「覆面作家」の版間の差分
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* [[拳骨拓史]]-本名の鈴木朝雄(スズキノリタケ)で雑誌連載寄稿歴あり、拳骨名義を使用するようになって以降は学歴等の一部経歴を隠すようになった。 |
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* [[堺屋太一]] - 本名は池口小太郎。「[[油断!]]」では、勤務先の通商産業省(現・[[経済産業省]])を「某中央官庁」としていた。 |
2019年2月7日 (木) 17:44時点における版
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覆面作家(ふくめんさっか)とは素性やプロフィールをほとんど明らかにしない作家のこと。
概要
プロフィールには謎の部分が多く、基本的に本名や顔写真は公開されない。また、ペンネーム(変名)ではなく本名で活動している場合であっても、それ以外のプロフィールをほとんど明らかにしていない作家も覆面作家と呼ばれる場合がある。
文学賞の授賞式などの公の場においても本人は登場せず、コメントを出す程度に留まり、詳細なプロフィールを公表しなければならなかったり授賞式に出席しなければならないならば主要文学賞でも受賞を辞退することもある。
プロフィールを明らかにする場合、公表されるプロフィールは真実である場合もあれば、真偽が入り混じったもの、あるいは性別などまで含めて全く架空のプロフィールと人格を設定し、作家側は事実上ゴーストライターと同様の形で振る舞う場合もある。プロフィールが真実の場合、生年または誕生日、出身地、あとはあっても学歴程度に留まり、人物像を掴みにくいように出版社側でも配慮がされている。
それ以外の覆面作家の定義はやや曖昧で、作家にもよるが覆面作家を自称する場合も自称しない場合もある。
すでに商業ベースで活動をし著名になっている人物が他の名義で覆面作家になる場合もあれば、商業活動を開始した当初から素性などを全く明らかにしない覆面作家も存在する。
音楽界においてはバンドのGReeeeNや作詞家のSatomiなどが挙げられる。
理由
作家が素性を隠し覆面作家として活動する理由としては、以下のようなケースが挙げられる。
- 著名人・既存の作家と明らかにしないことによって作品に先入観を持たれないようにする。
- まったく違う分野の作品を別名義で上梓した後、同一人物であることを発表し、読者にインパクトを与える。
- 契約面の都合などから、本来のプロフィールが出せないため。
- 副業作家が本業として勤務している会社・機関からの圧力や、同僚のやっかみなどを避けるため。または勤務先が就業規則で副業禁止を定めており、作家活動が知られると解雇されるため。
- 素性を明らかにして自らのプライバシーや名誉を荒らされたくない。
- 自らの作品に対する内容的(場合によりその他諸々な)責任を回避、もしくは放棄しやすくする。
- 反体制側の人間であり、政府から迫害される恐れがある。
- 出版社の社員が自社雑誌に小説を掲載しても、会社の規定により社員の名義では原稿料が支払われないことから、 原稿料を貰うためにペンネームを使ったため、正体が明かせない。
- メインの仕事がいわゆるゴーストライターであるため、素性を広く知られると出版業界内での活動にも支障を来たす。
- 性別・国籍・民族などの出自・身元を装い、執筆する。
- 描いている作品の内容のため、自分の家族や知人にも正体を知られたくない(特に性描写を含む成人向け作品や、反社会的な作品の場合)。
- 家族との不和がある、あるいは家族の性格や経済面に問題がある(例えば異常な浪費癖)などの理由から、自身が作家活動をしていることや作家としての収入があることを、近親者にも知られたくない。
また、作家自身に当初はそのつもりはなかったものの、以下のような都合から、結果として事実上の覆面作家になってしまったなどというケースもある。
- デビュー当初はプロフィールを伏せていて、結果的に公表するタイミングを逸してしまった。
- デビュー当初からプロフィールを隠すつもりはなかったが、その後も公表する機会が得られなかった。
- デビュー当初は出版社の意向でプロフィールを伏せたが、そのまま覆面作家として人気が沸騰してしまい、話題性などの商業的事情からプロフィールの公開が難しくなってしまった。
- デビュー当初は成人向けの専門であったなどの事情から、一般向け(少年誌、青年誌など)に転じて以降も出版社側からの配慮や要請がありプロフィールの公開ができない、あるいは公開させてもらえない。
また、複数の作家が共有筆名で1人の覆面作家になることもある。
個人情報
先に述べた通り、覆面作家は基本的に本名を伏せペンネームを使用しており、その顔・素性・経歴なども明らかにしておらず、世間から見たその人物像は謎に包まれている。
そのため、覆面作家の作品がベストセラーになったり主要な文学賞を受賞したり、映像化などの話題性の高い商業展開があると、時にその正体不明の人物像はファンのみならず一般大衆の興味を惹きつけ、一時的な社会的関心事となることもある。そこを狙い、キー局・全国誌を主としたマスコミによる報道が、「公人(みなし公人)のプライバシーは制限される」「報道・表現の自由(大衆の知る権利)」を大義名分として、視聴率や発行部数の向上を目当てに、興味本位にその覆面作家の顔や人物像、個人情報などの秘密を世間に曝露させようと強引な取材を行うことがある。
同様に、このような不法者らにスクープを売り込むことで一稼ぎを企むトップ屋や、私立探偵が覆面作家の素性を探ろうとすることもある。この場合、出版社・出版業界にとっては当該の作家のプライバシーの保護が、その後の執筆活動の可否なども絡んで緊急の問題になることがある。
なお、覆面作家の正体や個人情報については、覆面作家も確定申告や納税を行う都合、出版業界以外でも公認会計士・税理士や、自治体・国税関係の税務担当職員らに本名や住所を開示する必要があるため、同時に職員がそれらの個人情報を把握することになる。ただし、それらの情報は極めて重要な個人情報として、職員に厳しい守秘義務が課せられており、諸規則の手前からは2005年まで存在した高額納税者公示制度を除けば、脱税などの捜査や刑事告発で個人情報の開示を命じる場合、または情報漏洩でもない限りこれらから素性が明らかにされることは有り得ない。
覆面作家の例(元覆面作家を含む)
- グレッグ・イーガン
- ロード・オーシュ - ジョルジュ・バタイユの変名
- ヤスミナ・カドラ
- A・J・クィネル
- ハリー・クレッシング - 弁護士、経済学者ハリー・アダム・ルーバーの変名
- トー・クン - ジャック・ギルバートとジーン・マクリーンの合作用の変名
- ミッキー・スピレイン
- コードウェイナー・スミス
- ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
- C・L・ムーア
- ヤン・デンマン - 齋藤十一と田島一昌がオランダ人を装ってコラムを書くために使った変名
- トレヴェニアン - 大学教授、映画研究家ロドニー・ウィリアム・ウィテカーの変名
- イザヤ・ベンダサン - 山本七平がユダヤ人を装って評論を書くために使った変名
- モーゼス・ベン・ヨハイ - 飛鳥昭雄がユダヤ人を装って評論を書くために使った変名
- ポール・ボネ - 藤島泰輔がフランス人を装って評論を書くために使った変名
- アンディ・マクナブ
- パオロ・マッツァリーノ
- バンクシー
- モルデカイ・モーゼ - 久保田政男がユダヤ人を装って評論を書くために使った変名
- ピエール・モリオン - アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの変名
- ポーリーヌ・レアージュ - ドミニク・オーリーの変名
- バーナビー・ロス - エラリー・クイーンの変名
- トマス・ピンチョン
- シンシアリー (著作家)
- 明石散人
- 秋津国宏 - 山上たつひこの小説家としての変名
- 麻生幾
- 浅生鴨 - 元NHK広報局Twitter初代担当者職員が同局在籍時より使用していたペンネーム
- 麻生保 - 作曲家矢代秋雄の『奇譚クラブ』における投稿名[1]。
- 一橋文哉 - 元毎日新聞記者・広野伊佐美。
- 伊東雑音/Pero - ソフパル/ユニゾンシフト・ブロッサムによるアダルトゲーム『ALICE・ぱれーど』にて二人の原画家で用いていた変名。前者については当項も参照。
- 伊吹隼人
- 宇河弘樹
- 逢阪まさよし
- 大場つぐみ - ガモウひろしの変名という説もあるが、公式な発表は無い。
- 奥月宴 - 竹中労の変名という説がある。
- 奥菜秀次
- 海堂尊 - 本名は江澤英史。博士号を持つ外科医と二足の草鞋を履いており、医学書や論文は本名で執筆している。
- 加田伶太郎
- 鎌池和馬
- 加茂川洗耳
- 北川歩実
- 北村薫 - 1991年に日本推理作家協会賞を受賞した際に素性を明かした。元県立高校国語教諭。
- 狐
- 鯨統一郎
- 倉田悠子 - 稲葉真弓がくりいむレモンのノベライズを書いていた時のペンネーム。死去の前年に公表した。
- 黒河小太郎
- 拳骨拓史-本名の鈴木朝雄(スズキノリタケ)で雑誌連載寄稿歴あり、拳骨名義を使用するようになって以降は学歴等の一部経歴を隠すようになった。
- 彩胡ジュン
- 堺屋太一 - 本名は池口小太郎。「油断!」では、勤務先の通商産業省(現・経済産業省)を「某中央官庁」としていた。
- 榊山保 - 三島由紀夫の変名。
- 嵯峨島昭
- 坂木司
- 桜井亜美
- 桜井誠 (活動家) - 在日特権を許さない市民の会初代会長・「日本第一党」代表・政治活動家、高田誠[2][3]。
- サタミシュウ
- 属十三
- 殊能将之
- 鷹見緋沙子
- 田島莉茉子
- 竜田一人 - 東京電力福島第一原子力発電所において作業員として収束作業に当たった経験をもとに、「福島の現実」を描いた漫画作品『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』を上梓。
- 徳大寺有恒 - 本名は杉江博愛。元レーシングドライバー。
- 中田永一
- 虎虎
- 沼正三
- 八田利一
- 氷川透
- 避難じいさん
- 藤本ひとみ - 少女小説、特にライトノベルを中心に活動していた時期、王領寺静(おうりょうじ しずか)名義で少年向けの作品を発表していた。
- 古野まほろ
- 北条民雄
- 舞城王太郎
- 白身魚 - 京都アニメーション所属の作画・キャラクターデザイン担当者が絵師として活動する際に用いる変名。ただし主な活動の場でもあるライトノベル業界等、アニメ界以外では実はほとんど公表されていない。
- 真木じゅん - 横田順彌の変名。
- 物集高音
- 村崎百郎
- 山川純一
- 山手樹一郎 - 元々は雑誌編集者の兼業作家で、原稿料をもらうためにつけたペンネームであり、当初は素性不明の作家であった。また「覆面作家」名義で『新編八犬伝』を執筆し、話題となった。
- 山野車輪
- 若杉冽 - 某中央省庁のキャリア官僚。『原発ホワイトアウト』で話題になる。特定秘密保護法施行前に『東京ブラックアウト』を出版[4]。
- 淮陰生
- T・K生 - 池明観が『世界』に連載していた「韓国からの通信」で使用していた名前。
- 朴泰赫 - 加瀬英明が韓国人に擬態して著書を出版していたということで論争となった。[5]
- 中原みすず
- 虚淵玄
関連項目
- 禁断叢書 - 1988年以降に河出書房新社から刊行されていたポルノ小説シリーズ。企画の立ち上げに澁澤龍彦が関わり、倉橋由美子などの純文学作家たちが覆面で参加していた。中村真一郎は、生前出版された『中村真一郎小説集成』に収められた作品一覧に、この叢書内の作品を自作として載せている。
- 作家
- ペンネーム