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「JR東海キハ85系気動車」の版間の差分

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| 製造数 = 80両+代替車1両
| 製造数 = 80両+代替車1両
| 運用開始 = [[1989年]][[2月18日]]
| 運用開始 = [[1989年]][[2月18日]]
| 運用終了 =[[2023年]][[317日]]([[ひだ (列車)|特急(ワイドビュー)ひだ号]])
| 運用終了 =[[2023年]][[79日]]
[[2023年]][[6月30日]]([[南紀 (列車)|特急(ワイドビュー)南紀]])
| 引退 = [[2023年]][[7月9日]](さよなら運転)
| 投入先 = [[高山本線]]・[[紀勢本線]]ほか<!--([[東海旅客鉄道]])[[東海道本線]]・[[高山本線]]・[[関西本線]]・[[紀勢本線]]<br>([[西日本旅客鉄道]])東海道本線・高山本線・紀勢本線<br>([[伊勢鉄道]])[[伊勢鉄道伊勢線|伊勢鉄道線]]-->
| 投入先 = [[高山本線]]・[[紀勢本線]]ほか<!--([[東海旅客鉄道]])[[東海道本線]]・[[高山本線]]・[[関西本線]]・[[紀勢本線]]<br>([[西日本旅客鉄道]])東海道本線・高山本線・紀勢本線<br>([[伊勢鉄道]])[[伊勢鉄道伊勢線|伊勢鉄道線]]-->
| 編成 =
| 編成 =
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| 保安装置 = [[自動列車停止装置#ATS-S改良形|ATS-S<small>T</small>]]・[[自動列車停止装置#ATS-PT形_(JR東海ATS-P)|ATS-P<small>T</small>]]
| 保安装置 = [[自動列車停止装置#ATS-S改良形|ATS-S<small>T</small>]]・[[自動列車停止装置#ATS-PT形_(JR東海ATS-P)|ATS-P<small>T</small>]]
| 備考 = *カミンズ社での呼称はNTA855-R1
| 備考 = *カミンズ社での呼称はNTA855-R1
}}
}}{{Sound|JR central kiha85series kiha85-104 hida №1 owari-ichinomiya.ogg|キハ85-104の走行音(1021D ひだ1号 、6号車)|(東海道本線名古屋-尾張一宮間、1993年2月11日)}}

'''キハ85系気動車'''(キハ85けいきどうしゃ)は、[[東海旅客鉄道]](JR東海)の[[特急形車両|特急形]][[気動車]]である。
'''キハ85系気動車'''(キハ85けいきどうしゃ)は、[[東海旅客鉄道]](JR東海)の[[特急形車両|特急形]][[気動車]]である。


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老朽化した[[国鉄キハ80系気動車|キハ80系気動車]]の置き換えおよび所要時間短縮<ref group="注">本系列の投入と並行して[[軌道 (鉄道)|軌道]]強化や両開き[[分岐器]](Y字ポイント)の高速通過 (110 km/h) 対応など、地上設備の[[高速化 (鉄道)|改良工事]]も実施された。</ref>のために開発された。[[1989年]]([[平成]]元年)2月18日から[[高山本線]]の特急「[[ひだ (列車)|ひだ]]」で営業運転を開始した。[[1992年]]([[平成]]4年)3月14日からは[[紀勢本線]]の特急「[[南紀 (列車)|南紀]]」にも使用されている。
老朽化した[[国鉄キハ80系気動車|キハ80系気動車]]の置き換えおよび所要時間短縮<ref group="注">本系列の投入と並行して[[軌道 (鉄道)|軌道]]強化や両開き[[分岐器]](Y字ポイント)の高速通過 (110 km/h) 対応など、地上設備の[[高速化 (鉄道)|改良工事]]も実施された。</ref>のために開発された。[[1989年]]([[平成]]元年)2月18日から[[高山本線]]の特急「[[ひだ (列車)|ひだ]]」で営業運転を開始した。[[1992年]]([[平成]]4年)3月14日からは[[紀勢本線]]の特急「[[南紀 (列車)|南紀]]」にも使用されている。


デザインは剣持デザイン研究所が担当した<ref>[https://web.archive.org/web/20230405111602/https://kenmochi-design.jp/pdf/KDA_chronological_table_201007.pdf KDA 剣持デザイン研究所 作品年表](インターネットアーカイブ)。</ref>。[[1989年]](平成元年)の[[経済産業省|通商産業省]]グッドデザイン商品(現・日本産業デザイン振興会[[グッドデザイン賞]])に選定された<ref>{{Cite web| url = https://www.g-mark.org/award/describe/16453?token=YQOjPX6aIw | title = 旅客車 [ワイドビューひだ キハ85系特急形気動車] | website = [[グッドデザイン賞]] | publisher = [[日本デザイン振興会]] | accessdate = 2021-08-26 }}</ref>。<!--{{要出典範囲|date=2021年8月26日 (木) 06:59 (UTC)|[[1990年]]には[[ブルーリボン賞 (鉄道)|ブルーリボン賞]]を[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)[[JR東日本651系電車|651系電車]]と争ったが、次点となった。外観デザインは手銭正道、戸谷毅史、木村一男、松本哲夫、福田哲夫による}}-->本系列における意匠をはじめとする基本構成は、以降のJR東海で新製される[[在来線]]用車両の多くに基本仕様として踏襲されている<ref name="toyokeizai/300954-3">{{Cite web |website=東洋経済オンライン |date=2019年9月6日 |url=https://toyokeizai.net/articles/-/300954?page=3 |title=重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (3/5) |publisher=[[東洋経済新報社]] |accessdate=2021-08-26}}</ref><ref name="toyokeizai/300954-5">{{Cite web |website=東洋経済オンライン |date=2019-09-06 |url=https://toyokeizai.net/articles/-/300954?page=5 |title=重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (5/5) |publisher=[[東洋経済新報社]] |accessdate=2021-08-26}}</ref>。
デザインは剣持デザイン研究所が担当した<ref>[https://web.archive.org/web/20230405111602/https://kenmochi-design.jp/pdf/KDA_chronological_table_201007.pdf KDA 剣持デザイン研究所 作品年表](インターネットアーカイブ)。</ref>。[[1989年]](平成元年)の[[経済産業省|通商産業省]]グッドデザイン商品(現・日本産業デザイン振興会[[グッドデザイン賞]])に選定された<ref>{{Cite web| url = https://www.g-mark.org/award/describe/16453?token=YQOjPX6aIw | title = 旅客車 [ワイドビューひだ キハ85系特急形気動車] | website = [[グッドデザイン賞]] | publisher = [[日本デザイン振興会]] | accessdate = 2021-08-26 }}</ref>。<!--{{要出典範囲|date=2021年8月26日 (木) 06:59 (UTC)|[[1990年]]には[[ブルーリボン賞 (鉄道)|ブルーリボン賞]]を[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)[[JR東日本651系電車|651系電車]]と争ったが、次点となった。外観デザインは手銭正道、戸谷毅史、木村一男、松本哲夫、福田哲夫による}}-->本系列における意匠をはじめとする基本構成は、以降のJR東海で新製される[[在来線]]用車両の多くに基本仕様として踏襲されている<ref name="toyokeizai/300954-3">{{Cite web |website=東洋経済オンライン |date=2019年9月6日 |url=https://toyokeizai.net/articles/-/300954?page=3 |title=重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (3/5) |publisher=[[東洋経済新報社]] |accessdate=2021-08-26}}</ref><ref name="toyokeizai/300954-5">{{Cite web |website=東洋経済オンライン |date=2019-09-06 |url=https://toyokeizai.net/articles/-/300954?page=5 |title=重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (5/5) |publisher=[[東洋経済新報社]] |accessdate=2021-08-26}}</ref>。


== 構造 ==
== 構造 ==
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[[方向幕]]は列車愛称・行先用と号車・座席種別用を上下別に配置している(キハ84-300のみ左右別配置)が、後者を[[発光ダイオード|LED]]式としている車両(初期車)もある。
[[方向幕]]は列車愛称・行先用と号車・座席種別用を上下別に配置している(キハ84-300のみ左右別配置)が、後者を[[発光ダイオード|LED]]式としている車両(初期車)もある。


=== 設備 ===
=== 内 ===
側窓からの展望のために、通路と座席の間に20[[センチメートル|cm]] の段差を設け、窓の縦寸法は95cmに拡大された。一部の車両では[[バリアフリー]]対応として段差をなくし、車両番号を1100番台または1200番台として区別する。[[普通車 (鉄道車両)|普通車]]の[[鉄道車両の座席|座席]]の前後間隔(シートピッチ)はキハ80系の91cmから100cmに拡大した<ref name="toyokeizai/300954-2" />。
側窓からの展望のために、通路と座席の間に20[[センチメートル|cm]] の段差を設け、窓の縦寸法は95cmに拡大された。一部の車両では[[バリアフリー]]対応として段差をなくし、車両番号を1100番台または1200番台として区別する。[[普通車 (鉄道車両)|普通車]]の[[鉄道車両の座席|座席]]の前後間隔(シートピッチ)はキハ80系の91cmから100cmに拡大した<ref name="toyokeizai/300954-2" />。


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[[グリーン車]]は2種類あり、一つは「ひだ」用に製造された中間車に組み込まれた、普通車合造の半室グリーン車(キロハ)であり、横4列配置でシートピッチを116cmとし、定員確保がなされている。もう一つは「南紀」用の先頭車として製造された全室グリーン車(キロ)で、こちらはある程度定員がとれることから横3列配置でシートピッチを125cm としている。
[[グリーン車]]は2種類あり、一つは「ひだ」用に製造された中間車に組み込まれた、普通車合造の半室グリーン車(キロハ)であり、横4列配置でシートピッチを116cmとし、定員確保がなされている。もう一つは「南紀」用の先頭車として製造された全室グリーン車(キロ)で、こちらはある程度定員がとれることから横3列配置でシートピッチを125cm としている。

{{Triple image aside|none|JRC-Kiha85-0-inside.jpg|170|JRC-Kiha85-inside.jpg|170|Hida 5.JPG|170|非貫通型先頭車からの前面展望|普通車車内(赤基調モケット)|「ひだ」運用時の方向幕}}
=== 機器類 ===
=== 機器類 ===
本系列の最大の特徴は、日本製の国内向け旅客車両としては数十年ぶりに輸入[[ディーゼルエンジン]]が搭載されたことである<ref group="注">ディーゼル機関車においては、[[1982年]]([[昭和]]57年)に[[大井川鐵道]][[大井川鉄道DD20形ディーゼル機関車|DD20形]]で採用例がある。</ref>。日本国外の設計によるエンジンは、[[1950年代]]に[[ディーゼル機関車]]用のエンジンが日本で[[ライセンス生産]]された例があるが、気動車用としては[[戦後]]例のない試みである。これは、所要時間を短縮するために時速120kmで走行でき、起動加速度を増やすためには、小型で高出力のエンジンが望まれ、国内も海外も調べた結果、要望に合致した性能を有していたのが海外製だったのである<ref name="toyokeizai/300954-3" />。
[[ファイル:Kiha85 Kansai-Line.jpg|thumb|220px|right|貫通型のキハ85形1100番台<br>(2019年12月24日 八田駅 - 春田駅間)]]
[[ファイル:Cummins DMF14HZ KIHA84.jpg|thumb|220px|right|キハ84形に搭載されてい<br />C-DMF14HZエンジン<br />([[2008]]2月 高山駅)]]


採用されたのは、[[アメリカ合衆国]]のディーゼル機関メーカーである[[カミンズ]]社の直列6気筒・排気量 14 [[リットル|L]] の直噴式[[ターボチャージャー|ターボ]]ディーゼル機関 NT-855 系<ref group="注">原設計こそ1960年代と古いが信頼性は高く、[[船舶]]や[[自動車]]などにも広範に使用される汎用型の高速ディーゼルエンジンであった。[[1970年代|1970]] - [[1980年代|80年代]]にはアメリカの[[貨物自動車|トラック]]メーカーから広く採用を受け、それまで主流だった[[ゼネラルモーターズ|GM]]系のデトロイト・ディーゼルの[[ユニフロー掃気ディーゼルエンジン]]に代わって市場で好評を得た実績もある。</ref>である。各国のカミンズ社工場・ライセンス契約したメーカーによって種々の仕様で製造される汎用性の高い機関で、本系列のものはカミンズ・[[イギリス]]工場製の水平シリンダー形 NTA855-R1 (JR東海形式:[[DMF14系エンジン|C-DMF14HZ 形]]、350 [[馬力|ps]] / 2,000 [[rpm (単位)|rpm]])で、1両に2基を搭載する。高出力の駆動機関と自動制御化された多段式[[気動車・ディーゼル機関車の動力伝達方式|液体変速機]]([[日立ニコトランスミッション|新潟コンバーター]]製C-DW14A 変速1段・直結2段 自動式)と組み合わせることで、最高速度は[[電車]]並みの120kmという著しい速度向上を成し遂げた<ref name="toyokeizai/300954-3" />。{{Sound|JR central kiha85series kiha85-104 hida №1 owari-ichinomiya.ogg|キハ85-104の走行音(1021D ひだ1号 、6号車)|(東海道本線名古屋-尾張一宮間、1993年2月11日)}}ブレーキ装置は気動車では初めて応答性に優れる[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]]が採用され、[[エンジンブレーキ|機関ブレーキ]]・コンバータブレーキも装備した
本系列の最大の特徴は、日本製の国内向け旅客車両としては数十年ぶりに輸入[[ディーゼルエンジン]]が搭載されたことである<ref group="注">ディーゼル機関車においては、[[1982年]]([[昭和]]57年)に[[大井川鐵道]][[大井川鉄道DD20形ディーゼル機関車|DD20形]]で採用例がある。</ref>。日本国外の設計によるエンジンは、[[1950年代]]に[[ディーゼル機関車]]用のエンジンが日本で[[ライセンス生産]]された例があるが、気動車用としては[[戦後]]例のない試みである。これは、所要時間を短縮するために時速120kmで走行でき、起動加速度を増やすためには、小型で高出力のエンジンが望まれ、国内も海外も調べた結果、要望に合致した性能を有していたのが海外製だったのである<ref name="toyokeizai/300954-3"/>。


[[鉄道車両の台車|台車]]は[[蛇行動#ヨーダンパ|ヨーダンパ]]付きボルスタレス台車のC-DT57形が採用された。これは国鉄時代の[[国鉄キハ185系気動車|キハ185系]]のDT55台車をベースに、車体をつなげる牽引装置を振動が少ないものに改良している。線路に接する[[輪軸 (鉄道車両)#車輪踏面|車輪踏面]]は「円弧踏面」と呼ばれる、カーブに強い形状にしている<ref name="toyokeizai/300954-3"/>。<gallery>
採用されたのは、[[アメリカ合衆国]]のディーゼル機関メーカーである[[カミンズ]]社の直列6気筒・排気量 14 [[リットル|L]] の直噴式[[ターボチャージャー|ターボ]]ディーゼル機関 NT-855 系<ref group="注">原設計こそ1960年代と古いが信頼性は高く、[[船舶]]や[[自動車]]などにも広範に使用される汎用型の高速ディーゼルエンジンであった。[[1970年代|1970]] - [[1980年代|80年代]]にはアメリカの[[貨物自動車|トラック]]メーカーから広く採用を受け、それまで主流だった[[ゼネラルモーターズ|GM]]系のデトロイト・ディーゼルの[[ユニフロー掃気ディーゼルエンジン]]に代わって市場で好評を得た実績もある。</ref>である。各国のカミンズ社工場・ライセンス契約したメーカーによって種々の仕様で製造される汎用性の高い機関で、本系列のものはカミンズ・[[イギリス]]工場製の水平シリンダー形 NTA855-R1 (JR東海形式:[[DMF14系エンジン|C-DMF14HZ 形]]、350 [[馬力|ps]] / 2,000 [[rpm (単位)|rpm]])で、1両に2基を搭載する。高出力の駆動機関と自動制御化された多段式[[気動車・ディーゼル機関車の動力伝達方式|液体変速機]]([[日立ニコトランスミッション|新潟コンバーター]]製C-DW14A 変速1段・直結2段 自動式)と組み合わせることで、最高速度は[[電車]]並みの120kmという著しい速度向上を成し遂げた<ref name="toyokeizai/300954-3"/>。
ファイル:Kiha85-1119 Hida.jpg|貫通型先頭車のキハ85形1100番台

ファイル:Cummins DMF14HZ KIHA84.jpg|キハ84形に搭載されるC-DMF14HZエンジン(2008年2月 高山駅)
ブレーキ装置は気動車では初めて応答性に優れる[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]]が採用され、[[エンジンブレーキ|機関ブレーキ]]・コンバータブレーキも装備した。
ファイル:Hida 5.JPG|方向幕

ファイル:JRC-Kiha85-0-inside.jpg|非貫通型先頭車の前面展望
[[鉄道車両の台車|台車]]は[[蛇行動#ヨーダンパ|ヨーダンパ]]付きボルスタレス台車のC-DT57形が採用された。これは国鉄時代の[[国鉄キハ185系気動車|キハ185系]]のDT55台車をベースに、車体をつなげる牽引装置を振動が少ないものに改良している。線路に接する[[輪軸 (鉄道車両)#車輪踏面|車輪踏面]]は「円弧踏面」と呼ばれる、カーブに強い形状にしている<ref name="toyokeizai/300954-3"/>。
ファイル:JRC-Kiha85-inside.jpg|普通車
</gallery>


== 形式 ==
== 形式 ==
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== 運用 ==
== 運用 ==
[[ファイル:JRC 85 Hida 201200913.jpg|thumb|220px|right|大阪駅発の「ひだ」<br />([[2011年]]9月13日 島本駅 - 山崎駅間)]]

[[1989年]](平成元年)に特急「ひだ」で運用を開始した。当初は1往復のみの充当であったが、翌[[1990年]](平成2年)3月10日のダイヤ改正にてすべての「ひだ」に運用されるようになった。[[1991年]](平成3年)3月16日の[[1987年から2000年のJRダイヤ改正|ダイヤ改正]]で、[[名古屋鉄道]]から高山本線に乗り入れていた特急「[[名鉄特急#高山本線直通列車|北アルプス]]」が[[名鉄キハ8500系気動車|キハ8500系]]に置き換えられ、季節運転の「ひだ」と併結して運転されるようになった。その後、[[1999年]](平成11年)からは定期運行となった「ひだ」と併結し、[[2001年]](平成13年)9月30日の「北アルプス」廃止まで続いた。
[[1989年]](平成元年)に特急「ひだ」で運用を開始した。当初は1往復のみの充当であったが、翌[[1990年]](平成2年)3月10日のダイヤ改正にてすべての「ひだ」に運用されるようになった。[[1991年]](平成3年)3月16日の[[1987年から2000年のJRダイヤ改正|ダイヤ改正]]で、[[名古屋鉄道]]から高山本線に乗り入れていた特急「[[名鉄特急#高山本線直通列車|北アルプス]]」が[[名鉄キハ8500系気動車|キハ8500系]]に置き換えられ、季節運転の「ひだ」と併結して運転されるようになった。その後、[[1999年]](平成11年)からは定期運行となった「ひだ」と併結し、[[2001年]](平成13年)9月30日の「北アルプス」廃止まで続いた。


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[[2018年]](平成30年)4月1日現在では[[名古屋車両区]]に80両が配置され<ref name="rf_201807 配置_東海">[[交友社]]『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』2018年7月号 「JR車両ファイル2018 JR旅客会社の車両配置表」 p.18 - p.21</ref>、以下の列車・編成で使用される。
[[2018年]](平成30年)4月1日現在では[[名古屋車両区]]に80両が配置され<ref name="rf_201807 配置_東海">[[交友社]]『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』2018年7月号 「JR車両ファイル2018 JR旅客会社の車両配置表」 p.18 - p.21</ref>、以下の列車・編成で使用される。


''斜字''は非貫通式先頭車。気動車である特性を生かして1両単位での増結や車両の差し替えも行われている。
''斜字''は非貫通式先頭車。気動車である特性を生かして1両単位での増結や車両の差し替えも行われている。[[ファイル:JRC 85 Hida 201200913.jpg|thumb|220px|right|大阪駅始発の「ひだ」([[2011年]]9月13日 島本駅 - 山崎駅間)]]


=== 「ひだ」用編成 ===
=== 「ひだ」用編成 ===
710行目: 706行目:
; 4両編成(普通車のみ)
; 4両編成(普通車のみ)
: ''キハ85'' + キハ84 + キハ84 + キハ85-1100
: ''キハ85'' + キハ84 + キハ84 + キハ85-1100
[[ファイル:JRC Kiha85 Series01.jpg|サムネイル|南紀(2007年7月8日 [[桑名駅]])]]


=== 「南紀」用編成 ===
=== 「南紀」用編成 ===
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=== 運用に関する補足 ===
=== 運用に関する補足 ===
[[File:キハ85衝撃緩和装置.JPG|thumb|220px|right|キハ85の衝撃緩和装置]]
[[File:キハ85衝撃緩和装置.JPG|thumb|220px|right|衝撃緩和装置を装着したキハ85形]]

[[1996年]](平成8年)6月25日に高山本線[[下呂駅]] - [[焼石駅]]間で[[落石 (自然災害)|落石]]に衝突脱線([[日本の鉄道事故_(1950年から1999年)#高山本線特急列車脱線事故|高山本線特急列車脱線事故]])<ref>{{Cite news|title=特急脱線16人けが JR高山線、土砂崩れ落石に乗り上げ |newspaper=[[産経新聞]] |date=1996-06-26 |url=http://www.sankei.co.jp/databox/paper/96/html/0626side02.html |publisher=[[産経新聞社]] |accessdate=2020-04-05 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20001102001812/http://www.sankei.co.jp/databox/paper/96/html/0626side02.html |archivedate=2000-11-02}}</ref>。1両(キハ85-107)が[[廃車 (鉄道)|廃車]]となり、その代替車両としてキハ85-119が[[1997年]](平成9年)に製造された。


紀勢本線において野生動物との接触事故が多発しているため、[[2012年]](平成24年)春から「南紀」用キハ85のうち4両のスカートに[[スポンジ]][[ゴム]]製衝撃緩和装置が取り付けられた<ref>{{Cite web|work=[[鉄道ファン (雑誌)|railf.jp(鉄道ニュース)]] |date=2012年5月21日 |url=http://railf.jp/news/2012/05/21/172800.html |title=“ワイドビュー南紀”用キハ85形に衝撃緩和装置 |publisher=[[交友社]] |accessdate=2017年6月7日}}</ref>。
紀勢本線において野生動物との接触事故が多発しているため、[[2012年]](平成24年)春から「南紀」用キハ85のうち4両のスカートに[[スポンジ]][[ゴム]]製衝撃緩和装置が取り付けられた<ref>{{Cite web|work=[[鉄道ファン (雑誌)|railf.jp(鉄道ニュース)]] |date=2012年5月21日 |url=http://railf.jp/news/2012/05/21/172800.html |title=“ワイドビュー南紀”用キハ85形に衝撃緩和装置 |publisher=[[交友社]] |accessdate=2017年6月7日}}</ref>。
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[[2018年]](平成30年)にはすべての車両で無料Wi-Fiの提供を開始し、和式トイレの一部を洋式へ改造している<ref name="toyokeizai/300954-4">{{Cite web |website=東洋経済オンライン |date=2019-09-06 |url=https://toyokeizai.net/articles/-/300954?page=4 |title=重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (4/5) |publisher=[[東洋経済新報社]] |accessdate=2021-08-26}}</ref><ref>{{Cite press release |和書 |title=新幹線車内・駅等での無料 Wi-Fi サービスの拡大について |publisher=東海旅客鉄道 |date=2018年1月25日 |url=http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000036203.pdf |format=PDF |language=日本語 |accessdate=2018年3月6日}}</ref><ref>{{Cite |title=鉄道分野における インバウンド受入環境整備について |publisher=[[国土交通省]] |date=2018年2月20日 |url=https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kankotf_dai18/siryou2.pdf |format=PDF |language=日本語 |accessdate=2018年3月6日}}</ref>。
[[2018年]](平成30年)にはすべての車両で無料Wi-Fiの提供を開始し、和式トイレの一部を洋式へ改造している<ref name="toyokeizai/300954-4">{{Cite web |website=東洋経済オンライン |date=2019-09-06 |url=https://toyokeizai.net/articles/-/300954?page=4 |title=重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (4/5) |publisher=[[東洋経済新報社]] |accessdate=2021-08-26}}</ref><ref>{{Cite press release |和書 |title=新幹線車内・駅等での無料 Wi-Fi サービスの拡大について |publisher=東海旅客鉄道 |date=2018年1月25日 |url=http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000036203.pdf |format=PDF |language=日本語 |accessdate=2018年3月6日}}</ref><ref>{{Cite |title=鉄道分野における インバウンド受入環境整備について |publisher=[[国土交通省]] |date=2018年2月20日 |url=https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kankotf_dai18/siryou2.pdf |format=PDF |language=日本語 |accessdate=2018年3月6日}}</ref>。


=== その他 ===
=== 臨時列車 ===
毎年10月頃に[[鈴鹿サーキット]]でFIA([[国際自動車連盟]])主催[[フォーミュラ1|F1世界選手権]][[日本グランプリ (4輪)|日本グランプリ]]が開催される際には全席指定の臨時特急「鈴鹿グランプリ」に使用される。
毎年10月頃に[[鈴鹿サーキット]]でFIA([[国際自動車連盟]])主催[[フォーミュラ1|F1世界選手権]][[日本グランプリ (4輪)|日本グランプリ]]が開催される際には全席指定の臨時特急「鈴鹿グランプリ」に使用される。


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[[2023年]](令和5年)3月4・5・11・12日の「ありがとうキハ85系ひだ号」では、導入最初の車両(''キハ''85-1 + キロハ84-1 + キハ84-1 + キハ85-1101)が組まれたリバイバル編成で運転された<ref name="rf_202303180">[https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042473.pdf 特急「ありがとうキハ85系ひだ」号を運転します] 東海旅客鉄道 2023年3月1日閲覧</ref><ref name="rf_202303190">[https://www.nagoyatv.com/news/?id=017712 ありがとうキハ85系 別れを惜しむファン「100枚は撮った」  車両の世代交代でイベント] 名古屋テレビ 2023年3月15日</ref>。さらに同年6月24日・25日には「ありがとうキハ85系南紀号」が運転されたほか、同年7月8日・9日には「さよならキハ85系号」が運転され、9日運転分の復路は10両編成中の3号車から8号車まで、貫通型先頭車のみを連結した編成となった<ref>{{Cite web |url=https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042712.pdf |title=特急「ありがとうキハ85系南紀」号、特急「さよならキハ85系」号を運転します |access-date=2023-05-15 |publisher=東海旅客鉄道}}</ref>。
[[2023年]](令和5年)3月4・5・11・12日の「ありがとうキハ85系ひだ号」では、導入最初の車両(''キハ''85-1 + キロハ84-1 + キハ84-1 + キハ85-1101)が組まれたリバイバル編成で運転された<ref name="rf_202303180">[https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042473.pdf 特急「ありがとうキハ85系ひだ」号を運転します] 東海旅客鉄道 2023年3月1日閲覧</ref><ref name="rf_202303190">[https://www.nagoyatv.com/news/?id=017712 ありがとうキハ85系 別れを惜しむファン「100枚は撮った」  車両の世代交代でイベント] 名古屋テレビ 2023年3月15日</ref>。さらに同年6月24日・25日には「ありがとうキハ85系南紀号」が運転されたほか、同年7月8日・9日には「さよならキハ85系号」が運転され、9日運転分の復路は10両編成中の3号車から8号車まで、貫通型先頭車のみを連結した編成となった<ref>{{Cite web |url=https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042712.pdf |title=特急「ありがとうキハ85系南紀」号、特急「さよならキハ85系」号を運転します |access-date=2023-05-15 |publisher=東海旅客鉄道}}</ref>。


== 置き換えと今後 ==
=== HC85系による置き換え ===
[[2017年]](平成29年)6月7日、JR東海は特急「[[ひだ (列車)|ひだ]]」・「[[南紀 (列車)|南紀]]」で使用されているキハ85系を置き換えるために、[[JR東海HC85系気動車|HC85系]]の投入計画を発表した<ref>{{Cite press release |和書 |title=ハイブリッド方式による次期特急車両(試験走行車)の新製について |publisher=東海旅客鉄道 |date=2017年6月7日 |url=http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034155.pdf |format=PDF |language=日本語 |accessdate=2017年6月7日<!-- |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170607122052/http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034155.pdf |archivedate=2017年6月7日-->}}</ref>。HC85系は[[2022年]](令和4年)7月から高山本線にて営業運転を開始し、本系列の運用を順次置き換えた。その後8両が西浜松に回送され<ref>{{Cite web |title=キハ85系8両が西浜松へ|鉄道ニュース|2022年7月6日掲載|鉄道ファン・railf.jp |url=https://railf.jp/news/2022/07/06/083000.html |website=鉄道ファン・railf.jp |access-date=2022-07-06 |language=ja}}</ref>、うち中間車6両が同年7月6日付で廃車されている<ref>{{Cite book |和書 |author=ジェー・アール・アール |title=JR電車編成表2023冬 |publisher=交通新聞社 |date=2022-11 |page=360 |isbn=9784330067223}}</ref>。
[[2017年]](平成29年)6月7日、JR東海は特急「[[ひだ (列車)|ひだ]]」・「[[南紀 (列車)|南紀]]」で使用されているキハ85系を置き換えるために、[[JR東海HC85系気動車|HC85系]]の投入計画を発表した<ref>{{Cite press release |和書 |title=ハイブリッド方式による次期特急車両(試験走行車)の新製について |publisher=東海旅客鉄道 |date=2017年6月7日 |url=http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034155.pdf |format=PDF |language=日本語 |accessdate=2017年6月7日<!-- |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170607122052/http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034155.pdf |archivedate=2017年6月7日-->}}</ref>。HC85系は[[2022年]](令和4年)7月から高山本線にて営業運転を開始し、本系列の運用を順次置き換えた。その後8両が西浜松に回送され<ref>{{Cite web |title=キハ85系8両が西浜松へ|鉄道ニュース|2022年7月6日掲載|鉄道ファン・railf.jp |url=https://railf.jp/news/2022/07/06/083000.html |website=鉄道ファン・railf.jp |access-date=2022-07-06 |language=ja}}</ref>、うち中間車6両が同年7月6日付で廃車されている<ref>{{Cite book |和書 |author=ジェー・アール・アール |title=JR電車編成表2023冬 |publisher=交通新聞社 |date=2022-11 |page=360 |isbn=9784330067223}}</ref>。


定期列車での運用については「ひだ」では[[2023年]](令和5年)3月17日をもって終了<ref>{{Cite web |url=https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042444.pdf |title=JR東海 2023年3月 ダイヤ改正について |access-date=2022年12月16日 |publisher=東海旅客鉄道}} </ref>、「南紀」では2023年(令和5年)6月30日をもって終了した<ref>{{Cite news|和書 |title=HC85系が紀勢線にも 7月から特急「南紀」に投入 |newspaper=Yahooニュース |date=2023-01-01}}</ref>。なお、定期列車での運用終了後も当面、臨時列車でキハ85系を使用する予定である<ref>{{Cite news|title=JR東海の新型特急「HC85系」、7月1日に2編成デビュー 大阪・富山乗り入れも検討|publisher=TRAICY|date=2022年5月24日|url=https://www.traicy.com/posts/20220524241480/|language=日本語|accessdate=2022年5月25日}}</ref>
定期列車での運用については「ひだ」では[[2023年]](令和5年)3月17日をもって終了<ref>{{Cite web |url=https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042444.pdf |title=JR東海 2023年3月 ダイヤ改正について |access-date=2022年12月16日 |publisher=東海旅客鉄道}} </ref>、「南紀」では2023年(令和5年)6月30日をもって終了した<ref>{{Cite news|和書 |title=HC85系が紀勢線にも 7月から特急「南紀」に投入 |newspaper=Yahooニュース |date=2023-01-01}}</ref><ref>{{Cite news|title=JR東海の新型特急「HC85系」、7月1日に2編成デビュー 大阪・富山乗り入れも検討|publisher=TRAICY|date=2022年5月24日|url=https://www.traicy.com/posts/20220524241480/|language=日本語|accessdate=2022年5月25日}}</ref>


定期運用離脱後も「ひだ」などで臨時特急として運用されていたが2023年7月9日の団体臨時列車「さよならキハ85系号」を最後に引退した。
== 譲渡 ==

== 京都丹後鉄道KTR8500形 ==
[[File:Kitakinki Tango Railway KTR 001 JR Central Kiha 85 20230319.jpg|thumb|[[西舞鶴駅]]にて留置中のKTR8500形]]
[[File:Kitakinki Tango Railway KTR 001 JR Central Kiha 85 20230319.jpg|thumb|[[西舞鶴駅]]にて留置中のKTR8500形]]


WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)では、現行の特急車両の老朽化に伴い、本形式4両(このうち2両は[[部品取り#鉄道車両の場合|部品取り]]用として保管)の譲渡を受けた<ref name="chunichi20230307">{{Cite news|title=JR東海の特急キハ85系、京都丹後鉄道に譲渡 2023年度中にも運行へ|newspaper=[[中日新聞]] |date=2023-03-07 |publisher=[[中日新聞社]] |language=ja |url= https://www.chunichi.co.jp/article/649006 |accessdate=2023-03-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20230307100636/https://www.chunichi.co.jp/article/649006 |archivedate=2023-03-07}}</ref>。2023年3月6日には、[[京都鉄道博物館]]で展示されていたキハ85-3・キハ85-12が[[福知山線]]経由で、京都丹後鉄道・[[西舞鶴運転区]]へ回送された<ref name=RH20230307>{{Cite news |和書|title= 丹鉄への譲渡回送!? キハ85系が2両で西舞鶴へと旅立つ |newspaper=鉄道ホビダス |date=2023-03-07 |publisher=[[ネコ・パブリッシング]] |url= https://rail.hobidas.com/rmnews/448285/ |accessdate=2023-03-07}}</ref><ref>{{Cite news |和書|title=キハ85系が京都丹後鉄道へ|newspaper=railf.jp(鉄道ニュース) |date=2023-03-07 |publisher=交友社 |url= https://railf.jp/news/2023/amp/03/07/120000.html |accessdate=2023-03-07}}</ref><ref name="chunichi20230307" />。同年3月24日には追加でキハ85-6・キハ85-7の譲渡回送も行われた<ref>{{Cite news |和書|title=キハ85系が京都丹後鉄道へ|newspaper=railf.jp(鉄道ニュース) |date=2023-03-25 |publisher=交友社 |url= https://railf.jp/news/2023/03/25/180500.html |accessdate=2023-04-13}}</ref>。形式は、'''KTR8500形気動車'''であり<ref>{{Cite web |url=https://tetsudo-ch.com/12883112.html |title=キハ85系、京都丹後鉄道では「KTR8500形」 その命名理由を聞いた |access-date=2023年5月16日 |publisher=鉄道チャンネル}}</ref>、車号は以下のとおりである<ref>[https://trains.willer.co.jp/safety/prevention/safety_report/pdf/2022.pdf 安全報告書2022]京都丹後鉄道</ref>。
WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)では、現行の特急車両の老朽化に伴い、本形式4両(このうち2両は[[部品取り#鉄道車両の場合|部品取り]]用として保管)の譲渡を受けた<ref name="chunichi20230307">{{Cite news|title=JR東海の特急キハ85系、京都丹後鉄道に譲渡 2023年度中にも運行へ|newspaper=[[中日新聞]] |date=2023-03-07 |publisher=[[中日新聞社]] |language=ja |url= https://www.chunichi.co.jp/article/649006 |accessdate=2023-03-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20230307100636/https://www.chunichi.co.jp/article/649006 |archivedate=2023-03-07}}</ref>。2023年3月6日には、[[京都鉄道博物館]]で展示されていたキハ85-3・キハ85-12が[[福知山線]]経由で、京都丹後鉄道・[[西舞鶴運転区]]へ回送された<ref name=RH20230307>{{Cite news |和書|title= 丹鉄への譲渡回送!? キハ85系が2両で西舞鶴へと旅立つ |newspaper=鉄道ホビダス |date=2023-03-07 |publisher=[[ネコ・パブリッシング]] |url= https://rail.hobidas.com/rmnews/448285/ |accessdate=2023-03-07}}</ref><ref>{{Cite news |和書|title=キハ85系が京都丹後鉄道へ|newspaper=railf.jp(鉄道ニュース) |date=2023-03-07 |publisher=交友社 |url= https://railf.jp/news/2023/amp/03/07/120000.html |accessdate=2023-03-07}}</ref><ref name="chunichi20230307" />。同年3月24日には追加でキハ85-6・キハ85-7の譲渡回送も行われた<ref>{{Cite news |和書|title=キハ85系が京都丹後鉄道へ|newspaper=railf.jp(鉄道ニュース) |date=2023-03-25 |publisher=交友社 |url= https://railf.jp/news/2023/03/25/180500.html |accessdate=2023-04-13}}</ref>。形式は、'''KTR8500形気動車'''であり<ref>{{Cite web |url=https://tetsudo-ch.com/12883112.html |title=キハ85系、京都丹後鉄道では「KTR8500形」 その命名理由を聞いた |access-date=2023年5月16日 |publisher=鉄道チャンネル}}</ref>、車号は以下のとおりである<ref>[https://trains.willer.co.jp/safety/prevention/safety_report/pdf/2022.pdf 安全報告書2022]京都丹後鉄道</ref>。


*KTR8501:キハ85-12
*KTR8501:キハ85-12(営業用車両)
*KTR8502:キハ85-3
*KTR8502:キハ85-3(営業用車両)
*KTR8503:キハ85-6(部品取り車)
*KTR8503:キハ85-6(部品取り車
*KTR8504:キハ85-7(部品取り車)
*KTR8504:キハ85-7(部品取り車




京都丹後鉄道での運行開始は早ければ2023年度中の予定で、運行線区等詳細は検討中としている<ref name="chunichi20230307" />。
京都丹後鉄道での運行開始は早ければ2023年度中の予定で、運行線区等詳細は検討中としている<ref name="chunichi20230307" />。

== 事故廃車 ==
[[1996年]](平成8年)6月25日に高山本線[[下呂駅]] - [[焼石駅]]間で[[落石 (自然災害)|落石]]に衝突脱線する事故が発生した([[日本の鉄道事故_(1950年から1999年)#高山本線特急列車脱線事故|高山本線特急列車脱線事故]])<ref>{{Cite news|title=特急脱線16人けが JR高山線、土砂崩れ落石に乗り上げ |newspaper=[[産経新聞]] |date=1996-06-26 |url=http://www.sankei.co.jp/databox/paper/96/html/0626side02.html |publisher=[[産経新聞社]] |accessdate=2020-04-05 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20001102001812/http://www.sankei.co.jp/databox/paper/96/html/0626side02.html |archivedate=2000-11-02}}</ref>。この事故によりキハ85-107の1両が[[廃車 (鉄道)|廃車]]となり、その代替車両としてキハ85-119が[[1997年]](平成9年)に製造された。


== その他 ==
== その他 ==

2023年7月10日 (月) 02:54時点における版

JR東海キハ85系気動車
特急「ひだ」で運用されるキハ85形
(2020年12月26日 岐阜駅
基本情報
運用者 東海旅客鉄道
製造所 日本車輌製造
新潟鐵工所
富士重工業
製造年 1988年 - 1992年
1997年(代替車)
製造数 80両+代替車1両
運用開始 1989年2月18日
運用終了 2023年7月9日
投入先 高山本線紀勢本線ほか
主要諸元
軌間 1,067 mm
最高運転速度 120 km/h
車体 ステンレス鋼
台車 C-DT57形
円錐積層ゴム式ボルスタレス台車(ヨーダンパ付
動力伝達方式 液体式
機関 カミンズC-DMF14HZ*ディーゼルエンジン × 2基
機関出力 350 PS
変速機 変速1段、直結2段(自動変速) 減速比2.28
制動装置 機関ブレーキ・コンバータブレーキ併用電気指令式ブレーキ
保安装置 ATS-STATS-PT
備考 *カミンズ社での呼称はNTA855-R1
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キハ85系気動車(キハ85けいきどうしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)の特急形気動車である。

本項ではWILLER TRAINSへ譲渡された京都丹後鉄道KTR8500形気動車についても記述する。

概要

老朽化したキハ80系気動車の置き換えおよび所要時間短縮[注 1]のために開発された。1989年平成元年)2月18日から高山本線の特急「ひだ」で営業運転を開始した。1992年平成4年)3月14日からは紀勢本線の特急「南紀」にも使用されている。

デザインは剣持デザイン研究所が担当した[1]1989年(平成元年)の通商産業省グッドデザイン商品(現・日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞)に選定された[2]。本系列における意匠をはじめとする基本構成は、以降のJR東海で新製される在来線用車両の多くに基本仕様として踏襲されている[3][4]

構造

車体

車両軽量化とメンテナンスフリーのため、車体はステンレス鋼を用いた軽量構体を採用する。外部塗色は、側窓の上下にダークグレー、その側窓下部にはJR東海のコーポレートカラーであるオレンジと白の帯を車体全体に巻いている。それ以外は無塗装である。先頭部は衝突事故が起きたときなどに復旧が難しいため普通鋼製とし、腐食防止のために白色塗装を行っている。

観光路線である高山本線や紀勢本線への投入が前提であったことから、眺望性の確保について様々な配慮がなされている。非貫通型先頭車は傾斜を付けた流線形とし、三次曲面のフロントガラスと運転台上方の天窓サンルーフ)を採用し、運転席後部を全面ガラス張りとしたうえで前面展望を確保している。貫通型先頭車についてはやや緩い傾斜となっているが、両端の前面窓は側面に回り込む大型のパノラミック・ウィンドウとし、他の車両と連結する際には特殊な形状をした幌を装着する。デザインテーマは「自然界と調和する『あたたかさ』と、未来を想像させる『宇宙感覚』」というものだったが、JR東海の車両部車両課担当課長である森加久見によれば「高山地区だと、南紀方面だと二枚貝とか、曲面になった特産物をデザイン化して先頭の形状が決まった」と後年インタビューで述べている[5]。またデビュー当時の雑誌(鉄道ファン1989年2月号)にも同様の記載がある。

先頭車前面には列車愛称幕が設置され、非貫通型はフロントガラス下部の運転席側(正面から見て右側)に横寸法の長い長方形状のもの、貫通型は貫通扉の窓下に正方形に近い長方形状となっている。

方向幕は列車愛称・行先用と号車・座席種別用を上下別に配置している(キハ84-300のみ左右別配置)が、後者をLED式としている車両(初期車)もある。

車内

側窓からの展望のために、通路と座席の間に20cm の段差を設け、窓の縦寸法は95cmに拡大された。一部の車両ではバリアフリー対応として段差をなくし、車両番号を1100番台または1200番台として区別する。普通車座席の前後間隔(シートピッチ)はキハ80系の91cmから100cmに拡大した[5]

冷房装置駆動機関直結式で、従来の特急形気動車のように編成中の特定車両に搭載されたディーゼル発電機から冷房装置への電力を供給する方式と異なり、編成構成の自由度が向上している。

グリーン車は2種類あり、一つは「ひだ」用に製造された中間車に組み込まれた、普通車合造の半室グリーン車(キロハ)であり、横4列配置でシートピッチを116cmとし、定員確保がなされている。もう一つは「南紀」用の先頭車として製造された全室グリーン車(キロ)で、こちらはある程度定員がとれることから横3列配置でシートピッチを125cm としている。

機器類

本系列の最大の特徴は、日本製の国内向け旅客車両としては数十年ぶりに輸入ディーゼルエンジンが搭載されたことである[注 2]。日本国外の設計によるエンジンは、1950年代ディーゼル機関車用のエンジンが日本でライセンス生産された例があるが、気動車用としては戦後例のない試みである。これは、所要時間を短縮するために時速120kmで走行でき、起動加速度を増やすためには、小型で高出力のエンジンが望まれ、国内も海外も調べた結果、要望に合致した性能を有していたのが海外製だったのである[3]

採用されたのは、アメリカ合衆国のディーゼル機関メーカーであるカミンズ社の直列6気筒・排気量 14 L の直噴式ターボディーゼル機関 NT-855 系[注 3]である。各国のカミンズ社工場・ライセンス契約したメーカーによって種々の仕様で製造される汎用性の高い機関で、本系列のものはカミンズ・イギリス工場製の水平シリンダー形 NTA855-R1 (JR東海形式:C-DMF14HZ 形、350 ps / 2,000 rpm)で、1両に2基を搭載する。高出力の駆動機関と自動制御化された多段式液体変速機新潟コンバーター製C-DW14A 変速1段・直結2段 自動式)と組み合わせることで、最高速度は電車並みの120kmという著しい速度向上を成し遂げた[3]

ブレーキ装置は気動車では初めて応答性に優れる電気指令式空気ブレーキが採用され、機関ブレーキ・コンバータブレーキも装備した。 台車ヨーダンパ付きボルスタレス台車のC-DT57形が採用された。これは国鉄時代のキハ185系のDT55台車をベースに、車体をつなげる牽引装置を振動が少ないものに改良している。線路に接する車輪踏面は「円弧踏面」と呼ばれる、カーブに強い形状にしている[3]

形式

キハ85 1100番台に設置された車椅子対応座席、通路との段差を無くしている。 キハ85 1100番台の改造された車椅子対応の洋式トイレ。
キハ85 1100番台に設置された車椅子対応座席、通路との段差を無くしている。
キハ85 1100番台の改造された車椅子対応の洋式トイレ。

キハ85形

0番台(1 - 14)
「ひだ」用として製造された非貫通タイプの普通先頭車。先頭部は大型曲面ガラスとルーフウインドウによって構成され、前面展望に配慮してある。定員60名。
100番台(101 - 119)
「ひだ」用として製造された貫通タイプの普通先頭車。幌アダプタを取り付けることで貫通路を構成することが可能。定員が0番台と同様のため、共通運用されることも多かった。トイレ和式。定員60名。
107は後述の落石衝突事故により廃車となり、代替として119が新製されている(台枠および機器類は廃車された107から流用)。2003年(平成15年)よりバリアフリー対策改造が施され、後述の1100番台へ改番したため番台消滅。
200番台(201 - 209)
「南紀」用として製造された貫通タイプの普通先頭車。車体の仕様は100番台と同一だが、男子用小便所を設置したため定員が減少し56名となった。
209は100番台と同様にバリアフリー対策改造が施され改番されている。
1100番台(1101 - 1106・1108 - 1119)
100番台をバリアフリー対応改造した形式。高床構造であった車内座席を一部改造し段差をなくした車椅子対応座席を配置、トイレも車椅子対応の洋式に改造したもの。2003年に登場した番台区分。
定員が減少し50名となったため、元番号+1000とされた。現在は100番台全車に施工済み。
改造時点で種車が廃車となっていた関係で1107のみ欠番となっている。
1200番台(1209)
キハ85形1100番台と同様のバリアフリー対応改造を209に施工したもの。元番号+1000となっている。

キハ84形

0番台(1 - 14)
「ひだ」用として製造された普通中間車。車内販売準備室・電話室自動販売機が設置されたが、トイレはない。電源容量確保のためインバーターを2基搭載している。定員68名。
このうち、量産先行車として製造された1と2は、3以降とは乗降扉の位置が異なり行先表示がLEDとなっている他、JR北海道の「フラノエクスプレス」先頭車と番号が重複していた。
200番台(1 - 5)
「南紀」用として製造された普通中間車。カウンター付の車内販売準備室を備える。当初より車椅子対応設備を持ち、客扉や車内仕切扉の幅が広くなっている。定員64名。
300番台(1 - 5)
「南紀」用として製造された普通中間車。車販準備室がなく、車椅子対応設備も持たない。そのため当系列では最大の定員72名を誇る。
この番台のみ前述のように方向幕の配置が異なり、客室窓の上に左右並べて取り付けられている[注 4]

キロハ84形(1 - 10)

「ひだ」用として製造された、グリーン・普通車の合造中間車。定員確保のためグリーン座席は2+2配置となっており、シートピッチは116cm。車掌室・トイレを備える。定員56名(グリーン席32名・普通席24名)。のちに「南紀」にも使用。

キロ85形(1 - 5)

「南紀」用に製造された非貫通タイプのグリーン先頭車。キロハ84よりもシートピッチをさらに広げ125cmとなり、座席も2+1配置となったため、車内はゆったりとしている。

洋式トイレ・男子小用トイレ・業務用多目的室・公衆電話を備える。定員30名。のちに「ひだ」に転用。

車歴表

廃車などについては2022年8月時点のものとする。

キハ85形0番台
キハ85形 新製 改番 廃車 備考
1 1988年12月15日 「ありがとうキハ85系ひだ」号に使用
2 1988年12月20日
3 1990年2月26日 WILLER TRAINSへ譲渡
4 1990年3月1日
5 1990年3月6日
6 1990年3月6日 WILLER TRAINSへ譲渡
7 1990年3月8日 WILLER TRAINSへ譲渡
8 1990年3月8日
9 1990年3月8日
10 1990年3月15日
11 1990年3月15日
12 1990年3月15日 WILLER TRAINSへ譲渡
13 1990年3月19日
14 1990年3月19日
キハ85形100番台→1100番台
キハ85 新製 改番 廃車 備考
101 1988年12月15日 キハ85-1101 「ありがとうキハ85系ひだ」号に使用
102 1988年12月20日 キハ85-1102
103 1990年2月26日 キハ85-1103
104 1990年3月1日 キハ85-1104
105 1990年3月1日 キハ85-1105
106 1990年3月1日 キハ85-1106
107 1990年3月8日 1996年12月12日 落石衝突事故 廃車
108 1990年3月8日 キハ85-1108
109 1990年3月6日 キハ85-1109
110 1990年3月8日 キハ85-1110
111 1990年3月15日 キハ85-1111
112 1990年3月15日 キハ85-1112
113 1990年3月15日 キハ85-1113
114 1990年3月19日 キハ85-1114
115 1990年3月19日 キハ85-1115
116 1990年3月23日 キハ85-1116
117 1990年3月23日 キハ85-1117
118 1990年3月23日 キハ85-1118
119 1997年6月25日 キハ85-1119 キハ85-107の代替新造
キハ85形200・1200番台
キハ85 新製 改番 廃車 備考
201 1992年1月18日
202 1992年1月18日
203 1992年2月5日
204 1992年2月5日
205 1992年2月13日
206 1992年2月13日
207 1992年2月13日
208 1992年2月13日
209 1992年2月13日 キハ85-1209
キロ85形
キロ85 新製 改番 廃車 備考
1 1992年1月18日
2 1992年1月18日
3 1992年2月5日
4 1992年2月5日
5 1992年2月13日
キハ84形0番台
キハ84 新製 改番 廃車 備考
1 1988年12月20日 「ありがとうキハ85系ひだ」号に使用
2 1988年12月20日 2022年7月6日
3 1990年2月26日
4 1990年3月1日
5 1990年3月6日
6 1990年3月8日 2022年7月6日
7 1990年3月22日
8 1990年3月22日
9 1990年3月22日
10 1990年3月22日 2022年7月6日
11 1990年4月18日
12 1990年4月18日
13 1990年4月18日
14 1990年4月18日
キハ84形200番台
キハ84 新製 改番 廃車 備考
201 1992年1月18日 2022年7月6日
202 1992年1月18日
203 1992年2月5日
204 1992年2月5日
205 1992年2月13日
キハ84形300番台
キハ84 新製 改番 廃車 備考
301 1992年1月18日
302 1992年1月18日
303 1992年2月5日
304 1992年2月5日
305 1992年2月13日
キロハ84形
キロハ84 新製 改番 廃車 備考
1 1988年12月15日 「ありがとうキハ85系ひだ」号に使用
2 1988年12月20日 2022年7月6日
3 1990年2月26日
4 1990年3月1日
5 1990年3月6日 2022年7月6日
6 1990年3月6日
7 1990年3月8日
8 1990年3月23日
9 1990年3月23日
10 1990年3月23日

運用

1989年(平成元年)に特急「ひだ」で運用を開始した。当初は1往復のみの充当であったが、翌1990年(平成2年)3月10日のダイヤ改正にてすべての「ひだ」に運用されるようになった。1991年(平成3年)3月16日のダイヤ改正で、名古屋鉄道から高山本線に乗り入れていた特急「北アルプス」がキハ8500系に置き換えられ、季節運転の「ひだ」と併結して運転されるようになった。その後、1999年(平成11年)からは定期運行となった「ひだ」と併結し、2001年(平成13年)9月30日の「北アルプス」廃止まで続いた。

「南紀」は1992年(平成4年)3月のダイヤ改正から営業運転を開始し、改正と同時に全列車を置き換えた。当初は専用グリーン車のキロ85を連結していたが、2001年(平成13年)にグリーン車の連結は多客期のみに変更された。

過去には間合い運用として「ホームライナー(太多・四日市・岡崎)」にも使用されていたが、これらが一般列車に変更されたため2012年(平成24年)3月改正後は使用されていない。普通列車としては、2001年(平成13年)3月のダイヤ改正まで新宮駅 - 紀伊勝浦駅間において、紀伊勝浦駅発の始発列車と新宮駅発の最終列車の運用があった(名古屋駅 - 新宮駅間は「南紀」として運行)[6]

2018年(平成30年)4月1日現在では名古屋車両区に80両が配置され[7]、以下の列車・編成で使用される。

斜字は非貫通式先頭車。気動車である特性を生かして1両単位での増結や車両の差し替えも行われている。

大阪駅始発の「ひだ」(2011年9月13日 島本駅 - 山崎駅間)

「ひだ」用編成

高山本線内では右側が富山駅向き。名古屋駅 - 岐阜駅間は逆向き(右側が名古屋駅向き)。

3両編成(グリーン車連結)
富山駅発着の列車に使用される。名古屋駅 - 高山駅間では下記の2編成のいずれかを連結(他の車両は高山本線内での岐阜駅寄りに連結)し、高山駅 - 富山駅間の定期列車はこの3両のみで運転される[注 5]
キハ85-1100 + キハ84-300 + キロ85
3両編成(普通車のみ)
大阪駅発着の「ひだ」25・36号、名古屋駅発着の「ひだ」7・14号などで運用されている。
キハ85 + キハ84 + キハ85-1100
4両編成(半室グリーン車連結)
「ひだ」の基本編成。中間にグリーン・普通合造車がある。
キハ85-200 + キロハ84 + キハ84 + キハ85-1100
キハ85 + キロハ84 + キハ84 + キハ85-1100
4両編成(普通車のみ)
キハ85 + キハ84 + キハ84 + キハ85-1100
南紀(2007年7月8日 桑名駅

「南紀」用編成

右側は紀伊勝浦駅向き。2020年令和2年)11月1日、キハ85 + キロハ84 + キハ84 + キハ85-1100という編成から改編された。中間のグリーン車・普通車合造車の連結は廃止され、普通車のみで構成される。定期列車は基本この2両のみで運転され、繁忙期には紀伊勝浦寄りにキハ85-1100(キハ84を挟む場合あり)を需要に応じて増結する。ひだとは異なり、途中駅では増解結を行わない。

キハ85 + キハ85-1100

運用に関する補足

衝撃緩和装置を装着したキハ85形

紀勢本線において野生動物との接触事故が多発しているため、2012年(平成24年)春から「南紀」用キハ85のうち4両のスカートにスポンジゴム製衝撃緩和装置が取り付けられた[8]

「ひだ」のインバウンド需要拡大に伴い、2016年(平成28年)には通訳オペレーターと話せるテレビ電話や音声翻訳機能を備えたタブレット端末を導入。 2018年(平成30年)にはすべての車両で無料Wi-Fiの提供を開始し、和式トイレの一部を洋式へ改造している[9][10][11]

臨時列車

毎年10月頃に鈴鹿サーキットでFIA(国際自動車連盟)主催F1世界選手権日本グランプリが開催される際には全席指定の臨時特急「鈴鹿グランプリ」に使用される。

1991年(平成3年)1月に団体臨時列車として東日本旅客鉄道(JR東日本)飯山線に乗り入れた[12]身延線にも2001年にお召し列車として入線している。飯田線豊橋駅 - 飯田駅間にも1990年(平成2年)10月に団体臨時列車で乗り入れた[13]。また、JRと伊勢鉄道以外では1991年(平成3年)に樽見鉄道樽見線にて2両編成で試運転を行ったことがあるが、営業運転は臨時・団体共に行われていない。

2009年(平成21年)7月15日には臨時列車「紀勢本線全通50周年記念号」として紀伊勝浦駅 - 白浜駅間に入線した。

2023年(令和5年)3月4・5・11・12日の「ありがとうキハ85系ひだ号」では、導入最初の車両(キハ85-1 + キロハ84-1 + キハ84-1 + キハ85-1101)が組まれたリバイバル編成で運転された[14][15]。さらに同年6月24日・25日には「ありがとうキハ85系南紀号」が運転されたほか、同年7月8日・9日には「さよならキハ85系号」が運転され、9日運転分の復路は10両編成中の3号車から8号車まで、貫通型先頭車のみを連結した編成となった[16]

HC85系による置き換え

2017年(平成29年)6月7日、JR東海は特急「ひだ」・「南紀」で使用されているキハ85系を置き換えるために、HC85系の投入計画を発表した[17]。HC85系は2022年(令和4年)7月から高山本線にて営業運転を開始し、本系列の運用を順次置き換えた。その後8両が西浜松に回送され[18]、うち中間車6両が同年7月6日付で廃車されている[19]

定期列車での運用については「ひだ」では2023年(令和5年)3月17日をもって終了[20]、「南紀」では2023年(令和5年)6月30日をもって終了した[21][22]

定期運用離脱後も「ひだ」などで臨時特急として運用されていたが2023年7月9日の団体臨時列車「さよならキハ85系号」を最後に引退した。

京都丹後鉄道KTR8500形

西舞鶴駅にて留置中のKTR8500形

WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)では、現行の特急車両の老朽化に伴い、本形式4両(このうち2両は部品取り用として保管)の譲渡を受けた[23]。2023年3月6日には、京都鉄道博物館で展示されていたキハ85-3・キハ85-12が福知山線経由で、京都丹後鉄道・西舞鶴運転区へ回送された[24][25][23]。同年3月24日には追加でキハ85-6・キハ85-7の譲渡回送も行われた[26]。形式は、KTR8500形気動車であり[27]、車号は以下のとおりである[28]

  • KTR8501:キハ85-12(営業用車両)
  • KTR8502:キハ85-3(営業用車両)
  • KTR8503:キハ85-6(部品取り車両)
  • KTR8504:キハ85-7(部品取り車両)


京都丹後鉄道での運行開始は早ければ2023年度中の予定で、運行線区等詳細は検討中としている[23]

事故廃車

1996年(平成8年)6月25日に高山本線下呂駅 - 焼石駅間で落石に衝突し脱線する事故が発生した(高山本線特急列車脱線事故[29]。この事故によりキハ85-107の1両が廃車となり、その代替車両としてキハ85-119が1997年(平成9年)に製造された。

その他

2023年2月23日から3月5日まで京都鉄道博物館にてキハ85-3・キハ85-12がHC85系D105編成と共に特別展示された[30]。なお、JR東海の車両を展示するのは、新幹線以外として初であった[31]

脚注

注釈

  1. ^ 本系列の投入と並行して軌道強化や両開き分岐器(Y字ポイント)の高速通過 (110 km/h) 対応など、地上設備の改良工事も実施された。
  2. ^ ディーゼル機関車においては、1982年昭和57年)に大井川鐵道DD20形で採用例がある。
  3. ^ 原設計こそ1960年代と古いが信頼性は高く、船舶自動車などにも広範に使用される汎用型の高速ディーゼルエンジンであった。1970 - 80年代にはアメリカのトラックメーカーから広く採用を受け、それまで主流だったGM系のデトロイト・ディーゼルのユニフロー掃気ディーゼルエンジンに代わって市場で好評を得た実績もある。
  4. ^ 後の373系383系に近いものとなっているが、本系列では号車・座席種別幕が小型になっていないという違いがある。
  5. ^ ただしゴールデンウィーク年末年始おわら風の盆などの最繁忙期には4・5両編成に増結されることがある。

出典

  1. ^ KDA 剣持デザイン研究所 作品年表(インターネットアーカイブ)。
  2. ^ 旅客車 [ワイドビューひだ キハ85系特急形気動車]”. グッドデザイン賞. 日本デザイン振興会. 2021年8月26日閲覧。
  3. ^ a b c d 重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (3/5)”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2019年9月6日). 2021年8月26日閲覧。
  4. ^ 重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (5/5)”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2019年9月6日). 2021年8月26日閲覧。
  5. ^ a b 重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (2/5)”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2019年9月6日). 2021年8月26日閲覧。
  6. ^ 『JR時刻表』(弘済出版社)2000年12月号、310頁および315頁
  7. ^ 交友社鉄道ファン』2018年7月号 「JR車両ファイル2018 JR旅客会社の車両配置表」 p.18 - p.21
  8. ^ “ワイドビュー南紀”用キハ85形に衝撃緩和装置”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2012年5月21日). 2017年6月7日閲覧。
  9. ^ 重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 (4/5)”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2019年9月6日). 2021年8月26日閲覧。
  10. ^ 新幹線車内・駅等での無料 Wi-Fi サービスの拡大について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2018年1月25日http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000036203.pdf2018年3月6日閲覧 
  11. ^ (日本語) (PDF) 鉄道分野における インバウンド受入環境整備について, 国土交通省, (2018年2月20日), https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kankotf_dai18/siryou2.pdf 2018年3月6日閲覧。 
  12. ^ 「ユニーク列車PHOTOリポート」『鉄道ダイヤ情報』第84号、弘済出版社、1991年4月、138頁。 
  13. ^ 「TOPICS PHOTOS」『鉄道ピクトリアル』第539号、電気車研究会、1991年2月、92頁。 
  14. ^ 特急「ありがとうキハ85系ひだ」号を運転します 東海旅客鉄道 2023年3月1日閲覧
  15. ^ ありがとうキハ85系 別れを惜しむファン「100枚は撮った」  車両の世代交代でイベント 名古屋テレビ 2023年3月15日
  16. ^ 特急「ありがとうキハ85系南紀」号、特急「さよならキハ85系」号を運転します”. 東海旅客鉄道. 2023年5月15日閲覧。
  17. ^ ハイブリッド方式による次期特急車両(試験走行車)の新製について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2017年6月7日http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034155.pdf2017年6月7日閲覧 
  18. ^ キハ85系8両が西浜松へ|鉄道ニュース|2022年7月6日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2022年7月6日閲覧。
  19. ^ ジェー・アール・アール『JR電車編成表2023冬』交通新聞社、2022年11月、360頁。ISBN 9784330067223 
  20. ^ JR東海 2023年3月 ダイヤ改正について”. 東海旅客鉄道. 2022年12月16日閲覧。
  21. ^ 「HC85系が紀勢線にも 7月から特急「南紀」に投入」『Yahooニュース』2023年1月1日。
  22. ^ “JR東海の新型特急「HC85系」、7月1日に2編成デビュー 大阪・富山乗り入れも検討” (日本語). TRAICY. (2022年5月24日). https://www.traicy.com/posts/20220524241480/ 2022年5月25日閲覧。 
  23. ^ a b c JR東海の特急キハ85系、京都丹後鉄道に譲渡 2023年度中にも運行へ」『中日新聞中日新聞社、2023年3月7日。2023年3月7日閲覧。オリジナルの2023年3月7日時点におけるアーカイブ。
  24. ^ 丹鉄への譲渡回送!? キハ85系が2両で西舞鶴へと旅立つ」『鉄道ホビダス』ネコ・パブリッシング、2023年3月7日。2023年3月7日閲覧。
  25. ^ キハ85系が京都丹後鉄道へ」『railf.jp(鉄道ニュース)』交友社、2023年3月7日。2023年3月7日閲覧。
  26. ^ キハ85系が京都丹後鉄道へ」『railf.jp(鉄道ニュース)』交友社、2023年3月25日。2023年4月13日閲覧。
  27. ^ キハ85系、京都丹後鉄道では「KTR8500形」 その命名理由を聞いた”. 鉄道チャンネル. 2023年5月16日閲覧。
  28. ^ 安全報告書2022京都丹後鉄道
  29. ^ “特急脱線16人けが JR高山線、土砂崩れ落石に乗り上げ”. 産経新聞 (産経新聞社). (1996年6月26日). オリジナルの2000年11月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20001102001812/http://www.sankei.co.jp/databox/paper/96/html/0626side02.html 2020年4月5日閲覧。 
  30. ^ 京都鉄道博物館でキハ85系・HC85系の特別展示」『railf.jp(鉄道ニュース)』交友社、2023年2月24日。2023年4月13日閲覧。
  31. ^ HC85系・キハ85系京都鉄道博物館での特別展示のおしらせ”. 東海旅客鉄道. 2022年12月19日閲覧。

関連項目

外部リンク

  1. ^ 地球環境保全への貢献”. 東海旅客鉄道. 2023年11月29日閲覧。