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「和声」の版間の差分

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;'''サブドミナント''':Sと略記する。Tの'''4度上'''、すなわち'''5度下'''の和音である。Dほど強くないが、Tに比べれば「緊張」した印象を与える。「発展」「外向的」な印象が強い。Dに移行するか、Tに解決する。IIは、IVとともに非常によく使われるSである(ただし、IIはTには移行しない)。また、VIがIVの代理和音としてSの機能を持つことがある。Tの5度下であるので、Dとは逆方向の和音であると考えられる。いいかえると、SのDはTであるという考えが成り立つ。<br>
;'''サブドミナント''':Sと略記する。Tの'''4度上'''、すなわち'''5度下'''の和音である。Dほど強くないが、Tに比べれば「緊張」した印象を与える。「発展」「外向的」な印象が強い。Dに移行するか、Tに解決する。IIは、IVとともに非常によく使われるSである(ただし、IIはTには移行しない)。また、VIがIVの代理和音としてSの機能を持つことがある。Tの5度下であるので、Dとは逆方向の和音であると考えられる。いいかえると、SのDはTであるという考えが成り立つ。<br>


:サブドミナントの内、短調サブドミナント、および長調の同主短調から借用した(準固有和音という)、サブドミナントを特に'''サブドミナント・マイナー'''と呼び、Smと略記することがある。この時、本来の長調の(固有和音という)サブドミナントを'''サブドミナント・メジャー'''と呼ぶことがある。略記はSである。
:サブドミナントの内、短調において自然短音階または旋律的短音階を適用したときにできるサブドミナント、および長調の同主短調から借用した(準固有和音という)、サブドミナントを特に'''サブドミナント・マイナー'''と呼び、Smと略記することがある。この時、本来の長調の(固有和音という)サブドミナントを'''サブドミナント・メジャー'''と呼ぶことがある。略記はSまたはSMである。
<div style="float:right;padding:10px;">[[画像:Wasei_kino002.png]]<br><br><i>図:各機能の関係</i></div>
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:;'''ドッペルドミナント''':ドッペルとはドイツ語でダブルのことであるから、ダブルドミナント、ドミナントのドミナントである。VのVであって(ドレミファソ、ソラシドレ)IIに相当する。このことから、Dに移行するIIの和音をDへのドミナントと考えることもできる。同様に、Dに移行するIVをIIの代理和音とする理論書もある。一般にはドッペルドミナントの機能とSとは同一視される。
:;'''ドッペルドミナント''':ドッペルとはドイツ語でダブルのことであるから、ダブルドミナント、ドミナントのドミナントである。VのVであって(ドレミファソ、ソラシドレ)IIに相当する。このことから、Dに移行するIIの和音をDへのドミナントと考えることもできる。同様に、Dに移行するIVをIIの代理和音とする理論書もある。一般にはドッペルドミナントの機能とSとは同一視される。

2004年9月23日 (木) 14:43時点における版

和声とは、西洋音楽音楽理論の用語のひとつであり、和音の進行、声部の導き方および配置の組み合わせのことである。

また和声とは狭義には機能和声のことである。これは、個々の和音にはその根音と調主音との関係に従って役割があると考えるものである。歴史的には機能和声に至る以前の和声が存在するが、現在の西洋音楽はほとんどがこの機能和声によって成り立っている。

また、一般的に和声とは和声学のことである。和声学とは、機能和声の理論ならびにその実習のことであり、作曲編曲の理論・実習のひとつである。

和音の機能



譜例:和音記号(和音の下) 和音の上はコードネーム(参考)である。



譜例:各機能の和音と代理和音

和音記号でIの機能をトニカ(またはトニック)、Vの機能をドミナント、IVの機能をサブドミナントという。

トニカ
Tと略記する。和声の中心となる機能である。この和音が鳴らされるとき、「落ち着き」「解放」「解決」「弛緩」といった印象を与える。「自宅」のイメージである。楽曲の最後はTで終わる。Iのほか、VIもIの代理の時、Tの機能を持つ。IIIもTの機能を持つことがある。
代理和音とは、ある和音の代わりに使われる和音で、似た響きを持ち、同じ機能を持つ和音のことである。代理和音は、元の和音の3度上、または3度下の和音がよく使われる。なぜなら、3度関係にある和音は三和音の構成音3音の内2音が同じだからである。(3度関係にある2和音の、下の和音の第3音は上の和音の根音に、第5音は第3音に一致するのである。)
ドミナント
Dと略記する。Tの5度上の和音であり、Tとは対照的に、「緊張」した印象を与える。「外出先」のイメージである。Tに移行しようとする力が強い。(トニカに移行するように緊張が解ける方向で移行することを解決と呼ぶ。)Vに第7音を加えてV7の和音で現れることが多い。また、IIIやVIIもVの代理の時、Dの機能を持つ。
サブドミナント
Sと略記する。Tの4度上、すなわち5度下の和音である。Dほど強くないが、Tに比べれば「緊張」した印象を与える。「発展」「外向的」な印象が強い。Dに移行するか、Tに解決する。IIは、IVとともに非常によく使われるSである(ただし、IIはTには移行しない)。また、VIがIVの代理和音としてSの機能を持つことがある。Tの5度下であるので、Dとは逆方向の和音であると考えられる。いいかえると、SのDはTであるという考えが成り立つ。
サブドミナントの内、短調において自然短音階または旋律的短音階を適用したときにできるサブドミナント、および長調の同主短調から借用した(準固有和音という)、サブドミナントを特にサブドミナント・マイナーと呼び、Smと略記することがある。この時、本来の長調の(固有和音という)サブドミナントをサブドミナント・メジャーと呼ぶことがある。略記はSまたはSMである。


図:各機能の関係
ドッペルドミナント
ドッペルとはドイツ語でダブルのことであるから、ダブルドミナント、ドミナントのドミナントである。VのVであって(ドレミファソ、ソラシドレ)IIに相当する。このことから、Dに移行するIIの和音をDへのドミナントと考えることもできる。同様に、Dに移行するIVをIIの代理和音とする理論書もある。一般にはドッペルドミナントの機能とSとは同一視される。

このように、SのドミナントはTであり、DのドミナントがSであるので、T、D、Sは正三角形を成すことになる。

カデンツ

Dは、Tへ移行する力が強いので、Sには移行しない(のが原則である)。 TとSはいずれの機能にも移行する。 このことから、Tを中心に和音の進行を考えると、

T→D→T
T→S→D→T
T→S→T

の3種しか考えられないことになる。 これらをカデンツと呼ぶ。


進行

「進行」とは、ある和音からある和音に移行することである。

伝統的な和声学において、和音記号ごとに可能な進行を考えると、次のようになる。

  1. Iは、すべての三和音とV7に進行することができる。
  2. IIは、V(7)にのみ進行することができる。
  3. TのIIIは、IかVI→III→IVという進行の中でのみ使われる。DのIIIはTのIかVIに進行する。
  4. IVは、I、II(7)、V(7)に進行する。
  5. V(7)は、TのIかVIに進行する。
  6. TのVIは、Iを除くすべての三和とV7に進行することができる。SのVIは、Iに進行する。
  7. VIIは、TのIかVIに進行する。

V7以外の7の和音は、その和音の第7音を前の和音が構成音として持っていて、次の和音がその7音を構成音として持っているか第7音の2度下の音を構成音として持っていれば、三和音の代わりに使うことができることが多い。

声部

伝統的な和声学では、和音の進行にあたって各音を構成するパートの動きが重要であると考える。このため、和声学の実習においては、混声四部合唱編成、すなわち、ソプラノアルトテノールバスの4声部を使用する。これを四声体という。これらの4声部の動きと、それら相互の関係がスムーズであることが求められる。

  1. 各パートは、それぞれの声域の中で動く。すなわち、ソプラノは中央ハから、アルトはその下のから、テノールは中央ハオクターブ下から、それぞれ2オクターブ弱(1オクターブと長6度)の音域で動き、バスは、中央ハのすぐ上のホから2オクターブ下のホまでの音域で動くように書かれる。
  2. 各パートは、離れすぎない。隣り合う各パートの音程はオクターブまでである。ただし、テノールとバスは1オクターブと完全5度までである。また、上のパートが下のパートより下がることは、避けられる。
  3. ある2つのパートの動きが、同方向であるとき、平行という。逆方向であるとき、反行という。

限定進行

各パートの動きの中で、この音はこの音に進行しなければならないとするものが伝統的な和声学にはある。主なものは次の通りである。

  1. V(7)の第3音は、Tに進行するとき、2度上行しなければならない。
  2. 7の和音、9の和音の第7音や9の和音の第9音は、次の和音に進行するとき、2度下行する(解決という)か、同じ音に留め置かれる。
  3. V7を除く7の和音、9の和音の第7音、第9音は、前の和音の同じ音から留め置かれる。これを予備という。したがって、そのような音を持たない和音から7の和音、9の和音に進行できない。

禁忌

伝統的な和声学で、避けるべき、また禁止とされる動きは数多くあるが、重要なものは次の2つである。

連続1(8)度

ある2つのパートが、連続する2つの和音の間で、続けて完全1度または完全8度になることを連続1(8)度といい、禁止される。(このような進行は実際の音楽ではよく見かけるので不思議に思われるが、和声的に「異なる2つのパート」であるとき禁止されるのであって、和声的にひとつのパートと考えられるときには問題とならない。)したがって、限定進行をする音は、同時に2パートで鳴らすことはできない。(限定進行をすると連続1(8)度になるため)

平行5度

ある2つのパートが、連続する2つの和音の間で、続けて5度になっていて、しかも平行して完全5度に到達することを、平行5度といい、禁止される。反行である場合、また、後続音程が完全5度以外の5度である場合には、平行5度と呼ばず、問題とならない。

課題実習法

和声の学習にあたっては、多く課題の実習を行う。四声体の内1声部を与えられて、残り3声部を埋めて完成するもので、ソプラノもしくはバスが与えられるのが普通である。ソプラノが与えられるものをソプラノ課題、バスが与えられるものをバス課題という。

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