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「ブラック・ライヴズ・マター」の版間の差分

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* 1991年
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** 「自分を守るアフリカン・アメリカン女性」(African American Women Defense of Ourselves)がエルザ・バークリー・ブラウン<ref group="注">{{Lang-en-short|Elsa Barkley Brown}}</ref>、{{仮リンク|デボラ・サンタナ|en|Deborah Santana|label=デボラ・キング}}、{{仮リンク|バーバラ・ランズビー|en|Barbara Ransby}}らによって結成{{Sfn|ランズビー|2022|p=154}}。[[アニタ・ヒル|アニータ・ヒル]]への弁護と、黒人女性の連帯を訴えることが目的。
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* 1992年
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** 4月:[[ロサンゼルス暴動]]
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** 年末から翌年にかけ、ミズーリ州から全米規模に政治行動が拡大{{Sfn|ランズビー|2022|p=112}}
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** 8月9日:[[マイケル・ブラウン射殺事件]]
** 8月9日:[[マイケル・ブラウン射殺事件]]
** 8月10日:[[ファーガソン暴動|ファーガソン蜂起]]
** 8月10日:[[ファーガソン暴動|ファーガソン蜂起]]
** 10月:数万人規模の抗議集会「{{仮リンク|ファーガソン・アクション|en|Ferguson Action|label=ファーガソン・オクトーバー}}」が4日間にわたり行われる{{Sfn|ランズビー|2022|p=198}}<ref>{{Cite web |title=#BlackBrunch brings peaceful protest to Oakland restaurants |url=https://www.latimes.com/local/california/la-me-black-brunch-20150105-story.html |website=Los Angeles Times |date=2015-01-05 |access-date=2022-10-16 |language=en-US |first=Lee Romney Former staff writer Lee Romney covered the Bay |last=Area |publisher=[[ロサンゼルス・タイムズ]] |archive-url=https://web.archive.org/web/20221016145840/https://www.latimes.com/local/california/la-me-black-brunch-20150105-story.html |archive-date=2022-10-16}}</ref>
** 10月:数万人規模の抗議集会「{{仮リンク|ファーガソン・アクション|en|Ferguson Action|label=ファーガソン・オクトーバー}}」が4日間にわたり行われる{{Sfn|ランズビー|2022|p=198}}<ref>{{Cite web |title=#BlackBrunch brings peaceful protest to Oakland restaurants |url=https://www.latimes.com/local/california/la-me-black-brunch-20150105-story.html |website=Los Angeles Times |date=2015-01-05 |access-date=2022-10-16 |language=en-US |first=Lee Romney Former staff writer Lee Romney covered the Bay |last=Area |publisher=[[ロサンゼルス・タイムズ]] |archive-url=https://web.archive.org/web/20221016145840/https://www.latimes.com/local/california/la-me-black-brunch-20150105-story.html |archive-date=2022-10-16}}</ref>
** 11月:ニューヨークで行われた会合で「{{仮リンク|ムーブメント・フォー・ブラック・ライヴズ|en|Movement for Black Lives}}」(M4BL)が設立{{Sfn|ランズビー|2022|p=198}}
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* 2015年
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** 4月12日:{{仮リンク|フレディー・グレイ傷害致死事件|en|Killing of Freddie Gray}} - フレディー・グレイが、警察によって移送される最中に受けた脊椎損傷が原因で死亡
** 4月12日:{{仮リンク|フレディー・グレイ傷害致死事件|en|Killing of Freddie Gray}} - フレディー・グレイが、警察によって移送される最中に受けた脊椎損傷が原因で死亡
** 4月18日:{{仮リンク|2015年ボルチモア抗議|en|2015 Baltimore protests}}
** 4月18日:{{仮リンク|2015年ボルチモア抗議|en|2015 Baltimore protests}}
** 5月:[[シカゴ|シカゴ市議会]]が、ロナルド・キッチン含む「10名の死刑囚たち」("Death Row Ten")<ref group="注">「10名の死刑囚たち」と呼ばれた彼らは、シカゴ第二分署署長ジョン・バージらによって、10年以上に渡り拷問による取り調べを受けていた。</ref>{{Sfn|ランズビー|2022|p=172}}に対する集合的補償規定を定めた条令を可決{{Sfn|ランズビー|2022|p=174}}。
** 5月:[[シカゴ|シカゴ市議会]]が、ロナルド・キッチン含む「10名の死刑囚たち」("Death Row Ten")<ref group="注">「10名の死刑囚たち」と呼ばれた彼らは、シカゴ第二分署署長ジョン・バージらによって、10年以上に渡り拷問による取り調べを受けていた。</ref>{{Sfn|ランズビー|2022|p=172}}に対する集合的補償規定を定めた条令を可決{{Sfn|ランズビー|2022|p=174}}。
** 5月20日:アンドレア・リッチーらが報告書『彼女の名を言え』("Say Her Name")を発表
** 5月20日:アンドレア・リッチーらが報告書『彼女の名を言え』("Say Her Name")を発表
** 5月21日:BYP100、ならびに{{仮リンク|ムーブメント・フォー・ブラック・ライヴズ|en|Movement for Black Lives}}(M4BL)ほかが、ニューヨークをはじめとしたアメリカ国内20以上の都市で抗議集会を開く{{Sfn|ランズビー|2022|p=149}}。
** 5月21日:BYP100、ならびに{{仮リンク|ムーブメント・フォー・ブラック・ライヴズ|en|Movement for Black Lives}}(M4BL)ほかが、ニューヨークをはじめとしたアメリカ国内20以上の都市で抗議集会を開く{{Sfn|ランズビー|2022|p=149}}。
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite web |url=https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/politics/a36270261/blm-movement-timeline-210430-hns/ |title=改めて時系列で辿る、「ブラック・ライブズ・マター」ムーブメント |access-date=2022-10-17 |publisher=[[コスモポリタン]] |website=COSMOPOLITAN |date=2021-04-30 |archive-date=2022-10-16 |archive-url=https://web.archive.org/web/20221016130059/https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/politics/a36270261/blm-movement-timeline-210430-hns/}}

* {{Cite book|和書|title=アメリカ黒人史――奴隷制からBLMまで|date=2020-12-10|publisher=[[筑摩書房]]|isbn=978-4-480-07358-7|author=ジェームス・M・バーダマン<!--James M. Vardaman、早稲田大学名誉教授、アメリカ文化、南部・黒人文化専門-->|ref={{SfnRef|バーダマン|2020}}|translator=森本豊富}}
* {{Cite book|和書|title=ブラック・ライヴズ・マター運動誕生の歴史|date=2022-02-07|publisher=[[彩流社]]|isbn=978-4-7791-2785-4|author={{仮リンク|バーバラ・ランズビー|en|Barbara Ransby}}|translator=藤永康政|ref={{SfnRef|ランズビー|2022}}}}
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2022年10月16日 (日) 16:14時点における版

ブラック・ライブズ・マター
Black Lives Matter
設立 2013年7月13日 (11年前) (2013-07-13)
設立者
種類 社会運動
所在地
重要人物 ショーン・キング
ドゥレイ・マッケソン
ジョネッタ・エルジー
テンプレートを表示

ブラック・ライブズ・マター: Black Lives Matter、略称「BLM[1])は、アフリカ系アメリカ人コミュニティに端を発した、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動である。特に白人警官による無抵抗な黒人への暴力や殺害、種による犯罪者に対する不平等な取り扱いへの不満を訴えている[2][3]アリシア・ガーザ英語版パトリッセ・カラーズオーパル・トメティ英語版によって呼び掛けられ、広められた。英語の文は文字通り「黒人の命は重要」という意味である。

Black Lives Matter Global Network Foundationに参加している団体は多数あるが、単に「ブラック・ライブズ・マター」と名付けられたブラック・ライブズ・マター運動は、特定の団体を指すのではなく、幅広い人々と組織で構成された社会運動を指す。

「ブラック・ライブズ・マター」というスローガン自体は、どのグループからも商標登録されていない。

概要

2013年、各SNS上で#BlackLivesMatterというハッシュタグが拡散された。これは2012年2月にアメリカフロリダ州で黒人少年のトレイボン・マーティンが元警官で自警団団員のヒスパニック、ジョージ・ジマーマンに射殺された事件に端を発する(トレイボン・マーティン射殺事件)。

翌年の2014年には、7月にニューヨークでエリック・ガーナーがニューヨーク市警察の白人警察官による過剰な暴力により死亡(エリック・ガーナー窒息死事件)、8月にはミズーリ州ファーガソンでマイケル・ブラウンが白人警察官に射殺される。

マイケル・ブラウン射殺事件の翌日にファーガソンで行われたデモ行進と関連した暴動でBLMは世界的に認知されるようになった[4]ファーガソン騒動以降、アフリカ系アメリカ人が犠牲となった警官の過剰な治安維持行為を糾弾するデモが拡大する。2015年に入るとBLMは2016年アメリカ合衆国大統領選挙を巻き込んだ運動に発展する[5]2014年から2016年にかけて、運動家であるアリシア・ガーザパトリッセ・カラーズオーパル・トメティの3名はハッシュタグのさらなる拡散などを求め、さらに全米各地に30箇所以上のネットワークを設立し、全国的なムーブメントに拡大させた[6]

ブラック・ライヴズ・マターは多くの反響を生んでいる。米国におけるBLM運動の参加者は人種によってばらつきが大きいと言われる。

ジョージ・フロイド事件などを発端として、2020年にBLM運動は全米的なデモ・暴動へと発展した[注 1]。おもにこれを受けてアメリカ合衆国大統領選挙では人種差別が選挙の争点の一つになった。これがジョー・バイデン勝利の一因になったという見方がある一方で[15]、前回選挙と比べ、NBC出口調査によると黒人票のうちトランプに投票した割合が8%から12%高まり[16]、他にも黒人票で必ずしも反トランプ票が増えたとは言えないという見方がある[17]

日本語訳

短く平易な英単語による表現であるが、「Black Lives Matter」という語の日本語への翻訳は、かなり困難な英語表現であり、文脈も合わせその意図と読み取る必要がある。

2020年5月のミネソタ州ミネアポリスで発生した黒人男性を白人警官が死に至らしめた事件に端を発する世界的に広がった抗議運動についての報道に際し、ハフポスト日本語版による当初の「黒人の命も大切だ」という日本語訳に対して異論・批判が生じた[18]ことを受け、「黒人の命を守れ」 「黒人の命も大切だ、軽視するな」 「黒人の命は大切(です / だ)」等の修正・追補が行われた[19][20][21]。この「黒人の命は大切」という日本語訳は、他のメディアでも使用されている[22][23]

一方、ジャーナリストの岩田太郎はオンライン・ニュースサイトJapan In-depth上において、「そのまま素直に訳せば、『黒人の命が大切』あるいは『黒人の命は大切』となる。しかし、現在の抗議行動の文脈からすれば、黒人参加者たちは『黒人の命こそ大切』と言っているニュアンスになる」とした[24]

また、この「黒人の命は大切だ」という日本語訳を用いず、あえて「黒人の命をないがしろにするな」[注 2]「黒人の命を粗末にするな」[注 3]「黒人の命を軽んじるな」[注 4]と否定形を使った日本語訳も出ている。その他、「黒人の命にも価値がある」[29]、(ジョン・ボイエガが発した「black lives always matter」に対する日本語訳として)「いつだって黒人の命は大切だ」[30]などがある。

アメリカ黒人史英語版研究者の藤永康政は、『ブラック・ライヴズ・マター誕生の歴史』において「lives」を「命・生活」と訳したうえで、「lives」を単に「命」と訳すのは本運動の「本質を大きく取り違えたものである」と指摘している[31]

BBCの日本語版では「黒人の命も大事だ(BLM)」との表記を採用している[32]

このように日本語では一意に翻訳を定めにくい現状を踏まえ、あえて日本語には訳さないほうがよいという主張もある[33]

世界への波及

BLMのデモ行進はアメリカ国内に留まらず、ヨーロッパ東アジア中東を含む世界中の国や地域でも行われた[要出典]

イギリスでは奴隷貿易の礎を築いたイギリス帝国主義も批判の的になり、各地で奴隷貿易に関わった人物の銅像が引き倒された[34][信頼性要検証]

日本においても東京大阪名古屋などの主要都市でデモが行われた[35][36][37][38]。また、日本にも根深い人種差別があると指摘する意見や報道もあり[39]NHKが2020年(令和2年)6月7日に放送した『これでわかった!世界のいま』の内容が「(黒人に対する)侮辱的で配慮に欠けるもの」と批判を受けた[39]

批判

2020年5月末の約半月だけで、BLMの暴動、略奪、破壊により、保険会社の支払いは10億ドルにのぼった。このため白人穏健派の支持が離れていっており、分断が進んでいる[40]

保守派で白人である、前ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニはBLMを根本的に人種差別だとし、反アメリカ的だと述べた。それに対してワシントン・ポスト紙は、人種差別的でないとした上で、前市長が人種問題について自身の想像の中の世界にいると批判した[41]

トランプ支持派の黒人作家キャンディス・オーウェンズのように、黒人の中にも批判派は存在する[42]

BLMへのカウンターとしてオール・ライブズ・マター: All Lives Matter)という運動も勃興した。BLM派からは、All Lives MatterはBLM運動を軽視するスローガンとして発生し、アメリカにおける黒人の現状から論点をずらすために使用されるとして批判がある。発起人の一人であるアリシア・ガーザ英語版は、All Lives Matterについて、「私たちはすべての命が大切だと当然認識しています。しかし、私たちはすべての命が大切だとされている世界には住んでいないのです」と語った[43][注 5]。さらに暴徒によってファーガソンの警官2人が襲撃を受けて新たな運動に発展し、こちらも警官の人権を主張するブルー・ライブズ・マター: Blue Lives Matter)として一定の広がりを見せている。警察権限の縮小は犯罪の増加につながるという批判もある[45]

また黒人差別とされた表現を自粛する動きが相次ぎ、BLM賛成派からは偽善、BLM批判派からは過剰反応と、両者からの批判が生まれている[46]。さらにバイデン政権とBLMを主導した新世代左派の間にも亀裂があり、運動の纏まりは反トランプであるという指摘もある[47]

年表

以下の年表において、抗議活動については開始月日のみを記述する。

脚注

注釈

  1. ^ この期間には多くの抗議活動が行われたが、暴動に発展した割合はそのうちの一部である[7][8]。うちケンタッキー州ルイビルでは6月27日に、ブリオナ・テイラー事件の抗議活動に定期的に参加していた23歳の男性により抗議活動中に27歳の写真家が射殺された[9][10]シアトルでは活動家によって抗議活動の一環として街の一角を占拠して”自治”が宣言された”警察から自由”な区域「キャピトルヒル自治区」が設置されたが、ここで銃撃事件が多発して6月30日までに少なくとも19歳の男性と16歳の少年が死亡している[11][12][13]FBIは外国勢力、特に中国からの介入について捜査を行った[14]
  2. ^ ジャーナリストのモーリー・ロバートソンによる[25]
  3. ^ 京都大学人文科学研究所の竹沢泰子による[26][27]
  4. ^ ライター・翻訳家の池城美菜子による[28]
  5. ^ 原文:"We do believe that all lives matter, but we don't live in a world where all lives matter"[44]
  6. ^ : Elsa Barkley Brown
  7. ^ : Dominique “Damo” Franklin, Jr
  8. ^ われわれはジェノサイドを告発する英語版』に依ったもの。
  9. ^ : Black Brunch、日曜日に高級レストランの中に入り、客の前で警察の暴力の犠牲者の名前を読み上げる平和的抗議活動。
  10. ^ 「10名の死刑囚たち」と呼ばれた彼らは、シカゴ第二分署署長ジョン・バージらによって、10年以上に渡り拷問による取り調べを受けていた。

出典

  1. ^ 日本放送協会. “Black Lives Matterが意味するもの|アメリカ大統領選挙2020|NHK NEWS WEB”. www3.nhk.or.jp. 2020年11月2日閲覧。
  2. ^ Lopez, German (2016年7月11日). “Why you should stop saying "all lives matter," explained in 9 different ways”. Vox. 2019年9月19日閲覧。
  3. ^ Friedersdorf, Conor. "Distinguishing Between Antifa, ...." The Atlantic. August 31, 2017. August 31, 2017.
  4. ^ Luibrand, Shannon (2015年8月7日). “Black Lives Matter: How the events in Ferguson sparked a movement in America”. CBS News. 2016年12月18日閲覧。
  5. ^ Eligon, John (2015年11月18日). “One Slogan, Many Methods: Black Lives Matter Enters Politics”. The New York Times. 2016年12月18日閲覧。
  6. ^ Cullors-Brignac, Patrisse Marie (2016年2月23日). “We didn't start a movement. We started a network.”. Medium. 2016年12月18日閲覧。
  7. ^ “93% of Black Lives Matter Protests Have Been Peaceful, New Report Finds”. Time. (2020年9月5日). https://time.com/5886348/report-peaceful-protests/ 2021年2月7日閲覧。 
  8. ^ DEMONSTRATIONS & POLITICAL VIOLENCE IN AMERICA: NEW DATA FOR SUMMER 2020”. ACLED. 2021年2月7日閲覧。
  9. ^ “Steven Lopez, suspect in fatal Jefferson Square Park shooting, enters not guilty plea”. Courier journal. (2020年6月30日). https://www.courier-journal.com/story/news/crime/2020/06/30/louisville-protest-shooting-suspect-steven-lopez-arraignment-pleads-not-guilty/3284175001/ 2021年2月15日閲覧。 
  10. ^ “In St. Louis, Seattle and Louisville, Police Find Guns Around Protests”. THE WALL STREET JOURNAL. (2020年6月30日). https://www.wsj.com/articles/in-st-louis-seattle-and-louisville-police-find-guns-around-protests-11593479207 2021年2月15日閲覧。 
  11. ^ “Seattle: one teen killed and another injured in shooting in police-free zone”. The Guardian. (2020年6月30日). https://www.theguardian.com/us-news/2020/jun/29/chop-chaz-shooting-seattle-police-free-zone 2021年2月17日閲覧。 
  12. ^ “Two teenagers shot in Seattle's Chop autonomous zone”. BBC NEWS. (2020年6月30日). https://www.bbc.com/news/world-us-canada-53224445 2021年2月17日閲覧。 
  13. ^ “Teen who died in CHOP shooting wanted ‘to be loved,’ those who knew him recall”. The Seattle Times. (2020年6月22日). https://www.seattletimes.com/seattle-news/teen-who-died-in-chop-shooting-wanted-to-be-loved-those-who-knew-him-recall/ 2021年2月17日閲覧。 
  14. ^ “Wray reveals FBI 'looking carefully' at foreign interference in protests following George Floyd's death”. FOX NEWS. (2020年6月24日). https://www.foxnews.com/politics/wray-reveals-fbi-looking-carefully-at-foreign-interference-in-protests-following-george-floyds-death 2021年2月15日閲覧。 
  15. ^ 2020年 衝突の残像(3) BLM運動、全米に拡大”. 日本経済新聞 (2020年12月28日). 2020年12月28日閲覧。
  16. ^ 白人・若者、バイデン氏支持「ラストベルト」勝利導く 中南米系は取り逃がす”. 日本経済新聞 (2020年11月10日). 2020年12月28日閲覧。
  17. ^ Trump made gains with Black voters in some states. Here’s why.” (英語). Vox (2020年11月4日). 2020年12月28日閲覧。
  18. ^ 治部れんげ治部れんげさんのページ」『Yahoo!ニュースYahoo! JAPAN、2020年6月1日。2020年11月2日閲覧。
  19. ^ 黒人の命を守れ 企業続々訴え」『Yahoo!ニュースYahoo! JAPAN、2020年5月31日。2020年11月2日閲覧。 [リンク切れ]
  20. ^ 生田綾『#BlackLivesMatter』企業も黒人差別に抗議、力強いメッセージ続く Netflix「私たちには声を上げる義務がある」」『ハフポストハフポスト、2020年5月31日。2020年11月2日閲覧。「【UPDATE 6/1 10時57分】黒人の命が軽視され、差別されてきた歴史やアメリカでの怒りの声をより正確に表現するため、Black Lives Matterの和訳を補いました。」
  21. ^ Lydia O'Connor「「Black Lives Matter」ムーブメントに火をつけたファーガソン市に、初の黒人市長が誕生する」『ハフポストハフポスト、2020年6月3日。2020年11月2日閲覧。
  22. ^ 稲垣貴俊【解説】「Black Lives Matter」抗議運動広がる、ジョージ・フロイド氏の死亡事件から ─ マーベルやNetflixなど映画・ドラマ界も声明発表」『THE RIVER』riverch、2020年6月1日。2020年11月2日閲覧。
  23. ^ “米 黒人男性死亡事件 抗議デモ各地に広がる 州兵出動も”. NHKニュース. (2020年6月1日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200601/k10012452771000.html 2020年11月2日閲覧。  [リンク切れ]
  24. ^ 岩田太郎「「黒人の命も大切」ではなく「黒人の命こそ大切」」『Japan In-depth』2020年6月4日。2020年11月2日閲覧。
  25. ^ https://twitter.com/gjmorley/status/1268459563751104512?s=20
  26. ^ 「Black Lives Matterが意味するもの」」『NHKオンライン』2020年6月19日。 - 2020年令和2年)11月2日閲覧。
  27. ^ 竹沢泰子「ブラック・ライブズ・マター」肌の色が生死分けるアメリカの構造」『朝日新聞』2020年6月24日。
  28. ^ 池城美菜子「Black Lives Matter 2020」:繰り返される人種問題と抗議運動」『uDiscoverMusic.jp』ユニバーサル ミュージック合同会社、2020年6月2日。2020年11月2日閲覧。「この原稿の冒頭で、よく「黒人の命は大切だ」と訳されるブラック・ライヴズ・マターを、あえて「黒人の命を軽んじるな」と否定形を使って訳したのには理由がある。「〇〇の命は大切」だと、必ず「オール・ライヴズ・マター(All Lives Matter;すべての命は大切)」とまぜっ返す人が出てくるからだ。…」
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参考文献

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  • バーバラ・ランズビー 著、藤永康政 訳『ブラック・ライヴズ・マター運動誕生の歴史』彩流社、2022年2月7日。ISBN 978-4-7791-2785-4 

関連項目

外部リンク