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[[File:Fronton Cambodge Musée Guimet 9972.jpg|thumb|350px|[[カンボジア]]の[[アンコール遺跡]]の1つ、[[バンテアイ・スレイ]]の壁画[[レリーフ]]。ティローッタマーを奪い合うスンダとウパスンダ。[[パリ]]、[[ギメ東洋美術館]]所蔵。]]
[[File:Tilotamma.jpg|thumb|170px|ティロッタマー([[ラヴィ・ヴァルマ]]画]]
[[File:Tilotamma.jpg|thumb|200px|[[ラヴィ・ヴァルマ]]による絵『ティローッタマー』。]]
'''ティロッタマー'''('''Tilottamā''', {{lang-sa-short|तिलोत्तमा}})は、[[インド神話]]に登場する[[アプサラス]]。2人の兄弟の[[アスラ]]、[[スンダ]]と[[ウパスンダ]]を破滅させるために創造された。ティロッタマーを見ようとして[[インドラ]]の身体には千眼ができ、[[シヴァ]]神は四面たとされ
'''ティロッタマー'''( {{lang-sa-short|'''तिलोत्तमा'''}}, {{ラテン翻字|el|Tilōttamā}})は、[[インド神話]]に登場する[[アプサラス]]である三界を征服した[[アスラ]]族の2人の兄弟、[[スンダ]]と[[ウパスンダ]]を破滅させるために天界の工匠神[[ヴィヴァカルマン]]にて創造され


ティローッタマーとスンダ・ウパスンダの物語は、[[インドラ]]神の身体に千眼が生まれ、[[シヴァ]]神が四面になった由来譚を含んでいるほか<ref name=M_1_203>『マハーバーラタ』1巻203章。</ref>、『[[マハーバーラタ]]』では[[パーンダヴァ]]5兄弟に対する教訓譚となっている。『[[ヴィシュヌ・プラーナ]]』(2・8)によると、ティローッタマーは[[太陽神]][[スーリヤ]]の馬車に同乗する12のアプサラスの1人とされている<ref>菅沼晃編『インド神話伝説辞典』P.193。</ref>。
アスラであるスンダとウパスンダが三界を征服してテーヴァは三界の支配権を失った。そこで三界奪還に向けて[[ブラフマー]]神は天界の工匠神[[ヴィシュヴァカルマン]]に絶世の美女を創造するよう命じた。そこでヴィシュヴァカルマンは世界中から宝物を集め、それらの宝物からさらに美しい部分だけを少しずつ集め、それらを合わせてあらゆる点で完璧な美を備えた1人のアプサラスを創造した。アプサラスはブラフマー神からティロッタマーという名前を授かった。ティロッタマーが誕生したとき、その場にいたどんな聖仙、神々もティロッタマーから視線をそらすことができなかった。[[シヴァ]]神はティロッタマーを見たいという誘惑に勝てず、彼女がシヴァ神の周りを回ったときに4つの顔が生じて彼女の動きを追ったという。同様に[[インドラ]]神は呪いによって体中に貼り付けられた千の陰部が千の目へと変化したとされる。


== 神話 ==
ブラフマー神はティロッタマーにスンダとウパスンダを誘惑して兄弟の仲を裂くように命じた。そこでティロッタマーがスンダとウパスンダのところにいくと、2人はすぐにその美しさに魅了され、どちらがティロッタマーを妻とするかで争いとなった。2人は怒り狂って互いに[[棍棒]]で殴りあい、死闘を繰り広げた。こうしてスンダとウパスンダの支配を自滅へと追い込むことに成功した。
『マハーバーラタ』によると、アスラ族スンダとウパスンダが三界を征服したために、は三界の支配権を失った<ref>『マハーバーラタ』1巻202章。</ref>。そこで三界奪還に向けて[[ブラフマー]]神は工匠神ヴィシュヴァカルマンに絶世の美女を創造するよう命じた。ヴィシュヴァカルマンは世界中から宝物を集め、それらの宝物からさらに美しい部分だけを少しずつ集め、それらを合わせてあらゆる点で完璧な美を備えた1人のアプサラスを創造した。彼女宝物のブラフマー神からティロッタマーという名前を授かった。ティロッタマーが誕生したとき、その場にいたどんな聖仙、神々もティロッタマーから視線をそらすことができなかった。[[シヴァ]]神はティロッタマーを見たいという誘惑に勝てず、彼女がシヴァ神の周りを回ったときに4つの顔が生じて彼女の動きを追ったという。同様に[[インドラ]]神は呪いによって体中に貼り付けられた千の陰部が千の目へと変化したとされる<ref name=M_1_203 /><ref group="注釈">このためインドラは'''サハスラークシャ''' {{ラテン翻字|el|Sahasrākṣa}} 「千眼者」の別名を持つ(菅沼晃編『インド神話伝説辞典』P.154)。</ref>。兄弟の1人[[アルジュナ]]が各地を放浪したのはこの協定に違反したためである。

ブラフマー神はティロッタマーにスンダとウパスンダを誘惑して兄弟の仲を裂くように命じた<ref name=M_1_203 />。そこでティロッタマーがスンダとウパスンダのところにいくと、2人はすぐにその美しさに魅了され、どちらがティロッタマーを妻とするかで争いとなった。2人は怒り狂って互いに[[棍棒]]で殴りあい、死闘を繰り広げた。こうしてスンダとウパスンダの支配を自滅へと追い込むことに成功した<ref name=M_1_204>『マハーバーラタ』1巻204章。</ref>

このエピソードは[[聖仙]][[ナラーダ]]が[[パーンダヴァ]]5兄弟に対する教訓譚として語っている<ref>『マハーバーラタ』1巻200章-204章。</ref>。スンダとウパスンダがティローッタマーを巡って争ったように、彼らが妻[[ドラウパディー]]を巡って争わないようにするためである<ref group="注釈">パーンダヴァ5兄弟は5人で1人の妻ドラウパディーを共有していた。</ref>。この話を聞いたパーンダヴァはナラーダの勧めに従い、兄弟の夫婦の生活に関する協定を定めた<ref name=M_1_204 />。

== 脚注 ==
===注釈===
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===脚注===
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== 参考文献 ==
* 『原典訳[[マハーバーラタ]] 2』[[上村勝彦]]訳、[[ちくま学芸文庫]](2002年)
* [[菅沼晃]]編『インド神話伝説辞典』、[[東京堂出版]](1985年)

== 関連項目 ==
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* [[ヴィシュヴァカルマン]]
* [[アプサラス]]
* [[インドラ]]
* [[シヴァ]]

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2016年11月25日 (金) 21:16時点における版

カンボジアアンコール遺跡の1つ、バンテアイ・スレイの壁画レリーフ。ティローッタマーを奪い合うスンダとウパスンダ。パリギメ東洋美術館所蔵。
ラヴィ・ヴァルマによる絵画『ティローッタマー』。

ティローッタマー: तिलोत्तमा, Tilōttamā)は、インド神話に登場するアプサラスである。三界を征服したアスラ族の2人の兄弟、スンダウパスンダを破滅させるために天界の工匠神ヴィシュヴァカルマンによって創造された。

ティローッタマーとスンダ・ウパスンダの物語は、インドラ神の身体に千眼が生まれ、シヴァ神が四面になった由来譚を含んでいるほか[1]、『マハーバーラタ』ではパーンダヴァ5兄弟に対する教訓譚となっている。『ヴィシュヌ・プラーナ』(2・8)によると、ティローッタマーは太陽神スーリヤの馬車に同乗する12のアプサラスの1人とされている[2]

神話

『マハーバーラタ』によると、アスラ族のスンダとウパスンダが三界を征服したために、神々は三界の支配権を失った[3]。そこで三界奪還に向けてブラフマー神は工匠神ヴィシュヴァカルマンに絶世の美女を創造するよう命じた。ヴィシュヴァカルマンは世界中から宝物を集め、それらの宝物からさらに美しい部分だけを少しずつ集め、それらを合わせてあらゆる点で完璧な美を備えた1人のアプサラスを創造した。彼女は宝物のブラフマー神からティローッタマーという名前を授かった。ティローッタマーが誕生したとき、その場にいたどんな聖仙、神々もティローッタマーから視線をそらすことができなかった。シヴァ神はティロッタマーを見たいという誘惑に勝てず、彼女がシヴァ神の周りを回ったときに4つの顔が生じて彼女の動きを追ったという。同様にインドラ神は呪いによって体中に貼り付けられた千の陰部が千の目へと変化したとされる[1][注釈 1]。兄弟の1人アルジュナが各地を放浪したのはこの協定に違反したためである。

ブラフマー神はティローッタマーにスンダとウパスンダを誘惑して兄弟の仲を裂くように命じた[1]。そこでティローッタマーがスンダとウパスンダのところにいくと、2人はすぐにその美しさに魅了され、どちらがティローッタマーを妻とするかで争いとなった。2人は怒り狂って互いに棍棒で殴りあい、死闘を繰り広げた。こうしてスンダとウパスンダの支配を自滅へと追い込むことに成功した[4]

このエピソードは聖仙ナラーダパーンダヴァ5兄弟に対する教訓譚として語っている[5]。スンダとウパスンダがティローッタマーを巡って争ったように、彼らが妻ドラウパディーを巡って争わないようにするためである[注釈 2]。この話を聞いたパーンダヴァはナラーダの勧めに従い、兄弟の夫婦の生活に関する協定を定めた[4]

脚注

注釈

  1. ^ このためインドラはサハスラークシャ Sahasrākṣa 「千眼者」の別名を持つ(菅沼晃編『インド神話伝説辞典』P.154)。
  2. ^ パーンダヴァ5兄弟は5人で1人の妻ドラウパディーを共有していた。

脚注

  1. ^ a b c 『マハーバーラタ』1巻203章。
  2. ^ 菅沼晃編『インド神話伝説辞典』P.193。
  3. ^ 『マハーバーラタ』1巻202章。
  4. ^ a b 『マハーバーラタ』1巻204章。
  5. ^ 『マハーバーラタ』1巻200章-204章。

参考文献

関連項目