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=== タイムアタック・スピードラン ===
=== タイムアタック・スピードラン ===
タイムアタック(Time attack、TA)、[[タイムトライアル]]([[:en:Time trial|Time trial]])とは、コンピューターゲームの攻略速度の速さを競う遊び方のことを指す。元々は[[モータースポーツ]]のレースの用語で、サーキットの周回タイムを競う競技のことを指していたが、コンピュータゲームにおけるこのような用法はそれが転じた[[和製英語]]である。本来の英語では'''[[:en:Speedrun|speedrun]]'''(スピードラン)と呼ぶ。基準となるタイムの計測方法は、ルール(レギュレーション)によって異なり「リアルタイムアタック(RTA)」や「[[ツールアシステッドスピードラン]](TAS)」などの派生ジャンルが存在する。
タイムアタック(Time attack、TA)、[[タイムトライアル]]([[:en:Time trial|Time trial]])とは、コンピューターゲームの攻略速度の速さを競う競技または遊び方のことを指す。元々は[[モータースポーツ]]のレースの用語で、サーキットの周回タイムを競う競技のことを指していたが、コンピュータゲームにおけるこのような用法はそれが転じた[[和製英語]]である。本来の英語では'''[[:en:Speedrun|speedrun]]'''(スピードラン)と呼ぶ。基準となるタイムの計測方法は、ルール(レギュレーション)によって異なり「リアルタイムアタック(RTA)」や「[[ツールアシステッドスピードラン]](TAS)」などの派生ジャンルが存在する。


==== 概要 ====
==== 概要 ====
端的に言うとコンピューターゲームの早解きであり、タイムの計測開始から目標達成までにかかった時間の短さを競う。具体的には、特定のコースやステージなどの区間クリア、またはゲーム開始からゲーム終了(ゲームオーバーおよびゲームクリア含む)までにかかった時間の短さを競うことが「タイムアタック」と呼ばれる場合が多い。タイムアタックに重点を置くゲームの中には、ゲーム自体に「タイムアタックモード」や記録上位者のランキング機能が搭載されているものも多く存在する。近年ではインターネットを利用し、世界中のプレイヤーとタイムを競うことができるゲームも多い。
端的に言うとコンピューターゲームの早解きであり、タイムの計測開始から目標達成までにかかった時間の短さを競う。具体的には、特定のコースやステージなどの区間クリア、またはゲーム開始からゲーム終了(ゲームオーバーおよびゲームクリア含む)までにかかった時間の短さを競うことが「タイムアタック」と呼ばれる場合が多い。タイムアタックに重点を置くゲームの中には、ゲーム自体に「タイムアタックモード」や記録上位者のランキング機能が搭載されているものも多く存在し、近年ではインターネットを利用することで世界中のプレイヤーとタイムを競うことができるゲームも多い。

タイムアタック自体はプレイ時間を計測できる環境さえあれば容易に挑戦することができるが、優れたタイムを出すには長時間の練習やゲームへの理解、集中力など複数の要素が必要となるほか、ゲーム内の乱数によるランダム要素のために運も大きく絡む場合が多い<ref>ドラゴンクエストシリーズなどのRPGでタイムアタックに挑戦しようとすれば必然的にキャラクターのレベルや装備は最低限のものになる。ここではタイムの短縮とプレイの安定はトレードオフ関係にある。記録を追求するTAプレイヤーはアイテムの場所、モンスターのステータス、最適なパーティー構成、ルート、プログラム内の乱数など当該ゲームに関するあらゆる事象を理解する必要がある。その中にはいわゆるバグ技も含まれるが、バグ技の使用で記録が認められるかどうかはそれぞれのRTAコミュニティーのルールによるところである(バグあり/なしで別々に記録する場合もある)。RTAの成熟によって新たな時間短縮テクニックが見出され、記録の大幅更新が起こることもある(『[[DARK SOULS]]』における弓と火炎壷を用いた混沌の苗床ショートカットなど)。</ref>。なお、映像記録、ならびに配信においては、それらの処理でプレイ中の画面表示に遅延(実質的なタイムロス)が発生することを防ぐため、前述の機材とは別にやりこみ用のモニターを用意し、映像出力を分配することも多い。また、クリアまであまりに長期になるものでは、レギュレーション次第ではあるが、一定回数・時間の休憩(計測一時停止)を認めているものもある。また、ゲームハード環境によってはゲームプレイ以外で生じるロード時間に差が出る場合があるため、使用したゲームハード環境の明記(ならびにエミューレータ)やロード差を抜くために、計測タイムと一緒に提出する必要もある


なお、目標別に競うケースもあり、例えばアイテム回収率○パーセントで、○○時間ごとにエンディングが変化する、といった具合などがある([[メトロイドシリーズ]])。これは、下記のRTAでの目標基準ごとのレギュレーションが定められることもある(バグ利用禁止といったものを除く、ゲーム内容要素の制限がない場合は「any%」の表記となる)。
なお、目標別に競うケースもあり、例えばアイテム回収率○パーセントで、○○時間ごとにエンディングが変化する、といった具合などがある([[メトロイドシリーズ]])。これは、下記のRTAでの目標基準ごとのレギュレーションが定められることもある(バグ利用禁止といったものを除く、ゲーム内容要素の制限がない場合は「any%」の表記となる)。

ドラゴンクエストシリーズなどのRPGでタイムアタックに挑戦しようとすれば必然的にキャラクターのレベルや装備は最低限のものになる。ここではタイムの短縮とプレイの安定はトレードオフ関係にある。記録を追求するTAプレイヤーはアイテムの場所、モンスターのステータス、最適なパーティー構成、ルート、プログラム内の乱数など当該ゲームに関するあらゆる事象を理解する必要がある。その中にはいわゆるバグ技も含まれるが、バグ技の使用で記録が認められるかどうかはそれぞれのRTAコミュニティーのルールによるところである(バグあり/なしで別々に記録する場合もある)。RTAの成熟によって新たな時間短縮テクニックが見出され、記録の大幅更新が起こることもある(『[[DARK SOULS]]』における弓と火炎壷を用いた混沌の苗床ショートカットなど)。

なお、映像記録、ならびに配信においては、それらの処理でプレイ中の画面表示に遅延(実質的なタイムロス)が発生することを防ぐため、前述の機材とは別にやりこみ用のモニターを用意し、映像出力を分配することも多い。また、クリアまであまりに長期になるものでは、レギュレーション次第ではあるが、一定回数・時間の休憩(計測一時停止)を認めているものもある。

また、ゲームハード環境によってはゲームプレイ以外で生じるロード時間に差が出る場合があるため、使用したゲームハード環境の明記(ならびにエミューレータ)やロード差を抜くために、計測タイムと一緒に提出する必要もある。


日本では大規模なRTAのオフラインイベントとして「[[RTA in Japan]]」が2016年より開催されている<ref>{{Cite news|author=エステート松下|date=2018-12-27|url=https://www.famitsu.com/news/201812/27169958.html|title=世界で盛り上がるRTAイベントを日本でも! 日本初のRTAイベントを主催するモカ氏に聞いた“RTA in Japan”の始まりと未来|newspaper=ファミ通.com|publisher=KADOKAWA Game Linkage|archiveurl=https://web.archive.org/web/20191027033612/https://www.famitsu.com/news/201812/27169958.html|archivedate=2019-10-27|accessdate=2019-10-27}}</ref>。
日本では大規模なRTAのオフラインイベントとして「[[RTA in Japan]]」が2016年より開催されている<ref>{{Cite news|author=エステート松下|date=2018-12-27|url=https://www.famitsu.com/news/201812/27169958.html|title=世界で盛り上がるRTAイベントを日本でも! 日本初のRTAイベントを主催するモカ氏に聞いた“RTA in Japan”の始まりと未来|newspaper=ファミ通.com|publisher=KADOKAWA Game Linkage|archiveurl=https://web.archive.org/web/20191027033612/https://www.famitsu.com/news/201812/27169958.html|archivedate=2019-10-27|accessdate=2019-10-27}}</ref>。
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その後、2017年に有志のプレイヤーにより国内最大規模のリアルタイムアタックイベント「[[RTA in Japan]]」第一回が開催され、2020年6月に一般社団法人「RTA in Japan」として法人化された。
その後、2017年に有志のプレイヤーにより国内最大規模のリアルタイムアタックイベント「[[RTA in Japan]]」第一回が開催され、2020年6月に一般社団法人「RTA in Japan」として法人化された。

=== 社会への影響 ===
タイムアタック自体はゲーマー間では一般的に行われてきたことだが、インターネットやSNSの発達により「リアルタイムアタック(RTA)」の存在が認知され始めたことで、2018年頃4月頃「入社から短期間で退職すること」を指す「退職RTA」というネットスラングが流行したほか、動画配信者を中心に短時間で特定の食品を完食する「早食いRTA」が流行するなど、単語としても広く使用されるようになった<ref>{{Cite web |url= https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2002/04/news111_2.html|title= 【ゲームの日本史】ひたすら最速クリアを目指すRTA(リアルタイムアタック)はどのように生まれたのか(2)|publisher= ねとらぼ|date= 2020-02-12|accessdate= 2021-08-04}}</ref><ref>{{Cite web |url= https://sirabee.com/2021/02/27/20162520347/|title= はじめしゃちょー、早食いで異次元の記録を樹立 ファンからは心配の声も|publisher= ニュースサイトしらべぇ|date= 2021-02-27|accessdate= 2021-08-04}}</ref>。

近年におけるタイムアタック/スピードランの大会やイベントは[[チャリティー]]イベントとして開催されることが多く、2011年に[[東日本大震災]]の被害者支援のために開催された海外で行われたGame Done Quick(GDQ)による「Japan Relief Done Quick」では2万5800ドルの募金が集まり、国境なき医師団に寄付された<ref>{{Cite web |url= https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2002/04/news132_3.html|title= 【ゲームの世界史】なぜ米国のゲーマーはRTA(リアルタイムアタック)で東日本大震災の支援活動ができたのか(3)|publisher= ねとらぼ|date= 2020-02-13|accessdate= 2021-08-04}}</ref>。


=== その他 ===
=== その他 ===

2021年8月4日 (水) 10:57時点における版

やり込み(やりこみ)とは、コンピュータゲームにおいて、普通にクリアする(終了させる)目的から外れ、ある分野を徹底的に極めることである。

やり込み要素は公式としてゲーム内に用意される場合や、Xbox Live実績PlayStationトロフィーといった形で共有化されることもある

やり込みの例

やり込みの例には、次のようなものがある(なお、チートバグなどを用いてはならないものとする場合が多い)。

一定の結果を出すと報酬がもらえることもある。

ハイスコアアタック

  • 可能な限り高い得点(ハイスコア)でクリアする(期間や場所を限定して競うこともある)。
  • 可能な限り短いタイムでカウンターストップ(スコアの上限到達)する。
  • スコアアタックモードで可能な限り高い得点を出す。
  • 対戦型格闘ゲームなどで、対人戦の勝ち抜き数を競う。
  • エンディングの無いループゲームで、ループの限界点まで到達する。

ノーミス

  • RPGで遭遇した敵キャラクターから一切逃げずに戦い抜く。
  • やられても復活ができる機能を使わないでクリアする。
  • (特殊イベントや強制イベントを除き)ダメージを一度も受けずにクリアする(ノーダメージクリア)。

コンプリート (コンプ)

  • ゲーム内に存在するアイテム、キャラクター、技能など、収集対象となるものを可能な限り全て集める。また、その全てを限界の数値まで集める。コンプリート内容を具体的にして「○○コンプ」と称する場合もある。
  • マルチエンディングのゲームで、全種類のエンディングを見る。
  • クリアに不要な要素(ミニゲームなど)や、すべての隠し要素(隠しステージ、特殊イベントなど)、全実績項目を制覇する。
  • キャラクターごとに能力が異なるゲームを、全てのキャラクターでクリアする。

ノーキル、敵全滅

  • 倒すことのできる敵を全て倒してクリアする。普通なら無視するような敵でも、倒せるなら寄り道してでも倒す。
  • 倒すことのできる敵を全て倒さずにクリアする。「不殺」「無血」「パシフィスト」などとも言われる。

制限プレイor縛りプレイ

あえてプレイヤーに不利な条件を課すよう「特定の制限」を加えて、限界までプレイする。特定のアイテムや技術、キャラクターなどの使用を自主的に禁止するプレイは「○○封印」のように表現されることもある。

  • レベル、経験値、能力値、ヒットポイントなどのステイタスを可能な限り低くしたままクリアする。
  • シューティングやアクションゲームなどで極力スコアを取らないようにクリアする(ロースコアアタック)。
  • 最初から最後まで、1人のキャラクターのみを使用してクリアする(一人旅)。
  • 使い勝手が悪いとされるキャラクターやアイテムのみ使用、または使い勝手の良いキャラクターやアイテムを一切使用せずクリアする。
  • 最初から最後まで、武器や防具を何も装備させずに(外せないなら初期装備や特殊な装備のみで)クリアする。
  • 相手のスタートから一定時間経過後にスタートする(レースゲーム等で)。
  • 悪天候(シミュレーションゲーム等で)
  • 途中でセーブ(データの保存)を一度もせずにクリアする。
  • 通算エンカウント、ターン数などを最小限に抑えてクリアする。
  • 特定の操作ボタンを使わずにクリアする。
  • 回復ポイントを利用せずにクリアする。
  • その他、通常のプレイでは行わないような変則プレイなど。

RPGなどでのやり込み

RPG(ロールプレイングゲーム)などでは、上記に加えて、次に挙げるようなやり込み方法がある。

キャラクター強化、コンプリート

ゲームの煽り文句などで「やり込み要素が多い」と表現される場合、主にこちらを指すことが多い。MMORPGにおけるやり込みもこの部類に入る。

  • キャラクターを可能な限り仲間に加え、さらに経験値レベルを最高値まで上げる。
  • ステータスを上げるアイテムを使い、限界までステータスを高める。武器や防具を合成や改良などで極限まで強化する。
  • キャラクターメイキングのあるゲームでは、クリア後も多種多彩なキャラクターを作り、育てる。
  • 最大ダメージ量に挑戦する(1ターンでの最高ダメージ、理論上可能な合計ダメージなど)。

ストーリー無視

  • 攻略に重要となる行動やアイテムなどを使うことなくクリアする。また逆に、ある特定の行動やアイテム以外を一切使わない。
  • 本来ならプレイヤー側が負ける、または倒せないはずのボスキャラクターを倒す。

シーケンスブレイク

通常通りにプレイすると、あるルートからアイテムを取って関連するルートをとおって・・、と順路に応じたプレイになるが、あるアイテムを集めつつ操作を工夫し順路からはずれたルートをとおってクリアすることができる。これをシーケンスブレイクという。 シーケンスブレイクできる個所を探すのも一種のやりこみで、これは下記のタイムアタックにも応用できる。

タイムアタック・スピードラン

タイムアタック(Time attack、TA)、タイムトライアル(Time trial)とは、コンピューターゲームの攻略速度の速さを競う競技または遊び方のことを指す。元々はモータースポーツのレースの用語で、サーキットの周回タイムを競う競技のことを指していたが、コンピュータゲームにおけるこのような用法はそれが転じた和製英語である。本来の英語ではspeedrun(スピードラン)と呼ぶ。基準となるタイムの計測方法は、ルール(レギュレーション)によって異なり「リアルタイムアタック(RTA)」や「ツールアシステッドスピードラン(TAS)」などの派生ジャンルが存在する。

概要

端的に言うとコンピューターゲームの早解きであり、タイムの計測開始から目標達成までにかかった時間の短さを競う。具体的には、特定のコースやステージなどの区間クリア、またはゲーム開始からゲーム終了(ゲームオーバーおよびゲームクリア含む)までにかかった時間の短さを競うことが「タイムアタック」と呼ばれる場合が多い。タイムアタックに重点を置くゲームの中には、ゲーム自体に「タイムアタックモード」や記録上位者のランキング機能が搭載されているものも多く存在し、近年ではインターネットを利用することで世界中のプレイヤーとタイムを競うことができるゲームも多い。

タイムアタック自体はプレイ時間を計測できる環境さえあれば容易に挑戦することができるが、優れたタイムを出すには長時間の練習やゲームへの理解、集中力など複数の要素が必要となるほか、ゲーム内の乱数によるランダム要素のために運も大きく絡む場合が多い[1]。なお、映像記録、ならびに配信においては、それらの処理でプレイ中の画面表示に遅延(実質的なタイムロス)が発生することを防ぐため、前述の機材とは別にやりこみ用のモニターを用意し、映像出力を分配することも多い。また、クリアまであまりに長期になるものでは、レギュレーション次第ではあるが、一定回数・時間の休憩(計測一時停止)を認めているものもある。また、ゲームハード環境によってはゲームプレイ以外で生じるロード時間に差が出る場合があるため、使用したゲームハード環境の明記(ならびにエミューレータ)やロード差を抜くために、計測タイムと一緒に提出する必要もある。

なお、目標別に競うケースもあり、例えばアイテム回収率○パーセントで、○○時間ごとにエンディングが変化する、といった具合などがある(メトロイドシリーズ)。これは、下記のRTAでの目標基準ごとのレギュレーションが定められることもある(バグ利用禁止といったものを除く、ゲーム内容要素の制限がない場合は「any%」の表記となる)。

日本では大規模なRTAのオフラインイベントとして「RTA in Japan」が2016年より開催されている[2]。 海外ではSpeed Demos Archiveというコミュニティが存在し、毎年ホリデーシーズンとサマーシーズンの2回、RTAをもとにしたGamesDoneQuickと呼ばれるチャリティーイベントを行っており、2015年1月のイベントでは150万ドル以上もの寄付を集めている。

分類

タイムアタック(TA)

広義では、ゲームの早解き全般を指すが、狭義ではタイムの計測方法がゲームのリザルト画面やセーブデータ画面などに表示されるゲーム内時間(InGameTime、IGT)を基準とするタイムアタックのことを指す[3]。タイムの計測方法の都合上、ゲーム自体にプレイ時間の計測機能があるゲームでしか挑戦できないため挑戦できるゲームは限られる[3]。主にゲーム自体にタイムアタック機能が搭載されているレースゲームやアクションゲームなどで挑戦されることが多いが、RPGなどセーブデータなどにプレイ時間を記録する機能があるゲームであれば挑戦可能な場合もある。あくまでゲーム内時間のみが基準であるため、ゲームの電源を切っている間やセーブデータをロードしてゲームをやり直した場合など、プレイ時間に記録されない時間はタイムとして計測されない[3]

リアルタイムアタック

タイムアタックから派生したジャンルで、セーブ画面などに表示されるゲーム内タイム(IGT)のみを計測するプレイスタイルである「タイムアタック(Time attack、TA)」に対し、リアルタイム(RealTime、RT)でプレイ時間を計測し、記録開始から目標達成までにかかった時間全てを計測するプレイスタイルを「リアルタイムアタック(RTA)」と呼ぶ。名前の由来は「リアルタイム(実時間)を計測するタイムアタック[3]」であり、その特性からリアルタイムアタックは、プレイヤー自身が用意した各種タイマーやストップウォッチなどを用いて時間を計測されることが多い。なお「リアルタイムアタック(RTA)」という言葉自体は2000年にゲーム攻略サークル「極限攻略研究会」が創り出した造語である[3]

競技性と公平さを重視するために誕生したという経緯から、通常のタイムアタックより1回のプレイ時間が長くなる傾向が多く、ゲーム開始からゲームクリア(エンディング)までのタイムを計測するのが一般的である[3]。また、プレイの失敗時などでデータロードを利用して途中からやり直した場合、プレイタイムもその時点まで巻き戻る「TA」に対し「RTA」はやり直している間もプレイタイムが加算されていくため、より難易度や運の要素が高くなっている。

以降は、動画投稿サイトの発展により、現在はニコニコ動画TwitchYouTubeなどの動画配信サイトで多くのRTA配信を見ることが出来る。また、近年では国内最大級のイベント「RTA in Japan」の開催や、その競技性の高さからeスポーツとしての可能性も注目されている[3]

ツールアシステッドスピードラン

タイムアタックおよびスピードランの一種で、実機ではなくエミュレータ(ツール)を使用したもののこと。略称は、TAS(Tool-Assisted Speedrun)。

歴史

日本国外

「Speedrun(スピードラン)」という名前で呼ばれるが、意味としては日本の「タイムアタック」と同じである。「ビデオゲームで時間を競う」という概念は、1980年にアクティビジョンより発売された『Dragster』というゲームが起源で、ゲーム画面内に時間を表示させるカウンターを実装した最初の作品であるとされる[3]。『Dragster』は1982年に申請された5.51秒というレコードタイムが35年間破られず、2017年4月に“世界で最も長い間破られなかったゲームのハイスコア”としてギネス記録に認定されたが、同年2017年7月に理論上不可能なタイムであることが検証によって証明された結果不正扱いとなり、記録抹消となっている[4][5]。1982年当時はポラロイドカメラでスコアを撮影した写真によって判定が行われたとされ、今回のギネス記録抹消に関するニュースはワシントン・ポスト紙でも取り上げられた[4]

日本国外においては「Twin Galaxies」というゲームプレイ記録団体がギネス世界記録の公認機関となっており「Speedrun」もスコアアタックなどの人気競技と並んで広く親しまれている[5]。また「Speedrun」専門の団体としては、世界最大のタイムアタック記録サイト「Speedrun.com」が存在する[3]

日本国内

日本国外同様、プレイヤー間では潜在的にゲームの早解きなどは行われていたが、競技企画としての起源は、1992年頃、ゲーム雑誌「週刊ファミ通」に掲載された「やりこみゲーム大賞」内の「最速クリア」という企画であるとされる[3][6]。同企画はゲームにおける様々なやりこみを撮影したビデオ動画を募集するという内容で、1994年には『ファイナルファンタジーVI』の最終セーブポイントを5時間29分で到達した記録や、後のリアルタイムアタックに似た「実時間計測早解き」企画なども掲載されている[6]

その後、インターネットの発達でこれまでより多くのプレイヤーが自ら情報を発信できるようになったことから、プレイ記録の投稿はインターネットが主流になってゆくこととなるが、当時は長大なプレイ動画をインターネット上にアップロードするための技術や環境が確立されていなかったため、主にプレイ時間と攻略内容をテキストにまとめたレポートとして投稿されることが多かった。2000年に発売された『ファイナルファンタジーIX』において「ゲーム開始から12時間以内に最終ダンジョンの特定地点まで到達すると幻の隠し武器が手に入る」という要素が存在し、タイムアタックが盛んに行われるようになるが、同時に記録更新の熾烈さからプレイヤーが各々の攻略レポートを隠すようになるという弊害も発生した[3]。また、当時のゲームでは常にゲームのプレイ時間を表示しておく機能を持つものが無く、もっぱらセーブ画面に表示されるゲーム内時間がタイムの基準となっていたが、プレイ時間の記録機能が搭載されているゲームは長大なRPGなどの一部タイトルなどに限られてしまい、挑戦できるゲームに制限があった[3]。さらに、セーブ画面に表示されるゲーム内時間(IGT)は、セーブ&リセットで時間の巻き戻しが可能であり、試行錯誤の末に上手く進めたときだけセーブするようにすれば容易に表示上のプレイ時間を短くすることもできてしまうため、本来の意味での「最速でゲームをクリアする」という当初の目的とは違うものになってしまうという欠点も存在した[3]

これらの経緯から公平性と競技性を高めるために、プレイヤーそれぞれが各種ストップウォッチを用意し、実際にかかった時間を計測するプレイスタイルが主流になっていく[3]。こうして生まれたのが後述する「リアルタイムアタック」であり、通常のタイムアタックとは区別される[3]。また、このほかに実機ではなくPCを使用し、専用のツールを用いて理論上の最速タイムを競うツールアシステッドスピードランというジャンルも誕生した。

その後、2017年に有志のプレイヤーにより国内最大規模のリアルタイムアタックイベント「RTA in Japan」第一回が開催され、2020年6月に一般社団法人「RTA in Japan」として法人化された。

社会への影響

タイムアタック自体はゲーマー間では一般的に行われてきたことだが、インターネットやSNSの発達により「リアルタイムアタック(RTA)」の存在が認知され始めたことで、2018年頃4月頃「入社から短期間で退職すること」を指す「退職RTA」というネットスラングが流行したほか、動画配信者を中心に短時間で特定の食品を完食する「早食いRTA」が流行するなど、単語としても広く使用されるようになった[7][8]

近年におけるタイムアタック/スピードランの大会やイベントはチャリティーイベントとして開催されることが多く、2011年に東日本大震災の被害者支援のために開催された海外で行われたGame Done Quick(GDQ)による「Japan Relief Done Quick」では2万5800ドルの募金が集まり、国境なき医師団に寄付された[9]

その他

  • 2人同時プレイ可能なゲームで、操作デバイス2つを一人で操作する(ダブルプレイ)。
  • 画面全体、あるいは一部を隠してプレイする。音楽ゲームなどで譜面を画面に表示させずにプレイする。
  • 音楽ゲームなどでプラス評価の中でも最低の判定のみでクリアする(ALL GOODプレイなど)。
  • 特定のゲーム専用のコントローラを使ってプレイする。
  • ステージエディット機能で他人が投稿したステージをクリアする(『みすてぃっく☆ばる〜ん』『スーパーマリオメーカー』など)。

雑誌や書籍への掲載、ビデオへの収録

ファミ通』などのゲーム雑誌が読者からやりこみを募集し、投稿されたやり込みを特集し掲載することがある。さらにこれらのプレイから厳選してビデオやDVDなどに収録し販売している。ゲーム攻略本では、ライター自らがそのゲームのやり込みを掲載することも多い。

いずれのケースにおいても、深刻なネタバレ(隠しボスなど)を含むやり込みは公表されないか、大部分が伏せられる例が多い。

『ファミ通』では「やりこみゲーム大賞」という応募企画が幾度も開催されている(第1回の結果発表は『ファミコン通信』1992年2月7日号掲載)。

脚注 

  1. ^ ドラゴンクエストシリーズなどのRPGでタイムアタックに挑戦しようとすれば必然的にキャラクターのレベルや装備は最低限のものになる。ここではタイムの短縮とプレイの安定はトレードオフ関係にある。記録を追求するTAプレイヤーはアイテムの場所、モンスターのステータス、最適なパーティー構成、ルート、プログラム内の乱数など当該ゲームに関するあらゆる事象を理解する必要がある。その中にはいわゆるバグ技も含まれるが、バグ技の使用で記録が認められるかどうかはそれぞれのRTAコミュニティーのルールによるところである(バグあり/なしで別々に記録する場合もある)。RTAの成熟によって新たな時間短縮テクニックが見出され、記録の大幅更新が起こることもある(『DARK SOULS』における弓と火炎壷を用いた混沌の苗床ショートカットなど)。
  2. ^ エステート松下 (2018年12月27日). “世界で盛り上がるRTAイベントを日本でも! 日本初のRTAイベントを主催するモカ氏に聞いた“RTA in Japan”の始まりと未来”. ファミ通.com (KADOKAWA Game Linkage). オリジナルの2019年10月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20191027033612/https://www.famitsu.com/news/201812/27169958.html 2019年10月27日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o RTA(リアルタイムアタック)は次のeスポーツカテゴリーになれるのか? 「RTA in Japan」に聞いてみた (1/2)”. eSports World (2019年1月30日). 2021年7月26日閲覧。
  4. ^ a b 世界最長の「破られることのなかったゲーム内ハイスコア」ギネス記録が無効に。36年を経て不正と判定される”. AUTOMATON (2018年1月30日). 2021年7月30日閲覧。
  5. ^ a b ギネス認定“世界最長維持のゲームハイスコア”虚偽だった―申請記録が理論上不可能と実証”. Game*Spark (2018年7月29日). 2021年7月29日閲覧。
  6. ^ a b 【ゲームの日本史】ひたすら最速クリアを目指すRTA(リアルタイムアタック)はどのように生まれたのか”. ねとらぼ (2020年2月12日). 2021年8月1日閲覧。
  7. ^ 【ゲームの日本史】ひたすら最速クリアを目指すRTA(リアルタイムアタック)はどのように生まれたのか(2)”. ねとらぼ (2020年2月12日). 2021年8月4日閲覧。
  8. ^ はじめしゃちょー、早食いで異次元の記録を樹立 ファンからは心配の声も”. ニュースサイトしらべぇ (2021年2月27日). 2021年8月4日閲覧。
  9. ^ 【ゲームの世界史】なぜ米国のゲーマーはRTA(リアルタイムアタック)で東日本大震災の支援活動ができたのか(3)”. ねとらぼ (2020年2月13日). 2021年8月4日閲覧。

関連項目

外部リンク