「ピーター・ティール」の版間の差分
編集の要約なし |
編集の要約なし |
||
19行目: | 19行目: | ||
[[西ドイツ]]のフランクフルトに生まれる。1歳のときに家族とともにアメリカに移住。少年時代は[[アフリカ]]で過ごしていたこともある。[[スタンフォード大学]]で[[哲学]]を学び、[[学士(教養)|B.A.]]の[[学位]]を取得。その後[[スタンフォード・ロー・スクール]]に進学し、[[1992年]]に[[法務博士(専門職)|法務博士]]の学位を取得する。卒業後、[[アメリカ合衆国連邦裁判所#控訴裁判所|連邦控訴裁判所]]で法務事務官、[[ニューヨーク]]の法律事務所サリヴァン&クロムウェルで証券弁護士、[[ウィリアム・ジョン・ベネット]][[アメリカ合衆国教育長官|教育長官]]のスピーチライター、[[クレディ・スイス]]で[[デリバティブ]]の[[トレーダー]]として働く。[[1996年]]にティール・キャピタル・マネジメントを設立。[[1998年]]にはPayPalを共同設立し、[[2002年]]に15億ドルで[[eBay]]に売却するまで[[最高経営責任者]]を務めた。 |
[[西ドイツ]]のフランクフルトに生まれる。1歳のときに家族とともにアメリカに移住。少年時代は[[アフリカ]]で過ごしていたこともある。[[スタンフォード大学]]で[[哲学]]を学び、[[学士(教養)|B.A.]]の[[学位]]を取得。その後[[スタンフォード・ロー・スクール]]に進学し、[[1992年]]に[[法務博士(専門職)|法務博士]]の学位を取得する。卒業後、[[アメリカ合衆国連邦裁判所#控訴裁判所|連邦控訴裁判所]]で法務事務官、[[ニューヨーク]]の法律事務所サリヴァン&クロムウェルで証券弁護士、[[ウィリアム・ジョン・ベネット]][[アメリカ合衆国教育長官|教育長官]]のスピーチライター、[[クレディ・スイス]]で[[デリバティブ]]の[[トレーダー]]として働く。[[1996年]]にティール・キャピタル・マネジメントを設立。[[1998年]]にはPayPalを共同設立し、[[2002年]]に15億ドルで[[eBay]]に売却するまで[[最高経営責任者]]を務めた。 |
||
eBayがPayPalを買収した後、[[ヘッジファンド]]のクラリウム・キャピタル([[:en:Clarium Capital|Clarium Capital]])を設立。[[2004年]]、データ分析[[ソフトウェア]]企業パランティア([[:en:Palantir|Palantir]])を立ち上げ、現在までその会長を務める。同年、[[Facebook]]初の外部投資家になった。[[2012年]]に保有する株式の大半を売却したものの、現在でも同社の取締役として名を連ねている。複数の[[ベンチャーキャピタル]]も立ち上げており、[[2005年]]にはPayPalの創業メンバーだったケン・ハウェリー、ルーク・ノゼックとファウンダーズ・ファンド([[:en:Founders Fund|Founders Fund]])を、[[2010年]]にはバラー・ベンチャーズ([[:en:Valar Ventures|Valar Ventures]])を、2012年には |
eBayがPayPalを買収した後、[[ヘッジファンド]]のクラリウム・キャピタル([[:en:Clarium Capital|Clarium Capital]])を設立。[[2004年]]、データ分析[[ソフトウェア]]企業パランティア([[:en:Palantir|Palantir]])<ref>トールキン作品に登場する水晶[[パランティーア]]に由来する。</ref>を立ち上げ、現在までその会長を務める。同年、[[Facebook]]初の外部投資家になった。[[2012年]]に保有する株式の大半を売却したものの、現在でも同社の取締役として名を連ねている。複数の[[ベンチャーキャピタル]]も立ち上げており、[[2005年]]にはPayPalの創業メンバーだったケン・ハウェリー、ルーク・ノゼックとファウンダーズ・ファンド([[:en:Founders Fund|Founders Fund]])を、[[2010年]]にはバラー・ベンチャーズ([[:en:Valar Ventures|Valar Ventures]])を、2012年にはミスリル・キャピタル([[:en:Mithril Capital|Mithril Capital]])<ref>トールキン作品に登場する金属[[ミスリル]]に由来する。</ref>を共同設立している。バラー・ベンチャーズでは会長を務め、ミスリル・キャピタルでは投資委員会委員長を務めている。また、[[2015年]]から[[Yコンビネータ (企業)|Yコンビネータ]]のパートナーとして勤務している<ref>Jordan Novet, [http://venturebeat.com/2015/03/10/peter-thiel-becomes-a-part-time-partner-at-silicon-valleys-y-combinator/ Peter Thiel becomes a part-time partner at Silicon Valley’s Y Combinator], ''VentureBeat'' (March 10, 2015) </ref>。 |
||
慈善活動や政治的活動にも携わっている。ティール財団([[:en:Thiel Foundation|Thiel Foundation]])を通じてブレイクアウト・ラボ([[:en:Breakout Labs|Breakout Labs]])とティール・[[フェローシップ]]([[:en:Thiel Fellowship|Thiel Fellowship]])を運営し、エリーザー・ユドコウスキーが創設したMIRI(Machine Intelligence Research Institute)、寿命の延長や老化防止を目的とするメトセラ財団やSENS研究財団、海上国家建設を構想するシーステディング研究所、およびその他の投機的な研究をサポートしている。政治的にはリバタリアンとして知られ、スタンフォード大学時代に[[リバタリアニズム]]を主張する学生新聞『スタンフォード・レビュー(''[[:en:The Stanford Review|The Stanford Review]]'')』を創刊したこともある。『[[ゴーカー・メディア|ゴーカー]]』による[[ハルク・ホーガン]]のゴシップ記事を巡る裁判では、ホーガンに資金援助を行った。[[2016年]]11月には、[[ドナルド・トランプ]]の政権移行チームのメンバーとなった。 |
慈善活動や政治的活動にも携わっている。ティール財団([[:en:Thiel Foundation|Thiel Foundation]])を通じてブレイクアウト・ラボ([[:en:Breakout Labs|Breakout Labs]])とティール・[[フェローシップ]]([[:en:Thiel Fellowship|Thiel Fellowship]])を運営し、エリーザー・ユドコウスキーが創設したMIRI(Machine Intelligence Research Institute)、寿命の延長や老化防止を目的とするメトセラ財団やSENS研究財団、海上国家建設を構想するシーステディング研究所、およびその他の投機的な研究をサポートしている。政治的にはリバタリアンとして知られ、スタンフォード大学時代に[[リバタリアニズム]]を主張する学生新聞『スタンフォード・レビュー(''[[:en:The Stanford Review|The Stanford Review]]'')』を創刊したこともある。『[[ゴーカー・メディア|ゴーカー]]』による[[ハルク・ホーガン]]のゴシップ記事を巡る裁判では、ホーガンに資金援助を行った。[[2016年]]11月には、[[ドナルド・トランプ]]の政権移行チームのメンバーとなった。 |
||
25行目: | 25行目: | ||
== 経歴 == |
== 経歴 == |
||
=== 生い立ち === |
=== 生い立ち === |
||
1967年10月11日に西ドイツの[[フランクフルト・アム・マイン]]で父クラウスと母スザンヌとの間に生まれる<ref name="immigrant">Meghan O'Dea, [http://www.immigrantentrepreneurship.org/entry.php?rec=246 "Peter Thiel."], ''Immigrant Entrepreneurship: German-American Business Biographies, 1720 to the Present'', vol. 5, edited by R. Daniel Wadhwani. German Historical Institute. Last modified July 24, 2015.</ref><ref name="nndb.com">{{Cite news| url =http://www.nndb.com/people/030/000124655/ |title= Peter Thiel|publisher =NNDB |accessdate =December 9, 2016}}</ref>。1歳の時に家族とともにアメリカの[[オハイオ州]][[クリーブランド]]に移住。クラウスは最初その地で化学技術者として働いた。その後クラウスは複数の鉱山会社で働き、それに伴い転勤を繰り返したため、ピーターは7度にわたる小学校の転校を余儀なくされる。[[1977年]]に[[カリフォルニア州]][[フォスターシティ]]に定住する前、ピーターは家族とともに[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]やその[[委任統治|委任統治領]]である南西アフリカ(現[[ナミビア]])で暮らした。 |
1967年10月11日に西ドイツの[[フランクフルト・アム・マイン]]で父クラウスと母スザンヌとの間に生まれる<ref name="immigrant">Meghan O'Dea, [http://www.immigrantentrepreneurship.org/entry.php?rec=246 "Peter Thiel."], ''Immigrant Entrepreneurship: German-American Business Biographies, 1720 to the Present'', vol. 5, edited by R. Daniel Wadhwani. German Historical Institute. Last modified July 24, 2015.</ref><ref name="nndb.com">{{Cite news| url =http://www.nndb.com/people/030/000124655/ |title= Peter Thiel|publisher =NNDB |accessdate =December 9, 2016}}</ref>。1歳の時に家族とともにアメリカの[[オハイオ州]][[クリーブランド]]に移住。クラウスは最初その地で化学技術者として働いた。その後クラウスは複数の鉱山会社で働き、それに伴い転勤を繰り返したため、ピーターは7度にわたる小学校の転校を余儀なくされる。[[1977年]]に[[カリフォルニア州]][[サンマテオ郡]][[フォスターシティ]]に定住する前、ピーターは家族とともに[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]やその[[委任統治|委任統治領]]である南西アフリカ(現[[ナミビア]])で暮らした。 |
||
少年時代、ティールは[[チェス]]に熱中する。6歳でプレーを始め、[[1980年]]には13歳未満のアメリカ人チェス選手の7位にランクインした<ref name=contrarian>{{cite web|url=http://fortune.com/2014/09/04/peter-thiels-contrarian-strategy/|first=Roger|last=Parloff|title=Peter Thiel disagrees with you|website=[[Fortune (magazine)|Fortune]]|date=September 4, 2014|accessdate=December 9, 2016}}</ref>。ゲームでは他にも「[[ダンジョンズ&ドラゴンズ]]」をプレイした。また、[[サイエンス・フィクション]]を愛読する。好きな作家は[[アイザック・アシモフ]]と[[ロバート・A・ハインライン]]だった。[[J・R・R・トールキン]]作品のファンでもあり、『[[指輪物語]]』は10回以上読んだという<ref name="immigrant"/><ref name=Brown2014>{{cite news|last1=Brown|first1=Mick|title=Peter Thiel: the billionaire tech entrepreneur on a mission to cheat death|url=http://www.telegraph.co.uk/technology/11098971/Peter-Thiel-the-billionaire-tech-entrepreneur-on-a-mission-to-cheat-death.html|work=[[The Daily Telegraph]]|date=September 19, 2014|accessdate=December 9, 2016}}</ref>。 |
少年時代、ティールは[[チェス]]に熱中する。6歳でプレーを始め、[[1980年]]には13歳未満のアメリカ人チェス選手の7位にランクインした<ref name=contrarian>{{cite web|url=http://fortune.com/2014/09/04/peter-thiels-contrarian-strategy/|first=Roger|last=Parloff|title=Peter Thiel disagrees with you|website=[[Fortune (magazine)|Fortune]]|date=September 4, 2014|accessdate=December 9, 2016}}</ref>。ゲームでは他にも「[[ダンジョンズ&ドラゴンズ]]」をプレイした。また、[[サイエンス・フィクション]]を愛読する。好きな作家は[[アイザック・アシモフ]]と[[ロバート・A・ハインライン]]だった。[[J・R・R・トールキン]]作品のファンでもあり、『[[指輪物語]]』は10回以上読んだという<ref name="immigrant"/><ref name=Brown2014>{{cite news|last1=Brown|first1=Mick|title=Peter Thiel: the billionaire tech entrepreneur on a mission to cheat death|url=http://www.telegraph.co.uk/technology/11098971/Peter-Thiel-the-billionaire-tech-entrepreneur-on-a-mission-to-cheat-death.html|work=[[The Daily Telegraph]]|date=September 19, 2014|accessdate=December 9, 2016}}</ref>。 |
||
36行目: | 36行目: | ||
ティールは[[1989年]]に学士号を取得してスタンフォード大学を卒業する。その後スタンフォード・ロー・スクールに進学し、1992年に法務博士号を取得した。 |
ティールは[[1989年]]に学士号を取得してスタンフォード大学を卒業する。その後スタンフォード・ロー・スクールに進学し、1992年に法務博士号を取得した。 |
||
スタンフォード時代に[[ルネ・ジラール]]の講義を受けたティールは、そのジラールから大きな影響を受けている<ref>{{cite web|url=http://businessinsider.com/peter-thiel-on-rene-girards-influence-2014-11|first=Richard|last=Feloni|title=Peter Thiel explains how an esoteric philosophy book shaped his worldview|website=[[Business Insider]]|date=November 10, 2014|accessdate=December 11, 2016}}</ref>。ジラールによると、人間の欲望は他者 |
スタンフォード時代に[[ルネ・ジラール]]の講義を受けたティールは、そのジラールから大きな影響を受けている<ref>{{cite web|url=http://businessinsider.com/peter-thiel-on-rene-girards-influence-2014-11|first=Richard|last=Feloni|title=Peter Thiel explains how an esoteric philosophy book shaped his worldview|website=[[Business Insider]]|date=November 10, 2014|accessdate=December 11, 2016}}</ref>。ジラールによると、人間の欲望は他者による対象への欲望を[[模倣]]([[ミメーシス]])するという性格を持っており、こうした模倣は無意味な競争を引き起こす。また、競争はいったんそれ自体が目的となると進歩を抑制してしまうとジラールは主張した。このようなジラールの考えをティールはビジネスと私生活に応用している。ティールは、我々は競争すること自体に気を取られてしまう結果、世界で重要な、超越的な、あるいは本当に意味のあるものを見失ってしまうと述べている<ref>{{cite web|url=http://businessinsider.com/peter-thiel-advice-to-younger-self-2015-2|first=Drake|last=Baer|title=Here's the advice billionaire investor Peter Thiel wishes he could've given his younger self|website=[[Business Insider]]|date=February 4, 2015|accessdate=December 11, 2016}}</ref>。 |
||
{{節stub}} |
{{節stub}} |
||
58行目: | 58行目: | ||
[[Category:アメリカ合衆国の投資家]] |
[[Category:アメリカ合衆国の投資家]] |
||
[[Category:ゲイの人物]] |
[[Category:ゲイの人物]] |
||
[[Category:サンマテオ出身の人物]] |
|||
[[Category:スタンフォード大学出身の人物]] |
[[Category:スタンフォード大学出身の人物]] |
||
[[Category:ドイツ系アメリカ人]] |
[[Category:ドイツ系アメリカ人]] |
||
64行目: | 65行目: | ||
[[Category:フランクフルト・アム・マイン出身の人物]] |
[[Category:フランクフルト・アム・マイン出身の人物]] |
||
[[Category:リバタリアン]] |
[[Category:リバタリアン]] |
||
[[Category:Facebook]] |
2016年12月10日 (土) 21:22時点における版
ピーター・ティール Peter Thiel | |
---|---|
![]() | |
生誕 |
1967年10月11日(56歳)![]() フランクフルト・アム・マイン |
国籍 |
![]() |
出身校 |
スタンフォード大学 スタンフォード・ロー・スクール |
職業 | 起業家、投資家 |
純資産 |
![]() |
肩書き |
クラリウム・キャピタル 社長 パランティア 会長 Facebook 取締役 ファウンダーズ・ファンド パートナー バラー・ベンチャーズ 会長 ミスリル・キャピタル 投資委員会委員長 Yコンビネータ パートナー |
政党 |
リバタリアン党(2016年以前) 共和党(2016年 - )[1] |
ピーター・アンドレアス・ティール(Peter Andreas Thiel、1967年10月11日 - )は、アメリカ合衆国の起業家、投資家。PayPal(ペイパル)の創業者。シリコンバレーで大きな影響力を持つ「ペイパル・マフィア」の中でも「ドン」と称される[2]。
概要
西ドイツのフランクフルトに生まれる。1歳のときに家族とともにアメリカに移住。少年時代はアフリカで過ごしていたこともある。スタンフォード大学で哲学を学び、B.A.の学位を取得。その後スタンフォード・ロー・スクールに進学し、1992年に法務博士の学位を取得する。卒業後、連邦控訴裁判所で法務事務官、ニューヨークの法律事務所サリヴァン&クロムウェルで証券弁護士、ウィリアム・ジョン・ベネット教育長官のスピーチライター、クレディ・スイスでデリバティブのトレーダーとして働く。1996年にティール・キャピタル・マネジメントを設立。1998年にはPayPalを共同設立し、2002年に15億ドルでeBayに売却するまで最高経営責任者を務めた。
eBayがPayPalを買収した後、ヘッジファンドのクラリウム・キャピタル(Clarium Capital)を設立。2004年、データ分析ソフトウェア企業パランティア(Palantir)[3]を立ち上げ、現在までその会長を務める。同年、Facebook初の外部投資家になった。2012年に保有する株式の大半を売却したものの、現在でも同社の取締役として名を連ねている。複数のベンチャーキャピタルも立ち上げており、2005年にはPayPalの創業メンバーだったケン・ハウェリー、ルーク・ノゼックとファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)を、2010年にはバラー・ベンチャーズ(Valar Ventures)を、2012年にはミスリル・キャピタル(Mithril Capital)[4]を共同設立している。バラー・ベンチャーズでは会長を務め、ミスリル・キャピタルでは投資委員会委員長を務めている。また、2015年からYコンビネータのパートナーとして勤務している[5]。
慈善活動や政治的活動にも携わっている。ティール財団(Thiel Foundation)を通じてブレイクアウト・ラボ(Breakout Labs)とティール・フェローシップ(Thiel Fellowship)を運営し、エリーザー・ユドコウスキーが創設したMIRI(Machine Intelligence Research Institute)、寿命の延長や老化防止を目的とするメトセラ財団やSENS研究財団、海上国家建設を構想するシーステディング研究所、およびその他の投機的な研究をサポートしている。政治的にはリバタリアンとして知られ、スタンフォード大学時代にリバタリアニズムを主張する学生新聞『スタンフォード・レビュー(The Stanford Review)』を創刊したこともある。『ゴーカー』によるハルク・ホーガンのゴシップ記事を巡る裁判では、ホーガンに資金援助を行った。2016年11月には、ドナルド・トランプの政権移行チームのメンバーとなった。
経歴
生い立ち
1967年10月11日に西ドイツのフランクフルト・アム・マインで父クラウスと母スザンヌとの間に生まれる[6][7]。1歳の時に家族とともにアメリカのオハイオ州クリーブランドに移住。クラウスは最初その地で化学技術者として働いた。その後クラウスは複数の鉱山会社で働き、それに伴い転勤を繰り返したため、ピーターは7度にわたる小学校の転校を余儀なくされる。1977年にカリフォルニア州サンマテオ郡フォスターシティに定住する前、ピーターは家族とともに南アフリカやその委任統治領である南西アフリカ(現ナミビア)で暮らした。
少年時代、ティールはチェスに熱中する。6歳でプレーを始め、1980年には13歳未満のアメリカ人チェス選手の7位にランクインした[8]。ゲームでは他にも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をプレイした。また、サイエンス・フィクションを愛読する。好きな作家はアイザック・アシモフとロバート・A・ハインラインだった。J・R・R・トールキン作品のファンでもあり、『指輪物語』は10回以上読んだという[6][9]。
教育
中学時代、ティールは数学に秀でており、カリフォルニア州全域の数学テストで1位を獲得したこともある[8]。高校でも優秀な成績を収め、卒業式では総代を務めた[10]。政治的傾向はすでに保守的で、当時のロナルド・レーガン政権の楽観主義と反共主義を支持していた[8]。
高校卒業後、スタンフォード大学で哲学を学ぶ。当時のスタンフォードではアイデンティティ政治とポリティカル・コレクトネスに関する議論が活発だった。「西洋文化」プログラムは、過度に西洋中心主義的であるとの批判を受けて、多様性と多文化主義を押し進める「文化・思想・価値」コースに取って代えられた。この取り組みはキャンパスでの論争を引き起こしたが、アイン・ランドの作品を愛読する[9]など保守的でリバタリアン的な思想を強めていたティールが保守系の学生新聞『スタンフォード・レビュー』を1987年に創刊するきっかけとなった。
ティールは1989年に学士号を取得してスタンフォード大学を卒業する。その後スタンフォード・ロー・スクールに進学し、1992年に法務博士号を取得した。
スタンフォード時代にルネ・ジラールの講義を受けたティールは、そのジラールから大きな影響を受けている[11]。ジラールによると、人間の欲望は他者による対象への欲望を模倣(ミメーシス)するという性格を持っており、こうした模倣は無意味な競争を引き起こす。また、競争はいったんそれ自体が目的となると進歩を抑制してしまうとジラールは主張した。このようなジラールの考えをティールはビジネスと私生活に応用している。ティールは、我々は競争すること自体に気を取られてしまう結果、世界で重要な、超越的な、あるいは本当に意味のあるものを見失ってしまうと述べている[12]。
![]() | この節の加筆が望まれています。 |
政治的見解・活動
2016年5月に、アメリカ大統領候補ドナルド・トランプを支持する代議員リストに名前が登載されていることが明らかになった。その当時トランプ支持を公言するテクノロジー業界の大物は他に皆無だったが、ティールは批判も恐れず支援した。その甲斐あって11月には政権移行チームのメンバーに選任された。科学技術分野の他、財務省、商務省、国防省の人事に一定の影響力を及ぼすものと見られる。トランプ支持の動機としては、これまでの政府の機能不全と間違った戦争を支持していたヒラリー・クリントンには大統領の資格がないということを挙げていた。戦争はもとより社会というものの存在にも懐疑的であり、競争や競合とは共産主義の概念だとし、同じものを奪い合ったりせずに上手く棲み分けられるような良い意味での独占を目指すべきだと主張。ティールには、世間の常識に挑み、金儲けのためだけでなく、人類を進化させうる本物の技術に投資すべきという考えが根底にある。
脚注
- ^ Christine Mai-Duc, Silicon Valley tech mogul Peter Thiel to make history as he declares he's proud to be gay on the RNC stage, Los Angeles Times (July 22, 2016)
- ^ O'Brien, Jeffrey M. (2007年11月13日). “The PayPal Mafia”. Forbes. 2016年12月11日閲覧。
- ^ トールキン作品に登場する水晶パランティーアに由来する。
- ^ トールキン作品に登場する金属ミスリルに由来する。
- ^ Jordan Novet, Peter Thiel becomes a part-time partner at Silicon Valley’s Y Combinator, VentureBeat (March 10, 2015)
- ^ a b Meghan O'Dea, "Peter Thiel.", Immigrant Entrepreneurship: German-American Business Biographies, 1720 to the Present, vol. 5, edited by R. Daniel Wadhwani. German Historical Institute. Last modified July 24, 2015.
- ^ “Peter Thiel”. NNDB 2016年12月9日閲覧。
- ^ a b c Parloff, Roger (2014年9月4日). “Peter Thiel disagrees with you”. Fortune. 2016年12月9日閲覧。
- ^ a b Brown, Mick (2014年9月19日). “Peter Thiel: the billionaire tech entrepreneur on a mission to cheat death”. The Daily Telegraph 2016年12月9日閲覧。
- ^ Bustillos, Maria (2016年5月27日). “Peter Thiel Isn’t a Supervillain”. Business Insider. 2016年12月11日閲覧。
- ^ Feloni, Richard (2014年11月10日). “Peter Thiel explains how an esoteric philosophy book shaped his worldview”. Business Insider. 2016年12月11日閲覧。
- ^ Baer, Drake (2015年2月4日). “Here's the advice billionaire investor Peter Thiel wishes he could've given his younger self”. Business Insider. 2016年12月11日閲覧。
外部リンク
- Thiel Fellowship (@thielfellowship) - X(旧Twitter)
- Founders Fund (@foundersfund) - X(旧Twitter)