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「恩寵園事件」の版間の差分

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'''恩寵園事件'''(おんちょうえんじけん)とは、[[1995年]]に[[千葉県]][[船橋市]]の[[児童養護施設]][[恩寵園]]で児童に対して[[身体的虐待]]、[[性的虐待]]などが行われた[[児童虐待]]事件である。
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'''恩寵園事件'''(おんちょうえんじけん)とは、[[1995年]]に[[千葉県]][[船橋市]]の[[児童養護施設]][[恩寵園]]で児童に対して[[身体的虐待]]、[[性的虐待]]などが行われた[[児童虐待]]事件である。


== 概略 ==
== 概略 ==
1996年4月、恩寵園に入所していた児童13人が児童相談所に逃げ込み、園長とその妻、次男の指導員、主任保母の虐待の事実を訴え出た<ref name=":0">{{Cite journal|和書|author=森川 晴子|date=2013-03|title=マスメディアによる法律への影響(調査研究) : 恩寵園事件とマスメディアにおける総合的検証 : 新聞、テレビ、インターネットはどのように児童福祉法を改正させたか|url=https://kagoshima.daiichi-koudai.ac.jp/post_files/material/52/files/kh_25_17.pdf|journal=研究報告|volume=25|pages=107-115|publisher=[[第一工業大学]]|ref=harv}}</ref>。虐待の内容は、[[バット (野球)#バットの材質|金属バット]]や[[木刀]]で殴る、[[衣類乾燥機|乾燥機]]に入れる、足や[[性器]]を切りつける、[[強姦]]などであった<ref name=":0" />。しかし、千葉県は上記の事実を否定し、児童たちを園に戻し、園長に対する口頭指導のみの処分を科した<ref name=":0" />。この処分に対して、児童は児童相談所の女性弁護士を代理人として人権救済を申し立てたり、県知事に手紙を書いたりしたが、千葉県は一切取り合わなかった<ref name=":0" />。
1995年8月に[[児童相談所]]に対し匿名の告発があったことで表面化し、調査を行った結果、児童虐待が確認された。虐待は[[バット (野球)#バットの材質|金属バット]]や[[木刀]]で殴る、[[衣類乾燥機|乾燥機]]に入れる、足や[[性器]]を切りつける、[[強姦]]などであった。


一方、地元新聞が恩寵園事件を伝え、その事態の深刻さを知った大手新聞社が報道を重ねたことで、恩寵園の施設内虐待事件は市民に知られるようになった<ref name=":0" />。市民は「恩寵園の子供を支える会」を立ち上げて住民起訴を起こすも棄却され、園長も職員も解職されなかった<ref name=":0" />。
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1997年5月、[[社民党]]の[[保坂展人]]が[[衆議院]]本会議で恩寵園の虐待問題を取り上げた<ref>{{cite conference|url=https://kokkai.ndl.go.jp/minutes/api/v1/detailPDF/img/114005254X03419970513|title=衆議院本会議|conference=第140回国会}}</ref>。さら日本テレビ局「特捜報道ドキュメント」恩寵園卒園生や園職員に取材調査を行い、そ内容1999年に放映する<ref name=":0" />。この番組のDVDはての会議員に配布され、ある国会議員が千葉県を召還て県警に強制捜査を命じ<ref name=":0" />
関係者らは[[傷害]]・[[強制わいせつ罪|強制わいせつ]]・[[強姦]]などの罪で1999年から2000年にかけ逮捕された。園長は傷害で懲役8か月、園長の息子は強制わいせつで4年の実刑判決を受けた。


2000年1月、千葉地方裁判所は園長の虐待を認定した<ref name=":0" />。千葉県警の家宅捜索により、園長は入所児童に対する傷害容疑で書類送検され<ref name=":0" />、同年8月に園長の次男である指導員は入所児童に対する強制猥褻・婦女暴行容疑で逮捕された<ref name=":0" />。これらの動きを受けて、千葉県は園長の解職を含む改善勧告を出し、社会福祉法人の理事を一新する改善計画を提出させた<ref name=":0" />。
なお、民事訴訟について第1審の[[千葉地方裁判所|千葉地裁]]は2007年12月20日、一部の元園児については、親が引き取ったことからそのときから[[時効]]が進行するとして損害賠償請求を認めなかったが、虐待行為が不法行為に該当することを認め、児童養護施設の設置を所掌する千葉県に対し10万円~80万円の支払いを命じた。なお、園及び園長に対する賠償責任は[[国家賠償法]]の適用を受けるとされたため認められなかった。

裁判の結果、園長は懲役8ヶ月・執行猶予3年、園長の次男である元指導員は懲役4年の判決が確定した<ref name=":0" />。のちに恩寵園の卒園生11人が原告となり、損害賠償を請求する民事起訴を起こした<ref name=":0" />。最高裁は千葉県の賠償責任は認めたが、園長個人の賠償責任は認めなかった<ref name=":0" />。

== 事件の影響 ==
恩寵園事件を受けて、2009年4月に施行された児童福祉法には「施設内虐待の防止、児童養護施設等における虐待を発見した者の通告義務、通告があった場合の都道府県や都道府県児童福祉審議会等が講ずべき措置等施設内虐待の防止のための規定を設ける」という文章が盛り込まれた<ref name=":0" />。これにより、恩寵園以外でも行われていた児童養護施設での施設内虐待が表面化するようになった<ref name=":0" />。


== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
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* 恩寵園の子どもたちを支える会 編『養護施設の児童虐待 たちあがった子どもたち』(明石書店2001年)


== 関連項目 ==
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* [[東京シューレ#性暴力事件]]
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* [[丹波ナチュラルスクール#暴力・虐待事件]]
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* 養護施設の児童虐待 たちあがった子どもたち」恩寵園の子どもたちを支える会/編(明石書店,2001)
* [[沼田武]] - 事件発覚当時の千葉県知事。児童からの訴えに対し、園長に労いの手紙を送った。
* [[沼田武]] - 事件発覚当時の千葉県知事。児童からの訴えに対し、園長に労いの手紙を送った。



2023年3月6日 (月) 13:52時点における版

恩寵園事件(おんちょうえんじけん)とは、1995年千葉県船橋市児童養護施設恩寵園」で児童に対して身体的虐待性的虐待などが行われた児童虐待事件である。

概略

1996年4月、恩寵園に入所していた児童13人が児童相談所に逃げ込み、園長とその妻、次男の指導員、主任保母の虐待の事実を訴え出た[1]。虐待の内容は、金属バット木刀で殴る、乾燥機に入れる、足や性器を切りつける、強姦などであった[1]。しかし、千葉県は上記の事実を否定し、児童たちを園に戻し、園長に対する口頭指導のみの処分を科した[1]。この処分に対して、児童は児童相談所の女性弁護士を代理人として人権救済を申し立てたり、県知事に手紙を書いたりしたが、千葉県は一切取り合わなかった[1]

一方、地元新聞が恩寵園事件を伝え、その事態の深刻さを知った大手新聞社が報道を重ねたことで、恩寵園の施設内虐待事件は市民に知られるようになった[1]。市民は「恩寵園の子供を支える会」を立ち上げて住民起訴を起こすも棄却され、園長も職員も解職されなかった[1]

1997年5月、社民党保坂展人衆議院本会議で恩寵園の虐待問題を取り上げた[2]。さらに、日本テレビ局「特捜報道ドキュメント」が恩寵園卒園生や元園職員に取材調査を行い、その内容を1999年に放映する[1]。この番組のDVDは全ての国会議員に配布され、ある国会議員が千葉県を召還して県警に強制捜査を命じた[1]

2000年1月、千葉地方裁判所は園長の虐待を認定した[1]。千葉県警の家宅捜索により、園長は入所児童に対する傷害容疑で書類送検され[1]、同年8月に園長の次男である指導員は入所児童に対する強制猥褻・婦女暴行容疑で逮捕された[1]。これらの動きを受けて、千葉県は園長の解職を含む改善勧告を出し、社会福祉法人の理事を一新する改善計画を提出させた[1]

裁判の結果、園長は懲役8ヶ月・執行猶予3年、園長の次男である元指導員は懲役4年の判決が確定した[1]。のちに恩寵園の卒園生11人が原告となり、損害賠償を請求する民事起訴を起こした[1]。最高裁は千葉県の賠償責任は認めたが、園長個人の賠償責任は認めなかった[1]

事件の影響

恩寵園事件を受けて、2009年4月に施行された児童福祉法には「施設内虐待の防止、児童養護施設等における虐待を発見した者の通告義務、通告があった場合の都道府県や都道府県児童福祉審議会等が講ずべき措置等施設内虐待の防止のための規定を設ける」という文章が盛り込まれた[1]。これにより、恩寵園以外でも行われていた児童養護施設での施設内虐待が表面化するようになった[1]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 森川 晴子「マスメディアによる法律への影響(調査研究) : 恩寵園事件とマスメディアにおける総合的検証 : 新聞、テレビ、インターネットはどのように児童福祉法を改正させたか」『研究報告』第25巻、第一工業大学、2013年3月、107-115頁。 
  2. ^ 衆議院本会議. 第140回国会.

参考文献

  • 恩寵園の子どもたちを支える会 編『養護施設の児童虐待 たちあがった子どもたち』(明石書店、2001年)

関連項目

関連リンク