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「フラッシュバルブ (栓)」の版間の差分

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作動原理は、閉止時(待機時)においてはピストンバルブは圧力室の水圧で押し下げられて弁を閉じているが、レバーペダル棒や押しボタン等の[[起動]]弁を操作すると、バネ圧の起動用の押し棒が出ることにより、[[ピストンバルブ]]の起動羽根が押され、[[安全弁|リリーフバルブ]]の[[安全弁|逃し弁]]が開き、ピストンバルブ上部の圧力室部に溜まった、高水圧の水がリリーフバルブの逃し弁から介されるピストンバルブ内の軸部の案内羽根内径中心部にある管路を経由して二次側(便器への給水洗浄管)に流れ抜ける為に、圧力室の圧力がゼロになることから、給水圧力により[[ピストンバルブ]]が押し上げられ上昇し案内羽根部を介して吐水(便器への給水)が始まる。レバーペダル棒や押しボタン等の操作部から手を放すと起動押し棒がバネ圧により戻り、リリーフバルブの逃し弁もバネ圧により閉塞され、ピストンバルブは圧力室上壁部まで上昇到達し便器への吐水は全開状態になり吐水のピークとなると同時にピストンバルブの[[ストレーナー]]([[フィルター]])から小穴を経て圧力室に水が徐々に入り、圧力室に水が溜まってゆくにつれて水圧により[[ピストンバルブ]]がゆっくり押し下げられながら降下しはじめて、やがて圧力室部が満水になると水圧により[[ピストンバルブ]]が押し下げられて完全に下降し、シートパッキン部に着地することで、自動的に水が止まり便器の1回分の吐水(1サイクルの動作)が終了する。
作動原理は、閉止時(待機時)においてはピストンバルブは圧力室の水圧で押し下げられて弁を閉じているが、レバーペダル棒や押しボタン等の[[起動]]弁を操作すると、バネ圧の起動用の押し棒が出ることにより、[[ピストンバルブ]]の起動羽根が押され、[[安全弁|リリーフバルブ]]の[[安全弁|逃し弁]]が開き、ピストンバルブ上部の圧力室部に溜まった、高水圧の水がリリーフバルブの逃し弁から介されるピストンバルブ内の軸部の案内羽根内径中心部にある管路を経由して二次側(便器への給水洗浄管)に流れ抜ける為に、圧力室の圧力がゼロになることから、給水圧力により[[ピストンバルブ]]が押し上げられ上昇し案内羽根部を介して吐水(便器への給水)が始まる。レバーペダル棒や押しボタン等の操作部から手を放すと起動押し棒がバネ圧により戻り、リリーフバルブの逃し弁もバネ圧により閉塞され、ピストンバルブは圧力室上壁部まで上昇到達し便器への吐水は全開状態になり吐水のピークとなると同時にピストンバルブの[[ストレーナー]]([[フィルター]])から小穴を経て圧力室に水が徐々に入り、圧力室に水が溜まってゆくにつれて水圧により[[ピストンバルブ]]がゆっくり押し下げられながら降下しはじめて、やがて圧力室部が満水になると水圧により[[ピストンバルブ]]が押し下げられて完全に下降し、シートパッキン部に着地することで、自動的に水が止まり便器の1回分の吐水(1サイクルの動作)が終了する。


このために便器から吐出される流水はフラッシュバルブ起動弁操作直後リリーフバルブを介し圧力室に溜まっていた水が出て来た後ピストンバルブ上昇に伴い吐水が開始され、ピストンバルブが最上昇部到達時に流水のピークになり、ピストンバルブが下降していくにつれて徐々に流水が弱まり、ピストンバルブがシートパッキン部に着地して止水する。止水と同時に[[バキュームブレーカ]]からの吸気によりフラッシュバルブから便器に至る洗浄給水管内および便器内の管路の残水は便器の吐水口から排出される。
このために便器から吐出される流水はフラッシュバルブ起動弁操作直後リリーフバルブを介し圧力室に溜まっていた水が出て来た後ピストンバルブ上昇に伴い吐水が開始され、ピストンバルブが最上昇部到達時に流水のピークになり、ピストンバルブが下降していくにつれて徐々に流水が弱まり、ピストンバルブがシートパッキン部に着地して止水する。止水と同時に[[バキュームブレーカ]]からの吸気によりフラッシュバルブから便器に至る洗浄給水管内および便器内の管路の残水は便器の吐水口から排出される。


{{Double image stack|right|TH328-01.JPG |TH328-2.JPG |190|スライド伸縮式の起動羽根を持つ節水型フラッシュバルブのピストンバルブ}}
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2016年3月4日 (金) 07:21時点における版

 
フラッシュバルブ給水の和風便器

フラッシュバルブ(英:Flush valve)は、などの流体の出力を制御するバルブの一つで、バルブ操作後、一定量、一定時間(約10秒)水が流れて自動的に止まる機能を持つバルブである。

主な用途

水洗式便所での便器への給水方式の一つで、便器に供給する洗浄水の水圧流量等の流水(水流)の出力を制御するバルブとして使用される。

高水圧の水道管に直接取り付けられたバルブであり、簡便でコンパクト、高水圧で便器洗浄が出来、連続使用が可能という利点があるため、デパートホテルオフィス複合商業施設などの商業施設工場、複合ビル、あるいは学校病院など不特定多数の人が利用する非住宅の水洗便所で多用されている。

しかし25A以上の給水管径が必要で、使用水量は約2.5L/sと大水量であり、給水圧力が0.07MPaより低いと正常に作動しないため、住宅での採用は少なく、戸建住宅では一般的に給水管径が13A、15A、20Aであるために使用できず、屋上などに受水槽からの高置水槽を設置し25A以上の給水管径と水圧を確保できる集合住宅や、特殊的に25A以上の給水管を導入して0.07MPa以上の給水圧力が確保された一部の戸建住宅にわずかに採用されている程度にとどまっている。

操作方法

従来のレバーペダル手動フラッシュバルブ給水の和風便器
赤外線人感センサによる自動洗浄、大小流し分け、設備保護機能を搭載したフラッシュバルブに制御される床上給水和風便器

操作方法は従来は一般的にレバーペダル棒や押しボタンの起動弁を手動で操作して起動させる方法が主流で、他には便器から離れた場所や壁内にフラッシュバルブを設置し、便器付近の壁に押しボタン弁や床に足踏み弁を設け、この弁からリモコン用の導管となる配管を介して水圧によりフラッシュバルブの水圧ピストンを遠隔操作で起動させるリモコン型フラッシュバルブが主な在来の起動方式であった。

近年では人感センサで人体を感知して使用後に自動で起動する「自動フラッシュバルブ」や、「手かざしセンサー」や薄型のタッチスイッチにより電気信号で電磁弁を作動させ起動する電装式のフラッシュバルブが主流になって衛生面や節水面から採用が増えている。

赤外線人感センサの自動フラッシュバルブや電磁スイッチタイプの電装式のフラッシュバルブには、便器の使用時間や使用頻度を感知し自動的に大洗浄、小洗浄の流し分け判定機能が搭載され起動毎に適量の洗浄水を吐水し便器に供給する。

また自動フラッシュバルブや電磁スイッチタイプの電装式のフラッシュバルブには設備保護洗浄機能が搭載されており、長時間使用(便器への通水)がない場合、便器排水トラップ内の封水が蒸発により内部の水が減少、乾きからの破封を防止するための設備保護タイマーにより、最後の洗浄から(大便器用では最後の大洗浄から)24時間周期で自動的に1回分の洗浄を行う機能を搭載し、さらに大便器用では、小洗浄が連続した場合、排水管つまり防止のため、小洗浄判定時間内であっても使用状況に応じて自動的に大洗浄を行う機能も搭載している。

電装式の自動フラッシュバルブには便器の機種や設置状況にあわせて水量切り替えや大小流し分け機能有りと大洗浄のみの切り替え設定、手かざしセンサー感知の起動時間切り替え設定、人感センサセンサー感知から起動までの時間設定、小洗浄判定時間の設定、人体からの距離人感センサのセンサー感度の設定等の様々な設定が機器内部のスイッチにより切り替え機能が搭載されている。

また、最近の自動フラッシュバルブの一部は発電用水車が内蔵され、水勢を利用して水力発電をして自らの制御電力に使用する機能を搭載した機種も存在する。 

最近では0.04MPa程度の給水圧でも正常に作動するフラッシュバルブも開発されており、この場合、専用の便器との組み合わせが必須である。

人感センサ赤外線以外にマイクロ波を利用した人感センサが搭載された機種もあり、この場合センサーの小窓が無く、よりスッキリとした印象に仕上がっている。

近年では、手動フラッシュバルブであったトイレにおいても衛生面や節水面で、後付けの自動フラッシュバルブに換装される場合が多く、特に新設されるトイレにおいては手動フラッシュバルブの採用は減っている。

構造と作動原理

構造

フラッシュバルブの流水を制御する心臓部の部品であるピストンバルブ(大便器用) 節水型フラッシュバルブのピストンバルブ(大便器用)普通用とは形状、構造が異なる
フラッシュバルブの流水を制御する心臓部の部品であるピストンバルブ大便器用)
節水型フラッシュバルブのピストンバルブ大便器用)普通用とは形状、構造が異なる
尿石防止の薬剤供給装置が連結された自動フラッシュバルブ内蔵新型小便器

構造は、一般的な手動フラッシュバルブの場合、給水側から順に開閉弁部(ストップバルブ)、本体部、バキュームブレーカ部の順で構成されており、便器への給水圧は開閉弁のスピンドルで調整する。本体部にはフラッシュバルブの心臓部であるピストンバルブが内蔵されており、フラッシュバルブを起動させるレバーペダル棒や押しボタン等の起動弁部が本体側面部に組み込まれており、その起動弁内部にピストンバルブを起動させるバネ圧の押し棒部が内蔵されている。本体上部には流量調整ネジが付いており、ピストンバルブの昇降ストローク量により流量が変動し、ネジを開けると吐水量が増え、ネジを閉め込むと吐水量が減る仕組みになっている。

本体に組み込まれているピストンバルブはバルブ上部外周にわん皮パッキンまたはUパッキンが巻かれ、側面中央部にストレーナーフィルター)があり、下部には案内羽根が付いており、その案内羽根内径中心部にリリーフバルブ先端の起動羽根が突出している。ピストンバルブ上部の中心部には逃し弁の穴が開いており、その中にはリリーフバルブと押えバネが仕込まれている。一次側(給水口側)と二次側(便器に繋がった洗浄管側)とはわん皮パッキン(Uパッキン)で仕切られ、わん皮パッキン(Uパッキン)上部が圧力室部であり、ピストンバルブ上部の圧力室側になる一次側と二次側の間には針先程の小穴が開いておりストレーナーを経て繋がっている。ピストンバルブの弁座部にはシートパッキンと呼ばれる中央部にストレーナーが付いたパッキンが組み込まれている。

作動原理

作動原理は、閉止時(待機時)においてはピストンバルブは圧力室の水圧で押し下げられて弁を閉じているが、レバーペダル棒や押しボタン等の起動弁を操作すると、バネ圧の起動用の押し棒が出ることにより、ピストンバルブの起動羽根が押され、リリーフバルブ逃し弁が開き、ピストンバルブ上部の圧力室部に溜まった、高水圧の水がリリーフバルブの逃し弁から介されるピストンバルブ内の軸部の案内羽根内径中心部にある管路を経由して二次側(便器への給水洗浄管)に流れ抜ける為に、圧力室の圧力がゼロになることから、給水圧力によりピストンバルブが押し上げられ上昇し案内羽根部を介して吐水(便器への給水)が始まる。レバーペダル棒や押しボタン等の操作部から手を放すと起動押し棒がバネ圧により戻り、リリーフバルブの逃し弁もバネ圧により閉塞され、ピストンバルブは圧力室上壁部まで上昇到達し便器への吐水は全開状態になり吐水のピークとなると同時にピストンバルブのストレーナーフィルター)から小穴を経て圧力室に水が徐々に入り、圧力室に水が溜まってゆくにつれて水圧によりピストンバルブがゆっくり押し下げられながら降下しはじめて、やがて圧力室部が満水になると水圧によりピストンバルブが押し下げられて完全に下降し、シートパッキン部に着地することで、自動的に水が止まり便器の1回分の吐水(1サイクルの動作)が終了する。

このために便器から吐出される流水はフラッシュバルブ起動弁操作直後リリーフバルブを介し圧力室に溜まっていた水が出て来た後、ピストンバルブ上昇に伴い吐水が開始され、ピストンバルブが最上昇部到達時に流水のピークになり、ピストンバルブが下降していくにつれて徐々に流水が弱まり、ピストンバルブがシートパッキン部に着地して止水する。止水と同時にバキュームブレーカからの吸気によりフラッシュバルブから便器に至る洗浄給水管内および便器内の管路の残水は便器の吐水口から排出される。

 
スライド伸縮式の起動羽根を持つ節水型フラッシュバルブのピストンバルブ

節水式のフラッシュバルブはピストンバルブの起動羽根がスライド伸縮式の二重構造になっており、一度の操作で1回分の吐水しかしないノンホールディング機能を持ち、レバーペダル棒や押しボタン等の起動弁を押し続けても二重になった起動羽根が押し棒部上面に乗り上げるのでピストンバルブが上昇位置のままで保持されずピーク時の持続(全開状態のまま)になるのを妨ぎ、下降閉止動作をする機能を持ち、さらに、圧力室に水を流入させる小穴も通常のストレーナーフィルター)からの小穴の他にリリーフバルブ部上面にも存在する伸縮式の羽根の付いたバルブからによる二重流入構造になっており、フラッシュバルブ流水ピーク時に至るまでは通常の小穴以外のピストンバルブ部上面に存在する伸縮式の羽根の付いたバルブの小穴部からも圧力室部に水が流入させる機能を併せ持っており、フラッシュバルブ起動開始直後からは伸縮式の羽根の付いたバルブの弁上部の羽根が飛び出た状態になり圧力室に水が流入し、フラッシュバルブのピーク時にピストンバルブが最上昇点に至るとピストンバルブ部上面の伸縮式の羽根の付いたバルブの羽根部は圧力室の上壁面に接触して押し込まれ閉鎖される、以後は圧力室に溜まっていく水の水圧により羽根が飛び出ることなく、通常の小穴のみから圧力室部に水が流入し、ピストンバルブの下降動作が始まり、ピーク時の全開状態の時間を短くして吐水を節水制御する機能になっている。

電装式のフラッシュバルブには電磁弁が内蔵され、一次側と二次側の間に電磁弁を伴うバイパス管路が組み込まれ、センサーやスイッチでの起動信号が入ると、電磁弁が開き一次側の圧力室部に溜まった高水圧の水が電磁弁のバイパス管部を介して二次側(便器への給水管)に流れ抜ける為に、圧力室の圧力がゼロになることからピストンバルブが作動し上昇することでフラッシュバルブが起動し便器への吐水が開始される。 また側面には停電や電池切れの時用に手動ボタン弁が付いており、手動ボタン弁で操作した場合は手動フラッシュバルブと同じ原理で作動する。

何れも、1回操作する度に内部のピストンバルブが上下に1往復のピストン運動をすることにより1回分の洗浄水を吐水する。

バキュームブレーカ

フラッシュバルブのバキュームブレーカ

大便器用フラッシュバルブを設置する際は、断水時等給水管の負圧による逆サイフォン現象による汚水の逆流防止のために負圧破壊装置であるバキュームブレーカの取付が義務づけられている。

バキュームブレーカには吸気弁と給水塞止弁が内蔵されており、吸気弁、給水塞止弁共に、硬質合成ゴム製のパッキンが仕込まれ、給水塞止弁のパッキンにより便器の洗浄流水時以外はバキュームブレーカ以前の管路を閉塞した状態が定位置となっている。フラッシュバルブが起動して吐水(便器への給水)が開始されると水勢により給水塞止弁のパッキンが押し下がられて下降するとともに、支点の反対側の吸気弁のパッキンが押し上げられて上昇して吸気口が閉鎖され、フラッシュバルブの吐水が終了して水勢が弱くなるとと吸気弁部が自重で下降して吸気弁が開放され、吸気を開始すると同時に給水塞止弁は上昇してバキュームブレーカ以前の管路を閉塞し汚水の逆流を防止すると共に、フラッシュバルブ~便器への給水管に吸気弁より空気を取り入れ大気圧状態にする。このためフラッシュバルブ閉止時(便器洗浄終了時)バキュームブレーカの吸気口から空気吸入音が聞こえる事がある。

また無数に開いた穴の吸気口を持つ旧型バキュームブレーカの場合、フラッシュバルブ起動開始時(便器洗浄開始時)に吸気弁パッキンが閉まり、フラッシュバルブ閉止時(便器洗浄終了時)に吸気弁パッキンが開く吸気弁パッキンの開閉動作が吸気口の無数に開いた吸気穴から垣間見える。

また、バキュームブレーカの設置が義務化される前に施工された古いトイレのバキュームブレーカの無いフラッシュバルブについては、トイレ付近に飲用水の蛇口や厨房等、直接人体に影響がある上水管が接続されている場合、新たにバキュームブレーカの取付けが必要である。 (便器洗浄水のみに単独で工業用水道や中水道が使われている場合を除く)

翼車回転式フラッシュバルブ

翼車式フラッシュバルブ

その他に最近ではピストンバルブを使用しない羽根車式の翼車式フラッシュバルブもあり、構造は機器内部に電磁弁と回転式の翼車羽根車)と水量カウントセンサーが内蔵されており、洗浄スイッチセンサーから信号が送信されると電磁弁が開き通水が開始され、内部のカウンターが付いた翼車が水の勢いで高速回転し、翼車の回転数を水量カウントセンサーが読み取り、設定した水量カウント数(大用、小用)を読み取ると給水停止信号を送信し電磁弁が閉まり止水する。

このためにピストンバルブ式のフラッシュバルブのように流水ピークから徐々に流水が弱まる仕組みではなく、終始常時流水のピークの流水が便器に供給される。

また翼車回転式フラッシュバルブでは各便器の利用人数や各便器に流した積算水量、及び利用者1人当たりの洗浄操作回数もデーターによる検証も可能なシステムで、利用者の滞在時間や利用頻度で大用、小用の流水量の流し分け機能、設備保護洗浄機能や擬音装置の他、長時間滞在警報、機器異常警報を監視室等に異常信号を発報する機能と、利用者が入室した直後の機器操作説明音声ガイダンス機能を併せもっている。

用途別及び他の機能搭載

低水圧用

低圧型フラッシュバルブから給水される床下給水和風便器

通常のフラッシュバルブの設置されている施設の屋上階や最上階等において最低必要水圧(流動時)0.07MPaを確保できず、0.05MPa以上の水圧があるトイレ用として低圧型フラッシュバルブが存在する。

ピストンバルブは通常の縦方向の上下動作式とは異なり、横方向に左右に動作するスライド式でピストンバルブのリリーフ弁、圧力室側にはにリリーフ弁押さえ兼復帰用のバネを配し、洗浄終了時におけるバルブ閉止時の復帰には圧力室にストレーナーフィルター)から小穴を経て入水する水圧と共に、ピストンバルブに付帯する復帰バネのバネ圧で補助して閉止する構造になっている。

このことから本体の形状は起動弁(起動レバー棒)から横方向奥に膨らんでおり、その内部には横方向にピストンバルブと復帰バネが内蔵されている。その一番奥の先端には圧力室の蓋を兼ねたピストンバルブの取り出し口部となっている。

便器に流れる流水も一般型のフラッシュバルブより吐水圧が低いことから流水時間が長くなる仕組みになっている。

低圧型フラッシュバルブの場合、使用できる便器の機種も制限され、一定以上の水圧を必要とするブローアウト式便器やサイホンゼット式便器(一部の機種を除く)との組み合わせは出来ない。

耐海水用・再生水用

便器の洗浄水に海水を使用する船舶関係では、海水の塩分による腐食防止を対策をした耐海水用フラッシュバルブが使用される他、便器の洗浄に雨水や 井戸水の他、再生水、中水道工業用水道等を使う場合も腐食対策対応の再生水用フラッシュバルブが使用される。

これらの腐食防止対策をしたフラッシュバルブは、部材に高耐食性材質や材料が使われ、高耐食めっきがされている。

耐海水用フラッシュバルブについては通常の上水用フラッシュバルブとは違いバキュームブレーカの設置義務は無い為に、バキュームブレーカは取り付けられていないことがある。

薬剤供給機能搭載

フラッシュバルブからの吐水管にサニタイザーが繋げられ薬剤供給される便器 フラッシュバルブに内蔵されたサニタイザー(起動レバーハンドル付け根上部の円筒形の部分が薬剤希釈槽)
フラッシュバルブからの吐水管にサニタイザーが繋げられ薬剤供給される便器
フラッシュバルブに内蔵されたサニタイザー(起動レバーハンドル付け根上部の円筒形の部分が薬剤希釈槽)

フラッシュバルブ式のトイレではタンク式のように便器洗浄薬剤や消毒剤等を容易に投入できないことから、 衛生面や快適性を重視する施設のの水洗トイレでは、小便スラッジからなる悪臭や汚れを防止するために便器や排水管への尿石付着防止の消毒洗浄芳香薬剤を便器に供給するサニタイザーと呼ばれる水洗便器用薬剤供給装置があり、サニタイザーをフラッシュバルブから便器に至る洗浄管に組込み(連結)され便器に薬剤を供給されるが、最近ではサニタイザー自体を手動フラッシュバルブや大洗浄、小洗浄の流し分け判定機能による水洗時間と流量、頻度を自動制御する自動フラッシュバルブ本体に内蔵したビルトインサニタイザーが大便器用、小便器用共に存在し、一部のビルトインサニタイザーは壁内に設置された機器や便器内に内蔵された機種も存在する。これらのビルトインサニタイザーは便器への流水が終了する間際にフラッシュバルブ本体に内蔵されたサニタイザーから、フラッシュバルブの流水が閉止する寸前に常に一定量の薬剤量及び薬剤濃度の薬剤を溶解した薬剤水溶液が便器に供給され、便器から出てきた薬剤により消毒、脱臭、尿石の付着防止、便器や排水管の詰まり、防汚をする。

擬音装置搭載

電装式のフラッシュバルブには便器洗浄機能以外に擬音装置が内蔵され機種もあり、赤外線人感センサで大便器の個室内で人体を感知すると自動的に擬音装置が作動して、不必要に音消しだけの為にフラッシュバルブを操作させなくして水の無駄遣いを防止する。

この装置が設置されているトイレには、マスキングのために水を流すのをやめるよう、啓蒙用表示の掲示やポスターなどが貼ってあることもある。

通報機能搭載

擬音装置や通報システムを搭載した電装式の最新の翼車式フラッシュバルブ

最新の電装式フラッシュバルブは人感センサを便器洗浄機能以外に防犯や安全にも利用され、一定時間以上同一人物が入室したままの場合、盗撮等の防犯や中で人が倒れている恐れもあるので、安全のために通報する機能や、フラッシュバルブがいたずらをされた時や故障時等、機器の異常を通報する機能を併せ持っているものもある。

盗撮不審者が疑われる長時間入室の退室後や悪戯が疑われる機器の異常を感知した場合、トイレ入口部の防犯カメラと連動し、管理人室に発報される他、中には警備会社の警備システムと連動しているものあり、警備会社に自動的に通報が行われる機能を併せ持っている機器もある。

タンク排出用

反応缶、タンク底などに取り付け、タンク内の流体排出・抜出しに使用することもある。タンク弁、Y形フラッシュ弁、底弁などと呼ばれる。(Flush bottom valve)

構成部品・材質

フラッシュバルブはボディや内蔵されたバルブやバキュームブレーカも含めて概ね100以上の部品から構成されている。

材質は、ボディやピストンバルブ部は真鍮青銅製、ピストンバルブのストレーナーフィルター)部とシートパッキン中心部は状のステンレス製、ピストンバルブのワン皮パッキン、Uパッキン、バキュームブレーカの吸気弁、給水塞止弁は牛革なめし加工した皮革または合成ゴム製、ストップバルブ(止水栓)、バキュームブレーカ、シートパッキンの外枠部等のパッキン類は合成ゴム天然ゴム皮革製、ピストンバルブ内部のバルブ部、バキュームブレーカ内枠、レバーハンドルの押し棒部付根はABS樹脂製である。

以前に製造されたフラッシュバルブの配管接続部やバキュームブレーカの一部のパッキンには石綿製のパッキンも使われたが、アスベスト問題法的規制があり、現行品のフラッシュバルブには使用されていない。

フラッシュバルブの保守、点検

本体部、ピストンバルブ部

フラッシュバルブの点検時に取り出された節水型ピストンバルブ(写真は大便器用) 補修交換用の新品の大便器用ピストンバルブ
フラッシュバルブの点検時に取り出された節水型ピストンバルブ(写真は大便器用)
補修交換用の新品の大便器用ピストンバルブ

フラッシュバルブの多くが不特定多数の人が使用するトイレに設置されており、故障防止や機能低下防止の為に日常の定期点検が必要で、本体に内蔵されているピストンバルブストレーナーフィルター)や小穴が水垢や水中に含まれる等の異物が詰まるとピストン弁の下降動作となる復帰に時間を要し、便器に供給される水が止まらなくなったり、極端に吐出する水量が増えたり、流れなくなる他、小穴が完全に詰まると便器の水が出っ放しで止水しなくなるトラブルが発生する。ピストンバルブはフラッシュバルブ起動毎に高圧で上下にピストン運動を繰り返す為に外周のわん皮パッキン(Uパッキン)が摩耗する場合があり、摩耗劣化が進み少しでも亀裂が入ると、起動弁を操作しても起動弁が押されている時だけしか水が流れなくなるれなくなったりするトラブルが発生することから、月/1回ピストンバルブを取り出してストレーナーフィルター)や小穴の清掃と、パッキン類の摩耗や劣化を点検をする事をメーカーでは推奨している。

フラッシュバルブが多く設置されている施設においては、故障を未然に防ぐ為に、あらかじめ新品及び、ストレーナーと小穴を清掃、パッキン類は摩耗があれば交換し、リリーフ弁等の可動部をグリス等の潤滑剤で給脂した点検、メンテナンス済の予備のピストンバルブをストックしておき、定期的にピストンバルブを交換される場合が多い。 交換したピストンバルブはメンテナンスした上で次回の交換時に使用され、ローテーションを繰り返し使用されるが、ピストンバルブは同型品であっても各々が個性的な動作をする事があり、ピストンバルブ交換後、便器の水の流れ方が変わったり、吐水量が変わり、汚物が流れきれなくなる場合や、逆に吐水量が必要以上に増えたりする場合があるので、交換後は便器の吐水状況を確認し、本体上部にある流量調整ネジ等で水の出力を調整する。

ピストンバルブの下部のシートパッキンの細かな網部に異物が詰まったり、網部が傷つくと止水不良で少量の水が流れっぱなしになるので、ピストンバルブ取り出し時にシートパッキンの網部の点検も必要である。

またフラッシュバルブの配管に空気が混入した場合圧エアー混入により、次回フラッシュバルブ作動時に便器の水が飛び散るトラブルや管内に圧力変動が伝播し、配管の振動を引き起こし、急激な圧力によりフラッシュバルブが破損してしまう場合があり、さらに酷い急激な圧力が発生すると場合によってはフラッシュバルブを通り越して便器自体までも破損してしまう事が起こってしまうために空気混入の恐れのある配管にフラッシュバルブを設置する場合は必ず空気抜き弁を設ける。

バキュームブレーカ部

バキュームブレーカ内部。吸気弁(右側)と給水塞止弁(左側) オーバーホール(分解整備)時のバキュームブレーカ部と構成部品
バキュームブレーカ内部。吸気弁(右側)と給水塞止弁(左側)
オーバーホール(分解整備)時のバキュームブレーカ部と構成部品

さらに、汚水の逆流防止のための負圧破壊装置であるバキュームブレーカが故障すると負圧が発生した時に汚水が逆流する恐れと吸気弁に異物が付着すると水漏れが発生する恐れがある為に、定期的にバキュームブレーカの吸気蓋を取外した上で、フラッシュバルブ を操作して水を流して、吸気弁の開閉動作の作動状況を確認し、吸気時に空気に混じった埃等の吸気弁パッキンへの付着した異物の清掃と吸気弁からの水漏れが無いかを点検する必要がある他、概ね年に1回オーバーホールを行い分解して可動部にグリスの等の潤滑剤により給脂を行い、吸気弁が摩耗している場合水漏れの原因にもなるため、吸気弁のパッキン部を交換する必要がある。

ピストンバルブのパッキン類やバキュームブレーカの吸気弁のパッキンやピストンバルブの下部のシートパッキン等の消耗品も交換用のストックを持つことでトラブル時の迅速な補修が可能となる他、定期的にリリーフ弁や押し棒部等の可動部への定期的なグリスの等の潤滑剤により給脂を行う。

サニタイザーとの協調

サニタイザーが連結され洗浄消毒薬剤が常時供給されている便器

フラッシュバルブから便器への配管に水洗便器用薬剤供給装置であるサニタイザーが取り付けてある便器においては、ピストンバルブ交換により便器への水の流れ方が変わったり、吐水量が増減した場合、連通管を介してサニタイザーに流入する水量や水勢が変動して、吐水量が減ったり水圧が低い場合、サニタイザー内に規定量まで流入しない不具合や水勢が高い場合、内部のフロート弁が高水圧により急閉止して規定量まで流入しない不具合が発生し、フラッシュバルブ起動毎にサニタイザーに一定量の水が入水し薬剤と混ざり、一定量に溶解した溶液が便器に出て行く、一連の作動状況や機能に影響が出て、サニタイザーから便器に供給される薬剤の溶液の量や濃度が変わってしまい、サニタイザーの機能が著しく低下したり損なわれてしまう為、ピストンバルブ交換後はフラッシュバルブの操作により便器に流れる水量と、流水の強さが一定した状態が繰り返されるように調整した上で、洗浄動作毎に安定した一定量の薬剤の溶液(便器の、トラップ等の便器内に留まる溶液の濃度は100ppm)が便器に供給されるようにフラッシュバルブの出力とサニタイザーの動作が協調するように調整が必要となる。

フラッシュバルブ給水用便器

フラッシュバルブ用サイホンゼット式便器 TOTO C480
片持ちタイプの壁掛け式ライニングユニット用便器(ウォシュレット付き)

便器の種類によっては一定以上の水圧が必要な機種やフラッシュバルブの吐水性能に特化した特性の便器が存在し、フラッシュバルブ専用便器、フラッシュバルブ給水を推奨したフラッシュバルブ用便器が存在する。

またフラッシュバルブ給水の便器とフラッシュバルブの組み合わせの関係については、よく自動車に例えられて説明される。便器がボディーとすればフラッシュバルブはエンジンに相当し、両者一体となって初めて十分な機能を発揮することが出来、便器の機種によってはフラッシュバルブの機種が指定されていることも多く、フラッシュバルブの機種の違い次第で同じ便器でありながら性能や特性が違ってくる等、便器とフラッシュバルブの組み合わせの選択は重要となる。

フラッシュバルブ給水用洋式(腰掛)便器

強力な水勢のゼット孔をトラップ底面から排出口へ向かって設け、もっぱらその噴出力で汚物を排水路へ吹き飛ばし排出するブローアウト式便器(TOTOではC454系)は一定以上の水圧が必要なので、低水圧やロータンクでは使用不可な為に洗浄方式はフラッシュバルブに限られる為にフラッシュバルブ給水専用便器となっている他、サイホンゼット式フラッシュバルブ専用便器(TOTOではC48系、C480系)があり、これらのフラッシュバルブ専用便器は汎用品の普通型、節水型、リモコン型、光電センサー自動フラッシュバルブ等の様々なフラッシュバルブと組み合わせで施工されている。(C454系やC48系、C480系は低圧型フラッシュバルブは給水圧力が不足するために組み合わせはできない)

最近では5.5ℓで洗浄可能なフチ無し形状・トルネード洗浄の超節水フラッシュバルブ専用便器(TOTOではCS464・465系)が、最新の製品では4.8ℓで洗浄可能な超節水フラッシュバルブ専用便器(TOTOではCS494系)が発売されている。フラッシュバルブ自体も5.5ℓ洗浄用や4.8ℓ洗浄用の専用フラッシュバルブが用意されている。

また乾式工法のトイレ施工としてライニングフレーム枠にパーティション板や木目や石目等に装飾された板等を使用した前板と上部に甲板がある壁内にフラッシュバルブ、給排水管、換気装置を組み込み、専用便器でユニットを配したライニングユニット便器があり、壁内の専用フラッシュバルブとライニングユニット専用便器があり、これらの便器は壁給排水が可能で清掃も容易な片持ちタイプの壁掛け式の便器が使用される。これらのライニングユニット便器ではフラッシュバルブが内蔵されている付近の壁が点検を容易にできるように脱着可能なようにできている他、壁部にフラッシュバルブ点検口が設けられる場合もある。

フラッシュバルブ給水用和風(和式)便器

 
フラッシュバルブ給水用床下給水和風便器TOTO C75

和風便器においてもブローアウト式便器(TOTOではCU139系)は一定以上の水圧が必要なので、低水圧やロータンクでは使用不可能である為に洗浄方式はフラッシュバルブに限られる事から、フラッシュバルブ給水専用便器とされている他、従来型の床下給水和風便器(TOTOではC75系)はフラッシュバルブ用とされており、床下給水和風便器は給水口が金隠し部の床下にあり地中に埋め込まれた給水管と接続され、給水管が露出せずフラッシュバルブを壁や便器から離れた場所、壁内などのフラッシュバルブを邪魔にならない自由な場所に設置出来、美観面にも優れ、フラッシュバルブの吐水性能と相性が良く、デパート、ホテル、オフィス、駅など非住宅のパブリックな空間でフラッシュバルブとの組み合わせで多く採用されている。

フラッシュバルブが使用できない環境のトイレではロータンク給水で施工されるが、この方式には主に床上給水和風便器(TOTOではC375V系)が使用されるが、一部のトイレでは床下給水和風便器(TOTOではC75系)で施工されたトイレも多く存在し、C75系をロータンク給水で施工した場合、特に木造住宅の場合、給水管と根太が干渉し、根太の下から給水管を通すと給水管にトラップが形成され洗浄機能に著しく影響するために、施工の際、根太を欠き取らねばならないという面倒な施工方法を強いられる等、構造、施工性、特性上フラッシュバルブからの給水に比べ劣る場合があることもあったが(当時はC75系がフラッシュバルブ給水用として、C375V系はロータンク給水およびフラッシュバルブでの施工が推奨されていた)、近年の製品(TOTOではC750系)ではフラッシュバルブ、ロータンク両方の特性にも併せた汎用タイプに改良され、ロータンクでの施行例も増え、さらに最新かつ現行の製品(TOTOではC755U系)では8ℓでも洗浄可能な節水型になっており低水圧や低水量でも洗浄可能であり、節水型フラッシュバルブの水量調整ネジで節水可能な仕様となっている。勿論これらはロータンクによる節水洗浄も可能になっているが、上記のような施工性もあり、床下給水式和風便器はフラッシュバルブと組み合わせられることが大半を占めている。

機能の応用と便器洗浄以外の使用例

オストメイト対応トイレの汚物流しに設置された例

フラッシュバルブの構造、機能は、シスタンバルブにも応用されており、シスタンバルブとは天井に近い位置にタンクを置き、タンクから伸ばされた給水管と床面の便器への中間部に低圧型フラッシュバルブと同仕様、同構造のバルブを組み合わせた給水装置であり、主に公衆便所の大便器の給水方式として多用されている他、過去には一部の古い戸建住宅でも採用された。フラッシュバルブと同じ操作方法、同じ作動原理でありながらタンク式であるために満水になるまで次の洗浄が出来ない欠点があり、最近は採用例が減っている。

また銭湯の給湯栓や水栓等の湯屋カランも、バルブを押すと一定時間、湯や水が流れて閉止する湯屋カランと称される自動水栓もピストンバルブによる作動で、フラッシュバルブと同じ作動原理が応用されている。

フラッシュバルブの水洗便器洗浄以外の設置例として、病気や事故などにより消化管や尿管が損なわれた、腹部などに排泄のための開口部(ストーマ(人工肛門・人工膀胱))を造設した人の人工肛門保有者・人工膀胱保有者のオストメイト対応の汚物流しの洗浄や、病院での検便、検尿後の検査で残った汚物を流す汚物流しの洗浄にも使用され、それらの汚物流しは殆どが汚物処理室やトイレの一角に設置されている他、過度の飲酒による嘔吐物洗浄の汚物流しの洗浄用として規模の大きい居酒屋や酒場のトイレの近辺に設置されている例もある。

関連項目