「論理療法」の版間の差分
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エリスの理論が日本で最初に紹介された1962年には、名称が''Rational therapy''であり、[[國分康孝]]が論理療法と訳した<ref name="howtostub"/>。『論理療法』(原題''A new guide to rational living'')<ref>{{Cite book|和書|author=A.エリス, R.A.ハーパー|coauthors=国分康孝、伊藤順康訳、北見芳雄監修|title=論理療法-自己説得のサイコセラピイ|publisher=川島書店|date=1981|isbn=4761002824}}''A new guide to rational living'', 2nd ed.</ref>は、長い年月をかけ100万部以上売れることになる{{sfn|アルバート・エリス|1996|p=1}}。 |
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論理的(あるいは合理的な)思考が心理にとって有効な働きをすることを強調した名称である{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。1960年代には、感情(情動)を軽視している印象を改めるため、''Rational-emotive therapy''('''RET''')と呼ぶようになった{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。 |
論理的(あるいは合理的な)思考が心理にとって有効な働きをすることを強調した名称である{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。1960年代には、感情(情動)を軽視している印象を改めるため、''Rational-emotive therapy''('''RET''')と呼ぶようになった{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。 |
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ともなって訳語は混乱している。 |
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現在の名称である1993年ごろからの''Rational Emotive Behavior Therapy''は、日本においては、論理情動行動療法、理性感情行動療法、理性感情行動療法といったように、様々に訳語されている<ref name="howtostub">{{Cite book|和書|author=アルバート・エリス |coauthors=国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳|chapter=訳者まえがき|title=どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ|publisher=川島書店|date=1996|isbn=7610-0569-6|pages=ii-iii}}</ref> |
現在の名称である1993年ごろからの''Rational Emotive Behavior Therapy''は、日本においては、論理情動行動療法、理性感情行動療法、理性感情行動療法といったように、様々に訳語されている<ref name="howtostub">{{Cite book|和書|author=アルバート・エリス |coauthors=国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳|chapter=訳者まえがき|title=どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ|publisher=川島書店|date=1996|isbn=4-7610-0569-6|pages=ii-iii}}</ref>。 |
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國分ら訳者は、「論理療法と呼ぶべきだというのはイラショナル・ビリーフだが、論理療法と呼んでほしいというのはラショナル・ビリーフである」と論理療法の用語・理論とからめて、「論理療法」と呼ぶことを推奨している<ref name="howtostub"/>。要するに「論理療法と呼ぶべきだとまでは言わないが、呼んでほしいとは思う」ということである。 |
國分ら訳者は、「論理療法と呼ぶべきだというのはイラショナル・ビリーフだが、論理療法と呼んでほしいというのはラショナル・ビリーフである」と論理療法の用語・理論とからめて、「論理療法」と呼ぶことを推奨している<ref name="howtostub"/>。要するに「論理療法と呼ぶべきだとまでは言わないが、呼んでほしいとは思う」ということである。 |
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*E:Effect(効果) |
*E:Effect(効果) |
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ABCD理論と呼ぶこともある{{sfn|アルバート・エリス|1996|p=3}}。 |
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===イラショナル・ビリーフ=== |
===イラショナル・ビリーフ=== |
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イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)は「~ねばならない、~すべきである」という信念から起こっており、これが人々を情緒的に混乱させている{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=3、15-16}}。 |
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情緒的に混乱し、不安や落ち込み、怒りなどがあるときには、自分は非科学的に思考していることが仮定できる{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=44-45}}。たとえば、イラショナル・ビリーフは以下のような特徴がある{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=36-46}}<!--例は参考にしながら創作-->。 |
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*事実に基づいていない |
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*論理的必然性がない |
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*気持ちを惨めにさせる |
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*自己否定的・悲観的な内容である |
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*事実に基づいていない 「親切にしたら必ず返ってくる」「試験に不合格ならホームレスになってしまう」 |
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イラショナル・ビリーフは願望(~ねばならない、~であって欲しい)と事実を混同することから起こっている。このような混同を論理的に否定し、'''ラショナル・ビリーフ'''(合理的信条)へと変えてゆくのが論理療法の役割である(「文章記述を書き換える」という表現をする)。ラショナルビリーフは |
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*柔軟的ではない/論理的ではない 「ここで失敗したら、一生うまくいかない」 |
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*証明できない 「常に一番にならなければならない」 |
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*幸せな結果をもたらさない 「怒りに怒りで返す」 |
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'''ラショナルビリーフ'''(合理的信念)は、確実性ではなく確率に基づいた{{sfn|アルバート・エリス|1996|p=74}}、「~にこしたことはない」という考えである{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=113-114}}。イラショナル・ビリーフを論駁するために、そこに根拠がないこと、ラショナル・ビリーフなどとの違いを比較し、合理的な思考が使用できるようにしていく{{sfn|瀬戸正弘|2004|p=115}}。 |
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*事実に基づいている |
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*論理性がある |
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*人生を幸福にする |
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==セルフヘルプ== |
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ラショナル・ビリーフの例は「失敗しないほうがいいが人間だから失敗することもある。失敗から学ぶべきである」「人に愛される・愛されないとは関係なしに具体的になにかをするべきである。その結果人が愛してくれればありがたいし、愛されなくとももともとである」などである。 |
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エリスがやり残された仕事として1988年に[[セルフヘルプ]]の著書を出版し、1996年には邦訳の『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』が出版されている{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=1-2}}。 |
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端的に言ってしまえば、「~ねばらならない(must)」ではなく、よりマイルドであると言われる「~であるにこしたことはない(should)」という文章記述の書き換えである。 |
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==国内の研修・研究機関== |
==国内の研修・研究機関== |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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*{{Cite book|和書|author=アルバート・エリス |coauthors=国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳|title=どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ|publisher=川島書店|date=1996|isbn=7610-0569-6|ref=harv}}''How to stubbornly refuse to make yourself miserable about anything - Yes Anything!'', 1988 |
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*{{Cite book|和書|author=瀬戸正弘|coauthors=内山喜久雄、坂野雄二 |
*{{Cite book|和書|author=瀬戸正弘|coauthors=(編集)内山喜久雄、坂野雄二|chapter=論理情動行動療法(REBT)|title=エビデンス・ベースト・カウンセリング|series=現代のエスプリ別冊|publisher=至文堂 |date=2004|isbn=4-7843-6033-6|pages=112-121|ref=harv}} |
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{{参照方法|date=2011年6月}} |
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* 國分康孝『カウンセリングの理論』[[1981年]]、誠信書房、ISBN 4414403081。 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2015年6月12日 (金) 14:07時点における版
論理療法 | |
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MeSH | D011617 |
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論理療法(ろんりりょうほう、Rational therapy)とは、アルバート・エリス(Albert Ellis)が1955年に提唱した心理療法で、心理的問題や生理的反応は、出来事や刺激そのものではなく、それをどのように受け取ったかという認知を媒介として生じるとして、論理的(rational、あるいは合理的)な思考が心理に影響を及ぼすことを重視している[1]。1990年代より名称が変わり、邦訳では論理情動行動療法、理性感情行動療法、理性感情行動療法(英語: Rational emotive behavior therapy ; REBT)などと呼ばれるが、当初の論理療法と呼んでも間違いではない[2]。後にアーロン・ベックが、認知療法(Cognitive therapy)を提唱するが、広義の認知療法では最初のものとされている。
分かりやすい論理体系やユーモアある技法、エリスのキャラクターと相まって、依然として論理療法を愛好する人も多い。
名称の変換と邦訳の混乱
エリスの理論が日本で最初に紹介された1962年には、名称がRational therapyであり、國分康孝が論理療法と訳した[2]。『論理療法』(原題A new guide to rational living)[3]は、長い年月をかけ100万部以上売れることになる[4]。
論理的(あるいは合理的な)思考が心理にとって有効な働きをすることを強調した名称である[1]。1960年代には、感情(情動)を軽視している印象を改めるため、Rational-emotive therapy(RET)と呼ぶようになった[1]。
さらに1993年にはRational Emotive Behavior Therapyとし、行動療法の要素があり行動療法から評価を受けたり、介入はどの要素からでも可能ということで、行動のことばを加えた[1]。頭文字をとってREBTと呼ばれることも多い。そして、初期からの直弟子らが名称変更に振り回されることなく、論理療法と呼ぶこともアルバート・エリスは了承している[2]。
ともなって訳語は混乱している。
現在の名称である1993年ごろからのRational Emotive Behavior Therapyは、日本においては、論理情動行動療法、理性感情行動療法、理性感情行動療法といったように、様々に訳語されている[2]。
國分ら訳者は、「論理療法と呼ぶべきだというのはイラショナル・ビリーフだが、論理療法と呼んでほしいというのはラショナル・ビリーフである」と論理療法の用語・理論とからめて、「論理療法」と呼ぶことを推奨している[2]。要するに「論理療法と呼ぶべきだとまでは言わないが、呼んでほしいとは思う」ということである。
理論
心理的な問題や生理的な反応は、出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出されるものであり、非合理的な受け取り方から合理的な受け取り方に変えれば、そうした反応は弱くなるかなくなるという理論である[5]。それはABC理論とイラショナル・ビリーフに集約される。
ABC理論
- A:Activating event(出来事)
- B:Belief(信念、固定観念)
- C:Consequence(結果)
出来事(A)があって結果(C)があるのではなく、間に信念体系(B)による解釈をはさんで、結果(B)である、感情や行動の反応、すなわち、不安や怒り、不適応な行動が生じる[5]。しかし、人は原因はBではなくAであると信じているので、あきらめてしまいがちである[5]しかし、受け止め方に含まれている非論理的な信念をイラショナル・ビリーフと呼び、それが論理的に非合理的であることを理解して粉砕することを目的とする[5]。このような過程が論駁(D)である。
- D:Dispute(論駁)
- E:Effect(効果)
ABCD理論と呼ぶこともある[6]。
イラショナル・ビリーフ
イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)は「~ねばならない、~すべきである」という信念から起こっており、これが人々を情緒的に混乱させている[7]。
情緒的に混乱し、不安や落ち込み、怒りなどがあるときには、自分は非科学的に思考していることが仮定できる[8]。たとえば、イラショナル・ビリーフは以下のような特徴がある[9]。
- 事実に基づいていない 「親切にしたら必ず返ってくる」「試験に不合格ならホームレスになってしまう」
- 柔軟的ではない/論理的ではない 「ここで失敗したら、一生うまくいかない」
- 証明できない 「常に一番にならなければならない」
- 幸せな結果をもたらさない 「怒りに怒りで返す」
ラショナルビリーフ(合理的信念)は、確実性ではなく確率に基づいた[10]、「~にこしたことはない」という考えである[5]。イラショナル・ビリーフを論駁するために、そこに根拠がないこと、ラショナル・ビリーフなどとの違いを比較し、合理的な思考が使用できるようにしていく[11]。
セルフヘルプ
エリスがやり残された仕事として1988年にセルフヘルプの著書を出版し、1996年には邦訳の『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』が出版されている[12]。
国内の研修・研究機関
1996年4月に、日本ではじめて、論理療法を専門に研修・研究する組織である「日本論理療法協会」が発足し、それが日本論理療法学会(Japanese Association of Rational Emotive Behavior Therapy、略称:日本REBTまたはJ-REBT)と名称を変え、現在に至っている。ちなみに、日本論理療法学会は会の目的を、「論理療法の創始者アルバート・エリス のカウンセリング・サイコセラピー哲学に基づき、非営利団体として、日本における論理療法の健全な普及・発展を図ることを目的とする」としている。この組織では、論理療法の特徴である「論理療法の哲学」を特に大切にする立場をとっている。
また、日本論理療法学会では、論理療法の専門家である論理療法士(Certified REBT Therapist)の養成と資格認定を行っている。
脚注
- ^ a b c d 瀬戸正弘 2004, pp. 112–113.
- ^ a b c d e アルバート・エリス、国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳「訳者まえがき」『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』川島書店、1996年、ii-iii頁。ISBN 4-7610-0569-6。
- ^ A.エリス, R.A.ハーパー、国分康孝、伊藤順康訳、北見芳雄監修『論理療法-自己説得のサイコセラピイ』川島書店、1981年。ISBN 4761002824。A new guide to rational living, 2nd ed.
- ^ アルバート・エリス 1996, p. 1.
- ^ a b c d e 瀬戸正弘 2004, pp. 113–114.
- ^ アルバート・エリス 1996, p. 3.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 3、15-16.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 44–45.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 36–46.
- ^ アルバート・エリス 1996, p. 74.
- ^ 瀬戸正弘 2004, p. 115.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 1–2.
参考文献
- アルバート・エリス、国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』川島書店、1996年。ISBN 7610-0569-6{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。。How to stubbornly refuse to make yourself miserable about anything - Yes Anything!, 1988
- 瀬戸正弘、(編集)内山喜久雄、坂野雄二「論理情動行動療法(REBT)」『エビデンス・ベースト・カウンセリング』至文堂〈現代のエスプリ別冊〉、2004年、112-121頁。ISBN 4-7843-6033-6。