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[[東北本線]]は開通当初、現在の[[東北新幹線]]のルートに近い[[宇都宮駅]]より真北に向かう進路を取っており、[[古田駅|古田停車場]]と[[長久保駅|長久保停車場]]の間の[[絹島村]]で[[西鬼怒川]]と東鬼怒川(鬼怒川本流路)の2河川を渡っていた。しかし当時未治水であり、夏季に雷を伴い激しく降雨する栃木県北部山間部を水源とする鬼怒川は幾度となく大水となり、その激流は橋脚を傷め、[[1890年]](明治23年)[[8月22日]]の降雨の際には橋脚が傾斜し修繕にかかる経費と時間が莫大なものとなったことをきっかけとし、東西両鬼怒川が合流し流路帯が狭くなった箇所に線路を移設することとなり、[[1897年]](明治30年)[[2月25日]]より宇都宮を出て直ぐに北東に曲がる現在の経路での営業運転に切り替えられた<ref>日本土木学会 関東支部栃木会 栃木県の土木遺産 鬼怒川橋梁上り線(東北本線)</ref>。
[[東北本線]]は開通当初、現在の[[東北新幹線]]のルートに近い[[宇都宮駅]]より真北に向かう進路を取っており、[[古田駅|古田停車場]]と[[長久保駅|長久保停車場]]の間の[[絹島村]]で[[西鬼怒川]]と東鬼怒川(鬼怒川本流路)の2河川を渡っていた。しかし当時未治水であり、夏季に雷を伴い激しく降雨する栃木県北部山間部を水源とする鬼怒川は幾度となく大水となり、その激流は橋脚を傷め、[[1890年]](明治23年)[[8月22日]]の降雨の際には橋脚が傾斜し修繕にかかる経費と時間が莫大なものとなったことをきっかけとし、東西両鬼怒川が合流し流路帯が狭くなった箇所に線路を移設することとなり、[[1897年]](明治30年)[[2月25日]]より宇都宮を出て直ぐに北東に曲がる現在の経路での営業運転に切り替えられた<ref>日本土木学会 関東支部栃木会 栃木県の土木遺産 鬼怒川橋梁上り線(東北本線)</ref>。


[[2015年]]([[平成]]27年)[[9月10日]]には[[平成27年台風第18号]]の豪雨で増水し、上流の[[鬼怒川温泉]]では川に面した温泉ホテルの一部が崩落、下流の[[常総市]]では数か所で破堤、越流し、市街地が広範囲にわたり浸水した。越水した常総市若宮戸の鬼怒川左岸の堤防は、前年にソーラーパネル設置工事で、高さ2m、長さ150mが削られ、堤防のない状態になっていた<ref>[http://mainichi.jp/shimen/news/20150912ddm041040165000c.html 関東・東北豪雨:太陽光装置設置工事で堤防削る 鬼怒川越水部分] [[毎日新聞]] 2015年09月12日 東京朝刊</ref>。
[[2015年]]([[平成]]27年)[[9月10日]]には[[平成27年台風第18号]]の豪雨で増水し、上流の[[鬼怒川温泉]]では川に面した温泉ホテルの一部が崩落、下流の[[常総市]]では数か所で[[堤防#破堤|破堤]]、越流し、市街地が広範囲にわたり浸水した。[[堤防#破堤|越水]]した常総市若宮戸の鬼怒川[[左岸]][[堤防]]は、前年にソーラーパネル設置工事で、高さ2m、長さ150mが削られ、堤防のない状態になっていた<ref>[http://mainichi.jp/shimen/news/20150912ddm041040165000c.html 関東・東北豪雨:太陽光装置設置工事で堤防削る 鬼怒川越水部分] [[毎日新聞]] 2015年09月12日 東京朝刊</ref>。


== 産業 ==
== 産業 ==

2015年9月12日 (土) 11:05時点における版

鬼怒川
鬼怒川
水系 一級水系 利根川
種別 一級河川
延長 176.7[1] km
平均流量 -- m³/s
流域面積 1,760.6[1] km²
水源 鬼怒沼(栃木県日光市
水源の標高 2,040m[1] m
河口・合流先 利根川(茨城県守谷市
流域 日本の旗 日本 栃木県茨城県
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鬼怒川(きぬがわ)は、関東平野からへと流れ利根川に合流する一級河川である。全長176.7kmで、利根川の支流の中で最も長い[2][3]

江戸時代以前、鬼怒川は香取海に注ぐ大河であったが、徳川家康利根川東遷事業によりもともと江戸湾に注いでいた利根川が東遷され鬼怒川に近い流路に付け替えられたうえで、鬼怒川は利根川に注ぐ河川とされた。名称は、当初は毛野地域(栃木県・群馬県域の古地名)を流れる川として「毛野河」や「毛野川」と記されたが、のち古代・中世から江戸時代までは穏やかな流れを意味する「衣川」や「絹川」の字があてられ、さらに近代になって「鬼怒川」の文字があてられるようになった[4][5]

上流域にある鬼怒川温泉の略称としても使用される。

地理

日光国立公園内にある栃木県日光市鬼怒沼奥鬼怒)に源を発し、湯西川男鹿川大谷川を合わせ、塩谷町南端、さくら市宇都宮市の境界部、高根沢町と宇都宮市の境界部、宇都宮市東部、上三川町東部、上三川町と真岡市の境界部、真岡市西部、下野市東南端、真岡市と小山市の境界部を流れ田川と合流し、茨城県との県境を成して茨城県筑西市に入り、筑西市と結城市の境界部、結城郡八千代町下妻市の境界部、下妻市南西部、常総市、常総市とつくばみらい市の境界部、守谷市を流れ、茨城県と千葉県の境界部に達し、茨城県守谷市と千葉県柏市、同野田市の境界部で利根川合流する[2][3][6][7]

鬼怒川の上流部は火山地帯で、深い山間の渓谷を流れる。深さもあって川の色は深緑色を呈し、川辺には白い大きな岩も目立つ。また流域には奥鬼怒温泉郷女夫渕温泉川俣温泉湯西川温泉川治温泉鬼怒川温泉日光湯元温泉といった温泉地が点在する[1][2][6][7]

鬼怒川中流部は中小の白い石が目立つ広い河原、かつての氾濫原の中をゆったりと流れ、土手沿いには雑木林杉林松林などがあって治水されており草深い。深さはあまり無く川の色は水色ないし濃紺色を呈する。夏季には漁で賑わい、川面には個人の釣り人が友釣りする姿や、観光やなで遊ぶ観光客の姿が夏の風物詩となっている。流域には多くの親水公園運動公園が整備され、四季折々のスポーツが楽しめる。また、塩谷町から宇都宮市にかけては多雨期に増水する鬼怒川の豊富な水量を別つため、放水路と用水路の役割を有する西鬼怒川に分流される。西鬼怒川は佐貫頭首工および逆木サイフォンで取水され根川用水西鬼怒発電所を経て西鬼怒川となり、御用川を分流し、白沢河原を経て宇都宮市岡本と高根沢町宝積寺の境界部で鬼怒川本流に合流する。また宇河地区(宇都宮、河内郡地区)に広く上水を供給する松田新田浄水場も鬼怒川高間木取水堰から取水している[2][6][7][8][9][10][11]

鬼怒川水系の豊富で上質な水は栃木県の県都宇都宮市ほか諸都市の水源となっており、上水灌漑用水として利用され、市民の都市生活および流域の米産やほか農業や工業にも広く利用されている。宇都宮市で盛んな飲料製造業は鬼怒川の清水に拠るものである[1][12]

歴史

常総市・つくばみらい市境より守谷市方向を臨む。
鬼怒川。奥に羽黒山男体山を望む
羽黒山(写真中央)近くを流れる鬼怒川

鬼怒川に関して、古く『常陸国風土記』には「毛野河」と見え、常陸国各郡の境界を成す旨が記されている[4]。また『続日本紀神護景雲2年(768年)条には、古来「毛野川」は下総国常陸国の境界を成すと見える[4]平安時代の文献(『延喜式』兵部式、『倭名類聚抄』など)には「河内郡衣川」や「下野国驛家衣川」などと見え、江戸時代の古地図にも「衣川」とある。明治時代に編纂された『日本地誌提要』では「絹川」とされるほか、『下野國誌』には「衣川」と見えるように、「きぬがわ」はかつて「衣川」「絹川」と表記されていた。

現在に見る「鬼怒川」という表記は、江戸時代の史料(寺田家文書)に「新鬼怒川堀割、寛永元甲子年也」として見えるほか[4]、明治から『古事類苑』など諸文献に見られる。「鬼怒川」の表記は、暴れ川である「鬼が怒る川」から「鬼怒川」となった、などと云われるが、「鬼怒」は明治期以降の当て字である。古代以来、「きぬがわ」には、好天時の穏やかで絹・衣の様な流れを表すであろう「絹川」あるいは「衣川」の漢字が当てられて来たが、「きぬ」という音については紀伊国の国造家を起源とすると云われる豊城入彦命やこの地方の豪族・紀清両党紀氏に因む「紀の川」の転訛説がある[2][5][13][14][15]

現在の鬼怒川は利根川に合流して銚子太平洋に注ぐが、江戸時代初期までは直接太平洋に注ぐ本流の河川であった。その下流部は高低差が無い平地が続き、上流部で大雨が降るとその降雨は下流平地部に滞留し、湿地帯を形成していた(現在の茨城県南部)。また古代はこの低地部は太平洋につながる香取海霞ヶ浦北浦はその名残り)と呼ばれる浅海であり、鬼怒川はここに注いでいた(現在の稲敷市龍ケ崎藤代付近)。

一方の利根川・渡良瀬川はそれぞれ個別に南へ流れ江戸湾(現在の東京湾)に注ぐ川であったが、鬼怒川と同様、その下流部は氾濫原で、上流部の降雨が滞留して湿地帯を形成していた。江戸の街の排水性を高め、利根川、太日川(渡良瀬川下流部の古称)等の水害から守り、関東平野における新田開発の推進や江戸と北関東以北を舟運で結び流通を促進させるため、江戸時代初期に徳川家康の号令で利根川の水流を東(北)へ誘導し、渡良瀬川水系や・鬼怒川水系へとつなぐ「瀬替え」(利根川東遷(とうせん=東に移す)事業)の工事が始まり、元来の鬼怒川下流部の流路帯(水系)には利根川・渡良瀬川の水も流れるようになり、鬼怒川下流部の名称は「きぬ」ではなく「とね」とされた。現在も、従来の鬼怒川水系は利根川水系に組み込まれている[2][3][5][15]

治水

五十里湖

1683年天和3年)の日光大地震により鬼怒川支流の男鹿川が現在の海尻橋付近で土砂に堰き止められ自然湖・五十里湖が出現したという記録が日光東照宮の輪番記録に残されている。この堰き止め湖は高さ70mで湛水面積は後に五十里ダム建造により生まれた「五十里湖」より大きく、40年間存在していた。この間会津藩により洪水吐き工事が行われたがうまくいかず、その間男鹿川沿いの会津西街道は通行不能になり会津藩3代藩主・松平正容によって1695年(元禄8年)に代替街道として会津中街道が整備された。会津西街道を通行止めにしていた五十里湖はその後1723年享保8年)の大雨で決壊し、死者1200人を出す土石流となり、宇都宮近辺まで被害が及んだ[16]

東北本線は開通当初、現在の東北新幹線のルートに近い宇都宮駅より真北に向かう進路を取っており、古田停車場長久保停車場の間の絹島村西鬼怒川と東鬼怒川(鬼怒川本流路)の2河川を渡っていた。しかし当時未治水であり、夏季に雷を伴い激しく降雨する栃木県北部山間部を水源とする鬼怒川は幾度となく大水となり、その激流は橋脚を傷め、1890年(明治23年)8月22日の降雨の際には橋脚が傾斜し修繕にかかる経費と時間が莫大なものとなったことをきっかけとし、東西両鬼怒川が合流し流路帯が狭くなった箇所に線路を移設することとなり、1897年(明治30年)2月25日より宇都宮を出て直ぐに北東に曲がる現在の経路での営業運転に切り替えられた[17]

2015年平成27年)9月10日には平成27年台風第18号の豪雨で増水し、上流の鬼怒川温泉では川に面した温泉ホテルの一部が崩落、下流の常総市では数か所で破堤、越流し、市街地が広範囲にわたり浸水した。越水した常総市若宮戸の鬼怒川左岸堤防は、前年にソーラーパネル設置工事で、高さ2m、長さ150mが削られ、堤防のない状態になっていた[18]

産業

北関東自動車道と交差し日産自動車栃木工場近くを流れる鬼怒川。2008年3月29日撮影

鬼怒川の支流のひとつ大谷川の上流にある日光市清滝地区では、足尾銅山鉱石と周辺の豊富な水力発電電力を利用した古河電工日光電気精銅所が1906年(明治39年)に開設され、旺盛な送電など電線需要に対応した[19]。続いて1913年大正2年)1月には当時日本最大級の最大3万1,200キロワットの電力を発生する鬼怒川水力電気下滝発電所(現・東京電力鬼怒川発電所)が現在の鬼怒川温泉の辺りで運転を開始し、東京市電気局に電力を供給した。この時建設に利用された軌道が後の下野軌道となり、現在の東武鬼怒川線に受け継がれている[20]

支流

橋梁

玉台橋。常総ニュータウンきぬの里地区と絹の台地区を結ぶ。2009年4月26日撮影

上流より記載

鬼怒川の画像

脚注

  1. ^ a b c d e 国土交通省 関東地方整備局 鬼怒川ダム統合管理事務所 流域とダムの紹介
  2. ^ a b c d e f 国土交通省 関東地方整備局 下館河川事務所公式ホームページ 鬼怒川・小貝川の紹介
  3. ^ a b c 環境省 第7回水生生物保全環境基準類型指定専門委員会 資料3-1
  4. ^ a b c d 「鬼怒川・小貝川」『日本歴史地名大系 8 茨城県の地名』 平凡社、1982年。
  5. ^ a b c 茨城県霞ヶ浦環境科学センター公式ホームページ 霞ヶ浦への招待
  6. ^ a b c スーパーマップル 広域首都圏道路地図(昭文社)
  7. ^ a b c Yahoo! Japan 地図 鬼怒川
  8. ^ 栃木県鬼怒川漁業協同組合公式ホームページ
  9. ^ 宇都宮市公式ホームページ おすすめスポーツ情報 サイクリングモデルコース サイクリングモデルコース全体図(鬼怒川編)
  10. ^ 栃木県公園&観光ガイド とちぎナビ 鬼怒川緑地運動公園
  11. ^ 鬼怒グリーンパーク 公式ホームページ
  12. ^ 栃木県 鬼怒水道事務所 公式ホームページ
  13. ^ 日本地誌提要
  14. ^ 古事類苑
  15. ^ a b 下野国誌
  16. ^ 栃木県公式ホームページ 県土整備部 日光土木事務所 激動とともに生きる五十里
  17. ^ 日本土木学会 関東支部栃木会 栃木県の土木遺産 鬼怒川橋梁上り線(東北本線)
  18. ^ 関東・東北豪雨:太陽光装置設置工事で堤防削る 鬼怒川越水部分 毎日新聞 2015年09月12日 東京朝刊
  19. ^ 古川電気工業株式会社公式ホームページ 会社案内 沿革
  20. ^ 水力ドットコム 東京電力鬼怒川発電所

関連項目

外部リンク