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「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」の版間の差分

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一般に薬剤耐性を獲得した細菌は、薬剤感受性の細菌に比べて増殖が遅い傾向があり<ref>{{cite journal | author = Andersson DI, Levin BR. | title = The biological cost of antibiotic resistance. | journal = Curr Opin Microbiol. | year = 1999 | volume = 2 | issue = 5 | pages = 489-93}}</ref>、MRSAもペニシリン感受性の黄色ブドウ球菌に比べると増殖が遅い<ref>{{cite journal | author = Miriam Ender, Nadine McCallum, Rajan Adhikari, and Brigitte Berger-Bächi | title = Fitness Cost of SCC''mec'' and Methicillin Resistance Levels in ''Staphylococcus aureus'' | journal = Antimicrobial Agents and Chemotherapy | year = 2004 | volume = 48 | issue = 6 | pages = 2295-7 }}</ref>。
一般に薬剤耐性を獲得した細菌は、薬剤感受性の細菌に比べて増殖が遅い傾向があり<ref>{{cite journal | author = Andersson DI, Levin BR. | title = The biological cost of antibiotic resistance. | journal = Curr Opin Microbiol. | year = 1999 | volume = 2 | issue = 5 | pages = 489-93}}</ref>、MRSAもペニシリン感受性の黄色ブドウ球菌に比べると増殖が遅い<ref>{{cite journal | author = Miriam Ender, Nadine McCallum, Rajan Adhikari, and Brigitte Berger-Bächi | title = Fitness Cost of SCC''mec'' and Methicillin Resistance Levels in ''Staphylococcus aureus'' | journal = Antimicrobial Agents and Chemotherapy | year = 2004 | volume = 48 | issue = 6 | pages = 2295-7 }}</ref>。

== 細菌叢調査 ==
* 各[[細菌叢調査]]報告詳細に関しては、記載論文・抄録を参考にされたい。
** 伊藤重彦、吉永恵、大江宣春 他:[[救急救命|救命センター]]におけるMRSA感染(保菌)状況,[[日本臨床救急医学会]]雑誌第2巻1号,p.152,1999.
** 錦利佳、黒岩みゆき、小高香珠代 他:MRSA感染防止に対する看護婦の認識と行動の実態調査,医療第55巻増刊3,p.508,2001.
** 伊藤重彦、大江宣春、草場恵子 他:病院職員のMRSA鼻腔内保菌率調査と[[ムピロシン]]による[[除菌]],日本環境感染学会 環境感染,第17巻3号,p.285-288,2002.
** 吉谷須磨子:MRSA感染患者に対する感染看護の評価,感染防止第14巻5号,p.27-29,2004.
** 馬笑雪、伊藤輝代、WalterPedreira 他:[[ウルグアイ]]における市中獲得MRSAのoutbreak調査,[[日本細菌学会]]雑誌第59巻1号,p.214,2004.
** FujimuraShigeru、KatoSeiichi、HashimotoMotoya et al:Survey of methicillin-resistant Staphylococcus aureus from neonates and the environment in the NICU,Journal of Infection and Chemotherapy第10巻2号,p.131-132,2004.
** 久保真利子、名護博:老人ホームのMRSA保菌者状況,[[瀬戸内短期大学]][[紀要]]第35号,p.31-37,2004.
** 上條篤、横尾英子、高橋吾郎 他:[[医療従事者]]の鼻前庭部MRSA[[保菌者]]における鼻[[疾患]]の有無についての検討,[[日本鼻科学会]]会誌第44巻2号,p.127-130,2005.
** 久保裕義、千葉直彦、横山宏 他:療養型[[病院]]における入院患者のMRSA保菌の[[リスク]]と医療従事者の意識についての調査,山梨医学第33巻,p.84-87,2005.
** 高橋尚人、崔信明、矢田ゆかり 他:[[新生児集中治療室]]におけるMRSA保菌に関する全国調査,[[日本小児科学会]]雑誌第109巻8号,p.1009-1014,2005.
** 小森由美子、二改俊章:市中におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の鼻腔内保菌者に関する調査,日本環境感染学会 環境感染第20巻3号,p.164-170,2005.
** 平林円、川又攻、宮城伸浩 他:[[周産期]]病棟におけるMRSA感染,大阪市勤務医師会研究年報第32号,p.49-50,2005.
** 甘庶志帆乃、北元憲利、加藤陽二 他:一[[病院]]の患者および医療従事者におけるMRSA分子疫学調査,感染症学雑誌第79巻臨増,p.134,2005.
** 江藤由紀、田澤悠、花井美幸:MRSA伝播予防に関する意識と行動変容,[[東京医科大学病院]]看護研究集録第25回,p.84-89,2005.
** 柴田弘子、池野貴子、出口由美 他:[[看護]]学生の感染症の履歴認識およびMRSA保菌状況に関する調査,日本環境感染学会 環境感染第20巻Suppl,p.123,2005.
** 小笠原康雄、大野公一、播野俊江 他:MRSA保菌患者への対応に関する意識調査とその問題点 自施設と病診連携のある施設へのアンケート調査の結果,INFECTION CONTROL([[メディカ出版]])第14巻4号,p.382-386,2005.
** 渡辺朱理、佐藤法仁、苔口進、福井一博:[[歯科]]医療従事者および[[歯学部]][[学生]]におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の保菌状況調査,[[日本環境感染学会]] 環境感染第21巻Suppl, p.212,2006.
** 阿部哲士、市川日出勝、竹中信之 他:[[整形外科学|整形外科]]病棟における[[院内感染]]対策としてのMRSAサーベイランスの現状,日本骨・関節感染症研究会雑誌第19巻,p.22-25,2006.
** 渡辺朱理、佐藤法仁、苔口進、福井一博:感染防止と歯科医療受診行動III~歯科学生、[[歯科衛生士]]学生、非医療系[[大学生]]における[[歯科医院]]選択におけるMRSAに対する意識調査~.[[医学と生物学]] 150(9),p.336-343,2006.


== 注釈 ==
== 注釈 ==

2021年8月12日 (木) 15:03時点における版

MRSAの走査型電子顕微鏡写真

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリンたいせいおうしょくブドウきゅうきん、Methicillin-resistant Staphylococcus aureusMRSA)とは、抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味であるが、実際は多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌である。

なお、生物種としてはあくまで黄色ブドウ球菌であるので、生物学的な詳細は同記事を参照のこと。

臨床像

MRSA は黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌であり、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔咽頭皮膚などから検出されることがある。

そもそも薬剤耐性菌であるため薬剤の使用が多い病院で見られることが多く(耐性菌は抗生物質の乱用により出現する)、入院中の患者に発症する院内感染の起炎菌としてとらえられている。しかし病原性は黄色ブドウ球菌と同等で、健康な人にも皮膚・軟部組織感染症などを起こしうる。

病院外での発症が最初に確認されたのは、1960年代にさかのぼるが、近年では健康な人のごく一般的な感染症の起炎菌として見つかることもあり、本菌が病院から街中へと広がっていることが示唆されている。community-acquired MRSA (CA-MRSA) は、1999年にアメリカ合衆国で死亡例がみられてからは、外来診療でも留意すべき菌種のひとつとなった。CA-MRSAは、院内感染でのMRSAとは異なり、ミノサイクリンST合剤クリンダマイシンが有効であることが多い。

MRSAによる膿瘍

本菌が免疫力が低下した患者に感染すると、通常では本菌が起こすことはないような日和見感染を起こす。一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないため、治療は困難である。特に、術後の創部感染、骨感染(骨髄炎関節炎)、感染性心内膜炎(IE)、臓器膿瘍は難治性化し、適切な治療を受けられないと、後遺症ばかりか死の転帰をたどることになる。

不活化

不活化のために80%エタノールが消毒薬として有効である(エタノール消毒は芽胞を持たない細菌に有効)。

院内で感染者が判明した場合、感染者の治療も重要であるが、感染を広げないことも重要であり、標準予防策に基づく適切な感染管理が必要となる。MRSA の場合、接触感染予防策が重要である。

抗菌薬

代表的なMRSAに対する抗菌薬は以下の通りである。

菌種(クローン)によっては、ミノサイクリンレボフロキサシンクリンダマイシンST合剤スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)などが、有効か中等度有効であることがある。また、各地域や、個々の医療施設によってもMRSAの性質は異なることがあるため、適切な抗生剤の使用に当たっては、これらローカルファクターも重要な要素である。なお、MRSAに対してST合剤とリファンピシンの併用は、リネゾリドと同等の効果がみられるとの報告もある[1]。また、国内では適応がとれていないが、欧米ではキヌプリスチン・ダルホプリスチン(商品名シナシッド)も有効であることが証明され、使用が認可されている。

バンコマイシンは耐性菌の出現が少ない抗菌薬として MRSA の治療に汎用されていた。1996年のバンコマイシン低度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)やバンコマイシンヘテロ耐性黄色ブドウ球菌(ヘテロVISA)の発見を始め、2005年現在、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のバンコマイシン耐性遺伝子(vanA)を獲得したバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の出現が報告されていることから、その使用には十分な注意が必要とされている。さらに、β-ラクタム系抗生物質との併用によってバンコマイシン耐性が発現する MRSA も出現している。これはbeta-lactam antibiotic induced vancomycin-resistant MRSA(BIVR)と呼ばれており、併用には注意が必要である。

耐性機構

ペニシリン系抗生物質をはじめとするβ-ラクタム系抗生物質は、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成を阻害することで作用する。これに対して、従来のペニシリン耐性ブドウ球菌はペニシリン分解酵素を産生することで薬剤耐性を獲得した。そこでこれらの細菌に対しても有効な、ペニシリン分解酵素によって分解されない薬剤が開発された。これがメチシリンであり、ペニシリン耐性菌の治療に効力を発揮した。

しかしながら MRSA は、従来のペニシリン耐性菌とは別の戦略を採ることでメチシリン耐性の獲得に成功した。MRSA は従来のブドウ球菌とは異なり、β-ラクタム剤が結合できないペプチドグリカン合成酵素(PBP2')を作ることでβ-ラクタム剤の作用を回避する。この PBP2' というタンパク質はmecAという遺伝子にコードされているが、この遺伝子はDNAカセット染色体と呼ばれる部分に、他の薬剤耐性遺伝子とともに集まっており、ある菌から他の菌へ種を超えて伝達されることが解明された。

一般に薬剤耐性を獲得した細菌は、薬剤感受性の細菌に比べて増殖が遅い傾向があり[2]、MRSAもペニシリン感受性の黄色ブドウ球菌に比べると増殖が遅い[3]

注釈

  1. ^ J Antimicrob Chemother 2014 Sep 10; [e-pub ahead of print].
  2. ^ Andersson DI, Levin BR. (1999). “The biological cost of antibiotic resistance.”. Curr Opin Microbiol. 2 (5): 489-93. 
  3. ^ Miriam Ender, Nadine McCallum, Rajan Adhikari, and Brigitte Berger-Bächi (2004). “Fitness Cost of SCCmec and Methicillin Resistance Levels in Staphylococcus aureus”. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 48 (6): 2295-7. 

関連項目

外部リンク