquad.html Quadrupole Magnetic Field<!-- Bot generated title -->]</ref>。

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==粒子加速器における四重極磁石==
==粒子加速器における四重極磁石==
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|File:Aust.-Synchrotron,-Quadrupole-Focusing-Magnet,-14.06.2007.jpg|{{仮リンク|オーストラリアン・シンクロトロン|en|Australian Synchrotron}}{{仮リンク|ストレージリング|en|Storage ring}}で使われている四重極電磁石
|File:Aust.-Synchrotron,-Quadrupole-Magnets-of-Linac,-14.06.2007.jpg|[[オーストラリアン・シンクロトロン]]の[[線形加速器|linac]]を覆う四重極[[電磁石]](青色)は、[[電子]]線を[[焦点 (光学)|収束]]させるために使われている
|File:Aust.-Synchrotron,-Quadrupole-Magnets-of-Linac,-14.06.2007.jpg|{{仮リンク|オーストラリアン・シンクロトロン|en|Australian Synchrotron}}の[[線形加速器|linac]]を覆う四重極[[電磁石]](青色)は、[[電子]]線を[[焦点 (光学)|収束]]させるために使われている
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高エネルギー[[加速器|粒子加速器]]で到達する速度では、磁気偏向は静電偏向よりも強力となり、[[ローレンツ力]]の磁気項
高エネルギー[[加速器|粒子加速器]]で到達する速度では、磁気偏向は静電偏向よりも強力となり、[[ローレンツ力]]の磁気項
: <math>\boldsymbol{F} = q (\boldsymbol{E} + \boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B})</math>

: <math>\mathbf{F} = q (\mathbf{E} + \mathbf{v} \times \mathbf{B}),</math>

が、荷電粒子線を曲げ、誘導し、収束させるのに必要な「格子」を作る様々な磁石で有効となる。ビーム方向を横断する平面における理想化された四重極磁場の磁場線。赤色矢印は磁場の方向を示し、青色矢印は画面奥方向へ進む正電荷粒子に働く[[ローレンツ力]]の方向を示す。
が、荷電粒子線を曲げ、誘導し、収束させるのに必要な「格子」を作る様々な磁石で有効となる。ビーム方向を横断する平面における理想化された四重極磁場の磁場線。赤色矢印は磁場の方向を示し、青色矢印は画面奥方向へ進む正電荷粒子に働く[[ローレンツ力]]の方向を示す。


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ビームを横断する平面上の理想的な磁場の要素は、磁極が平行および垂直面に対して45度の角度で配置された場合、以下のように与えられる。
ビームを横断する平面上の理想的な磁場の要素は、磁極が平行および垂直面に対して45度の角度で配置された場合、以下のように与えられる。


: <math> B_y = K \cdot x \qquad B_x = K \cdot y </math>
: <math> B_y = K \cdot x, \qquad B_x = K \cdot y </math>


<math>K</math>は水平方向における垂直要素の磁場勾配(あるいは垂直方向における水平要素の磁場勾配)である。[[SI単位]]は<math>\mathrm{T}/\mathrm{m}</math>である。<math>K</math>の符号は、四重極が水平面において粒子を収束させるか発散させるかを決定する。
''K'' は水平方向における垂直要素の磁場勾配(あるいは垂直方向における水平要素の磁場勾配)である。[[SI単位]]は [[テスラ|T]]/[[メートル|m]] である。''K'' の符号は、四重極が水平面において粒子を収束させるか発散させるかを決定する。
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==脚注==
==脚注==
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==関連項目==
==関連項目==
*[[荷電粒子線]]
*{{仮リンク|荷電粒子線|en|Charged particle beam}}
*[[双極磁石]]
*{{仮リンク|双極磁石|en|Dipole magnet}}
*[[電子光学]]
*{{仮リンク|電子光学|en|Electron optics}}
*[[ハルバッハ配列]]
*{{仮リンク|ハルバッハ配列|en|Halbach cylinder}}
*[[六重極磁石]]
*{{仮リンク|六重極磁石|en|Sextupole magnet}}
*[[多重極磁石]]
*{{仮リンク|多重極磁石|en|Multipole magnet}}


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[[Category:磁石]]
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2014年1月20日 (月) 05:39時点における版

四極子を作り出すように配置された4つの棒磁石。

四重極磁石(しじゅうきょくじしゃく、: quadrupole magnets)は、場の平面多重極展開英語版において、双極子項が打ち消され、場の方程式において有効な最低項が四極子となるように配置された4つの磁石によって構成されている。四重極磁石はその縦軸からの半径距離に応じて強度が急増する磁場を形成するため有用である。この磁場は粒子線の集束に用いられている。

最も単純な磁気四重極は、一方のN極がもう一方のS極に隣合うように互いに平行に配置した2つの同一な棒磁石である。こういった配置は双極子モーメントを持たず、その磁場は長距離において双極子よりも速く減少する。非常に小さな外部磁場を持つより強力な磁気四重極にはk = 3ハルバッハシリンダ英語版が用いられる。

電磁石を用いた四重極の設計の一例では、4つの鋼製ポール先端金具(2つは向かい合ったN極、2つは向かい合ったS極)が使われる。この鋼は、ポールに巻き付いたチューブのコイルを流れる大電流]によって磁化されている。他の設計としては、一方のコイルが逆向きになっているヘルムホルツコイル配置がある[1]

粒子加速器における四重極磁石

高エネルギー粒子加速器で到達する速度では、磁気偏向は静電偏向よりも強力となり、ローレンツ力の磁気項

が、荷電粒子線を曲げ、誘導し、収束させるのに必要な「格子」を作る様々な磁石で有効となる。ビーム方向を横断する平面における理想化された四重極磁場の磁場線。赤色矢印は磁場の方向を示し、青色矢印は画面奥方向へ進む正電荷粒子に働くローレンツ力の方向を示す。

格子中の四重極には「F四重極」(水平方向に収束させるが、垂直方向に発散させる)と「D四重極」(垂直方向に収束させるが、水平方向に発散させる)の2つの種類がある。これは電磁気学の法則(マクスウェルの方程式)によるものであり、四重極では両方の平面を同時に収束させることは不可能である。右図は、画面奥に向かって進む正に荷電した粒子を垂直方向に収束させるが、水平方向に発散させる四重極の例である。

F四重極とD四重極が隣接して配置された場合、それらの磁場は(アーンショーの定理に従って)完全に打ち消される。しかし、両者の間に空間がある場合(空間の距離は正しく選ばれなければならない)は、水平方向にも垂直方向にも収束する。ビームを長距離(例えば円の全周)に渡って伝達できるように格子が作られる。一般的な格子はFODO格子(Oは屈曲磁石)である。

理想的な磁場の数学的記述

ビームを横断する平面上の理想的な磁場の要素は、磁極が平行および垂直面に対して45度の角度で配置された場合、以下のように与えられる。

K は水平方向における垂直要素の磁場勾配(あるいは垂直方向における水平要素の磁場勾配)である。SI単位T/m である。K の符号は、四重極が水平面において粒子を収束させるか発散させるかを決定する。

脚注

関連項目