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'''人事評価'''(じんじひょうか)または'''人事考課'''とは[[従業員]]の業務の遂行度、業績、能力を評価し、[[賃金]]や[[昇進]]等の[[人事]]施策に反映させる仕組みのこと<ref name=yatabe>[[谷田部光一]] [http://www.law.nihon-u.ac.jp/publication/pdf/seikei/52_1/01.pdf#zoom=60 人材育成のための人事評価制度] 政経研究』第52巻 第1号(2015年6月発行)</ref>。6カ月や1年など定期的にかつ継続的に実施される<ref name=yatabe/>。
'''人事評価'''(じんじひょうか)または'''人事考課'''とは[[従業員]]の業務の遂行度、業績、能力を評価し、[[賃金]]や[[昇進]]等の人事施策に反映させる仕組みのこと<ref name=yatabe>{{Cite journal|和書|author=谷田部光一 |date=2015-06 |title=人材育成のための人事評価制度 |url=https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/political/political_52_1/each/03.pdf |format=PDF |journal=政経研究 |ISSN=02874903 |publisher=[https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/political/ 日本大学政経研究所] |volume=52 |issue=1 |pages=1-30 |naid=40020569527}}</ref>。6カ月や1年など定期的にかつ継続的に実施される<ref name=yatabe/>。


'''評価表'''('''[https://jinji.jp/samplesheet/evaluation-list/ サンプル]''')に沿って評価・考課する場合、文章について社内のメンバーの理解が一致していることが、公平性を保った運用のため、重要となる。評価を行う者(評価者)の育成や、評価者間の認識すり合わせによって公正な評価とするために、評価者研修を実施する企業もある。
'''評価表'''<ref>[https://jinji.jp/samplesheet/evaluation-list/ 人事評価シートサンプル] 人事戦略研究所</ref>に沿って評価・考課する場合、文章について社内のメンバーの理解が一致していることが、公平性を保った運用のため、重要となる。評価を行う者(評価者)の育成や、評価者間の認識すり合わせによって公正な評価とするために、評価者研修を実施する企業もある。


日本の中堅・大[[企業]]においては人事考課制度が定着しており、[[厚生労働省]]2002年雇用管理調査によると[[従業員]]数300人以上1000人未満の企業では導入率89.1%などだった<ref name=yatabe/>。
日本の中堅・大[[企業]]においては人事考課制度が定着しており、[[厚生労働省]]2002年雇用管理調査によると[[従業員]]数300人以上1000人未満の企業では導入率89.1%などだった<ref name=yatabe/>。


[[労働経済学]]では'''人事査定'''とも呼ばれる<ref>井川浩輔 厨子直之 [http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/5973 ナレッジワーカーの人的資源管理に関する予備的考察] 2008年琉球大学経済研究 no.75 p.203 -240</ref>。
[[労働経済学]]では'''人事査定'''とも呼ばれる<ref>{{Cite journal|和書 |author=井川浩輔, 厨子直之 |date=2008-03 |title=ナレッジワーカーの人的資源管理に関する予備的考察 |url=https://hdl.handle.net/20.500.12000/5973 |journal=琉球大学経済研究 |ISSN=0557-580X |publisher=琉球大学法文学部 |issue=75 |pages=203-240}}</ref>。


==歴史==
==歴史==
日本では1930年代に[[科学的管理法]]の一部としてアメリカから評価方法が導入され広まった<ref name=endo>[[遠藤公嗣]]「人事査定制度の日本化 アメリカと日本の二つの軌跡」1995年[http://www.kisc.meiji.ac.jp/~endokosh/ronbun.htm]</ref>。その一つに[[荒木東一郎]]の1937年の「人事考課表」がある<ref name=endo/>。
日本では1930年代に[[科学的管理法]]の一部としてアメリカから評価方法が導入され広まった<ref name=endo>遠藤公嗣「[http://www.kisc.meiji.ac.jp/~endokosh/ronbun.htm 人事査定制度の日本化 アメリカと日本の二つの軌跡]」1995年{{リンク切れ|date=2022年11月}}</ref>。その一つに荒木東一郎の1937年の「人事考課表」がある<ref name=endo/>。


1970年代から1980年代の日本の大企業では人事考課は成績考課(遂行した仕事の量・質)、能力考課(仕事の遂行能力)、情意考課(仕事への意欲など)の三要素で行われた<ref>[https://hdl.handle.net/10291/620 技能の諸概念と人事査定] 経営論集 49巻(1-2) 2002</ref>。1990年代以降は[[成果主義]]が定着し、情意・能力考課は{{仮リンク|360度評価|en|360-degree feedback}}(上司からだけでなく、同僚や部下からも評価してもらう)に置き換わった<ref name=takahashi>[[髙橋潔]]「人事評価を効果的に機能させるための心理学からの論点」[http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/12/index.html 日本労働研究雑誌 2011年12月号(No.617)]</ref>。しかし、好き嫌いの要素を排除できない等問題点が露呈した。
1970年代から1980年代の日本の大企業では人事考課は成績考課(遂行した仕事の量・質)、能力考課(仕事の遂行能力)、情意考課(仕事への意欲など)の三要素で行われた<ref>{{Cite journal|和書 |author=遠藤公嗣 |year=2002 |url=https://hdl.handle.net/10291/620 |title=技能の諸概念と人事査定 |journal=経営論集 |volume=49 |issue=1-2 |pages=89-109 |naid=120001438480 |ISSN=0387-298X |publisher=明治大学経営学研究所}}</ref>。1990年代以降は[[成果主義]]が定着し、情意・能力考課は{{仮リンク|360度評価|en|360-degree feedback}}(上司からだけでなく、同僚や部下からも評価してもらう)に置き換わった<ref name=takahashi>{{Cite journal|和書 |author=高橋潔 |author-link=高橋潔 (心理学者) |year=2011 |title=人事評価を効果的に機能させるための心理学からの論点 |url=https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backissue/2011/12/pdf/022-032.pdf |format=PDF |journal=[https://www.jil.go.jp/institute/zassi/index.html 日本労働研究雑誌] |ISSN=09163808 |publisher=労働政策研究・研修機構 |volume=53 |issue=12 |pages=22-32}}</ref>。しかし、好き嫌いの要素を排除できない等問題点が露呈した。


1990年代までの研究によると、[[中華人民共和国|中国]]では集団内の関係を重んじる[[儒教]]の影響により、[[個人主義]]的な西洋式人事評価がそぐわないとも考えられた<ref name=cheng>Cheng, Kevin and Cascio, Wayne, Performance-Appraisal Beliefs of Chinese Employees in Hong Kong and the Pearl River Delta. International Journal of Selection and Assessment, Vol. 17, Issue 3, pp. 329-333, September 2009. {{doi|10.1111/j.1468-2389.2009.00475.x}}</ref>。一方で、個人としての成果に報酬を与えることが[[香港]]や[[珠江デルタ]]では奨励されている<ref name=cheng/>。
1990年代までの研究によると、[[中華人民共和国|中国]]では集団内の関係を重んじる[[儒教]]の影響により、[[個人主義]]的な西洋式人事評価がそぐわないとも考えられた<ref name=cheng>Cheng, Kevin and Cascio, Wayne, Performance-Appraisal Beliefs of Chinese Employees in Hong Kong and the Pearl River Delta. International Journal of Selection and Assessment, Vol. 17, Issue 3, pp. 329-333, September 2009. {{doi|10.1111/j.1468-2389.2009.00475.x}}</ref>。一方で、個人としての成果に報酬を与えることが[[香港]]や[[珠江デルタ]]では奨励されている<ref name=cheng/>。


日本の[[国家公務員]]には[[勤務評定]]制度があったが、[[年功序列]]式から能力・実績を反映する方式への移行を目指して平成21年(2009年)度から「人事評価制度」に置き換えられることになった<ref>[http://www.jinji.go.jp/hakusho/h20/041.html 人事院平成20年度年次報告書 第 《人事行政》【第部】 人事院の創立、変遷と国家公務員人事管理における現代的課題第 国家公務員人事管理における現代的課題2 年功序列・年次管理から能力・実績主義へ] </ref>。同様に[[地方公務員]]も2016年度から人事評価制度が導入された。
日本の[[国家公務員]]には[[勤務評定]]制度があったが、[[年功序列]]式から能力・実績を反映する方式への移行を目指して平成21年(2009年)度から「人事評価制度」に置き換えられることになった<ref>[http://www.jinji.go.jp/hakusho/h20/041.html 人事院平成20年度年次報告書 第1 《人事行政》【第2部】 人事院の創立、変遷と国家公務員人事管理における現代的課題第3 国家公務員人事管理における現代的課題2年功序列・年次管理から能力・実績主義へ]</ref>。同様に[[地方公務員]]も2016年度から人事評価制度が導入された。


従来は賃金や昇進・人材配置などの意思決定が人事評価の主目的とされたが、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では人事評価を人材育成・能力開発に統合する{{仮リンク|パフォーマンス・マネジメント|en|Performance management}}が論じられるようになった<ref name=yatabe/>。
従来は賃金や昇進・人材配置などの意思決定が人事評価の主目的とされたが、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では人事評価を人材育成・能力開発に統合する{{仮リンク|パフォーマンス・マネジメント|en|Performance management}}が論じられるようになった<ref name=yatabe/>。


==標準化==
==標準化==
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2002年([[平成]]14年)度から12年(平成24年)度までに[[厚生労働省]]は人材育成や人事評価の基準となる[[職業能力評価基準]]を46業種について整備した<ref>[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihats/ability_skill/syokunou/index.html 職業能力評価基準について] 厚生労働省</ref>。


==各国における人事評価==
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===中国===
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2008年ごろの[[中華人民共和国|中国]]においては、学校[[教員]]の勤務評価制度として、'''年度考課制度'''や'''職務称号評定制度'''などが制定されていた。これは、[[市場経済]]システム導入の機運のもと、同国の[[国際競争力]]を高めるための取り組みの一環として導入されたものであった{{sfn|劉占富|2007|pp=469-470}}。
2008年ごろの[[中華人民共和国|中国]]においては、学校教員の勤務評価制度として、'''年度考課制度'''や'''職務称号評定制度'''などが制定されていた。これは、[[市場経済]]システム導入の機運のもと、同国の[[国際競争力]]を高めるための取り組みの一環として導入されたものであった{{sfn|劉占富|2007|pp=469-470}}。


==出典==
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==参考文献==
==参考文献==
*{{cite journal|和書|title=現代中国の教員評価制度|date=2007-03-10|author=劉占富|journal=東京大学大学院教育学研究科紀要|issn=13421050|ncid=AN10516641|volume=46|pages=469-480|url=https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/31351#.YcVYTi_3It0|ref=harv}}
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==関連項目==
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*[[業績改善計画]] - 低評価の者に業績の改善を求めるプラン
* [[業績改善計画]] - 低評価の者に業績の改善を求めるプラン


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2022年11月2日 (水) 08:52時点における版

人事評価(じんじひょうか)または人事考課とは従業員の業務の遂行度、業績、能力を評価し、賃金昇進等の人事施策に反映させる仕組みのこと[1]。6カ月や1年など定期的にかつ継続的に実施される[1]

評価表[2]に沿って評価・考課する場合、文章について社内のメンバーの理解が一致していることが、公平性を保った運用のため、重要となる。評価を行う者(評価者)の育成や、評価者間の認識すり合わせによって公正な評価とするために、評価者研修を実施する企業もある。

日本の中堅・大企業においては人事考課制度が定着しており、厚生労働省2002年雇用管理調査によると従業員数300人以上1000人未満の企業では導入率89.1%などだった[1]

労働経済学では人事査定とも呼ばれる[3]

歴史

日本では1930年代に科学的管理法の一部としてアメリカから評価方法が導入され広まった[4]。その一つに荒木東一郎の1937年の「人事考課表」がある[4]

1970年代から1980年代の日本の大企業では人事考課は成績考課(遂行した仕事の量・質)、能力考課(仕事の遂行能力)、情意考課(仕事への意欲など)の三要素で行われた[5]。1990年代以降は成果主義が定着し、情意・能力考課は360度評価英語版(上司からだけでなく、同僚や部下からも評価してもらう)に置き換わった[6]。しかし、好き嫌いの要素を排除できない等問題点が露呈した。

1990年代までの研究によると、中国では集団内の関係を重んじる儒教の影響により、個人主義的な西洋式人事評価がそぐわないとも考えられた[7]。一方で、個人としての成果に報酬を与えることが香港珠江デルタでは奨励されている[7]

日本の国家公務員には勤務評定制度があったが、年功序列式から能力・実績を反映する方式への移行を目指して平成21年(2009年)度から「人事評価制度」に置き換えられることになった[8]。同様に地方公務員も2016年度から人事評価制度が導入された。

従来は賃金や昇進・人材配置などの意思決定が人事評価の主目的とされたが、アメリカでは人事評価を人材育成・能力開発に統合するパフォーマンス・マネジメント英語版が論じられるようになった[1]

標準化

2002年(平成14年)度から12年(平成24年)度までに厚生労働省は人材育成や人事評価の基準となる職業能力評価基準を46業種について整備した[9]

各国における人事評価

中国

2008年ごろの中国においては、学校教員の勤務評価制度として、年度考課制度職務称号評定制度などが制定されていた。これは、市場経済システム導入の機運のもと、同国の国際競争力を高めるための取り組みの一環として導入されたものであった[10]

出典

  1. ^ a b c d 谷田部光一「人材育成のための人事評価制度」(PDF)『政経研究』第52巻第1号、日本大学政経研究所、2015年6月、1-30頁、ISSN 02874903NAID 40020569527 
  2. ^ 人事評価シートサンプル 人事戦略研究所
  3. ^ 井川浩輔, 厨子直之「ナレッジワーカーの人的資源管理に関する予備的考察」『琉球大学経済研究』第75号、琉球大学法文学部、2008年3月、203-240頁、ISSN 0557-580X 
  4. ^ a b 遠藤公嗣「人事査定制度の日本化 アメリカと日本の二つの軌跡」1995年[リンク切れ]
  5. ^ 遠藤公嗣「技能の諸概念と人事査定」『経営論集』第49巻第1-2号、明治大学経営学研究所、2002年、89-109頁、ISSN 0387-298XNAID 120001438480 
  6. ^ 高橋潔人事評価を効果的に機能させるための心理学からの論点」(PDF)『日本労働研究雑誌』第53巻第12号、労働政策研究・研修機構、2011年、22-32頁、ISSN 09163808 
  7. ^ a b Cheng, Kevin and Cascio, Wayne, Performance-Appraisal Beliefs of Chinese Employees in Hong Kong and the Pearl River Delta. International Journal of Selection and Assessment, Vol. 17, Issue 3, pp. 329-333, September 2009. doi:10.1111/j.1468-2389.2009.00475.x
  8. ^ 人事院平成20年度年次報告書 第1編 《人事行政》【第2部】 人事院の創立、変遷と国家公務員人事管理における現代的課題第3節 国家公務員人事管理における現代的課題2年功序列・年次管理から能力・実績主義へ
  9. ^ 職業能力評価基準について 厚生労働省
  10. ^ 劉占富 2007, pp. 469–470.

参考文献

関連項目