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「Mk 41 (ミサイル発射機)」の版間の差分

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[[画像:NormandyVLS.jpg|thumb|300px|Mk 41 VLS上面、ミサイル・セルの蓋。]]
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'''Mk 41 垂直発射システム'''(Mk 41 Vertical Launching System)は、世界的に広く用いられている[[ミサイル]]発射システム。[[VLS|垂直発射方式]]を採用しており、[[スタンダードミサイル|スタンダード]]艦対空ミサイル、[[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]]巡航ミサイル、[[アスロック]]対潜ミサイルなど、幅広い種類のミサイルを運用することができる。
'''Mk.41 垂直発射システム'''(Mk.41 Vertical Launching System)は、世界的に広く用いられている[[ミサイル]]発射システム。[[VLS|垂直発射方式]]を採用しており、[[スタンダードミサイル|スタンダード]]艦対空ミサイル、[[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]]巡航ミサイル、[[アスロック]]対潜ミサイルなど、幅広い種類のミサイルを運用することができる。


なお、ミサイル発射機単体としては、[[アメリカ海軍]]ではMk 158またはMk 159として別に制式番号を付与しており、厳密には、Mk 41とはミサイル発射システム全体に対する名称である。
なお、ミサイル発射機単体としては別に制式番号を付与しており、厳密には、Mk 41とはミサイル発射システム全体に対する名称である。


== 概要 ==
== 来歴 ==
Mk.41は、もともと、先進水上ミサイル・システム(ASMS)の開発から派生するかたちで、1965年ないし1966年より着手された{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}。ASMSは1969年には[[イージスシステム]](AWS)と改称された{{Sfn|大熊|2006|pp=46-57}}。
Mk 41は、現在世界でもっとも多く運用されている[[VLS|垂直発射装置]]である。典型的なVLSとして、[[火薬庫|弾薬庫]]が発射機を兼ねているほか、Mk 41固有の特徴として、複数種類の[[ミサイル]]を同時に並行して収容し、任意のミサイルを迅速に発射できることから、複合的な脅威に対する優れた対応能力を有する。


1976年には基本設計が完了したものの、[[タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦]]の建造開始には間に合わず、最初の5隻では[[ターター・システム]]と同じ連装式の[[Mk 26 (ミサイル発射機)|Mk.26]]が搭載された。その後、6番艦「[[バンカー・ヒル (ミサイル巡洋艦)|バンカー・ヒル]]」より本機の搭載が開始された{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}。
[[イージスシステム|イージス戦闘システム]]の要であり<ref name="軍事システム">大熊(2006)による</ref>、現在、各国で就役している全ての[[イージス艦]]に搭載されている。また、[[カナダ]]の[[イロクォイ級ミサイル駆逐艦]]や[[日本]]の[[たかなみ型護衛艦]]など、それ以外の[[戦闘艦]]にも数多くが搭載されている。


== 構成 ==
== 設計 ==
現在世界でもっとも多く運用されている[[VLS|垂直発射装置]]である。典型的なVLSとして、[[火薬庫|弾薬庫]]が発射機を兼ねているほか、Mk 41固有の特徴として、複数種類の[[ミサイル]]を同時に並行して収容し、任意のミサイルを迅速に発射できることから、複合的な脅威に対する優れた対応能力を有する。1秒に1発のミサイルを発射することができる{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}
[[File:VLS MK41 Canister Types.gif|400px|thumb|ミサイル・セルの高さとミサイルの種類。]]
Mk 41システムは、[[ミサイル]]の[[火薬庫|弾薬庫]]と発射機を兼ねるケース('''ミサイル・セル'''と呼称)を最小単位としており、これを8セル集めたのが1モジュールとなる。また、全高が異なる3つの機種があり、大型なものほど、より多くの種類のミサイルを運用することができる。


[[イージスシステム|イージス戦闘システム]]の要であり{{Sfn|大熊|2006}}、現在、各国で就役している全ての[[イージス艦]]に搭載されている。また、[[カナダ]]の[[イロクォイ級ミサイル駆逐艦]]や[[日本]]の[[たかなみ型護衛艦]]など、それ以外の[[戦闘艦]]にも数多くが搭載されている。
;Strike-Length
:もっとも大型のモジュールで、全高は約7.7m(303inch)、[[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]]巡航ミサイル、[[スタンダードミサイル#SM-2シリーズ|スタンダード SM-2]]/[[RIM-174スタンダードERAM|SM-6]]艦隊防空および[[RIM-161スタンダード・ミサイル3|SM-3]]弾道弾迎撃ミサイル、[[シースパロー (ミサイル)|シースパロー]]および[[ESSM]]個艦防空ミサイル、[[RUM-139 VLA|垂直発射式アスロック]]対潜ミサイルを運用することができる。
:[[アメリカ海軍]]がこれまでに運用しているMk 41はいずもStrike-Lengthモジュールを使用していが、このうち、発射機単体については、8モジュールで構成されものを'''Mk 158'''、4モジュールで構成されるもを'''Mk 159'''として制式化している。これらには、それぞれ1モジュールずつ、ミサイル・セル3つ分のスペースを使ってミサイル再装填用の[[クレーン]]を設置した '''ストライク・ダウン・モジュール'''と呼ばれるものが組み込まれていたが、洋上でのミサイル再装填がきわめて困難であることから、後期の搭載艦では組み込まれなくなった。


=== システム構成 ===
Mk 41システムは、下表のように、垂直発射機を中核として、それを制御する発射管制装置({{Lang|en|Launch Control Unit, LCU}})などによって構成されている{{Sfn|CSCS|2010|loc=§7.1.4}}。

{| class="wikitable" style="text-align:center"
! 艦級
! ベースライン
! mod
! 発射管制装置
!colspan="2"| 発射機
|-
|タイコンデロガ級
|rowspan="3"|IIA/III
|0
|rowspan="3"|Mk 211 mod 0/1
|colspan="2"|Mk 158 mod 0 (61セル)
|-
|スプルーアンス級
|1
|rowspan="2"|Mk 158 mod 0 (61セル)
|-
|-
|rowspan="3"|アーレイ・バーク級
|2
|Mk 159 mod 0 (29セル)
|-
|IV/V
|7
|Mk 211 mod 3
|Mk 176 mod 0 (64セル)
|Mk 177 mod 0 (32セル)
|-
|VI/VII
|15
|Mk 235 mod 0
|Mk 176 mod 2 (64セル)
|Mk 177 mod 3 (32セル)
|}

[[ミサイル]]の[[火薬庫|弾薬庫]]と発射機を兼ねるケース('''ミサイル・セル'''と呼称)を最小単位としており、こを8セル集めたのが1モジュールとなこのうち、Mk 158/159発射機については、構成るモジュールのうち1ずつ、ミサイル・セル3つ分のスペースを使ってミサイル再装填用の[[クレーン]](Replenishment handling system equipment)を設置した '''ストライク・ダウン・モジュール'''と呼ばれるものが組み込まれていた。しかし洋上でのミサイル再装填がきわめて困難であることから{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}Mk 176/177では組み込まれなくなった{{Sfn|CSCS|2010|loc=§7.1.4}}

またその後、モジュール単位ではなく、単一のセルでの搭載が可能な機種(Single Cell Launcher:SCL)も開発されており、Mk 25キャニスターによるESSMの試射を成功させている。

=== ミサイル・セル ===
[[File:VLS MK41 Canister Types.gif|400px|thumb|ミサイル・セルの高さとミサイルの種類。]]
ミサイル・セルには、全高が異なる3つの機種があり、大型なものほど、より多くの種類のミサイルを運用することができる。[[アメリカ海軍]]がこれまでに運用しているMk 41はいずれもStrike-Lengthモジュールを使用している。
;Strike-Length
:もっとも大型のモジュールで、全高は約7.7メートル(303インチ)、[[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]]巡航ミサイル、[[スタンダードミサイル#SM-2シリーズ|スタンダード SM-2]]/[[RIM-174スタンダードERAM|SM-6]]艦隊防空および[[RIM-161スタンダード・ミサイル3|SM-3]]弾道弾迎撃ミサイル、[[シースパロー (ミサイル)|シースパロー]]および[[ESSM]]個艦防空ミサイル、[[RUM-139 VLA|垂直発射式アスロック]]対潜ミサイルを運用することができる。
;Tactical-Length
;Tactical-Length
:中型のモジュールで、全高は約6.8m(266inch)、全高が大きいトマホーク巡航ミサイルや、スタンダードミサイルのなかでも大型である[[スタンダードミサイル#RIM-156 SM-2ERブロックIV~IVA|SM-2ER]]やSM-3、SM-6は搭載できないが、それ以外のミサイルは運用できる。
:中型のモジュールで、全高は約6.8メートル(266インチ)、全高が大きいトマホーク巡航ミサイルや、スタンダードミサイルのなかでも大型である[[スタンダードミサイル#RIM-156 SM-2ER|SM-2ER]]やSM-3、SM-6は搭載できないが、それ以外のミサイルは運用できる。


;Self-Defense
;Self-Defense
:全高約5.3m(209inch)。もっとも小型だが、'''Tactical Length'''モジュールと同様のミサイルを運用することができる。
:全高約5.3メートル(209インチ)。もっとも小型だが、'''Tactical Length'''モジュールと同様のミサイルを運用することができる。


また、それぞれのミサイルは、専用のキャニスターを介してミサイル・セルに収容される。Mk 13はスタンダードSM-2MR、Mk 14はトマホーク、Mk 15はVLA用のキャニスターであり、シースパロー/ESSM用のキャニスターとしては、1発のみ収容できるMk 22と、1セルに4発収容できるMk 25がある。また、弾体が大型化したスタンダードSM-2ERやSM-6、BMD用のSM-3を収容するためのMk 21も開発され、配備されている。
また、それぞれのミサイルは、専用のキャニスターを介してミサイル・セルに収容される。Mk 13はスタンダードSM-2MR、Mk 14はトマホーク、Mk 15はVLA用のキャニスターであり、シースパロー/ESSM用のキャニスターとしては、1発のみ収容できるMk 22と、1セルに4発収容できるMk 25がある{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}。また、弾体が大型化したスタンダードSM-2ERやSM-6、BMD用のSM-3を収容するためのMk 21も開発され、配備されている。


なお、現在では、モジュール単位ではなく、単一のセルでの搭載が可能な機種(Single Cell Launcher:SCL)も開発されており、Mk 25キャニスターによるESSMの試射を成功させている。
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画像:Open VLS hatches on USS Hue City (CG-66).jpg|点検のためハッチを開口したMk 41
画像:Open VLS hatches on USS Hue City (CG-66).jpg|点検のためハッチを開口したMk 41
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== 運用と搭載艦 ==
== 運用と搭載艦 ==
Mk 41を最も早く搭載したのは[[タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦]]の6番艦「[[バンカー・ヒル (ミサイル巡洋艦)|CG-52 バンカー・ヒル]]」以降の艦で、61セルのMk 158発射機2基を搭載し、Mk 41 VLSのシステム全体の呼称としては'''Mk 41 Mod 0'''とされている。続いて、[[スプルーアンス級駆逐艦]]の一部艦が前甲板の[[アスロック]]8連装発射機Mk 16にかえて61セルのMk 158発射機1基を搭載し、これは'''Mk 41 Mod 1'''とされた。
Mk 41を最も早く搭載したのは[[タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦]]の6番艦「[[バンカー・ヒル (ミサイル巡洋艦)|バンカー・ヒル]]」以降の艦で、上表の通り61セルのMk 158発射機2基を搭載し、Mk 41 VLSのシステム全体の呼称としては'''Mk 41 Mod 0'''とされている。続いて、[[スプルーアンス級駆逐艦]]の一部艦が前甲板の[[アスロック]]8連装発射機Mk 16にかえて61セルのMk 158発射機1基を搭載し、これは'''Mk 41 Mod 1'''とされた{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}


また[[アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦]]は'''Mk 41 Mod 2'''として、前甲板に29セル(後期建造艦は32セル)の'''Mk 159'''、後甲板に61セル(後期建造艦では64セル)の'''Mk 158'''を搭載している。このうち、特にアーレイ・バーク級については、設計時よりMk 41の開発知られていたため、その搭載する[[イージスシステム]]および[[トマホーク武器システム|トマホークシステム]]の重要なサブシステムと位置づけられて、セル数について徹底的な検討が行われたことが知られている<ref name="軍事システム">大熊(2006)よる</ref>
また[[アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦]]では、設計時よりMk.41の搭載前提となっていたため、その搭載する[[イージスシステム]]および[[トマホーク武器システム|トマホークシステム]]の重要なサブシステムと位置づけられて、セル数について徹底的な検討が行われたことが知られている{{Sfn|大熊|2006}}。この結果、フライトI/IIでは'''Mk 41 Mod 2'''として、前甲板29セル、後甲板に61セルを搭載した{{Sfn|Friedman|1997|pp=420-421}}


一方、[[カナダ]]の[[イロクォイ級ミサイル駆逐艦]]は、[[1990年代]]初頭に行われたTRUMP改修によって29セルのMk 41を搭載し、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]国外では初の搭載例となった。これは、スタンダード SM-2MRの運用にのみ用いられている。これに対し、[[1994年]]より就役を開始した[[ドイツ海軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ海軍]]の[[ブランデンブルク級フリゲート]]では[[シースパロー (ミサイル)|シースパロー]]艦対空ミサイルの運用に用いられており、逆に[[1996年]]より就役を開始した[[日本]]の[[むらさめ型護衛艦]]においては、垂直発射式アスロック(VLA)の運用のみが行われており、艦対空ミサイルについては別に搭載した [[Mk 48 (ミサイル発射機)|Mk 48 VLS]]で運用している。
一方、[[カナダ]]の[[イロクォイ級ミサイル駆逐艦]]は、[[1990年代]]初頭に行われたTRUMP改修によって29セルのMk 41を搭載し、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]国外では初の搭載例となった。これは、スタンダード SM-2MRの運用にのみ用いられている。これに対し、[[1994年]]より就役を開始した[[ドイツ海軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ海軍]]の[[ブランデンブルク級フリゲート]]では[[シースパロー (ミサイル)|シースパロー]]艦対空ミサイルの運用に用いられており、逆に[[1996年]]より就役を開始した[[日本]]の[[むらさめ型護衛艦]]においては、垂直発射式アスロック(VLA)の運用のみが行われており、艦対空ミサイルについては別に搭載した [[Mk 48 (ミサイル発射機)|Mk 48 VLS]]で運用している。
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}}
* {{Cite book|authorlink=:en:Norman Friedman|first=Norman|last=Friedman|year=1997|title= The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998|publisher=[[:en:United States Naval Institute|Naval Institute Press]]|isbn=978-1557502681|ref=harv}}
* [[大熊康之]]『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年
* {{Cite report|author=CSCS|year=2010|title=Gunner's Mate NAVEDTRA 14324A S/N 0504-LP-110-6326|url=http://navybmr.com/study%20material/14324A.pdf|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|authorlink=大熊康之|last=大熊|first=康之|year=2006|title=軍事システム エンジニアリング|publisher=かや書房|isbn=4-906124-63-1|ref=harv}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2019年7月31日 (水) 11:53時点における版

Mk 41 VLS上面、ミサイル・セルの蓋。

Mk.41 垂直発射システム(Mk.41 Vertical Launching System)は、世界的に広く用いられているミサイル発射システム。垂直発射方式を採用しており、スタンダード艦対空ミサイル、トマホーク巡航ミサイル、アスロック対潜ミサイルなど、幅広い種類のミサイルを運用することができる。

なお、ミサイル発射機単体としては別に制式番号を付与しており、厳密には、Mk 41とはミサイル発射システム全体に対する名称である。

来歴

Mk.41は、もともと、先進水上ミサイル・システム(ASMS)の開発から派生するかたちで、1965年ないし1966年より着手された[1]。ASMSは1969年にはイージスシステム(AWS)と改称された[2]

1976年には基本設計が完了したものの、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の建造開始には間に合わず、最初の5隻ではターター・システムと同じ連装式のMk.26が搭載された。その後、6番艦「バンカー・ヒル」より本機の搭載が開始された[1]

設計

現在世界でもっとも多く運用されている垂直発射装置である。典型的なVLSとして、弾薬庫が発射機を兼ねているほか、Mk 41固有の特徴として、複数種類のミサイルを同時に並行して収容し、任意のミサイルを迅速に発射できることから、複合的な脅威に対する優れた対応能力を有する。1秒に1発のミサイルを発射することができる[1]

イージス戦闘システムの要であり[3]、現在、各国で就役している全てのイージス艦に搭載されている。また、カナダイロクォイ級ミサイル駆逐艦日本たかなみ型護衛艦など、それ以外の戦闘艦にも数多くが搭載されている。

システム構成

Mk 41システムは、下表のように、垂直発射機を中核として、それを制御する発射管制装置(Launch Control Unit, LCU)などによって構成されている[4]

艦級 ベースライン mod 発射管制装置 発射機
タイコンデロガ級 IIA/III 0 Mk 211 mod 0/1 Mk 158 mod 0 (61セル)
スプルーアンス級 1 Mk 158 mod 0 (61セル)
アーレイ・バーク級 2 Mk 159 mod 0 (29セル)
IV/V 7 Mk 211 mod 3 Mk 176 mod 0 (64セル) Mk 177 mod 0 (32セル)
VI/VII 15 Mk 235 mod 0 Mk 176 mod 2 (64セル) Mk 177 mod 3 (32セル)

ミサイル弾薬庫と発射機を兼ねるケース(ミサイル・セルと呼称)を最小単位としており、これを8セル集めたのが1モジュールとなる。このうち、Mk 158/159発射機については、構成するモジュールのうち1つずつ、ミサイル・セル3つ分のスペースを使ってミサイル再装填用のクレーン(Replenishment handling system equipment)を設置した ストライク・ダウン・モジュールと呼ばれるものが組み込まれていた。しかし洋上でのミサイル再装填がきわめて困難であることから[1]、Mk 176/177では組み込まれなくなった[4]

またその後、モジュール単位ではなく、単一のセルでの搭載が可能な機種(Single Cell Launcher:SCL)も開発されており、Mk 25キャニスターによるESSMの試射を成功させている。

ミサイル・セル

ミサイル・セルの高さとミサイルの種類。

ミサイル・セルには、全高が異なる3つの機種があり、大型なものほど、より多くの種類のミサイルを運用することができる。アメリカ海軍がこれまでに運用しているMk 41はいずれもStrike-Lengthモジュールを使用している。

Strike-Length
もっとも大型のモジュールで、全高は約7.7メートル(303インチ)、トマホーク巡航ミサイル、スタンダード SM-2/SM-6艦隊防空およびSM-3弾道弾迎撃ミサイル、シースパローおよびESSM個艦防空ミサイル、垂直発射式アスロック対潜ミサイルを運用することができる。
Tactical-Length
中型のモジュールで、全高は約6.8メートル(266インチ)、全高が大きいトマホーク巡航ミサイルや、スタンダードミサイルのなかでも大型であるSM-2ERやSM-3、SM-6は搭載できないが、それ以外のミサイルは運用できる。
Self-Defense
全高約5.3メートル(209インチ)。もっとも小型だが、Tactical Lengthモジュールと同様のミサイルを運用することができる。

また、それぞれのミサイルは、専用のキャニスターを介してミサイル・セルに収容される。Mk 13はスタンダードSM-2MR、Mk 14はトマホーク、Mk 15はVLA用のキャニスターであり、シースパロー/ESSM用のキャニスターとしては、1発のみ収容できるMk 22と、1セルに4発収容できるMk 25がある[1]。また、弾体が大型化したスタンダードSM-2ERやSM-6、BMD用のSM-3を収容するためのMk 21も開発され、配備されている。

運用と搭載艦

Mk 41を最も早く搭載したのはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の6番艦「バンカー・ヒル」以降の艦で、上表の通り61セルのMk 158発射機2基を搭載し、Mk 41 VLSのシステム全体の呼称としてはMk 41 Mod 0とされている。続いて、スプルーアンス級駆逐艦の一部艦が前甲板のアスロック8連装発射機Mk 16にかえて61セルのMk 158発射機1基を搭載し、これはMk 41 Mod 1とされた[1]

またアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦では、設計時よりMk.41の搭載が前提となっていたため、その搭載するイージスシステムおよびトマホークシステムの重要なサブシステムと位置づけられて、セル数について徹底的な検討が行われたことが知られている[3]。この結果、フライトI/IIではMk 41 Mod 2として、前甲板に29セル、後甲板に61セルを搭載した[1]

一方、カナダイロクォイ級ミサイル駆逐艦は、1990年代初頭に行われたTRUMP改修によって29セルのMk 41を搭載し、アメリカ国外では初の搭載例となった。これは、スタンダード SM-2MRの運用にのみ用いられている。これに対し、1994年より就役を開始したドイツ海軍ブランデンブルク級フリゲートではシースパロー艦対空ミサイルの運用に用いられており、逆に1996年より就役を開始した日本むらさめ型護衛艦においては、垂直発射式アスロック(VLA)の運用のみが行われており、艦対空ミサイルについては別に搭載した Mk 48 VLSで運用している。

この他にも採用が相次ぎ、現在では11ヶ国の海軍で16クラス、173隻の艦艇に搭載されて運用されている。

搭載艦

 アメリカ海軍

 中華民国海軍

  • 高雄の水陸両用コマンド船(試験船)

 オーストラリア海軍

 オランダ海軍

海上自衛隊

 カナダ海軍

モデル一覧[5]
mod セル数 搭載例
0 122
(61+61)
タイコンデロガ級
1 61 スプルーアンス級
2 90
(29+61)
アーレイ・バーク級フライトI/II、こんごう型[6]
4 16 ブランデンブルク級
T 29 イロクォイ級
5 8 アンザック級
7 96
(32+64)
アーレイ・バーク級フライトIIA
(DDG-79-90)
8 16 サーリヒレイス級
9 むらさめ型
10 32 ザクセン級
11 40 デ・ゼーヴェン・プローヴィンシェン級
12 48 アルバロ・デ・バサン級
13 32 李舜臣級
15 96
(32+64)
アーレイ・バーク級フライトIIA
(DDG-91-)
16 8 アデレード級
17 試験艦「あすか」[7]
18 32 たかなみ型[8]
20 96
(32+64)
あたご型[8]
22 16 ひゅうが型
29 32 あきづき型[9] [10]

脚注

  1. ^ a b c d e f g Friedman 1997, pp. 420–421.
  2. ^ 大熊 2006, pp. 46–57.
  3. ^ a b 大熊 2006.
  4. ^ a b CSCS 2010, §7.1.4.
  5. ^ Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 
  6. ^ NJSS (2009年9月16日). “「みょうこう」臨時修理(誘導武器)垂直発射装置VLS MK41 MOD2”. 2015年6月15日閲覧。
  7. ^ 防衛省 (2006年8月25日). “公共調達の適正化について(平成18年8月25日付財計第2017号)に基づく随意契約に係る情報の公表予定価格 契約金額 落札率 (物品役務等)” (PDF). 2012年10月18日閲覧。
  8. ^ a b Ricardo T. Alvarez (2010-6) (PDF). Reducing the Logistics Footprint in Naval Ships Through the Optimization of Allowance Equipage Lists (AELs). NPS. http://www.dtic.mil/cgi-bin/GetTRDoc?AD=ADA524564 2012年10月18日閲覧。 
  9. ^ yasu_osugi (2015年7月18日). “Mk41VLS of DD-117 Suzutuki”. 2015年7月24日閲覧。
  10. ^ NJSS (2015年1月17日). “「てるづき」臨修 垂直発射装置VLS MK41 MOD29 調査”. 2015年6月15日閲覧。

参考文献

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、Mk 41 (ミサイル発射機)に関するカテゴリがあります。