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「コンチネンタル・タンゴ」の版間の差分

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*『碧空(あおぞら){{lang-de-short|Blauer Himmel}}』({{仮リンク|ヨゼフ・リクスナー|de|Josef Rixner}}作曲・ドイツ)<ref>{{YouTube|TcXcH21F-sQ|碧 空 BLAUER HIMMEL アルフレッド・ハウゼ楽団 UPG‐0141}}</ref>
*『碧空(あおぞら){{lang-de-short|Blauer Himmel}}』({{仮リンク|ヨゼフ・リクスナー|de|Josef Rixner}}作曲・ドイツ)<ref>{{YouTube|TcXcH21F-sQ|碧 空 BLAUER HIMMEL アルフレッド・ハウゼ楽団 UPG‐0141}}</ref>
*『イタリーの庭 A GARDEN IN ITALY』(作詞 A.Valentine、{{仮リンク|ラルフ・アーリン|de|Ralph Erwin}}作曲<ref group="注">原題は''{{lang|de|Frühlingstraum}}''</ref><ref>{{YouTube|PVroG0AMHHQ|イタリーの庭 (アルフレッド・ハウゼ)}}</ref>・ドイツ)
*『イタリーの庭 A GARDEN IN ITALY』(作詞 A.Valentine、{{仮リンク|ラルフ・アーリン|de|Ralph Erwin}}作曲<ref group="注">原題は''{{lang|de|Frühlingstraum}}''</ref><ref>{{YouTube|PVroG0AMHHQ|イタリーの庭 (アルフレッド・ハウゼ)}}</ref>・ドイツ)
[[リカルド・サントス]]楽団のヒットナンバーには以下の作品がある。
*[[真珠採りのタンゴ]]


==参考文献==
==参考文献==

2017年2月11日 (土) 00:49時点における版

コンチネンタル・タンゴとはドイツフランスイタリアといったヨーロッパで作曲、もしくは演奏されるタンゴのスタイル[1][注 1]ヨーロッパ・タンゴと呼ばれることもある[1][2]

概要

ヨーロッパで起こっていたタンゴとラプラタ川流域のタンゴの音盤を選り分けるために、この名称が用いられている。[注 2][3][4][5][6]

ブエノスアイレスモンテビデオ近辺のラ・プラタ川流域で1880年ごろに生まれたとされるアルゼンチン・タンゴが、1910年代にヨーロッパ大陸とアメリカ大陸に輸入された。1910年代にフィンランド[7][8]ロシアへ伝わり、1920年代にはポーランドドイツ[9]チロルへ伝わった。フランスでは1910年代から流行したことが確認されている[10]ドイツの流行は1930年代だったことがフアン・ジョサスドイツ語版[注 3]の活動からわかる。デンマークでは、[11]1925年ヤコブ・ゲーゼ作曲ジェラシーがヒットしたことにより、1920年代から北欧タンゴの伝統が始まった。

コンチネンタル・タンゴはジャーマン・タンゴロシアン・タンゴフィニッシュ・タンゴフレンチ・タンゴチロル・タンゴダッチ・タンゴデニッシュ・タンゴなど多くの各国の支流を内包しており(アメリカン・タンゴを含めることもある[注 4])、マランド楽団はダッチ・タンゴアルフレッド・ハウゼ楽団はジャーマン・タンゴで、タニ・スカラ楽団はフレンチ・タンゴである。ルロイ・アンダーソンビルボードチャート一位に輝いたブルー・タンゴアメリカン・タンゴのヒット作であったし、アルフレッド・ハウゼ楽団もこれを録音した。

ヨーロッパで広く演奏される楽器編成に合わせるために、バンドネオンの利用が強制ではなく、アコーディオン弦五部[12]などに代用されている場合がある。「8分音符3つに、16分音符2つ」といった有名なリズムパターン[注 5]も、実はコンチネンタル・タンゴ発祥のものであり、アルゼンチン・タンゴでこのようなパターンは採用されていない。楽器編成はアコーディオンのみならず、クラリネットドラムスフルートサックス木琴[注 6]も用いられるため、一種のムード音楽[13]としての用途と捉えられる。

タニ・スカラ楽団のように、フレンチ・タンゴとアルゼンチン・タンゴの両刀使い[注 7]のような趣の楽団もあった。フアン・ジョサス楽団は、ジャーマン・タンゴにアルゼンチン・タンゴを掛け合わせた異色の楽団であったが、ジョサスはスペイン生まれである。ジョサスは、タンゴがもともと18世紀に誕生したイベリア半島生まれの舞曲であることをキャッチコピーとして利用したうえで、ヨーロッパ大陸で広く活躍していた。

第二次世界大戦終了後にいくつかの楽団がヨーロッパで倒れ、1980年代以降はアルフレッド・ハウゼ楽団レヴェルの著名度がないと活動がひどく困難になった。1965年以降日本を拠点にしていたアルフレッド・ハウゼ楽団も1989年に日本ポリドールレコードとの活動を終了し世代交代した。[注 8]2010年代現在も活躍している楽団は世代交代で延命したマランドのようにあるが、解散あるいは活動休止した楽団も多い。コンチネンタル・タンゴ楽団としてのポリシーで活動する楽団は非常に少なくなってしまっており、コンチネンタル・タンゴをレパートリーに加えた楽団という形で生き延びた楽団が多い。

特徴

コンチネンタル・タンゴの特徴へ「これ」という明確な証拠を与えた書物は存在せず、どの文献でも明快な定義はされていない。

  • コード進行は1940年代以降のアルゼンチン・タンゴよりも、単純化及び規格化されている。古典タンゴ[注 9]の進行のまま凍ったと言える。名人芸も用いられない。
  • バンドネオンバリアシオンは存在しない。[注 10][14]アクセント付けには、マリンバやタンブリン[15]などが利用されることがある。
  • 1940年代以降のアルゼンチン・タンゴにみられるようなタイプを後継した楽団は、ほとんどみつからない。[注 11]
  • 音楽評論家の岡田寛はアルゼンチン・タンゴとコンチネンタル・タンゴの差異を「せいぜい4分の2拍子が8分の4拍子になっただけのこと」と述べている[16]

日本の受容

日本ではアルゼンチン・タンゴよりも後発であるコンチネンタル・タンゴが早く伝わっている[16]。1920年代前半から1930年代にかけて親しまれた[1][注 12]。通常「タンゴのリズム」を思い浮かべる場合には、8分の4拍子(8分音符3つと16分音符2つ)が多く、これはコンチネンタル・タンゴのリズムの刻み方である[16]カタカナ語で「コンチネンタル・タンゴ」と呼ばれているものは1910年代から1920年代にアルゼンチン・タンゴがパリに紹介され、パリの音楽家たちが、そのリズムをまねて作った楽曲である[10][注 13]

日本タンゴアカデミーを含むかつての多くの硬派のオールド・ファンは言及するのも嫌、といった具合であった。しかし、一般大衆からの需要は高く、アルフレッド・ハウゼ楽団[17]マランド楽団[18]は来日を果たして、LPも日本で販売できた。日本は戦前からタンゴが知られており、一世を風靡したキユーピー・バックグラウンド・ミュージックも開始のBGMアルフレッド・ハウゼ楽団のミリタリー・タンゴ[19]を長期間用いていたこともあって、多くの日本人ならコンチネンタル・タンゴを連想する土壌はすでに生まれていた。かつての昭和時代のレコード屋の棚は「アルゼンチン・タンゴ」と「コンチネンタル・タンゴ」の二つしかなかった。

著名な楽団

海外

日本

代表的な楽曲

世界大百科事典中村とうようは以下の3曲を挙げている[1]

リカルド・サントス楽団のヒットナンバーには以下の作品がある。

参考文献

  • Nelson, Tom (2009) (英語). Tango and Related Dances. AuthorHouse. ISBN 9781449006013 
  • Cooper, Artemis (1995) (英語). Tango!: The Dance, the Song, the Story. Thames & Hudson. ISBN 9780500016718 
  • 大岩祥浩、島崎長次郎、中島栄司『タンゴ入門』音楽之友社、1965年。 
  • タンゴの歴史 edinburgh tango societyホームページから。
  • Kate Molleson's“Mr McFall’s Polish tango

脚注

注釈

  1. ^ 世界大百科事典第2版の表記は、なぜかコンティネンタル・タンゴとティ表記を採用しているが、ポリドールはアルフレッド・ハウゼ楽団のアナログ盤発売当初からコンチネンタル・タンゴ表記のまま崩しておらず、多くのタンゴ関連文献にもティ表記がほとんど見られないことから、JAWPではコンチネンタル・タンゴ表記で一貫させている。
  2. ^ ’’コンチネンタル・タンゴのすべて アルフレッド・ハウゼ楽団 ポリドール 発売元:日本グラモフォン発売会社 通常版MP-9001(1~2) , 特別来日記念版SMP-9001(1~2)’’は2枚組LPで、これまでのヒットナンバー28曲をSPから1964年に初来日記念のため復刻しており、これが「コンチネンタル・タンゴ」が商品に用いられて日本に普及したいちばん有名な例である。
  3. ^ Original Spanisch-Argentinische Tangokapelle Juan Llossas1929年結成、1940年活動終了。
  4. ^ Nelson 2009, pp.6.151では、アメリカン・タンゴとコンチネンタル・タンゴを区別している。
  5. ^ このパターンはアメリカン・タンゴでも踏襲されており、ルロイ・アンダーソンブルー・タンゴでも採用された。
  6. ^ バスクラリネットやバリトンサックスまで使用する原信夫とシャープスアンドフラッツはその典型例。
  7. ^ クラシックからの引用を多く含む点はオスマル・マデルナ楽団と似る。
  8. ^ 2015年には6年ぶりに来日したが、マスターと楽団員の多くは当然入れ替わった。
  9. ^ 1960年代以後も古典タンゴのコード進行にこだわったアルフレド・デ・アンジェリスのような人物もいるが、原則的には1940年代からは豊麗な和声と楽団ごとのアタックでタンゴが変わったと認識されている。
  10. ^ ただし、バンドネオンが完全になくなったわけではないので、アコーディオンとバンドネオンが並置されているのがアルフレッド・ハウゼ楽団である。
  11. ^ マランドは、メンバーチェンジで楽団を延命させている。これがアルゼンチン・タンゴだと、コロール・タンゴ(プグリエーセ後継)、ラ・ファン・ダリエンソ(ダリエンソ後継)、オルケスタ・ティピカ・パンパ(ダリエンソ後継)、オルケスタ・ティピカ・ヘンテ・デ・タンゴ(ディ・サルリ後継)、リシャール・ガリアーノ六重奏団(ピアソラ後継指名)などたくさんの後継楽団が見つかる。
  12. ^ これ以後も黒ネコのタンゴだんご三兄弟だんご大家族などコンチネンタル・タンゴ発祥の楽曲はあるので、1920-30年代の流行のみとは言えない。
  13. ^ 一方ドイツではTanzorchesterの名前でタンゴを多く演奏していた。
  14. ^ 原題はFrühlingstraum

出典

  1. ^ a b c d 中村とうよう (1998年10月). 世界大百科事典 第2版 コンティネンタル・タンゴ. https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8D%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AB%EF%BD%A5%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B4-1167813#E4.B8.96.E7.95.8C.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E4.BA.8B.E5.85.B8.20.E7.AC.AC.EF.BC.92.E7.89.88 2017年2月8日閲覧。 
  2. ^ 外部リンク、www.jomo-news.co.jpからのアーカイブ、2017年2月8日 13:40:58 UTC閲覧。
  3. ^ 外部リンク、images-na.ssl-images-amazon.comからのアーカイブ、2017年2月9日 16:46:15 UTC閲覧。
  4. ^ 外部リンク、webcache.googleusercontent.comからのアーカイブ、2017年2月10日 02:17 JST閲覧。
  5. ^ 外部リンク、auctions.c.yimg.jpからのアーカイブ、2017年2月10日 01:52 JST閲覧。
  6. ^ 外部リンク、auctions.c.yimg.jpからのアーカイブ、2017年2月10日 01:55 JST閲覧。
  7. ^ 外部リンク、webcache.googleusercontent.comからのアーカイブ、11 Feb 2017 00:05:33 UTC閲覧。
  8. ^ 外部リンク(webcache.googleusercontent.comからのアーカイブ, pp.272, 10 Feb 2017 20:28:53 UTC閲覧)には、A Finnish version of tango developed soon after, championed by the composer Unto Mononen and Olavi Virta, the Finnish king of tango とあることから、第二次世界大戦前にはすでにフィンランドでタンゴのマエストロがいたことが確認できる。
  9. ^ 外部リンク webcache.googleusercontent.comからのアーカイブ、2017年2月10日 20:49:52 UTC閲覧。
  10. ^ a b c d 由比邦子 (1998年10月). 世界大百科事典 第2版 タンゴ. https://kotobank.jp/word/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B4-94990#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29 2017年2月8日閲覧。 
  11. ^ 外部リンク、www.tangojalousie.dkからのアーカイブ、2015年1月6日 17:56:17 UTC閲覧
  12. ^ 外部リンク、webcache.googleusercontent.comからのアーカイブ、10 Feb 2017 07:40:32 UTC閲覧。
  13. ^ 𠮷田正記念オーケストラ日本唯一のムードオーケストラと公式に名乗っている。2017年3月11日の掛川市文化会館シオーネ大ホール公演コンサートチラシ裏面より。
  14. ^ 外部リンクの音源でも明らかなように、バリアシオンは全くなく終止へ向かう。
  15. ^ ゲルハルト・ベーレン楽団の「黒い瞳」
  16. ^ a b c 岡田寛. “タンゴの話 68 <続・コンチネンタルタンゴをどうぞ!>”. 西日本放送ラジオ. 2017年2月8日閲覧。
  17. ^ 外部リンク auctions.c.yimg.jpからのアーカイブ、2017年2月10日 01:55 JST閲覧。
  18. ^ 外部リンク www.hyogo-wel.or.jpからのアーカイブ、10 Feb 2017 19:39:05 UTC閲覧。
  19. ^ 最終回の放送 - Youtube
  20. ^ マランドオランダ語版
  21. ^ 外部リンク、images-na.ssl-images-amazon.comからのアーカイブ、10 Feb 2017 07:44:21 UTC閲覧。
  22. ^ ジェラシー JALOUSIE アルフレッド・ハウゼ楽団 UPG‐0140 - YouTube
  23. ^ 碧 空 BLAUER HIMMEL アルフレッド・ハウゼ楽団 UPG‐0141 - YouTube
  24. ^ イタリーの庭 (アルフレッド・ハウゼ) - YouTube