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「ヤシ」の版間の差分

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== 特徴 ==
== 特徴 ==
ヤシは、単子葉植物ヤシ科に属する植物を広く指して言う呼称である。単子葉植物としては珍しく[[樹木|木本]]であり、多くは幹は木質化して太くなるか、つる状となり、小型で草質の茎をもつものもある{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。高木で大きいものでは30 mになるが、低木のものや茎が立ち上がらないもの、草本並みの大きさのものもある。
ヤシは、単子葉植物ヤシ科に属する植物を広く指して言う呼称である。単子葉植物としては珍しく[[樹木|木本]]であり、多くは幹は木質化して太くなるか、つる状となり、一部の種では小型で草質の茎をもつものもある{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。高木で大きいものでは30 mになるが、低木のものや茎が立ち上がらないもの、[[草本]]並みの大きさのものもある。


葉はふつう常緑で互生し大型のものが多く、羽状複葉か掌状、あるいは扇状に裂け、小葉はしばしば山型あるいは谷型に折りたたまれている{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。基部は茎を抱き、鞘が茎を包んだり、繊維を茎にまといつかせる。茎に沿って多数の葉を並べるものもあるが、茎の先端部に輪生状に葉が集まるものが多く、[[ソテツ類]]に似た独特の樹型を見せる。
[[]]はふつう常緑で[[互生]]し大型のものが多く、[[羽状複葉]]か掌状、あるいは扇状に裂けており[[小葉]]はしばしば山型あるいは谷型に折りたたまれている{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。基部は[[]]を抱き、鞘が茎を包んだり、繊維を茎にまといつかせる。茎に沿って多数の葉を並べるものもあるが、茎の部に輪生状に葉が集まるものが多く、[[ソテツ類]]に似た独特の樹型を見せる。


両性または単性雌雄異株{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。花はふつう小型で、穂になって生じる。花序の基部には大型の鞘状の総包があり、多くは円錐状である{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。花びら(花被片)は6個あり、小さく目立たず、雄しべが6個ある{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。子房は上位につく{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。果実は液果または核果で、大型になるものがある{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。なかでも[[オオミヤシ]](フタゴヤシ)は、種子の重さが25–30 [[キログラム|㎏]]にもな、植物界最大のものとして知られており、成熟するまでに8–10年かかる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
両性または単性で、[[雌雄異株]]{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。花はふつう小型で、穂になって生じる。[[花序]]の基部には大型の鞘状の総包があり、多くは円錐状である{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。[[花びら]](花被片)は6個あり、小さく目立たず、[[雄しべ]]が6個ある{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。[[子房]]は上位につく{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。[[果実]][[液果]]または[[核果]]で、大型になるものがある{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。なかでも[[種子]]の重さが25–30 [[キログラム|㎏]]にもなる[[オオミヤシ]](フタゴヤシ)は、植物界最大のものとして知られており、成熟するまでに8–10年かかる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。


[[熱帯]]地方を中心に253属、約3333種がある。日本にもシュロなど6属6種が自生する{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。しかし、[[観葉植物]]としての栽培が多く、見かける種数は多い。
[[熱帯]]地方を中心に253属、約3333種がある。日本にも[[シュロ]]など6属6種が自生する{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。[[観葉植物]]としての栽培が多く、見かける種数は多い。


== 利用 ==
== 利用 ==
熱帯地域では資源植物として重要であり、古来より多くの種がさまざまな方法で利用されている{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。最も有名なのはココヤシで、ヤシ油をとって食用や石鹸に利用したり、果実の中心にある透明な液を飲料としたりする{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。また、アブラヤシの実からはパーム油の採取したり、そのほかの種でも食用、デンプンや砂糖の採取、タバコ代わりの嗜好品、条虫駆除薬、繊維利用、屋根葺きの材料など利用法は多岐にわたる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。また、ヤシ科植物は鑑賞用の植物としてなくてはならないものとなっていて、庭園樹や室内観葉植物として利用されているものもたくさんある{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
熱帯地域では資源植物として重要であり、古来より多くの種がさまざまな方法で利用されている{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。最も有名なのは[[ココヤシ]]で、[[ヤシ油]]をとって食用や石鹸に利用したり、果実の中心にある透明な液を飲料としたりする{{sfn|土橋豊|1992|p=183}}。また、[[アブラヤシ]]の実からは[[パーム油]]の採取したり、そのほかの種でも食用、デンプンや砂糖の採取、タバコ代わりの嗜好品、条虫駆除薬、繊維利用、屋根葺きの材料など利用法は多岐にわたる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。また、ヤシ科植物は鑑賞用の植物としてなくてはならないものとなっていて、庭園樹や室内観葉植物として利用されているものもたくさんある{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。


=== 食用など ===
=== 食用など ===
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** [[アサイー]] {{snamei|E. oleracea}}
** [[アサイー]] {{snamei|E. oleracea}}
* [[カンノンチク属]] {{snamei|Rhapis}}
* [[カンノンチク属]] {{snamei|Rhapis}}
* [[クジャクヤシ属]] {{sname|Caryota}} - 熱帯アジアからオーストラリアにかけて約20種が分布。属名は、果実の形からギリシア語のkaryon(堅果)または、karyotos(クルミの様な)を由来とする{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
* [[クジャクヤシ属]] {{snamei|Caryota}} - 熱帯[[アジア]]から[[オーストラリア]]にかけて約20種が分布。属名は、果実の形からギリシア語のkaryon(堅果)または、karyotos(クルミの様な)を由来とする{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
** [[コモチクジャクヤシ]] {{sname|C. mitis}}
** [[コモチクジャクヤシ]] {{snamei|C. mitis}}
* [[クロツグ属]] {{snamei|Arenga}}
* [[クロツグ属]] {{snamei|Arenga}}
* [[ケンチャヤシ属]] {{snamei|Howea}} - オーストラリア東岸の[[ロード・ハウ島]]原産で、2種が分布する{{sfn|土橋豊|1992|p=185}}。
** [[ケンチャヤシ]] {{snamei|H. belmoreana}}
** [[ヒロハケンチャヤシ]] {{snamei|H. forsteriana}}
* [[コウリバヤシ属]] {{snamei|Corypha}}
* [[コウリバヤシ属]] {{snamei|Corypha}}
** [[コウリバヤシ]] {{snamei|C. umbraculifera}}
** [[コウリバヤシ]] {{snamei|C. umbraculifera}}
* ココヤシ属 {{snamei|Cocos}} - 1属1種からなる単型属で、原産地は不明であるが太平洋諸島と推測されている{{sfn|土橋豊|1992|p=185}}。属名は、果実が猿の顔に似ることからポルトガル語のcoco(サル)に由来する{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
* ココヤシ属 {{snamei|Cocos}} - 1属1種からなる単型属で、原産地は不明であるが[[太平洋諸島]]と推測されている{{sfn|土橋豊|1992|p=185}}。属名は、果実が猿の顔に似ることからポルトガル語のcoco(サル)に由来する{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
** [[ココヤシ]] {{snamei|C. nucifera}}
** [[ココヤシ]] {{snamei|C. nucifera}}
* [[サバル|サバル属]] {{snamei|Sabal}}
* [[サバル|サバル属]] {{snamei|Sabal}}
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** [[サラク]] {{snamei|S. zalacca}}
** [[サラク]] {{snamei|S. zalacca}}
* [[シュロ属]] {{snamei|Trachycarpus}}
* [[シュロ属]] {{snamei|Trachycarpus}}
* [[タケヤシ属]](クリサリドカルプス属) {{snamei|Chrysalidocarpus}} - マダガル、、ペンバ島に20種分布する。属名は、金色の果実を意味するギリシア語のchrysallidos(金色の)とkarpos(果実)の2語の組み合わせからなる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
* [[ショウジョウヤシ属]] {{snamei|Cyrtostachys}} - [[レー半島]]、[[マトラ]]、[[ボネオ]][[ニューギニア]]、[[ルッカ諸]]の12分布する。属名は、肉穂花序が湾曲していところから、ギリシア語のkyrtos(曲がった)とstachys(穂)の2語の組み合わせからなる{{sfn|土橋豊|1992|p=185}}。
** [[ヒメショウジョウヤシ]] {{snamei|C. lakka}}
* [[タケヤシ属]](クリサリドカルプス属) {{snamei|Chrysalidocarpus}} - [[マダガスカル]]、[[コモド島]]、[[ペンバ島]]に約20種分布する。属名は、金色の果実を意味するギリシア語のchrysallidos(金色の)とkarpos(果実)の2語の組み合わせからなる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
** [[アレカヤシ]](ヤマドリヤシ) {{snamei|D. lutescens}}
** [[アレカヤシ]](ヤマドリヤシ) {{snamei|D. lutescens}}
* [[チャメドレア属]] {{snamei|Chamaedorea}}
* [[チャメドレア属]] {{snamei|Chamaedorea}}
* [[チャメドレア属|テーブルヤシ属]](カマエドレア/チャメドレア属) {{snamei|Chamaedorea}} - メキシコから中央・南アメリカに100種以上が分布する。属名は、手を伸ばせば果実が容易に得られる高さであることから、ギリシア語のchamai(矮小の)とdorea(贈り物)の組み合わせからなる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
* [[チャメドレア属|テーブルヤシ属]](カマエドレア/チャメドレア属) {{snamei|Chamaedorea}} - [[メキシコ]]から[[中央アメリカ|中央]][[南アメリカ]]に100種以上が分布する。属名は、手を伸ばせば果実が容易に得られる高さであることから、ギリシア語のchamai(矮小の)とdorea(贈り物)の組み合わせからなる{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
** [[カマエドレア・ザイフリッツィー]] {{sname|C. seifrizii}}
** [[カマエドレア・ザイフリッツィー]] {{snamei|C. seifrizii}}
** [[カマエドレア・ミクロスパディクス]] {{sname|C. microspadix}}
** [[カマエドレア・ミクロスパディクス]] {{snamei|C. microspadix}}
** [[キレバテーブルヤシ]] {{sname|C. erumpens}}
** [[キレバテーブルヤシ]] {{snamei|C. erumpens}}
** [[テーブルヤシ]] {{snamei|C. elegans}}
** [[テーブルヤシ]] {{snamei|C. elegans}}
** [[ヒメテーブルヤシ]] {{sname|C. tenella}}
** [[ヒメテーブルヤシ]] {{sname|C. tenella}}
* [[トウ|トウ属]] {{snamei|Calamus}}
* [[トウ|トウ属]] {{snamei|Calamus}}
* [[ナツメヤシ属]] (フェニックス属){{snamei|Phoenix}} - 熱帯・亜熱帯のアフリカ・アジアに約17種が分布。自然交雑しやすく、変異がたくさんある。フェニックスの名の由来は諸説あるが、一説にはナツメヤシに対する古代ギリシア名とされる{{sfn|土橋豊|1992|p=186}}。
* [[ナツメヤシ属]] (フェニックス属){{snamei|Phoenix}} - 熱帯・亜熱帯の[[アフリカ]]・アジアに約17種が分布。自然交雑しやすく、変異がたくさんある。フェニックスの名の由来は諸説あるが、一説にはナツメヤシに対する古代ギリシア名とされる{{sfn|土橋豊|1992|p=186}}。
** [[カナリーヤシ]] {{snamei|P. canariensis}}
** [[カナリーヤシ]] {{snamei|P. canariensis}}
** [[ナツメヤシ]] {{snamei|P. dactylifera}}
** [[ナツメヤシ]] {{snamei|P. dactylifera}}
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* [[パルミラヤシ属]] {{snamei|Borassus}}
* [[パルミラヤシ属]] {{snamei|Borassus}}
** [[オウギヤシ]] {{snamei|B. flabellifer}}
** [[オウギヤシ]] {{snamei|B. flabellifer}}
* [[ビンロウ属]](ビンロウジュ/アレカ属) {{snamei|Areca}} - インド、リラン、フィピン諸島、ソロモン諸島に約50種が分布する。属名は、インド西南部海岸地方俗称areecに由来する{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
* [[ヒオフォルベ属]] {{snamei|Hyophorbe}} - マダガスカル島東方のマスカリン諸島に5種が分布する。属名は、果実を野生ブタが食べることから、ギリシア語hys(ブタ)とphorbe(食物)2語からなる{{sfn|土橋豊|1992|p=185}}。
** [[カブダチビンロウジュ]] {{sname|A. catechu}}
** [[トックリヤシ]] {{snamei|H. lagenicaulis}}
** [[トックリヤシモドキ]] {{snamei|H. verschaffeltii}}
* [[ビンロウ属]](ビンロウジュ/アレカ属) {{snamei|Areca}} - [[インド]]、[[スリランカ]]、[[フィリピン諸島]]、[[ソロモン諸島]]に約50種が分布する。属名は、インド西南部の海岸地方の俗称areecに由来する{{sfn|土橋豊|1992|p=184}}。
** [[カブダチビンロウジュ]] {{snamei|A. catechu}}
** [[ビンロウ]](ビンロウジュ) {{snamei|A. catechu}}
** [[ビンロウ]](ビンロウジュ) {{snamei|A. catechu}}
* [[メトロキシロン属]] {{snamei|Metroxylon}}
* [[メトロキシロン属]] {{snamei|Metroxylon}}

2017年8月31日 (木) 13:32時点における版

ヤシ目・ヤシ科
ココヤシ Cocos nucifera
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: ヤシ目 Arecales
: ヤシ科 Arecaceae
学名
Arecales Bromhead
Arecaceae Schultz-Schultzenstein
シノニム

Palmaceae

和名
ヤシ(椰子)
英名
palm, palm tree
亜科

ヤシ(椰子)は、単子葉植物ヤシ目 ヤシ科に属する植物の総称である。熱帯地方を中心に亜熱帯から温帯にかけて広く分布する植物で、独特の樹型で知られている。実用価値の高いものが多い。ヤシ科は英語でパルマエ (Palmae) といい、ラテン語のpalma(掌、シュロ)の複数形に由来する[1]。基準属Arecaに基づくArecaceaeも科名として用いられる[1]

特徴

ヤシは、単子葉植物ヤシ科に属する植物を広く指して言う呼称である。単子葉植物としては珍しく木本であり、多くは幹は木質化して太くなるか、つる状となり、一部の種では小型で草質の茎をもつものもある[1]。高木で大きいものでは30 mになるが、低木のものや茎が立ち上がらないもの、草本並みの大きさのものもある。

はふつう常緑で互生し大型のものが多く、羽状複葉か掌状、あるいは扇状に裂けており、小葉はしばしば山型あるいは谷型に折りたたまれている[1]。基部はを抱き、鞘が茎を包んだり、繊維を茎にまといつかせる。茎に沿って多数の葉を並べるものもあるが、茎の頂部に輪生状に葉が集まるものが多く、ソテツ類に似た独特の樹型を見せる。

両性または単性で、雌雄異株[1]。花はふつう小型で、穂になって生じる。花序の基部には大型の鞘状の総包があり、多くは円錐状である[1]花びら(花被片)は6個あり、小さく目立たず、雄しべが6個ある[1]子房は上位につく[1]果実液果または核果で、大型になるものがある[1]。なかでも種子の重さが25–30 にもなるオオミヤシ(フタゴヤシ)は、植物界最大のものとして知られており、成熟するまでに8–10年かかる[2]

熱帯地方を中心に253属、約3333種がある。日本にもシュロなど6属6種が自生する[1]観葉植物としての栽培が多く、見かける種数は多い。

利用

熱帯地域では資源植物として重要であり、古来より多くの種がさまざまな方法で利用されている[1]。最も有名なのはココヤシで、ヤシ油をとって食用や石鹸に利用したり、果実の中心にある透明な液を飲料としたりする[1]。また、アブラヤシの実からはパーム油の採取したり、そのほかの種でも食用、デンプンや砂糖の採取、タバコ代わりの嗜好品、条虫駆除薬、繊維利用、屋根葺きの材料など利用法は多岐にわたる[2]。また、ヤシ科植物は鑑賞用の植物としてなくてはならないものとなっていて、庭園樹や室内観葉植物として利用されているものもたくさんある[2]

食用など

園芸

  • ヤシの独特の樹型は熱帯的で、温暖な地方では街路樹として用いられる。本州南岸以南では、カナリーヤシ(フェニックス)・シンノウヤシ・ワシントンヤシ(ワシントニアパーム)がよく街路樹として用いられ、特に観光地では南国ムードを高めるために頻繁に使用される。
  • トウジュロワシントンヤシモドキは、戸外で庭園樹などに利用されている[2]
  • 小型種ではチャメドレア属などが観葉植物として室内で栽培されるものが多い。カンノンチクシュロチク古典園芸植物として、江戸時代から様々な品種が栽培された。大正昭和期には投機の対象となり、何度かブームを起こしている。

薬用など

  • ビンロウ(ビンロウジュ)は、果実を染料として利用するほか、コショウ科のキンマの葉に包んでから口の中で噛む習慣があり、タバコに代わる嗜好品とする[1]。生薬の檳榔子(ビンロウジ)は熟した種子を乾燥したもので、条虫駆除薬として用いられており[1]中華人民共和国湖南省では、煮て甘草などで味付けし、虫下しの効果がある嗜好品としている。
  • ノコギリパルメット(ソー・パルメット)の果実はインディアンが強壮作用のある食料として用いていたが、エキスには前立腺肥大の抑制作用があることが知られている。
  • キリンケツヤシ(Daemonorops draco)の実を加工したものを麒麟竭(きりんけつ)といい、漢方薬に用いるほか、民間薬としては外用にも用いるという。

建材、工芸材料など

木炭

  • ココヤシなどの果実の殻を、水蒸気賦活し、椰子殻(やしがら)活性炭が作られ、脱臭タバコタール等の除去、浄水、の吸着分離などに用いられる。また、椰子殻を原料とした木炭であるヤシガラ炭は東南アジア全般で広く製造されている。ヤシ殻の丸まった形では燃料として扱いにくいため、木炭化したものを粉砕し、タピオカ澱粉などで固めてオガ炭のような薪状に成形されて販売されている。

その他

  • ヤシの実を穿孔して土笛のようにし、楽器とされている。一例として兵庫県神戸市玉津田中遺跡から弥生時代のものが出土している。
  • 天然ココナッツ繊維:この繊維をロープ状にして、ほぐして強度をつけ、ラテックスを塗布し固める。通気性が良く適度な硬さがあり、腰痛に良いとされる。
  • キリンケツヤシから採った麒麟竭(上述)は赤い色をしており、各種塗料や紙の着色などに用いる。
  • 日本においては、「台湾季語」として水牛と並んで特に人気の高い題材であったが、「椰子の花」は台湾ではをイメージさせるものであったのに対して[3]島崎藤村が「名も知らぬ遠き島より流れよる椰子の実一つ 故郷の岸を離れて汝(なれ)はそも波に幾月」と詠んだように晩夏の季語のように使われることが多かった[4]

分類・系統的位置づけ

ヤシ科はほとんどの分類体系で、単独でヤシ目を構成する。分類の難しい科で、研究者により種や属の捉え方に差があり、150属1500種から236属3400種と幅がある[1]

新エングラー体系は、ヤシ科が単子葉植物の中で最初に分岐したという説から、ヤシ科が(単独で)属する目を Principes (直訳すると「第一」)と名づけた。

しかしAPGでは、ヤシ目より先にショウブ目オモダカ目キジカクシ目ヤマノイモ目ユリ目タコノキ目が分岐しており、ヤシ目は進化した単子葉類であるツユクサ類に含まれる。

分類

亜科・連[5]

ヤシ科は5亜科に分かれ、それぞれがいくつかのに分かれる。連によっては数十の属が属する。

主な種

日本産

日本国内には以下のような種を産する。

外国産

他にも、有名なものが多々ある。

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 土橋豊 1992, p. 183.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 土橋豊 1992, p. 184.
  3. ^ 台湾俳句史(1985 ~ 2013)(2) ~季題、季語、虚子の「熱帯季題論」と台湾の歳時記~『交流』15-19頁 呉昭新 2015年11月号
  4. ^ 毎日新聞「新季語拾遺」 1993年8月23日
  5. ^ DDBJ TXSearch、NCBI taxonomy database、UniProt Taxonomy による。
  6. ^ wikispecies
  7. ^ a b c d 土橋豊 1992, p. 185.
  8. ^ 土橋豊 1992, p. 186.

参考文献

  • 土橋豊『観葉植物1000』八坂書房、1992年9月10日。ISBN 4-89694-611-1 

関連項目