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「アサルトライフル」の版間の差分

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しかし、[[冷戦]]の中でソ連本土を攻撃できる[[核兵器]]とその運搬到達手段の開発を重視し歩兵用装備の更新を見送ったアメリカと、[[第一次インドシナ戦争|インドシナ]]・[[アルジェリア戦争|アルジェリア]]への介入戦争で戦時状態が続いたフランスは、この流れに乗り遅れた。
しかし、[[冷戦]]の中でソ連本土を攻撃できる[[核兵器]]とその運搬到達手段の開発を重視し歩兵用装備の更新を見送ったアメリカと、[[第一次インドシナ戦争|インドシナ]]・[[アルジェリア戦争|アルジェリア]]への介入戦争で戦時状態が続いたフランスは、この流れに乗り遅れた。


==== ソ連 ====
==== ロシア・イズマッシュ ====
2017年8月20日次期主力小銃としてAK-12を選定したが[[AK-74|AK-74M]]にユニバーサルアップグレードキットを装着した状態と殆ど同じである。
第二次世界大戦後の[[ソビエト連邦]]では、[[ミハイル・カラシニコフ]]技師によって[[AK-47]]の開発が行われた。AK-47が使用する[[7.62x39mm弾]]は、既存小銃弾と同口径の尖頭弾だったが、弾頭重量は軽量化されており、また、発射薬も減らされていた。
{{main|AK-47}}
{{main|AK-12}}


==== イギリス ====
==== イギリス ====
[[ファイル:SA80-A2 Individual Weapon (IW) MOD 45160295.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|[[L85A2]]]]
[[File:280british.jpg|thumb|250px|各種の.280ブリティッシュ弾]]
[[ファイル:An upgraded Laser Light Module Mk 3 mounted on the SA-80 Mk2. MOD 45158979.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|レーザーサイトを装着したL85A2]]
[[File:Enfield bullpup prototype.jpg|thumb|250px|英国が開発を進めた[[EM-2]]ライフル]]
初期の問題点が多かった[[L85]]をH&K社がL85A2に改修しさらにダニエルディフェンス社製レイルハンドガードやシュアファイア社製ハイダーへの更新、Elcan Specter OS 4xやマグプル社製EMAGの使用を経て単価は高価であるものの優秀なアサルトライフルへと変貌を遂げた。
[[第二次世界大戦]]中に独軍から[[鹵獲]]した突撃銃の研究を進めていた英国は、.276ペデルセン弾・6.5mmx52カルカノ弾・6.5mmx50有坂弾([[三十年式実包]])と良く似た弾薬である.280ブリティッシュ弾を試作し、これを使用する[[EM-2]][[自動小銃]]の開発を進めていた<ref name="WIMC">Gotz, Hans Dieter, German Military Rifles and Machine Pistols, 1871-1945, Schiffer Publishing, Ltd. (West Chester, Pennsylvania, 1990) ISBN 0-88740-264-X
<br>
Huon, Jean, Military Rifle and Machine Gun Cartridges, Ironside International, Inc. (Alexandria, Virginia, 1988) ISBN 0-935554-05-X
<br>
Molina Lopez, Angel and Alfonso Orea Maestro, Cartucheria Espanola, V. Merino, S.L. (Palencia, Spain) ISBN 84-604-3013-8
<br>
Stevens, R. Blake, The FAL Rifle, Collector Grade Publications (Toronto, 1993) ISBN 0-88935-168-6
<br>
[http://www.cruffler.com/trivia-September99.html Firearms Technical Trivia, September 1999 “Western Intermediate Contemporaries on the 7.62mm NATO”]
<br>
[http://www.quarry.nildram.co.uk/Assault.htm ASSAULT RIFLES AND THEIR AMMUNITION: HISTORY AND PROSPECTS, 11 June 2009]
</ref>。


2017年9月にL85A3が発表されイギリス軍に納入される予定である。
.280ブリティッシュ弾は同時期に開発された独ソの突撃銃用弾薬より弾道特性が良好で、低伸性に優れていながら低反動であり、遠距離での[[狙撃]]から近距離でのフルオート掃射まで対応できる優秀な弾薬だった。


しかし、[[北大西洋条約機構]](NATO)の一員として疲弊した欧州諸国を保護する立場にあったアメリカの軍上層部では、第二次世界大戦中から独軍が示した突撃銃のコンセプトが理解されていなかった。そのため、NATOにおける銃弾の標準化が提案された折、アメリカ陸軍は狩猟用弾薬として販売されていた.308ウィンチェスター弾を"短小・軽量弾"として採用する事を要求した。.308ウィンチェスター弾は、.30-06弾の薬莢を短縮したたものだったが、装薬の改良によりほぼ同じエネルギーを出しており、このため、反動も同じように大きく、フルオート射撃には向かないものだった。

これに対して英国やカナダなどが強硬に反対を唱えたものの、アメリカからの政治的圧力もあり、結局は.308ウィンチェスター弾が[[7.62x51mm NATO弾]]として採用された。
{{-}}
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==== ベルギー・FN社 ====
==== ベルギー・FN社 ====
[[ファイル:United States Navy SEALs 098.jpg|代替文=|サムネイル|250x250ピクセル|[[SCAR-H]]を構えるNavy SEALsの隊員]]
[[ファイル:United States Navy SEALs 098.jpg|代替文=|サムネイル|250x250ピクセル|[[SCAR-H]]を構えるNavy SEALsの隊員]]
FN社が米軍のSOCOMのトライアルのためにSCAR-LおよびSCAR-Hを開発し同トライアルに参加したが一時キャンセルされ、後に7.62mm NATO弾を使用するSCAR-HがMK17として採用された。
FN社が米軍のSOCOMのトライアルのために[[SCAR-L]]および[[SCAR-H]]を開発し同トライアルに参加したが一時キャンセルされ、後に[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm NATO弾]]を使用するSCAR-HがMK17として採用された。


なお本国では5.56mm NATO弾を使用するSCAR-Lが軍の主力小銃として制式採用されている。{{-}}
なお本国では[[5.56x45mm NATO弾|5.56mm NATO弾]]を使用するSCAR-Lが軍の主力小銃として制式採用されている。{{-}}


==== ドイツ・HK社 ====
==== ドイツ・HK社 ====
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[[ドイツ再統一|東西統一]]を果たした後のドイツ連邦軍は、5.56mm NATO弾に移行するため、[[1996年]]に強化樹脂を多用した新世代の構造ながら、堅実な[[ガス圧作動方式#ショートストロークピストン式|ショートストロークピストン式]]を採用した[[H&K G36|G36]]を制式採用した。
[[ドイツ再統一|東西統一]]を果たした後のドイツ連邦軍は、5.56mm NATO弾に移行するため、[[1996年]]に強化樹脂を多用した新世代の構造ながら、堅実な[[ガス圧作動方式#ショートストロークピストン式|ショートストロークピストン式]]を採用した[[H&K G36|G36]]を制式採用した。


しかし、G36の射撃による加熱で照準が狂う欠陥が発覚しドイツ連邦軍では後継としてSCAR、HK433、Steyr/Rheinmetall RS556、Haenel MK556、SIG MCXなどをテストしている{{-}}
しかし、G36の射撃による加熱で照準が狂う欠陥が発覚しドイツ連邦軍では後継としてSCAR、HK433、Steyr/Rheinmetall RS556、Haenel MK556、SIG MCXなどをテストしている{{-}}


==== 日本・豊和工業 ====
==== 日本・豊和工業 ====
[[ファイル:JGSDF Type 89 Assault Rifle 20100418-01.JPG|サムネイル|250x250ピクセル|左方切換レバー・89式小銃用照準補助具を装着した89式5.56mm小銃]]
[[ファイル:JGSDF Type 89 Assault Rifle 20100418-01.JPG|サムネイル|250x250ピクセル|左方切換レバー・89式小銃用照準補助具を装着した89式5.56mm小銃]]


1989年に89式5.56mm小銃を制式採用し、左方切換レバー(アンビセレクター化)の追加や小銃用照準補助具(ドットサイト)の搭載などの改良を行い使用しけている{{-}}
1989年に[[89式5.56mm小銃]]を制式採用し、左方切換レバー(アンビセレクター化)の追加や小銃用照準補助具(ドットサイト)の搭載などの改良を行い使用しけている{{-}}


==== アメリカ ====
==== アメリカ・FNH USA ====
[[ファイル:Casing.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|[[M4カービン]]を構えるアメリカ陸軍の隊員]]
[[ファイル:Casing.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|[[M4カービン]]を構えるアメリカ陸軍の隊員]]
[[ファイル:M27 Infantry Automatic Rifle.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|[[M27 IAR]]]]
[[ファイル:M27 Infantry Automatic Rifle.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|[[M27 IAR]]]]
米軍は早い時期からカービンのM4カービンを主力小銃として制式採用し、現在に至るまで使用し続けている。
米軍は早い時期から現在の主流である[[カービン|カービンフル]][[M4カービン]]を主力小銃として制式採用し、現在に至るまで使用し続けている。


しかし、アメリカ陸軍では5.56 NATO弾の威力不足を受け止め[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm NATO弾]]を使用するICSR小銃をテストしている。
しかし、アメリカ陸軍では5.56 NATO弾の威力不足を受け止め[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm NATO弾]]を使用するICSR小銃をテストしている。


アメリカ海兵隊はより高性能なアサルトライフルを欲しており、従来軽機関銃として使用してきたM27 IARを主力小銃として使用する試験を行っている。
アメリカ海兵隊はより高性能なアサルトライフルを欲しており、従来軽機関銃として使用してきた[[M27 IAR]]を主力小銃として使用する試験を行っている。


空軍および海軍では現在使用しているM4カービンの後継を選定する旨は発表していない。{{-}}
空軍および海軍では現在使用しているM4カービンの後継を選定する旨は発表していない。{{-}}


=== オーストラリア・Thales Australia ===
=== 小口径高速弾の出現 ===
[[ファイル:Austrian Soldiers develop skills during CR-II (14041133707).jpg|サムネイル|250x250ピクセル|ステアーAUG A3を構えるオーストリア軍兵士]]
* 米国が最初に採用した小口径高速弾である[[5.56mm NATO弾|.223レミントン弾]]の出現で兵士が携行できる弾薬の量は劇的に増加し、同時に銃本体の軽量化も進んだ。
Thales F90はオーストリア軍で[[ステアーAUG]]を改良ライセンス生産し同国で制式採用されたモデル。
[[File:Cartridge Kalashnikov AK-74.svg|thumb|250px|[[5.45x39mm弾|5.45mm×39弾]]の弾頭構造<br />A:被覆鋼<br />B:スチールコア<br />C:空洞<br />D:鉛のインレー<br />E:推進薬]]

[[1961年]]、[[アーマライト]]社の'''AR-15'''が[[アメリカ空軍]]にて制式名'''[[M16自動小銃|M16]]'''として採用された。これは[[ユージン・ストーナー]]が[[U.S.M1カービン]]の代替を狙い[[AR-10]]をスケールダウンしたもので、.223レミントン弾(正式名M193弾)なる新型の小口径高速弾を使用していた。まもなく陸軍でも採用が始まり、M16はベトナム戦争を通して代表的アサルトライフルの一つと数えられるようになる。
{{main|M16自動小銃|5.56x45mm NATO弾}}

ソ連は米国の小口径高速弾採用に刺激され、独自の小口径高速弾である[[5.45x39mm弾|5.45mm×39弾]]と、これを用いる[[AK-74]]を制式採用した。同弾は、その後[[AN-94]]や、[[イズマッシュ]]社製の各種後継版アサルトライフルでも採用されている。

5.45mm×39弾は米国のM193弾よりエネルギー・速度などで劣っているが、従来の[[7.62x39弾|7.62mm×39弾]]と大差ない腔圧のため、銃器に与える負担が少なく、ソ連は従来の[[AK-47|AK]]製造ラインをそのまま転用する事が出来た。

5.45mm×39弾は7.62mm×39弾に比べて装薬が少なく、エネルギーは半分程度しかないため、殺傷能力が劣ると見られていたが、弾頭の形状や材質を工夫した事で7.62mm×39弾よりも高い殺傷力を有している事が、後の[[アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)|ソ連によるアフガン侵攻]]で判明し、当時[[FNハースタル|FN]]社で開発中だったM855/SS109の弾頭はこれを参考に完成されている<ref name=ammo55439 group="†">狩猟用のホローポイント弾など、命中後に弾頭が拡がるように設計された[[弾丸]]は、高速で人体に命中した際に深刻なダメージを与える。ただし、これらの弾頭は硬標的(鉄板など)には効果がなく、低強度の防弾衣で簡単に防がれてしまう。<br />しかし、[[5.45x39mm弾|5.45mm×39弾]]は鋼鉄製の尖った弾芯を持ち、現在使用されている7N10弾薬の場合14mm厚のスチールプレートを100mで貫通するため、中強度の防弾衣すら簡単に貫通してしまい、人体に侵入すると先端が折れ曲がって回転しながら致命傷を与える構造になっている</ref>。
{{-}}

=== 素材・構造の革新期 ===
{{Multiple image
|width=250
|direction=vertical
|image1=Steyr AUG 5,56 mm.JPG
|caption1=オーストリア陸軍の[[ステアーAUG#バリエーション|ステアーAUG A1]]
|image2=FAMAS dsc06877.jpg
|caption2=フランス軍の[[FAMAS#バリエーション|FAMAS F1]]
|image3=Rifle Type 95.jpg
|caption3=[[95式自動小銃]](中国)
|image4=Caroline-derriere-bipode-p1000524.jpg
|caption4=スイスの[[SIG SG550|SIG 550]]、折りたたみ[[銃床]]と[[二脚]]を標準装備している
|image5=Rifle AN-94.jpg
|caption5=2点バーストが特徴の[[AN-94]]
}}
* 1970-80年代に開発されたアサルトライフルは、小口径・高初速弾の採用が一般化し、[[ブルパップ方式]]の採用やプラスチック素材の採用など形態や素材が変化した。また、各種の[[スコープ]]や[[ダットサイト]]などが標準で取り付けられるものも出てきた。

5mm台(5.56mm、5.45mm)の小口径・高初速弾に移行したことで、アサルトライフルは新局面を迎え、形態や素材が大幅に変更され、標準でスコープ(光学照準)が取り付けられるようになってきたほか、レールによる複数装備の着脱化なども近年のトレンドである。また、多くの国では弾薬を他国と共通化して調達を容易にする傾向が強まり、[[5.56mm NATO弾]]が広く普及している。

この時期から多数の[[ブルパップ方式]]アサルトライフルが開発されるようになり、1970年代から現在に至るまで多種・多数が実戦配備されているが、実戦投入された結果、いくつかの問題点も露呈している。

初期のブルパップ方式は1940-50年代にソ連・イギリスで試作され、イギリスの[[EM-2]]の開発思想は後に[[L85]] (SA80)へと発展した。
その後、これらの試みに刺激された各国・各社でブルパップ方式の試作が進み、1970年代後半から本格的に採用されるようになった。
*[[フランス陸軍]]が[[FA-MAS]]を採用(1977年、バイポッド付き)
*[[オーストリア陸軍]]がstg77([[ステアーAUG]])を採用(1977年、スコープ付き)
*[[イギリス陸軍]]が[[L85]] (SA80)を採用(1985年、スコープ付き)

これらのブルパップ方式アサルトライフルは、廃莢口の左右切り替えによる両手利きに対応しており、いくつかは短い照準線長を補うとともに野戦での照準を容易にするための低倍率スコープ(光学照準器)を標準装備している。

他にも、[[シンガポール]]の[[SAR21]]、[[イスラエル]]の[[IMI タボールAR21]]、[[中華人民共和国|中国]]の[[95式自動小銃]]、[[フィンランド]]の{{仮リンク|ヴァルメトM82|en|Valmet M82}}、[[イラン]]の[[KH2002 "Khaybar"]]などがある。

ブルパップ方式のアサルトライフルは、薬室をグリップ(銃把)の後ろに位置させることで、銃全体をコンパクトにしながらも、バレル(銃身)を長くできるという利点を持っている。

ブルパップ方式は全長がコンパクトであり、重心がグリップのすぐ後ろに来るため、市街戦やジャングル戦などの索敵時に取られるポイント&シュート(銃身をやや下に向け、銃床を肩に当てて保持し、敵を発見した瞬間に銃口を視線の先に合わせて銃口を持ち上げ、顎下で銃の動きを止める事で、素早く敵に照準を合わせて射撃を行う)の姿勢を保つのに適しており、兵士の動線を短縮化させる事ができる。

欠点としては、伏射姿勢ではマガジン交換がしにくい点と、一度廃莢口の向きを決めてしまうと、分解してボルトの向きを入れ替えない限り廃莢方向を切り替えられないのと、廃莢口が顔のすぐ横に来てしまうことが合わさり、とっさに逆の手で発射すると頬に熱い空薬莢が直撃する危険性が挙げられ、この欠点を解決するために、軍用火器メーカとしては最大手のFN社では自社のブルパップ方式火器で廃莢方向を真下([[FN P90]])または前方([[FN F2000]])としている。

また、初期型AUGなど固定スコープ照準は近接戦闘時のポイントに不向きであるため、スコープ上に近接戦闘用の固定サイトが刻まれていたが、改良型では固定スコープを止めてレールにより各種の照準器が選択装着できるよう改められている。

1990年代の終わりに、[[ドイツ]]と[[スペイン]]が共同開発した[[H&K G36]]は、ブルパップ方式ではない伝統的な形式のアサルトライフルだが、スコープを内蔵しており、複合材料を多用している。G36を元に開発された[[H&K XM8|XM8]]は、内蔵式レーザーサイトと[[レーザーポインタ]]、残弾数カウンタといった電子装備を導入しており、[[アメリカ軍]]への採用を働きかけたが、2005年10月末にXM8計画はキャンセルされた。

[[陸上自衛隊]]では長らく[[64式7.62mm小銃]]を使用してきたが、[[89式5.56mm小銃]]との置き換えが進んでいる。これもブルパップ方式ではなく、伝統的なデザインである。弾倉には[[M16自動小銃#M16A2(645)|M16A2]]などと互換性がある[[STANAG マガジン|STANAG規格]]を採用し、使用弾である89式実包は[[5.56mm NATO弾|新NATO弾]]と同じものである。削り出し加工と木材を使用していた64式小銃の4.3kgに対して、プレス加工と複合材料を使用した89式小銃は3.5kgと軽量化が図られている。命中精度は決して劣っていないと言われている。どちらにも[[二脚]]が標準装備されているが、スコープは標準装備ではない。

ドイツでは1970-1980年代にかけて、4.73mmケースレス弾(ケース=金属製薬莢がなく、弾薬で成形してある)と、その弾薬を用いる新しいアサルトライフル[[H&K G11]]を開発していたが、この計画は1990年の東西[[ドイツ再統一]]により凍結され、量産に移ることはなかった。

=== 混迷の時代 ===
[[歩兵]]の機械化が進み交戦距離が短縮する中で、[[ベトナム戦争]]の[[ジャングル戦]]に適応するために始まった小口径・高速弾化であるが、近距離化していたはずの交戦距離の概念が、[[アフガニスタン紛争 (2001年-)|2001年からのアフガンにおける紛争]]や[[2003年]]に勃発した[[イラク戦争]]といった山岳部・砂漠地帯での[[非対称戦争]]では、.303ブリティッシュ弾や[[7.62x39mm弾]]といった旧式弾薬の有効射程と殺傷力の前に再度あやふやとなり、自軍兵士の犠牲を減らす事が政治的に重要な要素となった事もあって、最近の戦闘では交戦距離を延長する試みが増えている。


オーストリア軍で制式採用されている[[ステアーAUG]]と比較すると20mmレイルの搭載とそれに由来するフォアグリップやスコープの選択可能化などの変更があるが使用マガジンやリガーやセレクターやガスブロックやチャージングハンドルなど基本的な構造は変わらない。{{-}}
一部の兵士からは「5.56mmは撤退させるための弾、7.62mmは殺すための弾」などといった、[[5.56mm NATO弾]]が威力不足とする不満が表明されており、[[民間軍事会社]]の社員達が7.62mm口径の火器を使用するのを見て、これを真似して[[鹵獲]]や闇市場で入手したAKを使用する兵士が出現したり、引退して倉庫に眠っていた[[スプリングフィールドM14|M14]]が[[選抜射手|マークスマン・ライフル]]として再度持ち出される事態まで発生した。


=== フランス ===
こうした状況から、有効射程の延長と殺傷能力の向上を目的に、初速と弾頭重量を保ちつつ、弾薬の口径を6mm台に上げ直す動きがあり、米軍の次期アサルトライフルトライアルでは5.56mm NATO弾、[[6.8mm×43SPC]]弾(7.62x39弾相当)、7.62mm NATO弾(.303弾相当)の3種の弾薬に、最小限の部品交換で対応できる共通のプラットフォームを持った製品が必要条件とされている。
HK416FはHK416A5をベースにフランス軍の要求を満たすように改修されフランス軍で制式採用された。


バレルを自国製とすることで調達コストを下げた。
一方で、弾頭の大口径化は銃自体の重量増加にもつながるため、小柄な体格の兵士が多い軍隊では、威力を重視した大口径の銃弾を使用する銃は運用上不利となりかねないという問題をはらんでいる。また、銃弾が大型化すれば携行弾数は多かれ少なかれ、減少せざるを得ないという基本的な問題もあり、評価は定まっていない。
また、近年では光学照準器などの普及により、単純に命中していなかっただけである可能性も指摘されている。


=== インド ===
尚、5.56mm NATO弾以外に独自の小口径高速弾薬を採用しているのはロシア(5.45x39mm弾)と中国({{仮リンク|5.8x42mm弾|en|5.8x42mm DBP87}})の二国であり、両国とも5.56mm NATO弾と同程度のサイズ・重量の弾薬を歩兵小銃の弾薬としているが、[[ボディアーマー]]への貫徹力を重視している点で共通している。
INSASを制式採用したがジャムやポリマー製マガジンのひび割れや3点バースト時にフルオートになるなどの欠点が取り沙汰されCRPFではINSASを[[AK-47]]へと置き換えている。


インド軍では7.62mm NATO弾を使用するアサルトライフルをINSASの後継の主力小銃として配備する計画がある。
5.8mm×42弾は銃口初速930m/s、弾頭重量4.26g、運動エネルギー1,842Jで、中国はこの新しい弾薬について、新NATO弾やロシアの小口径弾よりも高性能で殺傷能力が高いと主張している。


== 近年の動向 ==
== 近年の動向 ==
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ソ連では米国の小口径高速弾採用に刺激された研究が1970年代に始まり、独自の小口径高速弾である[[5.45x39mm弾|5.45mm×39弾]](1,390J, 実包重量 10.5g)と[[AK-74]]を採用し、[[AN-94]]や[[イズマッシュ]]社製の各種アサルトライフルでも同弾が採用されている。5.45mm×39弾は米国の[[5.56mm NATO弾]]よりエネルギー・速度などで劣っているが、従来の[[7.62x39弾|7.62mm×39弾]]と大差ない腔圧のため、銃器に与える負担が少なく、ソ連は従来の[[AK-47|AK]]製造ラインをそのまま転用する事が出来た。
ソ連では米国の小口径高速弾採用に刺激された研究が1970年代に始まり、独自の小口径高速弾である[[5.45x39mm弾|5.45mm×39弾]](1,390J, 実包重量 10.5g)と[[AK-74]]を採用し、[[AN-94]]や[[イズマッシュ]]社製の各種アサルトライフルでも同弾が採用されている。5.45mm×39弾は米国の[[5.56mm NATO弾]]よりエネルギー・速度などで劣っているが、従来の[[7.62x39弾|7.62mm×39弾]]と大差ない腔圧のため、銃器に与える負担が少なく、ソ連は従来の[[AK-47|AK]]製造ラインをそのまま転用する事が出来た。


当初、5.45mm×39弾は7.62mm×39弾や5.56mm NATO弾に比べて装薬が少なく、エネルギーは半分程度しかないため殺傷能力が劣ると見られていたが、弾頭の形状や材質を工夫した事で7.62mm×39弾よりも高い殺傷力を有している事が[[アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)|ソ連によるアフガン侵攻]]で判明し、当時[[FNハースタル|FN]]社で開発中だったM855/SS109の弾頭はこれを参考に完成されている<ref name=ammo55439 group="†"/>。
当初、5.45mm×39弾は7.62mm×39弾や5.56mm NATO弾に比べて装薬が少なく、エネルギーは半分程度しかないため殺傷能力が劣ると見られていたが、弾頭の形状や材質を工夫した事で7.62mm×39弾よりも高い殺傷力を有している事が[[アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)|ソ連によるアフガン侵攻]]で判明し、当時[[FNハースタル|FN]]社で開発中だったM855/SS109の弾頭はこれを参考に完成されている<ref group="†" name="ammo55439">狩猟用のホローポイント弾など、命中後に弾頭が拡がるように設計された[[弾丸]]は、高速で人体に命中した際に深刻なダメージを与えるただし、これらの弾頭は硬標的(鉄板など)には効果がなく、低強度の防弾衣で簡単に防がれてしまう。<br>
しかし、[[5.45x39mm弾|5.45mm×39弾]]は鋼鉄製の尖った弾芯を持ち、現在使用されている7N10弾薬の場合14mm厚のスチールプレートを100mで貫通するため、中強度の防弾衣すら簡単に貫通してしまい、人体に侵入すると先端が折れ曲がって回転しながら致命傷を与える構造になっている</ref>。


==== 5.8mm×42弾 ====
==== 5.8mm×42弾 ====

2017年9月27日 (水) 11:43時点における版

アサルトライフル: assault rifle[† 1])は、実用的な全自動射撃能力を持つ自動小銃のことである。従来の小銃弾(フルサイズ弾[† 2])より反動の弱い弾薬(中間弾薬)を用いることで全自動射撃を容易にしているものが多い。

一方で、M14小銃のようにフルサイズ弾を使用する自動小銃は全自動射撃に向いていないため、バトルライフルなどと呼ばれて区別される場合もある[† 3]

現在の軍隊ではアサルトライフルが最も一般的な銃器となっており、旧世代にあたるものならば発展途上国や武装勢力にもよく普及している。

日本語では突撃銃と訳される。自衛隊が配備している火器の中では89式5.56mm小銃がアサルトライフルに該当する。

StG44(1940年代-)
AK-47(1940年代-)
M16A1(1960年代-)
AUG(1970年代-)
F2000(2000年代-)
FB MSBS Grot(2010年代-)

概要

M16AKの比較

連射と単射を切り替え可能な歩兵用の自動小銃としては、かつてフェドロフM1916リベイロール1918オートマチックカービン英語版ラインメタルFG42などが存在したが、現代的な意味でのアサルトライフルは第二次世界大戦中にナチス・ドイツで開発されたStG44に端を発する。StG44とはSturmgewehr 44(44年式突撃銃の意)の略称であり、アサルトライフルとはSturm突撃gewehr小銃)なる語を英訳したものである。

1949年、StG44と同様の設計思想で製作されたAK-47ソビエト連邦にて制式化された。1960年から始まったベトナム戦争では、このAK-47が北ベトナム軍およびベトコンに供給された。アメリカ陸軍およびアメリカ国防情報局が1970年に作成した資料『Small Arms Identification and Operation Guide - Eurasian Communist Countries』(小火器識別および操作ガイド - ユーラシアの共産主義国)では、AK-47を「7.62-mm Kalashnikov assault rifle (AK-47)」として掲載しており、アサルトライフル(Assault rifles)の性質について次のように解説している[1][2]

  • アサルトライフルは、短機関銃小銃の間の威力の弾薬を発射する、短く小型で単射と連射の切り替え射撃が可能な銃器である。
    Assault rifles are short, compact, selective-fire weapons that fire a cartridge intermediate in power between submachinegun and rifle cartridges.
  • アサルトライフルは軽い反動を持つ特徴があり、このため効果的な連発射撃を300mまでの射程で行う能力がある。
    Assault rifles have mild recoil characteristics and, because of this, are capable of delivering effective full-automatic fire at ranges up to 300 meters.

1967年には、アメリカ陸軍でもこの概念に合うM16A1歩兵用主力小銃として制式化していた。

AK-47およびM16の制式名はそれぞれ、Автомат Калашникова образца 1947 года(カラシニコフ自動小銃1947年型)、Rifle, Caliber 5.56mm, M16(16型5.56mm口径小銃)であり、ソビエト連邦アメリカ合衆国両国ともアサルトライフルの意味の名称は用いなかったものの、ベトナム戦争以降、AK-47とM16は代表的なアサルトライフルとして認識されていった。その後、各国の歩兵用主力小銃として、当時の東側陣営ではAK-47とその発展型が採用され、西側陣営では主にM16の使用弾に合わせ5.56x45mm弾を使用した自動小銃が採用されていった。現在、主要各国では5.56x45mm弾、5.45x39mm弾7.62x39mm弾などを使用した自動小銃が歩兵用の主力火器として採用され、アサルトライフルとして認識されている。ただし、アサルトライフルを定義する具体的な数値は決まっていない。

機能

StG44を構えるドイツ兵
バルジの戦い1944年
アサルトライフルは世界的に普及している:2008年撮影のエチオピア人男性

銃は第一次世界大戦までは精度や射程を競っていたが、機関銃の登場がそれを変えた。そして、機関銃の軽量化が進むと携行可能な軽機関銃短機関銃自動小銃が多く生み出され、歩兵(小銃手)の火器としてはアサルトライフルに収束したのである。

アサルトライフルという概念の目標は、短機関銃が担っていた至近距離での掃射と小銃が担っていた中距離(300-400m)での狙撃能力の両立である。これを実現するため、有効射程500m程度の低反動な弾薬を用いることが多い。セミ/フルオートの切替射撃機能(引き金を引くと決められた数だけ連射するバースト機能を有する銃も多い)を持ち、ガス圧作動方式等の自動装填機構、着脱式弾倉を有している。

また、反動制御を容易とする目的から、軽機関銃と同様の直銃床スタイル(銃身軸線の延長上に銃床が位置する)が一般的であり、その保持を容易とするためのピストルグリップも重要な要素となっているほか、反動制御の容易なブルパップ方式でデザインされた製品も多い。

近年の製品では、金属製の基幹部品(銃身や機関部など)に、環境の変化に強い繊維強化プラスチックの大型構成部品(ストックやハンドガードなど)が組み合わせられたものが多く、鋼板プレス加工や繊維強化プラスチックによる一体成型など生産性に優れた手法で製造され、単価が安い点もアサルトライフルの特徴となっている。

定義と名称

アサルトライフルと同種の火器を指す名称は複数あるが、国や組織によって厳密な定義は異なる。

シュトゥルムゲヴェーア

ドイツ語で同種の火器を指す「Sturmgewehr」(StG, StGw, SG,シュトゥルム・ゲヴェーア)という言葉は、第二次世界大戦中に開発された新型小銃MP43を改称する為、アドルフ・ヒトラー自らが考案した名称と言われている[3]。シュトゥルム・ゲヴェーアという言葉が考案されるまで、同等の火器はMaschinenkarabiner(MKb, マシーネンカラビナー、「マシンカービン」)と呼称されていた。例えば1942年に提出されたStG44の試作型にはMKb42なる名称が与えられ、また、1945年に試作された突撃銃はMKb Gerät 06Hと仮称され、後にStG 45(M)すなわちモーゼル型45年式突撃銃と呼称された。

ドイツ民主共和国(東ドイツ)では同種の火器をMaschinenpistole(MPi)、すなわち短機関銃と呼称した。国家人民軍設立当初には、StG44がMPi-44の名称で採用され、後に採用されたAK-47MPi-Kすなわちカラシニコフ式短機関銃と呼称された。1980年代後期になってから、Sturmgewehrの語を用いるStG940ドイツ語版シリーズが開発された。

ドイツ連邦共和国(西ドイツ)で編成されたドイツ連邦軍では、G3G36に見られるように、制式小銃の名称にはSturmgewehr(StG)ではなくGewehr(G)すなわち小銃という表現のみ用いた。銃器を分類する語としては使われており、例えばドイツ連邦陸軍はホームページ上でG36をSturmgewehrと呼び[4]、G3もSturmgewehrとして言及されることがある[5][6]

ドイツの大手銃器メーカーヘッケラー&コッホ社も製品の分類にSturmgewehrを用いている[7]。G36のほか、HK416HK417がここに分類されている。

オーストリア軍では、かつて国産化したFALSturmgewehr 58として採用していたほか、ステアーAUGをSturmgewehr 77の制式名称で採用している[8]スイス軍では、かつてSIG SG510をSturmgewehr 57として採用していたほか[9]SIG SG550をSturmgewehr 90として採用している[10]

アサルトライフル

英語の「Assault Rifle」(アサルトライフル)は、ナチス・ドイツで造語されたシュトゥルム・ゲヴェーア(Sturmgewehr)という用語を英訳したものとされている[11][3]。1980年代には民生市場でアサルトライフルを原型とするスポーツ用小銃が流通し始め、この語は一般にも広く認知されていった[3]

1945年にアメリカ陸軍で作成されたMP43の改称に関する報告書では、ドイツ側が造語したSturmgewehrの訳語として「Assault Rifle」が使われ、機能については従来通りの「machine carbine」であるとしている[12]

1973年の『Small Arms Identification and Operation Guide - Eurasian Communist Countries』の記述に従えば、アメリカ陸軍におけるアサルトライフルの定義は「短機関銃小銃の間の威力の弾薬を用い、短く小型で、セレクティブ・ファイア機能を備え、低反動で、フルオート射撃時の有効射程は300m程度の銃である」と解釈することができる[1]。また、全米ライフル協会(NRA)の立法行動研究所(NRA-ILA)では、アメリカ陸軍によるものとして「中間威力の弾薬を用い、セレクティブ・ファイア機能を備えるライフル」(a selective-fire rifle chambered for a cartridge of intermediate power.)という定義を紹介している[13]

ブリタニカ・オンラインでは、アサルトライフルという語を次のように説明している[14]

アサルトライフルとは、小型化あるいは弱装化された銃弾を使用し、セミ/フルオートの切り替え機能を有する軍用銃である。これらは軽量かつ持ち運びやすく、現代的な戦闘距離すなわち300 - 500m程度の範囲で十分な精度と高い火力を発揮する。そのため、近代的な軍隊における標準歩兵用火器として第二次世界大戦期の高威力なボルトアクション式小銃および自動小銃を置換した。
Assault rifle, military firearm that is chambered for ammunition of reduced size or propellant charge and that has the capacity to switch between semiautomatic and fully automatic fire. Because they are light and portable yet still able to deliver a high volume of fire with reasonable accuracy at modern combat ranges of 300–500 m (1,000–1,600 feet), assault rifles have replaced the high-powered bolt-action and semiautomatic rifles of the World War II era as the standard infantry weapon of modern armies.

アメリカ合衆国では、銃規制の議論に関連して定義の曖昧な「アサルトライフル」という言葉がしばしば問題となり、また規制対象として法的に定義された用語「アサルトウェポン」(Assault weapon)と混同されることも多い[15][3]

西側諸国(主にアメリカ合衆国)においては、M14小銃のような大口径自動小銃を特にアサルトライフルと区別する場合、バトルライフルという表現が用いられることもある[16]

アフタマート

ロシア語で同種の火器を指す「Автомат」(アフタマート)について、現在は1991年に発効したGOST規格28653-90号「小火器・用語と定義」(ГОСТ 28653-90 «Оружие стрелковое. Термины и определения»)の中で定義されている[17]。アフタマートは「自動式カービン」(автоматический карабин)であるとされており、ここで言うカービンКарабин, カラビン)については「短銃身を備える軽量小銃」(облегчённая винтовка с укороченным стволом)とされる。また、小銃(Винтовка, ビントフカ)は「ライフリングがあり、銃床を肩に当て両手で保持・射撃する構造の小火器」(нарезное стрелковое оружие, конструктивно предназначенное для удержания и управления при стрельбе двумя руками с упором приклада в плечо)とされている。

突撃銃

日本語で同種の火器を指す突撃銃という言葉は、『防衛省規格 火器用語(小火器)』の中で定義されている[18]。突撃銃は英語のAssault Rifleに対応する語であり、「小銃の一種で,突撃射撃に適している銃。全自動と半自動の機能及び多数弾を給弾できる弾倉を有する。」とされている。また、ここで言う「突撃射撃」については「突撃に際して,通常,腰だめ又は立姿で行う射撃」と定義されている[19]

ただし、89式5.56mm小銃64式7.62mm小銃に見られるように、自衛隊などが採用したAssault Rifleに相当する火器は小銃と呼称されている。また、同種の火器についてアサルトライフルというカナ表記や自動小銃という表現が用いられることも多い。

歴史

黎明期

ブローニングM1918自動小銃

各種の自動火器が発達しはじめた20世紀初頭、アサルトライフルという概念は未だ存在しなかったが、その先鞭となる銃器が出現していた[11]

アサルトライフルの概念に近い最初の自動小銃は、1890年に発明されたイタリア製のチェイ=リゴッティ小銃英語版(Cei-Rigotti)だと言われている。これは20世紀の初めに開発されたガス圧作動方式のセミ/フル両用のカービンサイズの自動小銃だったが、試作レベルに止まって軍隊には供給されなかった。チェイ=リゴッティはイタリア軍の標準的な小銃弾だった6.5mmx52カルカノ弾英語版のほか、より強力なアルゼンチンの7.65mm弾を用いるモデルもあった。弾倉は固定式で、装填にはストリッパー・クリップが必要だった。

同時期、フランスではルベルM1886を更新する為の自動小銃の開発が進められており、その中でロシニョール ENT B1英語版として知られる自動小銃が試作された。この銃は6x60mm弾という小口径弾を使用し、セレクティブ・ファイア機能や着脱式弾倉を備えていたものの、重量が20ポンド以上(ルベル小銃は9.7ポンド)もあった為、結局採用には至らなかった。ENT B1は機関銃の役割を兼ねることも期待されていた。

その後、1913年にロシアでショートリコイル方式のフェドロフM1916自動小銃が実用化され、第一次世界大戦と続くロシア内戦で実戦使用された。フェドロフM1916は12,000丁あまりが生産されたが、ロシア革命後の混乱と、使用弾薬である6.5mmx50SR有坂弾(三八式実包)の供給(革命後に関係が悪化した日英から供給されていた)上の問題から10年足らずで製造中止となった。しかしその後1939年冬戦争に再度実戦投入され、鹵獲された同銃は後のMP43出現のきっかけとなった。開発者のウラジーミル・フョードロフ英語版自身はこの銃を歩兵用小銃と考えていたとされるが、軍部からは軽機関銃の一種と見なされていた。

第一次世界大戦中、フランスはアメリカ製ウィンチェスター M1907半自動小銃を2,500丁程度購入し、その大部分にセレクティブ・ファイア機能や大容量の着脱式弾倉を追加する改造を施した。この改造小銃は1917年から1918年まで使用された。M1907が使用する.351 WSL弾英語版は、後の7.62x39mm弾と同程度のエネルギーを有する比較的弱装の小銃弾であった。

ウィンチェスター M1917マシン・ライフル(Winchester Model 1917 Machine Rifle)は、観測気球を攻撃する為にアメリカで考案された自動小銃である。.351 WSL弾を小口径化した.345ウィンチェスター弾を使用し、機関部上に2本の着脱式弾倉が突き出した特徴的な外見をしていた。いくつかが地上装備に転用され、着剣装置も設けられたとされている。直銃床など後のアサルトライフルに見られる特徴を備えていた。

1918年、フランスでリベイロール1918オートマチックカービン英語版が設計された。.351 WSL弾を原型とする8mm弾を使用する自動小銃で、着剣装置と二脚が設けられていた。重量が5.1kgと非常に重く、また400m以上の射撃において精度が低いことが問題視され、採用には至らなかった。

この時代に試作された自動小銃には、当時の水準では弱装とされる弾薬を使用することで反動の軽減を試みるものが見られた。これら弱装弾薬のエネルギーは、後に中間弾薬と総称される事になる弾薬と同水準であった[† 4]

一方、従来の小銃弾を用いるセレクティブ・ファイア機能付き自動小銃も多数実用化されている。例えば1915年にフランスで採用されたMle1915自動小銃、1917年にアメリカで採用されたブローニングM1918自動小銃(BAR)などである。また、ルイス銃の開発者であるアイザック・ニュートン・ルイス英語版は、アサルト・フェーズ・ライフル(Assault phase rifles)と呼ばれる一連の試作自動小銃をM1918自動小銃の対案として設計した。こうした自動小銃はMle1915が初めて実現した「突撃射撃(Marching fire)が可能な自動火器」というコンセプトに沿った設計だったものの、小銃弾を使用することによる反動の大きさや銃および銃弾の重量、製造および兵站上のコストが問題となり、歩兵用小銃としての普及は進まなかった[20]

そのほか、第一次世界大戦末期には拳銃弾を用いる軽量な個人用自動火器としていくつかの短機関銃が開発されている。

停滞期

アメリカ軍のM1カービン。アサルトライフルに近い機能を有していた

第一次世界大戦後も、各国で新型自動小銃の研究は続けられた[11]。ただし、新たなコンセプトへの不信や新型銃弾を使用する自動小銃を採用した場合に想定されるデメリット、すなわち銃弾消費増加、新銃弾採用による兵站コスト増加、人員以外の標的(馬、軽車両、航空機など)に対する攻撃能力の喪失といった問題から、1940年代初頭までは弱装弾薬を使う自動小銃の研究が活発化しなかった[20]

1920年、スイスでMP1920として知られる銃器が設計された。ベルン造兵廠英語版の責任者だったアドルフ・フラードイツ語版技師が手がけたもので、彼がかつて設計した短機関銃とよく似た構造をしており、機関部側面に30発着脱式弾倉を備えていた。MP1920は7.5x55mm スイス弾を原型とする7.65x35mm短小弾(ラウンドノーズ、弾頭重量123gr、初速2,000 ft/s)を使用していたが、改良型のMP1921では同じ短小弾をネックダウンした7mm尖鋭弾が用いられた。フラーが手がけたいくつかの銃器は、後にドイツの自動小銃開発に影響を及ぼしたとも言われている。

1921年、イタリアでM1921として知られる半自動小銃が試作された。これは長距離射撃よりも比較的近距離での戦闘を重視した銃で、新型の短小弾を用い、大容量の着脱式弾倉も備えていた。

1930年代、ヴァイマル共和政時代のドイツでも弱装弾薬および新型自動小銃の研究が行われた。ナチ党の権力掌握を経てナチス・ドイツの時代が幕を開けた頃、ハインリヒ・フォルマードイツ語版技師によってフォルマーM35英語版あるいはMKb 35と呼ばれる自動小銃が試作された。この銃は7.75x40.5mmという弱装弾薬を用い、陸軍および空軍への配備を想定して開発が進められていたものの、第二次世界大戦直前の1939年にはプロジェクトが中止された。

各国で実用的な自動小銃の開発が進む中で、米国では.30-06スプリングフィールド弾に替わる弱装小銃弾として.276ピダーセン弾英語版を使用するピダーセン自動小銃の採用が検討された。

.276ピダーセン弾はチェイ=リゴッティに使用された6.5mmx52カルカノ弾やフェドロフに使用された6.5x50mm有坂弾に近い弱装弾薬であり、弱い反動から自動小銃の弾薬として適当だと考えられたが、自動小銃の機械的信頼性が低かったため実用化が遅れているうちに満州事変が勃発したため、有事を前にしての弾薬変更のリスクを危惧したマッカーサーによって1932年に.276ピダーセン弾の採用は却下された。

この時、スプリングフィールド造兵廠が試作した.276ピダーセン弾用の自動小銃は.30-06弾用に再設計されて、後にM1ガーランド小銃として1936年に制式採用されている。

また、太平洋戦争直前の1941年には、拳銃や短機関銃と小銃の中間にあたる用途にM1カービンなる小型自動小銃が開発された。もともとはフルオート射撃もできるように設計されていたが、最初のバージョンではこれは省略され、後のM2カービン・M3カービンで選択可能となった。

M1カービンに使用された.30カービン弾は(1,190J)で、.45ACP弾より倍近く強力だったが、小銃弾である.30-06弾にははるかに及ばない弾薬だった(後に.30カービン弾を使用する短機関銃や拳銃が製造されている)が、457mmの銃身から撃ち出される事で、短機関銃よりもはるかに高い初速を出し、精密な射撃も可能であり、軽快な速射性から近接戦闘にも向いていた。

現代のアサルトライフルに使用される弾薬と比較すれば.30カービン弾は弱すぎる弾薬だったが、100万丁以上製造されたM1/M2カービンの閉鎖機構は、小口径高速弾を使用するアサルトライフルに多く採用されている。

米軍から本銃を供与された自衛隊韓国軍でも長く使用され、初期のベトナム戦争ではAK-47に対抗できる有効な火器を持たなかった米軍で、最もアサルトライフルに近い銃として使用された。

成長期

ドイツのSturmgewehr 44(StG44)アサルトライフルの基本概念を確立した

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツにおいてStG44が開発され、現代的なアサルトライフルの基本概念が確立された。StG44は7.92x33mmクルツ弾と呼ばれる弾薬を使用した。

ドイツでは1940年頃から7.92x33mm弾を用いる新型自動小銃の設計を行っており、1942年からはMkb42として設計が行われ、1943年にMP43として採用、そして1944年に「突撃銃」(Sturmgewehr, シュトゥルムゲヴェーア)という用語を初めて用いたSturmgewehr 44(StG44)に改称されたのである[20]

StG44の出現以降、これを鹵獲してアサルトライフルの概念を理解した各国で様々な弾薬が開発され、戦中から戦後を通じてソ連・英国・ベルギー(FN社)・西ドイツといった諸国・企業でアサルトライフルの試作・配備が進んだ。

しかし、冷戦の中でソ連本土を攻撃できる核兵器とその運搬到達手段の開発を重視し歩兵用装備の更新を見送ったアメリカと、インドシナアルジェリアへの介入戦争で戦時状態が続いたフランスは、この流れに乗り遅れた。

ロシア・イズマッシュ

2017年8月20日次期主力小銃としてAK-12を選定したがAK-74Mにユニバーサルアップグレードキットを装着した状態と殆ど同じである。

イギリス

L85A2
レーザーサイトを装着したL85A2

初期の問題点が多かったL85をH&K社がL85A2に改修しさらにダニエルディフェンス社製レイルハンドガードやシュアファイア社製ハイダーへの更新、Elcan Specter OS 4xやマグプル社製EMAGの使用を経て単価は高価であるものの優秀なアサルトライフルへと変貌を遂げた。

2017年9月にL85A3が発表されイギリス軍に納入される予定である。

ベルギー・FN社

SCAR-Hを構えるNavy SEALsの隊員

FN社が米軍のSOCOMのトライアルのためにSCAR-LおよびSCAR-Hを開発し同トライアルに参加したが一時キャンセルされ、後に7.62mm NATO弾を使用するSCAR-HがMK17として採用された。

なお本国では5.56mm NATO弾を使用するSCAR-Lが軍の主力小銃として制式採用されている。

ドイツ・HK社

G36KV射撃訓練中のラトビア陸軍兵士H&K AG36 40mm グレネードランチャーを装備している
SIG MCX

東西統一を果たした後のドイツ連邦軍は、5.56mm NATO弾に移行するため、1996年に強化樹脂を多用した新世代の構造ながら、堅実なショートストロークピストン式を採用したG36を制式採用した。

しかし、G36の射撃による加熱で照準が狂う欠陥が発覚しドイツ連邦軍では後継としてSCAR、HK433、Steyr/Rheinmetall RS556、Haenel MK556、SIG MCXなどをテストしている。

日本・豊和工業

左方切換レバー・89式小銃用照準補助具を装着した89式5.56mm小銃

1989年に89式5.56mm小銃を制式採用し、左方切換レバー(アンビセレクター化)の追加や小銃用照準補助具(ドットサイト)の搭載などの改良を行い使用しけている

アメリカ・FNH USA

M4カービンを構えるアメリカ陸軍の隊員
M27 IAR

米軍は早い時期から現在の主流であるカービンライフルM4カービンを主力小銃として制式採用し、現在に至るまで使用し続けている。

しかし、アメリカ陸軍では5.56 NATO弾の威力不足を受け止め7.62mm NATO弾を使用するICSR小銃をテストしている。

アメリカ海兵隊はより高性能なアサルトライフルを欲しており、従来軽機関銃として使用してきたM27 IARを主力小銃として使用する試験を行っている。

空軍および海軍では現在使用しているM4カービンの後継を選定する旨は発表していない。

オーストラリア・Thales Australia

ステアーAUG A3を構えるオーストリア軍兵士

Thales F90はオーストリア軍でステアーAUGを改良ライセンス生産し同国で制式採用されたモデル。

オーストリア軍で制式採用されているステアーAUGと比較すると20mmレイルの搭載とそれに由来するフォアグリップやスコープの選択可能化などの変更があるが使用マガジンやリガーやセレクターやガスブロックやチャージングハンドルなど基本的な構造は変わらない。

フランス

HK416FはHK416A5をベースにフランス軍の要求を満たすように改修されフランス軍で制式採用された。

バレルを自国製とすることで調達コストを下げた。

インド

INSASを制式採用したがジャムやポリマー製マガジンのひび割れや3点バースト時にフルオートになるなどの欠点が取り沙汰されCRPFではINSASをAK-47へと置き換えている。

インド軍では7.62mm NATO弾を使用するアサルトライフルをINSASの後継の主力小銃として配備する計画がある。

近年の動向

小口径高速弾

ベトナム戦争中にM16用弾薬として採用された小口径高速弾は5.56mm NATO弾(1,800J, 実包重量 11.2g)へ発展し、兵士が携行できる弾薬の量は劇的に増加し、同時に銃本体の小型・軽量化も進み、各国で広く採用される標準的な弾薬となった。

現在、5.56mm NATO弾以外の独自小口径高速弾薬を採用しているのはロシア(5.45x39mm弾)と中国(5.8x42mm弾)の二国であり、両国とも5.56mm NATO弾と同程度のサイズ・重量の弾薬を採用しているが、ボディアーマーを貫通できる能力を重視している点でも共通している。

5.45mm×39弾

ソ連では米国の小口径高速弾採用に刺激された研究が1970年代に始まり、独自の小口径高速弾である5.45mm×39弾(1,390J, 実包重量 10.5g)とAK-74を採用し、AN-94イズマッシュ社製の各種アサルトライフルでも同弾が採用されている。5.45mm×39弾は米国の5.56mm NATO弾よりエネルギー・速度などで劣っているが、従来の7.62mm×39弾と大差ない腔圧のため、銃器に与える負担が少なく、ソ連は従来のAK製造ラインをそのまま転用する事が出来た。

当初、5.45mm×39弾は7.62mm×39弾や5.56mm NATO弾に比べて装薬が少なく、エネルギーは半分程度しかないため殺傷能力が劣ると見られていたが、弾頭の形状や材質を工夫した事で7.62mm×39弾よりも高い殺傷力を有している事がソ連によるアフガン侵攻で判明し、当時FN社で開発中だったM855/SS109の弾頭はこれを参考に完成されている[† 5]

5.8mm×42弾

1980年代に開発された中国の5.8x42mm弾(初速930m/s、弾頭重量4.26g、1,842J、実包重量不明)について、5.56mm NATO弾や5.45mm×39弾よりも高性能で殺傷能力が高く、有効射程は800mまで延長されており、600m程度まで良好な弾道特性を保ち、1,000mで3mmの鋼板を貫通する能力があると中国側は主張している [† 6]

中口径高速弾

様々なメリットをもたらした小口径高速弾だが、5.56mm NATO弾には一貫して中距離での殺傷力の低さが問題視される傾向があり、戦時には必ず威力不足を指摘する兵士達の不満が表明されてきた。この傾向は2001年からのアフガンにおける紛争で再度強まり、全体のサイズはそのままに、弾頭の重量を倍にした6.8mm×43SPC弾が試作され、米軍でテスト運用されている。

しかし、重弾頭を用いれば兵士が携行する弾薬の重量増加にもつながるため、小柄な体格のマイノリティ出身兵士が多い近年の米軍では運用上不利となりかねないという問題が存在し、大量の5.56mm NATO弾ストックを維持している同盟国との調整など様々な問題をはらんでいる。

同弾の採否について今以って結論は出されていないが、米軍が5.56mm NATO弾と6.8mm×43SPC弾を同一プラットフォームから使用できるアサルトライフルの試作を各メーカに要求するようになったため、近年の製品では多くが6.8mm×43SPC弾が使用できるバリエーションを有している。

7.62mm NATO弾の復活

歩兵の機械化が進み交戦距離が短縮し続けた第一次世界大戦以降の戦訓に基づき、歩兵用小銃の射程距離は短縮の一途を辿り、ベトナム戦争における小口径高速弾の採用で頂点に達した。

しかし、現代軍同士の交戦やジャングル戦では近距離化していたはずの交戦距離の概念が、2001年からのアフガンにおける紛争イラク戦争といった近年増加している山岳部・砂漠地帯といった開けていて見通しの良い場所での対テロ戦争非対称戦争)では通用しなかった。見通しの良い場所で.303ブリティッシュ弾のようなフルサイズ小銃弾で狙撃を受けると、有効射程の短いアサルトライフルでは反撃ししづらかったのである。

また、自軍兵士の犠牲を減らす事が政治的に重要な要素となった事もあって、近年では交戦前に敵を遠距離から攻撃する試みが増えている。

小火器におけるその試みのひとつが、弾頭重量を増加させ中距離以遠での精度と殺傷力を向上させた中口径高速弾の試用と、フルサイズ小銃弾の復活であり、近代化改修を受けたM14 DMRや、AR-10を継承したSR-25HK417といった、7.62mm NATO弾を使用する命中精度の高い自動小銃が、簡易な狙撃銃として使われる機会が増えた。簡易狙撃銃は精密射撃用の狙撃銃と一般の小銃と中間に位置し従来よりマークスマン・ライフルと定義されてきた。

ケースレス弾薬

西ドイツでは、1970年代から4.73mmケースレス弾薬(金属薬莢がなく火薬が固形化されている)と、その弾薬を用いた新しいアサルトライフルであるH&K G11が開発されていた。

H&K G11と4.73mmケースレス弾薬は、ステアーACR英語版とともに、米軍のアドバンスド・コンバット・ライフル英語版プログラムに参加したが、現用のM16に対して低い評価しか得られず、その後の東西ドイツ再統一による財政負荷軽減のため、ドイツ本国での採用もキャンセルされ、量産に移ることはなかった。

フレシット弾薬

飛行中のAPFSDSの弾体とサボットの離脱

既存銃器のライフル銃身と弾薬の限界を突破する試みとして、現代の戦車砲に用いられるAPFSDS弾頭と同形態の弾頭を用いた小火器が、1970年代のステアー社で考案された。

この案の試作品に用いられたのが、フレシット弾薬と呼ばれる特殊な弾薬であり、鋼製の釘状弾頭をプラスチックのサボットで覆った弾体を、ライフリングの無い銃身から射出する事で、従来の高速弾を遥かに超える1,500m/sの弾速を持つ“ステアーACR英語版”と呼ばれる新種の銃器を開発した。

ステアーACRは固定銃身と上下に移動する遊動チャンバー(薬室)を持ち、下方に下りた状態の薬室に弾倉からフレシット弾薬が供給され、引き鉄を絞ると薬室が上方へ持ち上がり、撃発位置に来ると固定撃針により着火するというオープンボルト短機関銃のような撃発機構を持ち、発射後に下方へ下りた薬室内の空薬莢(プラスチック)は、次弾の装填によって排莢されて真下に落ちる、という構造になっていた。

H&K G11とともに米軍のアドバンスド・コンバット・ライフルプログラムに参加し、良好な成績を収めたが、発射後に離脱するサボットが高速で四散し、射手の周囲の兵士に被害を与える可能性が危惧され、それ以上の実用化は進められずに終わった。

H&K G36/XM8システム

H&K G36

採用をキャンセルされたH&K G11の代替として、1990年代の終わりにドイツスペインが共同開発したH&K G36ドイツ連邦軍に採用された。

同銃はスコープを内蔵しており、機関部全体が金属で補強されたプラスチック素材で製造されるなど、素材や製法の面では従来の製品より進化していたが、使用弾薬は5.56mm NATO弾を用い、自動装填機構にはショートストロークピストン方式を用いるなど、既存技術を組み合わせただけの製品だったが、これを基にXM8システムが開発された。

XM8システムはコンポーネントとして構成された各パーツを組み合わせる事で、SAWライフルカービン短機関銃に相当する4種の火器を自在に構成でき、内蔵式レーザーサイトや残弾数カウンタといった電子装備を導入していた。

H&K社の提案を受けて、米軍によるXM8システムの採用テストが行われ、優秀な成績を残したが、採用の可否についての結論は出ないままキャンセル状態となっている。

FN SCAR

更新対象だった7.62mm NATO弾が一転して重要な存在となった米軍では、5.56mm NATO弾6.8mm×43SPC弾(7.62x39弾相当)、7.62mm NATO弾(.303ブリティッシュ弾相当)の3種の弾薬に、最小限の部品交換で対応できる共通のプラットフォームを持った次世代アサルトライフルを求めるようになった。

弾薬のサイズが近似した5.56mm NATO弾と6.8mm×43SPC弾の共通化は多くのメーカで達成できたものの、大きくサイズが異なり、発射時の衝撃も大きな7.62mm NATO弾との共通化は既存のアサルトライフルでは困難であり、7.62mm NATO弾用には別サイズのプラットフォームで対応したM16をベースとするHK416/417と、独自設計のFN SCAR-L/Hが提出された。

1950年代に設計されたAR-10の発展型であるHK416/417よりも、先進的な設計のFN SCARがテストでわずかに優秀な成績を収め、2009年4月に米陸軍第75レンジャー連隊が最初に納入された600挺を受領し、実戦でのテスト段階へ移行している。

グレネードランチャーとの一体化

グレネードランチャーとアサルトライフルを一体化させた複合火器の研究は、M14採用前後の米国で“SPIW英語版計画”として始まり、M16M203のコンビがベトナム戦争で有効な兵器として活用された経緯があり、これに倣ったソ連/ロシアもAKシリーズAN-94に装着できるGP-25/30を採用している。

近年では、ATK社英語版H&K社が共同開発した“XM29 OICW”のようなアドオン式グレネードランチャーに光学照準器、レーザー測距装置、コンピューターなどを装備したシステムが注目を集めるようになり、各社の競作が始まっている。FN社の“FN F2000”システムをはじめ、“AICW英語版”(豪)、“PAPOP英語版”(仏)、“K11複合型小銃”(韓国)、マルチバレルのアサルトライフル“ガタク英語版”(インド)といった製品の開発が進められているが、重量やコストの問題から実用化に至っているものはごくわずかである。

主なアサルトライフル

ブルパップ方式の製品

脚注

注釈

  1. ^ 英語発音: [əˈsɔːlt ˈraɪfl]
  2. ^ 従来の小銃で使用されていた7.62mm弾や7.92mm弾のこと。英語ではfull power cartridgesなどと表現される。単射での狙撃を前提に使用されていた弾薬なので、小銃で全射撃をすると反動が過大で実用性が低かった。フルサイズの弾薬で効果的な全自動射撃を行うには、二脚三脚で地面などに委託して反動を抑えることができる大型の機関銃が必要だった。
  3. ^ M14のような西側戦後第一世代の自動小銃は、NATO諸国の弾薬の共通化を目指すアメリカの意向でフルサイズ小銃弾である7.62mmNATO弾を使用しており、実用的な全自動射撃能力が難しい傾向がある。
  4. ^ チェイ=リゴッティに使用された6.5mmx52カルカノ弾と、フェドロフM1916に使用された6.5mmx50SR有坂弾は、その薬莢サイズから現代ではフルサイズ小銃弾として分類されている。しかし、実際には2,600-2,300J程度のエネルギーしか出せない非力な弾薬で、7.92x57mmモーゼル弾.30-06スプリングフィールド弾が3,600-4,000Jという強装であった事と比較すると格段に弱装だった事が分かる。これらと同レベルの弾薬としては、1920年代に米軍が採用を検討した.276ペデルセン弾英語版や、StG44によって突撃銃の概念が確立された後に英国で試作された.280ブリティッシュ弾がある。また、現代の米軍が限定的に採用している6.8×43mm_SPC弾6.5 mm グレンデル弾英語版なども2,400-2,500J前後で同じレベルの弾薬とされる
  5. ^ 狩猟用のホローポイント弾など、命中後に弾頭が拡がるように設計された弾丸は、高速で人体に命中した際に深刻なダメージを与える。ただし、これらの弾頭は硬標的(鉄板など)には効果がなく、低強度の防弾衣で簡単に防がれてしまう。
    しかし、5.45mm×39弾は鋼鉄製の尖った弾芯を持ち、現在使用されている7N10弾薬の場合14mm厚のスチールプレートを100mで貫通するため、中強度の防弾衣すら簡単に貫通してしまい、人体に侵入すると先端が折れ曲がって回転しながら致命傷を与える構造になっている
  6. ^ China's New 5.8x42mm Weapons Complex Revealed
    その一方で、5.8x42mm弾をティッシュの束に撃ちこんで弾頭の挙動を見たテストでは、5.56mm NATO弾のようなジャケットの剥離や弾芯の再分化(フラグメンテーション)は発生せず、5.45x39mm弾のような横転も起こさず、殺傷効果に欠けると主張するレポートも存在する。
    しかし、5.8mm×42弾は一般に輸出されておらず、テスト用に入手できた実包が“本当に”中国軍で使用されているものと同じ弾頭なのか疑問があり、過去に5.45mm×39弾が西側でテストされた際にも、弾頭の特殊な挙動が見過ごされていた

出典

  1. ^ a b Small Arms Identification and Operation Guide - Eurasian Communist Countries (1973年改訂版)” (PDF). DIA (1973年9月). 2015年3月5日閲覧。
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  16. ^ The Battle Rifle: Development and Use Since World War II. p. 1-2. https://books.google.co.jp/books?id=_a0zAwAAQBAJ&pg=PA1 
  17. ^ ГОСТ 28653-90 «Оружие стрелковое. Термины и определения»”. Росстандартロシア語版. 2015年7月6日閲覧。
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  20. ^ a b c Is there a thing such as an Assault or Battle rifle?”. Modern Firearms. 2016年12月31日閲覧。

関連項目

外部リンク