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=== 普及 ===
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2021年4月9日 (金) 18:15時点における版

アジフライ
種類 フライ料理
発祥地 日本
関連食文化 洋食
誕生時期 明治時代
主な材料 アジ
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アジフライ（表記揺れ: あじフライ、鯵フライ）は、アジを食材としたフライ料理である。日本で独自に発達した洋食のひとつであり、英語では「Horse mackerel deep-fried in breadcrumbs」、「Deep-fried Horse Mackerel」等という表現で、日本でよく食べられる料理として紹介されている[1][2]。

歴史

アジフライの誕生

日本では、縄文時代からアジが食されていたと考えられており[3][注釈 1]、平安時代には行事食として用いられる[5]など、美味しい魚として重用されてきた[注釈 2]。

明治維新により、西洋の調理法を用いた洋食が日本に定着すると、食材にパン粉を付けて油で揚げるフライ料理が取り入れられ[7][注釈 3]、明治初期までにはアジをフライにしたアジフライが食べられるようになった[9]。

普及

アジフライを作るために必要なパン粉

アジフライを扱うとんかつ店・小田保によると、明治初期の西洋料理指南書にはカキフライ、エビフライなどの記載はあったものの、アジフライの記載はなかった[9]。同店は、フライ料理は当時高級料理であり、家庭でも一般的だったアジは除外されてしまったのだろうかと記している[9]。また、1895年（明治28年）に創業し、カキフライやエビフライの発祥の店ともいわれる[10]西洋料理店の煉瓦亭では、様々な魚介類のフライが試行錯誤された[11]が、アジフライは煉瓦亭の代表的なメニューには挙げられていない[10]。

一方、同じく1895年に刊行された家庭向け料理解説書『家庭叢書 第8巻 簡易料理』には、

魚類の「フライ」を製するには、淡白なる魚類（譬えば鯛（たい）、比良魚（ひらめ）、鯊（はぜ）、あなご、鮎（あゆ）、鰺（あじ）等）を切身に［中略］米利堅粉（めりけんこ）にくるみ卵黄（きみ）をぬり麺麭粉（ぱんこ）に轉（ころ）ばし脂揚（あぶらあげ）を為すこと

—家庭叢書 第8巻 簡易料理,民友社

という記載があり、魚類のフライについて解説する中で、フライに適した魚としてタイ、ヒラメ、ハゼ、アナゴと並んでアジを例示している[12]。 また、村井多嘉子が1907年（明治40年）から対談形式で連載した『弦斎夫人の料理談』では

先づ鰺のゼイゴと腸を取って三枚に下ろします。それへ薄塩をあてて両側へメリケン粉を叩きつけます。それを玉子でくるんでパン粉をかけます。斯うしたのをラード油かバターで揚げます。

—村井多嘉子,弦斎夫人の料理談

と記されている[13][注釈 4]。

アジフライの調理に必要なパン粉は、1916年（大正5年）に初めて商品化された[15]。戦後の食糧難に際して電気パンの技術が転用されてパン粉の大量生産が可能となり[16]、1955年（昭和30年）の学校給食にもアジフライが採用されている[17]。

その後、アジフライは日本国内で家庭料理として広く普及し[18]、おかずだけでなく、おやつ[18]、酒のさかな[19]、さらには1歳から1歳半の離乳食[20]としても親しまれている。マルハニチロが2018年に行ったアンケートでは、『お弁当のおかずにしたい魚介料理』の3位にランクインした[21]。

調理法

アジフライの具材にもなるマアジ

アジフライは、具材のアジをおろして（さばいて）味付けをし、小麦粉・卵・牛乳を合わせたものを付けてからパン粉をまぶし、油で揚げることで作ることができる[22]。細かい調理方法は以下のようにいくつかのやり方がある。

具材
  • マアジ[23] - マアジにはキアジやクロアジなどの種類があり、キアジが美味であるとされている[24]。
さばき方・下処理
  • 三枚おろし[22]
  • フライ開き（背開き・腹開き）- アジフライには背開きが多く、尻尾を残してそのまま食べてしまうフライ料理であることから、背びれが残る腹開きはあまりされない[25]。
このほか、下処理の手順・留意点として次のような点が挙げられている。頭、稜鱗（ゼイゴ、ゼンゴとも）、内臓を取る[26]。血合いと内臓をきれいに取り去ることで臭みがなく味よく仕上がる[27]。骨抜き用のピンセットで小骨を取る[28]。水気をよく切る[26]。また、「京ばし松輪」ではアジを生きたままさばき、塩をして10時間ほど寝かせることで余分な水分を出している[29] [30][31]。
揚げ方

ソースと付け合せ

ソース
2018年にJタウンネットが実施したアンケートによれば、アジフライにかける調味料はウスターソースが29.4％、醤油が23.3％、中濃ソースが15.8％、タルタルソースが8.8％である[33]。
付け合わせ

味・食感

グルメ雑誌ライターの北尾トロは、理想的なアジフライには「衣のサクサク感と出来たてのアツアツ感」があり、噛んだ瞬間に旨いという声が出るとしている[37]。また、「アジフライの聖地」を名乗る長崎県松浦市は、同市のアジフライは日本一であると主張し、その特徴を「ふっくら肉厚でフワフワ、サクサク」「臭みがなくジューシー」であることとしている[38]。

栄養素

1人前を1尾とした場合、224キロカロリーであり、ロース肉のトンカツ（1枚463キロカロリー）やエビフライ（3尾〈タルタルソース添え〉377キロカロリー）に比べ低カロリーであるとする管理栄養士がいる一方[39]、吸油率はエビフライの13パーセントやトンカツの14パーセントに対しアジフライは22パーセントと高く、アジフライの1人前は2尾程度であることも考慮した場合、トンカツ1枚（100グラム）よりも高カロリーであるとする管理栄養士もいる[40]。『日本食品標準成分表』によると100グラムあたりのカロリーは、アジフライが270キロカロリーなのに対し、トンカツはロース肉429キロカロリー・ヒレ肉379キロカロリー、エビフライは236キロカロリーである[41]。

また、アジフライは低糖質だともされる[6]。『日本食品標準成分表』によると100グラムあたりの炭水化物は、アジフライが7.9グラムに対し、トンカツはロース9.8グラム・ヒレ14.9グラム、エビフライは20.3グラムである[41]。ただし、糖質を燃焼させるビタミンB1は100グラム辺り0.12ミリグラムであり、トンカツ（ロース肉0.75ミリグラム、ヒレ肉1.09グラム）より少ない[40][42]。

アジにはエイコサペンタエン酸（EPA）やドコサヘキサエン酸（DHA）が豊富に含まれているとされるが[28]、これらは油に溶けて出してしまうと述べる管理栄養士もいる[40]。『日本食品標準成分表』によると100グラムあたりのEPA含有量は、生のアジが300ミリグラムに対しアジフライは240ミリグラム、同じくDHA含有量は生のアジが570ミリグラムに対しアジフライは560グラムである[43]。

外食・中食として

スーパーなどでは、惣菜商品として調理された状態で販売されている[44]。また、冷凍食品として衣がついた状態で流通されているものもある[45]。衣付きの冷凍アジフライは輸入物もあり、韓国、中国、オランダなどの産地がある[46][47][48]。マアジに似たメアジがアジフライの原料としてタイから輸入されている例もある[49]。

東京・京橋の「京ばし松輪」は、ランチタイムにはアジフライ定食のみの提供だが行列ができることで知られている[30]。また、牛丼チェーンの吉野家は、一時期「アジフライ定食」「アジフライ丼」「アジフライ単品」を販売していた[50][51]。

  • 総菜売り場で売られている状態のアジフライ
    総菜売り場で売られている状態のアジフライ
  • 東京 京ばし松輪のアジフライ定食
    東京 京ばし松輪のアジフライ定食
  • 吉野家のアジフライ定食
    吉野家のアジフライ定食

日本文化の中で

長崎県松浦市は「アジフライの聖地」として町おこしに取り組んでいる。同市はアジの水揚げ量が日本一であることから、2019年にアジフライの聖地宣言を行い「アジフライの聖地」を商標登録した[52]。アジフライマップの作製やグッズ展開もしているほか、2021年3月には市内の道の駅2カ所に阿翁石で作られたアジフライのモニュメントを設置している[52]。これらの活動により長崎県の観光振興に貢献したとして、松浦市は「県ツーリズム・アワード」で最高のグランプリを受賞した[53]。また、アジフライは同市のふるさと納税の返礼品にもなっている[54]。

エッセイストの平松洋子は、キッチン大正軒のアジフライをテーマにしたエッセイ「あじフライを有楽町で」を執筆している[55]。

『孤独のグルメ』Season6の10では千葉県富津市金谷のアジフライ定食がテーマとなっている[56]。

バリエーション

アジフライに甘酢あんかけをかけたアジフライ南蛮がある[57]。また、アジフライ丼、アジフライバーガーなどの派生料理がある[58]。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 貝塚からもアジの骨が出土している[4]。
  2. ^ 江戸時代の『本朝食鑑』ではおいしい魚として挙げられており[5]、味の良さが日本語としての「アジ」の語源という説もある[6]。
  3. ^ フライと同様にパン粉を付けて油で揚げるカツレツ（コートレット）は明治以前にも日本で食べられていた記録があり、福澤諭吉は1860年（万延元年）に『華英通語』にて「吉列（かつれつ）」に言及している[8]。
  4. ^ これに対し、1903年（明治36年）1月から1年間、村井多嘉子の夫・村井弦斎によって報知新聞に連載された小説『食道楽』にはアジ料理をテーマにした回があるが、アジフライではなくアジの酢煮、酢の物、蓼酢、蓼蒸し、味噌焼、醤油干が登場した[14]。
  5. ^ 煉瓦亭のポークカツレツにもキャベツの千切りが添えられていた[8]。

出典

  1. ^ “Let's cook Japanese”. NHK WORLD-JAPAN. 2021年4月5日閲覧。
  2. ^ “Dining with the Chef”. NHK WORLD JAPAN. 2021年4月5日閲覧。
  3. ^ “味が良いから「あじ（鯵）」 縄文の昔から日本人に愛されてきた魚”. ダイヤモンド・オンライン. 2021年4月6日閲覧。
  4. ^ “特集　伝えよう魚食文化、見つめ直そう豊かな海” (PDF). 水産庁. 2021年4月6日閲覧。
  5. ^ a b “旬の素材（アジ）”. 船橋市ホームページ. 2021年4月6日閲覧。
  6. ^ a b “アジの名前の由来は「”味”が良い」の「味」？？”. ふたば産業株式会社. 2021年4月6日閲覧。
  7. ^ “「てんぷら×魚フライ」で誕生したエビフライ”. JBpress. 2021年4月6日閲覧。
  8. ^ a b “揚げ物ではなかった「とんかつ」誕生秘話”. JBPress. 2021年4月6日閲覧。
  9. ^ a b c “《築地》市場直送ならではの別格アジフライ”. 小田保. 2021年4月6日閲覧。
  10. ^ a b 「煉瓦亭」『古地図で巡る百年越えの老舗 東京』JTBパブリッシング、2013年2月28日、100-101頁。ISBN 9784533089831。 
  11. ^ 菊地武顕『あのメニューが生まれた店』平凡社〈コロナ・ブックス〉、2013年11月13日、29頁。ISBN 9784582634860。 
  12. ^ 民友社 1895, p. 90.
  13. ^ a b 村井多嘉子 1907, p. 243-244.
  14. ^ 村井弦斎 1903, p. 125-129.
  15. ^ “パン粉の知識”. ライオンフーヅ株式会社. 2021年4月9日閲覧。
  16. ^ 青木孝 (2019-06-30). “電極式調理の発明からパン粉へ続く歴史および再現実験” (PDF). Science Journal of Kanagawa University (神奈川大学総合理学研究所) 30: 12. https://www.sci.kanagawa-u.ac.jp/math-phys/aoki/u17aokDATA/SJKU_2019_vol30-aok-9-16.pdf 2021年4月9日閲覧。. 
  17. ^ “懐かしい「昭和の学校給食」”. 時事通信社. 2021年4月9日閲覧。
  18. ^ a b 坂本義江. “特集 松浦魚市場とアジフライの聖地 インタビュー02”. 東洋漁業株式会社. 2021年4月10日閲覧。
  19. ^ “刺し身用アジをぷりぷりのフライに　聖地・長崎県松浦市を訪ねて”. 朝日新聞. 2021年4月9日閲覧。
  20. ^ “【離乳食完了期】あじフライ”. 株式会社ベビーカレンダー. 2021年4月6日閲覧。
  21. ^ “「海の幸と海の思い出に関する調査 2018” (PDF). マルハニチロ. 2021年4月6日閲覧。
  22. ^ a b “【4月22日 おうち時間に魚を食べませんか？～アジフライ～】” (PDF). 水産庁. 2021年4月6日閲覧。
  23. ^ “庶民の味「アジフライ」が消える…大衆魚マアジの水揚げ減少で卸値高騰“ショック””. 産経新聞 (2015年2月20日). 2021年4月10日閲覧。
  24. ^ 石関善治郎『尊敬する鰯・鰺・鯖のために』マガジンハウス、1988年10月1日、66頁。ISBN 4838700318。 
  25. ^ “背開き”. temaeitamae.jp. 2021年4月6日閲覧。
  26. ^ a b c NHK 2005, p. 79.
  27. ^ “アジフライのさばき方は？簡単おろし方とフライの基本を丁寧に解説！”. グルメノート. 2021年4月6日閲覧。
  28. ^ a b “アジの捌き方、三枚おろし＆背開きの方法！初心者でもできる”. 暮らしニスタ. 2021年4月6日閲覧。
  29. ^ a b c エイ出版社編集部 2020, p. 27.
  30. ^ a b “直接買い付けによる新鮮な魚と、旨みを活かした調理法が魅力。「京ばし松輪」”. 東京街人. 2021年4月5日閲覧。
  31. ^ a b “限定70食のアジフライ！行列覚悟の人気店！「京ばし松輪」（京橋）”. 食べ歩きコンシェルジュ. 2021年4月5日閲覧。
  32. ^ a b c 大庭英子『揚げもの バンザイ!』マイナビ、2011年10月28日、73頁。ISBN 4839940525。 
  33. ^ a b c d e “アジフライにかけるのは「ソース」が主流、だが東京は...”. Jタウンネット (2018年4月20日). 2021年4月9日閲覧。
  34. ^ “新鮮アジがサクサクふわふわの定食！【アジフライ たるたる食堂】（ファンファン福岡）”. Yahoo!ニュース. 2021年4月6日閲覧。
  35. ^ “アジフライ醤ース100ml”. カニ醤油合資会社. 2021年4月6日閲覧。
  36. ^ dancyu編集部『dancyu2020年12月号 - dancyu30年の集大成。おいしい店100』プレジデント社、2020年11月6日、116頁。 
  37. ^ 北尾トロ (2020年10月10日). “とんかつ屋ならではの良質なラードであげる絶品アジフライ！「とんかつ藤芳」｜美味しいアジフライが食べたい！”. プレジデント社. 2021年4月10日閲覧。
  38. ^ “「アジフライの聖地」松浦”. 松浦市. 2021年4月10日閲覧。
  39. ^ 長曽我部, 真未 (2021年3月1日). “【160kcal以下】サクふわ！低カロリーな「アジフライ」のレシピ”. macaroni. トラストリッジ. p. 1. 2021年4月7日閲覧。
  40. ^ a b c 菊池, 真由子 (2021年1月16日). “「とんかつ」「あじフライ」「エビフライ」、一番太りやすい揚げ物は？”. ダイヤモンド・オンライン. 食べて、やせる！ おうちdeダイエット. 2021年4月7日閲覧。
  41. ^ a b 資源調査分科会 2021a, 第2章第1表: 索引番号1165, 1773, 1791 & 2464.
  42. ^ 資源調査分科会 2021a, 第2章第1表: 索引番号1165, 1773 & 1791.
  43. ^ 資源調査分科会 2021b, 第2章第1表: 索引番号1161 & 1165.
  44. ^ nomura (2018年7月30日). “日刊のむら日記 第224号 西友惣菜で宅呑み | 日本新聞印刷株式会社”. 2021年4月6日閲覧。
  45. ^ “角屋のアジフライ”. 株式会社角屋食品. 2021年4月6日閲覧。
  46. ^ “ひもの老舗山安のアジフライはアジが美味い！”. 横浜丸魚株式会社. 2021年4月6日閲覧。
  47. ^ “業務用 アジフライ！”. 味の素. 2021年4月6日閲覧。
  48. ^ “オランダ産　冷凍　真あじフライ　100ｇｘ10枚”. あらきん. 2021年4月6日閲覧。
  49. ^ “メアジ”. マルハニチロ. 2021年4月6日閲覧。
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  51. ^ “吉野家のアジフライがうまい！定食に丼・単品でも注文できる？”. jouer［ジュエ］. 2021年4月6日閲覧。
  52. ^ a b “「アジフライの聖地 松浦」とは”. 松浦市. 2021年4月6日閲覧。
  53. ^ “「アジフライの聖地」松浦市がグランプリ　県ツーリズム・アワード”. 長崎新聞. 2021年4月6日閲覧。
  54. ^ “アジフライ”. さとふる. 2021年4月6日閲覧。
  55. ^ 平松洋子 (2017-06-08). あじフライを有楽町で. 文藝春秋. ISBN 9784167908737 
  56. ^ “孤独のグルメ Season6 │ チャンネル銀河”. www.ch-ginga.jp. 2021年4月6日閲覧。
  57. ^ “あじフライ南蛮”. オタフクソース. 2021年4月6日閲覧。
  58. ^ “本当に旨いアジフライを世の中に広めたい”. 株式会社アトラスプランニング プレスリリース (2020年1月22日). 2021年4月9日閲覧。

参考文献

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