コンテンツにスキップ

「利用者:L26/sandbox2」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
編集の要約なし
61行目: 61行目:
}}
}}


'''不斉合成'''(ふせいごうせい)とは[[化学]]的な処理過程のひとつ。[[光学活性]]([[キラリティー|キラル]])な物質を作り分けることである。
'''フルオロベンゼン'''(''Fluorobenzene'')は、[[分子式]]C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>Fで表される有機化合物である。しばしば、PhFと表記される。[[ベンゼン]]の誘導体であり、ベンゼンに一つの[[フッ素]]原子が導入された構造を持つ。


光学活性な物質とは、[[分子]]構造が非対称なために鏡写しの構造をとった分子([[鏡像体]]、エナンチオマー)が元の分子とは異なる物質のことである。これらは、化学反応性や[[物性]]がほぼ等しいため分離が困難であるが、生体への作用はまったく異なっている場合がある。そのため、鏡写しの分子のうち有用な物質を選択的に合成することが[[医薬品]]、[[農薬]]の開発に大きな貢献をした。
== 合成法 ==
実験室スケールでは、フルオロベンゼンは[[ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート]]の熱分解によって得られる<ref>{{OrgSynth|author = Flood, D. T.|year = 1943|title=Fluorobenzene|collvol = 2|collvolpages = 295|prep= CV2P0295}}</ref>。


光学活性な化合物の合成手法としては、ジアステレオ選択的な方法とエナンチオ選択的な合成方法がある。ジアステレオ選択的な方法とは、すでに[[不斉]]の要素を持つ化合物に対して反応を行うことで、一方の[[ジアステレオマー]]を優先的に合成する方法である。
:PhN<sub>2</sub>BF<sub>4</sub> &rarr; PhF + [[三フッ化ホウ素|BF<sub>3</sub>]] + [[窒素|N<sub>2</sub>]]


エナンチオ選択的な方法とは、不斉の要素を持たない化合物に対して反応を行うことで、一方の[[エナンチオマー]]を優先的に合成する方法である。[[野依良治]]は不斉な配位子を持つ金属錯体を触媒として、不斉要素を持たない化合物のエナンチオ選択的還元反応において有用な方法を開発し、2001年の[[ノーベル化学賞]]を受賞している。
上記の反応において、固体のベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラートを加熱すると、三フッ化ホウ素とフルオロベンゼンの二種類の揮発物質が生成する。これらは[[沸点]]の違いにより分離できる。


ちなみに、光学活性な化合物を得る不斉合成以外の方法としては、[[ラセミ体]]に対して光学活性な基質を反応させて、ジアステレオマーにして分離することで光学活性な化合物を単離する方法(ジアステレオマー塩法)や、ラセミ体のうち一方と選択的に反応させることで光学的に純粋な原料と生成物とを得る方法(速度論的分割)などがある。
== 歴史 ==
フルオロベンゼンは、1886年に、[[ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン|ボン大学]]のO. Wallachによって初めて合成された。彼は、まず[[塩化ベンゼンジアゾニウム]]を[[ピペリジン]]塩として、これを[[フッ化水素酸]]で処理することにより合成した<ref>Wallach, O. “Über einen Weg zur leichten Gewinnung organischer Fluorverbindungen” (Concerning a method for easily preparing organic fluorine compounds) Justus Liebig's Annalen der Chemie, 1886, Volume 235, p.&nbsp;255–271; {{doi|10.1002/jlac.18862350303}}</ref>


エナンチオ選択的不斉合成反応では基質の側鎖を少し変化させただけで、選択性(異性体の片方が過剰にできる割合)が劇的に変化する。モデル化合物で選択性の高い反応が見つかっても、有用な化合物の生産には全く役立たず、不斉触媒を使うよりもエナンチオマーの等量混合物であるラセミ体を合成して、それを分離するほうが手間がかからず、安価になる場合もある。
:[PhN<sub>2</sub>]Cl + 2 C<sub>5</sub>H<sub>10</sub>NH &rarr; PhN=N-NC<sub>5</sub>H<sub>10</sub> + [C<sub>5</sub>H<sub>10</sub>NH<sub>2</sub>]Cl
:PhN=N-NC<sub>5</sub>H<sub>10</sub> + 2 HF &rarr; PhF + N<sub>2</sub> + [C<sub>5</sub>H<sub>10</sub>NH<sub>2</sub>]F


== 反応性 ==
== 関連事項 ==
*[[光学異性体]]
フルオロベンゼンは、炭素-フッ素結合の強さのため、比較的不活性な化合物である。しばしば[[有機溶媒]]として利用されるが、[[金属錯体]]を結晶化させることがある。
:[[Image:Cp*Ti(FPh)+.png|thumb|140px|none|[(C<sub>5</sub>Me<sub>5</sub>)<sub>2</sub>Ti(FC<sub>6</sub>H<sub>5</sub>)]<sup>+</sup>の構造、フルオロベンゼンがチタンに配位している]]


== 外部リンク ==

* [http://weblearningplaza.jst.go.jp/cgi-bin/user/top.pl?next=lesson_list&type=simple&field_code=32&course_code=442 キラル化学] 技術者Web学習システム
== 脚注 ==
<references />

2021年1月17日 (日) 08:15時点における版

Fluorobenzene
識別情報
CAS登録番号 462-06-6 チェック
PubChem 10008
ChemSpider 9614 チェック
KEGG C11272 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL16070 チェック
特性
化学式 C6H5F
モル質量 96.103
外観 無色液体
密度 1.025 g/mL
融点

−44 °C, 229 K, -47 °F

沸点

85 °C, 358 K, 185 °F

への溶解度 難溶
磁化率 -58.4·10−6 cm3/mol
構造
分子の形 平面
危険性
NFPA 704
3
1
0
Rフレーズ R36, R37, R38
Sフレーズ S16, S26, S36
関連する物質
関連するハロベンゼン クロロベンゼン
ブロモベンゼン
ヨードベンゼン
関連物質 ベンゼン
1,2-ジフルオロベンゼン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

不斉合成(ふせいごうせい)とは化学的な処理過程のひとつ。光学活性キラル)な物質を作り分けることである。

光学活性な物質とは、分子構造が非対称なために鏡写しの構造をとった分子(鏡像体、エナンチオマー)が元の分子とは異なる物質のことである。これらは、化学反応性や物性がほぼ等しいため分離が困難であるが、生体への作用はまったく異なっている場合がある。そのため、鏡写しの分子のうち有用な物質を選択的に合成することが医薬品農薬の開発に大きな貢献をした。

光学活性な化合物の合成手法としては、ジアステレオ選択的な方法とエナンチオ選択的な合成方法がある。ジアステレオ選択的な方法とは、すでに不斉の要素を持つ化合物に対して反応を行うことで、一方のジアステレオマーを優先的に合成する方法である。

エナンチオ選択的な方法とは、不斉の要素を持たない化合物に対して反応を行うことで、一方のエナンチオマーを優先的に合成する方法である。野依良治は不斉な配位子を持つ金属錯体を触媒として、不斉要素を持たない化合物のエナンチオ選択的還元反応において有用な方法を開発し、2001年のノーベル化学賞を受賞している。

ちなみに、光学活性な化合物を得る不斉合成以外の方法としては、ラセミ体に対して光学活性な基質を反応させて、ジアステレオマーにして分離することで光学活性な化合物を単離する方法(ジアステレオマー塩法)や、ラセミ体のうち一方と選択的に反応させることで光学的に純粋な原料と生成物とを得る方法(速度論的分割)などがある。

エナンチオ選択的不斉合成反応では基質の側鎖を少し変化させただけで、選択性(異性体の片方が過剰にできる割合)が劇的に変化する。モデル化合物で選択性の高い反応が見つかっても、有用な化合物の生産には全く役立たず、不斉触媒を使うよりもエナンチオマーの等量混合物であるラセミ体を合成して、それを分離するほうが手間がかからず、安価になる場合もある。

関連事項

外部リンク