「聖女 (忍者)」の版間の差分
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'''聖女'''とは、[[真田氏]]が統治する[[松代藩]]に伝来した[[忍術]]書に名前が見える忍術伝承者である。この忍術は[[武田氏]]伝来のものであり、松代藩家臣の[[根津氏]]の[[望月氏|望月一党]]によって伝えられたもので、江戸時代には甲陽流と呼ばれることになる。男性忍者と同様の諜報活動や破壊工作を行う女忍者、いわゆる[[くノ一]]の存在は学術的に存在が疑問視されているものの、聖女の記述は女性の忍術継承者として資料に記載された珍しい一例である。 |
'''聖女'''とは、[[真田氏]]が統治する[[松代藩]]に伝来した[[忍術]]書に名前が見える忍術伝承者である。この忍術は[[武田氏]]伝来のものであり、松代藩家臣の[[根津氏]]の[[望月氏|望月一党]]によって伝えられたもので、江戸時代には甲陽流と呼ばれることになる<ref name=Kawakami>川上、多田</ref>。男性忍者と同様の諜報活動や破壊工作を行う女忍者、いわゆる[[くノ一]]の存在は学術的に存在が疑問視されているものの、聖女の記述は女性の忍術継承者として資料に記載された珍しい一例である。 |
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=== 伝書の記述 === |
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聖女が伝承者として記載されている伝書は、[[伊賀流忍者博物館]]に所蔵されている。この伝書には流儀として[[伊賀流]]と[[甲賀流]]の二つが併記されている<ref name=Kawakami/>（もっとも、忍者にとって伊賀と甲賀同一地理圏内であり、国境は意識されていなかったともされる<ref>中島、 p. 40-41.</ref>）。伝書の中には[[山本勘助]]なども登場するが、内容は過半が[[軍法侍用集]]と共通し、そこに呪術を加味したものである。この流派は江戸時代に勘助や[[横田高松]]などを流祖に擬した「甲陽流」という武術として発展し、幕末まで続くこととなる<ref name=Kawakami |
聖女が伝承者として記載されている伝書は、[[伊賀流忍者博物館]]に所蔵されている。この伝書には流儀として[[伊賀流]]と[[甲賀流]]の二つが併記されている<ref name=Kawakami/>（もっとも、忍者にとって伊賀と甲賀同一地理圏内であり、国境は意識されていなかったともされる<ref>中島、 p. 40-41.</ref>）。伝書の中には[[山本勘助]]なども登場するが、内容は過半が[[軍法侍用集]]と共通し、そこに呪術を加味したものである。この流派は江戸時代に勘助や[[横田高松]]などを流祖に擬した「甲陽流」という武術として発展し、幕末まで続くこととなる<ref name=Kawakami/>。 |
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伊賀流忍者博物館名誉館長の[[川上仁一]]は「聖女」という伝承者はその名前から独身女性であったのではないかと推測している<ref name=Kawakami/>。ただし、川上は伝書における聖女の記述についてそれ以上詳細に述べておらず、具体的な彼女の生涯については不明である。 |
伊賀流忍者博物館名誉館長の[[川上仁一]]は「聖女」という伝承者はその名前から独身女性であったのではないかと推測している<ref name=Kawakami/>。ただし、川上は伝書における聖女の記述についてそれ以上詳細に述べておらず、具体的な彼女の生涯については不明である。 |
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2019年6月29日 (土) 15:50時点における版
聖女とは、真田氏が統治する松代藩に伝来した忍術書に名前が見える忍術伝承者である。この忍術は武田氏伝来のものであり、松代藩家臣の根津氏の望月一党によって伝えられたもので、江戸時代には甲陽流と呼ばれることになる[1]。男性忍者と同様の諜報活動や破壊工作を行う女忍者、いわゆるくノ一の存在は学術的に存在が疑問視されているものの、聖女の記述は女性の忍術継承者として資料に記載された珍しい一例である。
概要
歴史的背景
元々根津氏と望月氏は滋野朝臣から出た同族であり、海野氏とともに滋野氏三家を構成する。また、のちに仕えることとなる真田氏も一説には海野氏の支流である[2]。また、望月氏は近江国甲賀郡主として赴任した望月兼家を祖とする甲賀望月氏を支流に持っており、この甲賀望月氏が後に甲賀五十三家の筆頭格として望月出雲守などの著名な忍びを輩出することとなる[3]。
戦国時代に滋野三家は小県郡や佐久郡で勢力を保持していたが、天文10年（1541年）の武田信玄の侵攻(海野平の戦い)を契機に海野氏宗家は滅亡[4]、根津氏、望月氏、真田氏は武田家家臣として仕えることになる[2][5]。
根津氏の本拠は信濃国小県郡禰津で、歩き巫女の地として有名な地であり望月昌頼の妻望月千代女が居住した村でもある。望月千代女に関しては、歴史考証家の稲垣史生が忍者であるという仮説を提示し広く巷間に広まっているが、三重大学人文学部准教授の吉丸雄哉はこの説を完全な憶測に基づいているとして厳しく批判している[6]。他方で、歩き巫女研究科の石川好一の調査によると、歩き巫女を統率した神事舞太夫の子孫の家に三通の人相書きが伝わっており、何らかの情報活動を行っていた可能性はあるのではないかとの指摘もある[7]。
天目山の戦いにおいて武田家が滅亡したのはち、常安が家督を甥の昌綱に譲って徳川家康に仕える一方、昌綱は後北条氏に仕えたのち、上杉氏、徳川氏と渡り歩き最終的に真田昌幸に仕え子孫は松代藩の家臣となった。
伝書の記述
聖女が伝承者として記載されている伝書は、伊賀流忍者博物館に所蔵されている。この伝書には流儀として伊賀流と甲賀流の二つが併記されている[1]（もっとも、忍者にとって伊賀と甲賀同一地理圏内であり、国境は意識されていなかったともされる[8]）。伝書の中には山本勘助なども登場するが、内容は過半が軍法侍用集と共通し、そこに呪術を加味したものである。この流派は江戸時代に勘助や横田高松などを流祖に擬した「甲陽流」という武術として発展し、幕末まで続くこととなる[1]。
伊賀流忍者博物館名誉館長の川上仁一は「聖女」という伝承者はその名前から独身女性であったのではないかと推測している[1]。ただし、川上は伝書における聖女の記述についてそれ以上詳細に述べておらず、具体的な彼女の生涯については不明である。
脚注
関連項目
参考文献
- 川上仁一; 多田容子『忍者 現代(いま)に活きる口伝』BABジャパン、2016年、33-35頁。ISBN 4814200218。
- 柴辻俊六『真田昌幸』吉川弘文館、1996年
- 戦国武将研究会. 真田丸と真田一族99の謎
- 中島篤巳『忍者の兵法 三大秘伝書を読む』〈角川ソフィア文庫〉2017年。
- 平山, 優. 真田三代: 幸綱・昌幸・信繁の史実に迫る. PHP研究所. p. 444
- 平山優『真田三代 幸綱・昌幸・信繁の史実に迫る』〈PHP新書〉2011年。
- 吉丸雄哉（三重大学人文学部准教授） (2017年4月). “望月千代女伝の虚妄”. In 吉丸雄哉、山田雄司 編. 忍者の誕生. 勉誠出版. ISBN 978-4-585-22151-7