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「低血糖症」の版間の差分

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'''低血糖症'''(ていけっとうしょう)(hypoglycemia)とは、[[血糖値]]が低くなる状態である<ref>{{cite web |url=http://mymed.jp/di/b29.html |title=MyMED 低血糖症 |accessdate=2015-01-15}}</ref>。
== 定義 ==
低血糖症は緊急疾患の可能性があるため通常は血糖値が70mg/dl未満の場合は低血糖症に準じた対応をする。しかし厳密には血糖値が低いだけでは低血糖症と診断するべきではなく交感神経刺激症状や中枢神経症状が存在し、かつ血糖値が60~70mg/dlの時を低血糖症という。

== 症状 ==
低血糖症の症状には[[交感神経]]症状と中枢神経症状の2種類が知られている。交感神経症状は低血糖時に分泌される[[カテコールアミン]]等による症状で、発汗、動悸、手の震えなどの症状である。中枢神経症状はブドウ糖欠乏による中枢神経のエネルギー不足を反映した症状である。血糖値が50mg/dl以下になると[[眠気]]、脱力、集中力低下などの症状が出現する。血糖値が30mg/dl以下になると[[痙攣]]、[[昏睡]]になり、対応が遅れると意識が戻らないこともある。交感神経刺激症状が出現する血糖閾値は中枢神経症状の閾値に比べて高いため、中枢神経症状症状出現前に交感神経刺激症状を認めるのが一般的である。しかし高齢者や自律神経障害のある患者、低血糖を繰り返している場合や乳幼児では交感神経症状が出ないでいきなり昏睡に至ることがある。これを'''無自覚低血糖'''という。また糖尿病治療薬のひとつであるSU薬は作用時間が長く、低血糖を起こしやすいので注意が必要である。

== 診断 ==
低血糖の治療は、血糖値の速やかな回復および原因疾患や病態に対する治療もしくは再発予防に区分される。頻度としては糖尿病治療に伴う低血糖が圧倒的に多い。作用時間の長いSU薬の場合は一度、血糖値が改善した後も低血糖を繰り返すことが多いため、繰り返すモニタリングが必要になる。

=== 原因疾患の鑑別 ===
血糖値の速やかな回復が行われた後に原因疾患の鑑別を行う。低血糖症の原因には糖尿病治療薬に伴う低血糖の他、[[インスリノーマ]]、'''反応性低血糖'''、薬剤性低血糖(複数の医療機関からの処方、相互作用、アルコール)、二次性低血糖(副腎不全、肝硬変、腎不全、先天性酵素異常など)、インスリンに対する抗体によるもの([[インスリン自己免疫症候群]]など)、外因性インスリンによる低血糖(詐病、虚偽性障害を含める)、膵外性腫瘍などがあげられる。

低血糖症が疑われたらまずは薬剤性低血糖症の鑑別が必要となる。まずは糖尿病治療薬の副作用を疑う。糖尿病治療薬以外に低血糖を起こし得る薬物は多彩であり、[[降圧薬]]、[[利尿薬]]、[[NSAIDs]]や[[睡眠薬]]、向精神薬、[[抗不整脈薬]]、消化性潰瘍治療薬、[[抗菌薬]]、[[抗ヒスタミン薬]]、全身麻酔薬、気管支拡張薬、抗がん薬、血管拡張薬、[[抗てんかん薬]]、子宮用薬、パーキンソン病治療薬、抗血栓薬などがあげられる。単剤ではリスクが低い薬物でも相互作用の結果低血糖が生じることがある。薬剤性低血糖が否定された後に二次性低血糖の鑑別を行う。二次性低血糖は血糖を上昇させる機構の機能低下で起こる低血糖である。二次性低血糖ではインスリン分泌に抑制がかかるため、血中インスリン値および血中Cペプチド値は低値となる。二次性低血糖症も多彩であり、[[下垂体機能不全]]、[[成長ホルモン分泌不全症]]、[[ACTH単独欠損症]]、[[副腎不全]]、[[敗血症]]、腎不全、肝不全、うっ血性心不全、乳酸アシドーシス、飢餓状態、[[ショック]]、非β細胞腫瘍(IGF-1またはIGF-2産出腫瘍)、褐色細胞腫の切除後などがあげられる。
'''薬剤性、二次性低血糖症が鑑別された後に血中インスリンと血中Cペプチドの値により鑑別を進めていく。'''低血糖時に血中インスリンが高値にもかかわらず[[Cペプチド]]低値を認めた場合は[[インスリン自己免疫症候群]]とインスリン注射による低血糖症が疑われる。低血糖時に血中インスリン、血中Cペプチドともに高値を認めた場合、膵β細胞からの自律分泌が考えられる。成人ではインスリノーマが疑われる。インスリノーマが疑われた場合はCペプチド抑制試験および72時間絶食試験が用いられる。その他の原因としては反応性低血糖などがある。反応性低血糖は空腹時ではなく食後に低血糖がみられることが多い。胃切除後の反応性手血糖では食後30分から1時間の間に、2型糖尿病の初期の反応性低血糖では食後3時間から5時間後に低血糖症状がみとめられることが多い。

== 治療 ==
=== 血糖値の速やかな回復 ===
;意識障害がなく経口摂取が可能な場合
ブドウ糖を10~15gを服用させる(砂糖やジュースでも可能)。ブドウ糖服用後に5~10分たっても症状が改善しなければさらに追加服用させる。

;意識障害がある場合、または経口摂取が不可能な場合
[[グルカゴン]]を1mg1回筋注または静注する。これは肝硬変では無効である。次に10%ブドウ糖で血管確保し、50%ブドウ糖40mlを静注する。静注後5~10分たっても回復しない場合は、さらに40mlを静注する。次に10%ブドウ糖液500mlを点滴静注する。上記の処置を行っても回復せず、副腎不全や脳浮腫が疑われる場合は頭部CTスキャンをとり、以下の処置を行う。[[ヒドロコルチゾン]]を100~250mg静注または[[デキサメタゾン]]10mg静注および20%[[マンニトール]]200ml点滴静注する。

=== 原因別の治療法 ===
薬剤性の場合は投薬の変更、[[インスリノーマ]]の場合は手術療法、反応性低血糖の場合は食事を小分けにするといった方法で低血糖を改善できる。

==出典==
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== 参考文献 ==
*糖尿病診療ハンドブック ISBN 9784498123748
<!--低血糖症は血糖値が低くなる状態であるのは間違いないですが、機能性低血糖症と同義ではないと思います。出典先でもそのような定義をしていません。

'''低血糖症'''(ていけっとうしょう)(hypoglycemia)とは、[[血糖値]]が低くなる疾患である。糖尿病のインスリン注射で起こる低血糖と区別するため、正式には「機能性低血糖症」と呼ばれる。
'''低血糖症'''(ていけっとうしょう)(hypoglycemia)とは、[[血糖値]]が低くなる疾患である。糖尿病のインスリン注射で起こる低血糖と区別するため、正式には「機能性低血糖症」と呼ばれる。


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食事療法によって対処が求められるが、低血糖症にはアミノ酸のNアセチルLシステイン(別称:アセチルシステイン、またはNAC)の摂取によって安定が期待できる。メカニズムとしてはインシュリンのコントロール能力を上げる事により、低血糖はもとより血糖値の安定、糖尿病にも効果があることが最近の臨床実験によって解明されてきている。NACはアミノ酸の一種であり、他の食物とともに相乗効果が期待できるが、バランスの良い食事を抜きに効果はあまり現れない。
食事療法によって対処が求められるが、低血糖症にはアミノ酸のNアセチルLシステイン(別称:アセチルシステイン、またはNAC)の摂取によって安定が期待できる。メカニズムとしてはインシュリンのコントロール能力を上げる事により、低血糖はもとより血糖値の安定、糖尿病にも効果があることが最近の臨床実験によって解明されてきている。NACはアミノ酸の一種であり、他の食物とともに相乗効果が期待できるが、バランスの良い食事を抜きに効果はあまり現れない。


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==出典==
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[[Category:血液検査]]
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[[Category:内分泌学]]
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[[Category:救急医学]]
[[Category:糖尿病]]
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2017年4月9日 (日) 08:49時点における版

低血糖症(ていけっとうしょう)(hypoglycemia)とは、血糖値が低くなる状態である[1]

定義

低血糖症は緊急疾患の可能性があるため通常は血糖値が70mg/dl未満の場合は低血糖症に準じた対応をする。しかし厳密には血糖値が低いだけでは低血糖症と診断するべきではなく交感神経刺激症状や中枢神経症状が存在し、かつ血糖値が60~70mg/dlの時を低血糖症という。

症状

低血糖症の症状には交感神経症状と中枢神経症状の2種類が知られている。交感神経症状は低血糖時に分泌されるカテコールアミン等による症状で、発汗、動悸、手の震えなどの症状である。中枢神経症状はブドウ糖欠乏による中枢神経のエネルギー不足を反映した症状である。血糖値が50mg/dl以下になると眠気、脱力、集中力低下などの症状が出現する。血糖値が30mg/dl以下になると痙攣昏睡になり、対応が遅れると意識が戻らないこともある。交感神経刺激症状が出現する血糖閾値は中枢神経症状の閾値に比べて高いため、中枢神経症状症状出現前に交感神経刺激症状を認めるのが一般的である。しかし高齢者や自律神経障害のある患者、低血糖を繰り返している場合や乳幼児では交感神経症状が出ないでいきなり昏睡に至ることがある。これを無自覚低血糖という。また糖尿病治療薬のひとつであるSU薬は作用時間が長く、低血糖を起こしやすいので注意が必要である。

診断

低血糖の治療は、血糖値の速やかな回復および原因疾患や病態に対する治療もしくは再発予防に区分される。頻度としては糖尿病治療に伴う低血糖が圧倒的に多い。作用時間の長いSU薬の場合は一度、血糖値が改善した後も低血糖を繰り返すことが多いため、繰り返すモニタリングが必要になる。

原因疾患の鑑別

血糖値の速やかな回復が行われた後に原因疾患の鑑別を行う。低血糖症の原因には糖尿病治療薬に伴う低血糖の他、インスリノーマ反応性低血糖、薬剤性低血糖(複数の医療機関からの処方、相互作用、アルコール)、二次性低血糖(副腎不全、肝硬変、腎不全、先天性酵素異常など)、インスリンに対する抗体によるもの(インスリン自己免疫症候群など)、外因性インスリンによる低血糖(詐病、虚偽性障害を含める)、膵外性腫瘍などがあげられる。

低血糖症が疑われたらまずは薬剤性低血糖症の鑑別が必要となる。まずは糖尿病治療薬の副作用を疑う。糖尿病治療薬以外に低血糖を起こし得る薬物は多彩であり、降圧薬利尿薬NSAIDs睡眠薬、向精神薬、抗不整脈薬、消化性潰瘍治療薬、抗菌薬抗ヒスタミン薬、全身麻酔薬、気管支拡張薬、抗がん薬、血管拡張薬、抗てんかん薬、子宮用薬、パーキンソン病治療薬、抗血栓薬などがあげられる。単剤ではリスクが低い薬物でも相互作用の結果低血糖が生じることがある。薬剤性低血糖が否定された後に二次性低血糖の鑑別を行う。二次性低血糖は血糖を上昇させる機構の機能低下で起こる低血糖である。二次性低血糖ではインスリン分泌に抑制がかかるため、血中インスリン値および血中Cペプチド値は低値となる。二次性低血糖症も多彩であり、下垂体機能不全成長ホルモン分泌不全症ACTH単独欠損症副腎不全敗血症、腎不全、肝不全、うっ血性心不全、乳酸アシドーシス、飢餓状態、ショック、非β細胞腫瘍(IGF-1またはIGF-2産出腫瘍)、褐色細胞腫の切除後などがあげられる。 薬剤性、二次性低血糖症が鑑別された後に血中インスリンと血中Cペプチドの値により鑑別を進めていく。低血糖時に血中インスリンが高値にもかかわらずCペプチド低値を認めた場合はインスリン自己免疫症候群とインスリン注射による低血糖症が疑われる。低血糖時に血中インスリン、血中Cペプチドともに高値を認めた場合、膵β細胞からの自律分泌が考えられる。成人ではインスリノーマが疑われる。インスリノーマが疑われた場合はCペプチド抑制試験および72時間絶食試験が用いられる。その他の原因としては反応性低血糖などがある。反応性低血糖は空腹時ではなく食後に低血糖がみられることが多い。胃切除後の反応性手血糖では食後30分から1時間の間に、2型糖尿病の初期の反応性低血糖では食後3時間から5時間後に低血糖症状がみとめられることが多い。

治療

血糖値の速やかな回復

意識障害がなく経口摂取が可能な場合

ブドウ糖を10~15gを服用させる(砂糖やジュースでも可能)。ブドウ糖服用後に5~10分たっても症状が改善しなければさらに追加服用させる。

意識障害がある場合、または経口摂取が不可能な場合

グルカゴンを1mg1回筋注または静注する。これは肝硬変では無効である。次に10%ブドウ糖で血管確保し、50%ブドウ糖40mlを静注する。静注後5~10分たっても回復しない場合は、さらに40mlを静注する。次に10%ブドウ糖液500mlを点滴静注する。上記の処置を行っても回復せず、副腎不全や脳浮腫が疑われる場合は頭部CTスキャンをとり、以下の処置を行う。ヒドロコルチゾンを100~250mg静注またはデキサメタゾン10mg静注および20%マンニトール200ml点滴静注する。

原因別の治療法

薬剤性の場合は投薬の変更、インスリノーマの場合は手術療法、反応性低血糖の場合は食事を小分けにするといった方法で低血糖を改善できる。

出典

  1. ^ MyMED 低血糖症”. 2015年1月15日閲覧。

参考文献