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:変動金利の国債。2年債がある。変動金利は13週債に基づいて決める。2013年7月31日開始。
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:[[インフレ連動債]]。元本及びクーポンが物価指数上昇率に連動。インフレは消費者物価指数の Consumer Price Index for All Urban Consumers (CPI-U) で計測する。5, 10, 30年債がある。1997年開始。
:[[インフレ連動債]]。元本及びクーポンが物価指数上昇率に連動。インフレは消費者物価指数の Consumer Price Index for All Urban Consumers (CPI-U) で計測する。5, 10, 30年債がある。1997年1月29日開始<ref>[https://www.treasurydirect.gov/indiv/research/history/histtime/histtime_tips.htm Individual - Timeline of Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS) - TreasuryDirect]</ref>
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:利付債の元本部分と利札部分を分離し元本部分をこの利付債の償還を満期とする割引債に利札をそのクーポンの支払日期日が満期の割引債として販売。
:利付債の元本部分と利札部分を分離し元本部分をこの利付債の償還を満期とする割引債に利札をそのクーポンの支払日期日が満期の割引債として販売。
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米国は1776年7月4日に建国されたが、その前年の1775年6月22日に最初の米国債を第2次[[大陸会議]]が発行。発行額は200万ドル。[[アメリカ独立戦争]]の[[バンカーヒルの戦い]]の頃である。1789年9月2日に[[アメリカ合衆国財務省]]が設立。<ref>[https://home.treasury.gov/about/history/history-overview/history-of-the-treasury History of the Treasury | U.S. Department of the Treasury]</ref>
米国は1776年7月4日に建国されたが、その前年の1775年6月22日に最初の米国債を第2次[[大陸会議]]が発行。発行額は200万ドル。[[アメリカ独立戦争]]の[[バンカーヒルの戦い]]の頃である。1789年9月2日に[[アメリカ合衆国財務省]]が設立。<ref>[https://home.treasury.gov/about/history/history-overview/history-of-the-treasury History of the Treasury | U.S. Department of the Treasury]</ref>


アメリカ合衆国では、[[1990年代]]始めごろ、政府は史上最悪の財政赤字を抱えていたが、[[1998年]]には財政黒字に転換した。背景には、[[ビル・クリントン|クリントン]]政権の[[財政再建]]政策(所得税の最高税率引き上げなど)と[[情報技術|IT]]を軸とした活発な民間投資がある。しかしその後、2002年に再び赤字になってからは財政赤字の状態が続いている。
アメリカ合衆国では、[[1990年代]]始めごろ、政府は史上最悪の財政赤字を抱えていたが、[[1998年]]には財政黒字に転換した。背景には、[[ビル・クリントン|クリントン]]政権の[[財政再建]]政策(所得税の最高税率引き上げなど)と[[情報技術|IT]]を軸とした活発な民間投資がある。しかしその後、2002年に再び赤字になってからは財政赤字の状態が続いている。米国政府としては2022年現在、少なくともこの先30年間は黒字化しない見通しである。<ref>[https://www.cbo.gov/publication/58147 The Budget and Economic Outlook: 2022 to 2032 | Congressional Budget Office]</ref>


2010年11月、[[連邦準備制度理事会]](FRB)議長の[[ベン・バーナンキ]]は追加的[[量的緩和]]政策(quantitative easing policy、いわゆるQE2)の中で、約6000億USドル(約48兆円)の米国債を市中から購入する決定を行った。失業率の改善や、S&P 500等株価指数の上昇など、QE2の効果は着実に表れたとされる<ref> [http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=ap6hR2ZRxgBk 米FRB議長のQE2はいいことずくめ 相場押し上げ与信・景気拡大] Bloomberg 2011年5月10日</ref>。
2010年11月、[[連邦準備制度理事会]](FRB)議長の[[ベン・バーナンキ]]は追加的[[量的緩和]]政策(quantitative easing policy、いわゆるQE2)の中で、約6000億USドル(約48兆円)の米国債を市中から購入する決定を行った。失業率の改善や、S&P 500等株価指数の上昇など、QE2の効果は着実に表れたとされる<ref> [https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2011-05-10/LKYSWQ0YHQ0Y01 米FRB議長のQE2はいいことずくめ 相場押し上げ与信・景気拡大] Bloomberg 2011年5月10日</ref>。

2011年8月5日、米国債の格付けが引き下げられた。詳細は[[米国債ショック]]を参照。


== 見解 ==
== 見解 ==

2022年8月29日 (月) 09:05時点における版

アメリカ合衆国財務省証券(アメリカがっしゅうこくざいむしょうしょうけん、英語: United States Treasury security)は、アメリカ合衆国財務省が発行する国債である。日本では一般的に米国債と呼ばれる。

解説

アメリカ合衆国政府に対する信頼により市場が形成されており、極めて高い流動性を有する。流動性の高さからドル外貨準備の主要な投資先となっている。

戦争経済危機などの際は「有事のドル買い」に併せて米国債市場への資金流入が起きる傾向が強い[注 1]。また米国債の金利は長期金利の世界的な指標である。

財務省証券の種類

償還期間の長短や利払いの方法により分類される。

償還期間による分類

  • Treasury Bills - 短期国債。4, 8, 13, 26, 52週物の割引債。これらとは別に、現金不足の際に不定期に Cash Management Bill が発売される。Cash Management Bill の方は個人は購入できない。[1]
  • Treasury Notes - 中長期国債[2]。2, 3, 5, 7, 10年物の利付債。[3]
  • Treasury Bonds - 超長期国債。20, 30年物の利付債。[4]

利払いの方法

  • 割引国債
  • 利付国債

1年以内の償還期限は割引債として、1年超の償還期限のものはすべて6カ月毎に利払いがある利付債として発行している。

その他

FRN(Floating Rate Note)[5]
変動金利の国債。2年債がある。変動金利は13週債に基づいて決める。2013年7月31日開始。
TIPS(Treasury Inflation-Protected Securities)[6]
インフレ連動債。元本及びクーポンが物価指数上昇率に連動。インフレは消費者物価指数の Consumer Price Index for All Urban Consumers (CPI-U) で計測する。5, 10, 30年債がある。1997年1月29日開始[7]
STRIPS(Separate Trading of Registered Interest and Principal of Securities)[8]
利付債の元本部分と利札部分を分離し元本部分をこの利付債の償還を満期とする割引債に利札をそのクーポンの支払日期日が満期の割引債として販売。

帳簿記載方式

帳簿記載方式(book entry form)とは、帳簿への記載によって所有者を証明し券面の発行を省略する制度であり、米国財務省証券の取引を容易にし流動性を高める一因となっている。日本の振替決済制度に相当する。

米国債債権国上位20国・地域

2022年5月時点:

Holder $US billion
1. 日本 1212.8
2. 中国 980.8
3. イギリス 634.0
4. スイス 294.1
5. ケイマン諸島 293.2
6. ルクセンブルク 292.4
7. アイルランド 289.3
8. ベルギー 268.3
9. フランス 244.0
10. ブラジル 232.7
11. 台湾中華民国 231.4
12. カナダ 211.0
13. インド 203.7
14. 香港 186.6
15. シンガポール 178.7
16. サウジアラビア 114.7
17. 韓国 114.1
18. ノルウェー 114.0
19. ドイツ 92.4
20. バミューダ諸島 75.2
Source: The United States Treasury[9]

沿革

米国は1776年7月4日に建国されたが、その前年の1775年6月22日に最初の米国債を第2次大陸会議が発行。発行額は200万ドル。アメリカ独立戦争バンカーヒルの戦いの頃である。1789年9月2日にアメリカ合衆国財務省が設立。[10]

アメリカ合衆国では、1990年代始めごろ、政府は史上最悪の財政赤字を抱えていたが、1998年には財政黒字に転換した。背景には、クリントン政権の財政再建政策(所得税の最高税率引き上げなど)とITを軸とした活発な民間投資がある。しかしその後、2002年に再び赤字になってからは財政赤字の状態が続いている。米国政府としては2022年現在、少なくともこの先30年間は黒字化しない見通しである。[11]

2010年11月、連邦準備制度理事会(FRB)議長のベン・バーナンキは追加的量的緩和政策(quantitative easing policy、いわゆるQE2)の中で、約6000億USドル(約48兆円)の米国債を市中から購入する決定を行った。失業率の改善や、S&P 500等株価指数の上昇など、QE2の効果は着実に表れたとされる[12]

2011年8月5日、米国債の格付けが引き下げられた。詳細は米国債ショックを参照。

見解

カブドットコム証券によると、為替変動や発行体の信用リスクにより損失が発生するおそれがあるとされる[13]。一方、サンケイビズは満期まで保有していれば額面通りに償還されるとしており[14]ZAKZAKも、満期まで保有して償還を受ければ、損失は発生しないとしている[15]。ただし償還は米ドルのため円に戻す場合は為替レートによって米国債購入時に比較し損失を出すこともあれば利益が出ることもある。

金融アナリストの久保田博幸は、「国債は一定期間売却できない代わりに、その期間を過ぎれば国が額面で買い取る」と解説している[16]

米国債売買をめぐる日本国内の動き

1997年6月23日、橋本龍太郎首相は、ニューヨークのコロンビア大学での講演で「私は何回か日本政府が持っている財務省証券を大幅に売りたいという誘惑に駆られたことがある」と発言、ウォール街では株式・国債が急落した[17]

江田憲司は2011年9月27日の衆議院予算委員会で、日本政府保有分米国債は約四十兆円の為替差損を抱えていると述べた。これに対し安住淳財務大臣は「円高にはさまざまな要因があり」「ヨーロッパにおける金融不安等があってこういうレートになっている」と答弁した[18]安住淳財務大臣は答弁のなかで米国債の満期償還金が毎年14.5兆円あると述べているが、江田憲司はその償還金も米国債の再購入に充てられていると述べている[18]

民主党の前原誠司政調会長は「米国債を売ってしまうとドルの信頼に響き、さらなる円高が加速する可能性もある」と述べ、売却に否定的な見解を示した[19]

2013年1月、安倍晋三総理大臣は米国債買い入れのために50兆円に上るファンドの設置を検討すると表明した[20]

主張

  • 経済評論家の植草一秀は「ドルが値上がりしたなら、ドル高の局面でドルを円に換金するべき」と主張している[21]
  • 河野太郎は、円高が進んでいる現状で米国債を売却しても負債が資産を上回るため、福島第一原発事故の賠償金にそのままあてることはできないと指摘している[22]
  • 金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎は「大量の米国債を手放すとなると市場の混乱は必至」と述べている[23]
  • J-CASTも、アメリカへの配慮が米国債を売却できない理由だと推測している[23]
  • ZAKZAKは、「売却で得たドルを円に替えれば、円高ドル安に拍車をかけることになるため、「売りたくても売れない」という事情もあるようだ」としている[15]

脚注

注釈

  1. ^ もっとも世界金融危機以後アメリカの財政は斜陽している。シークエスターガバメントシャットダウンを参照。

出典

  1. ^ Institutional - Treasury Bills - TreasuryDirect
  2. ^ 長期国債 | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
  3. ^ Institutional - Treasury Notes - TreasuryDirect
  4. ^ Institutional - Treasury Bonds - TreasuryDirect
  5. ^ Institutional - Floating Rate Note (FRN) - TreasuryDirect
  6. ^ Institutional - Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS) - TreasuryDirect
  7. ^ Individual - Timeline of Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS) - TreasuryDirect
  8. ^ Institutional - STRIPS - TreasuryDirect
  9. ^ Major Foreign Holders of Treasury Securities”. treasury.gov (18 July 2021). 2022年8月6日閲覧。
  10. ^ History of the Treasury | U.S. Department of the Treasury
  11. ^ The Budget and Economic Outlook: 2022 to 2032 | Congressional Budget Office
  12. ^ 米FRB議長のQE2はいいことずくめ 相場押し上げ与信・景気拡大 Bloomberg 2011年5月10日
  13. ^ 債券取引の基礎知識
  14. ^ 国債急落、高まる警戒 大手銀が危機管理マニュアル策定sankeibiz
  15. ^ a b ZAKZAK2011年8月6日
  16. ^ 債券と国債のしくみがわかる本 久保田博幸 196ページ
  17. ^ 麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、219頁。
  18. ^ a b https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/001817820110927002.htm
  19. ^ asahi.com2011年11月25日
  20. ^ FRB議長を安倍首相が手助けか-外債購入ファンド構想で2013年1月14日 bloomberg
  21. ^ 日本政府は対米上納外貨準備を金地金に変換せよ2013年8月20日 植草一秀の『知られざる真実』
  22. ^ 河野太郎公式サイト2011年04月25日
  23. ^ a b なぜ日本は金を買わないのか? 大量の米国債、売るに売れず……2013年6月20日 j-cast

関連項目

外部リンク