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「093型原子力潜水艦」の版間の差分

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== 事故疑惑 ==
== 疑惑 ==
2023年8月21日に沈没事故が発生したとの情報がインターネット上で出回ったが、当事国の中国、日本や韓国などの周辺各国からの公式声明は発表されていない。また、場所(台湾海峡→黄海)や状態(沈没→事故後に浮上)、事故原因(爆発→接触破損)、艦(長征15号→長征14号)、犠牲者数(全員死亡→数百人→55人)が度々変更されており、まったく真偽不明の状態である。
2023年8月21日に沈没事故が発生したとの情報がインターネット上で出回ったが、当事国の中国、日本や韓国などの周辺各国からの公式声明は発表されていない。また、場所(台湾海峡→黄海)や状態(沈没→事故後に浮上)、事故原因(爆発→接触破損)、艦(長征15号→長征14号)、犠牲者数(全員死亡→数百人→55人)が度々変更されており、まったく真偽不明の状態である。


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9月に入ると、沈没したのが長征15号(艦番号418)、場所は北部の[[黄海]]との報道があり、中国当局が安全保障会議を招集している、休暇のはずの船員が家に帰らない等の噂が流れた。また、米軍の[[WC-135 (航空機)|WC-135]]偵察機が飛来していたことで、核放射線の探知が行われたのではないかと推測がされた<ref>{{Cite web |title=【國防布遮不住】官兵未歸家屬急尋 解放軍潛艇黃海爆炸消息走漏 -- 上報 / 要聞 |url=https://www.upmedia.mg/news_info.php?Type=1&SerialNo=181800 |website=www.upmedia.mg |access-date=2023-10-04}}</ref><ref>{{Cite web |title=官兵未歸?美軍偵察!中國潛艦黃海遇難傳言又起 - 自由軍武頻道 |url=https://def.ltn.com.tw/article/breakingnews/4423426 |website=def.ltn.com.tw |access-date=2023-10-04 |language=en |last=自由時報電子報}}</ref>。 ただし、実際に黄海付近をWC-135が飛行したのは事故日とされる8月21日から半月程度経過した後の9月6日のことである。
9月に入ると、沈没したのが長征15号(艦番号418)、場所は北部の[[黄海]]との報道があり、中国当局が安全保障会議を招集している、休暇のはずの船員が家に帰らない等の噂が流れた。また、米軍の[[WC-135 (航空機)|WC-135]]偵察機が飛来していたことで、核放射線の探知が行われたのではないかと推測がされた<ref>{{Cite web |title=【國防布遮不住】官兵未歸家屬急尋 解放軍潛艇黃海爆炸消息走漏 -- 上報 / 要聞 |url=https://www.upmedia.mg/news_info.php?Type=1&SerialNo=181800 |website=www.upmedia.mg |access-date=2023-10-04}}</ref><ref>{{Cite web |title=官兵未歸?美軍偵察!中國潛艦黃海遇難傳言又起 - 自由軍武頻道 |url=https://def.ltn.com.tw/article/breakingnews/4423426 |website=def.ltn.com.tw |access-date=2023-10-04 |language=en |last=自由時報電子報}}</ref>。 ただし、実際に黄海付近をWC-135が飛行したのは事故日とされる8月21日から半月程度経過した後の9月6日のことである。


10月4日、イギリスの『[[デイリー・メール]]』紙は入手した英国の報告書に、8月21日に黄海で長征15号(艦番号417)号が、チェーンとアンカーによるトラップに接触、空気循環装置の故障を引き起こし、浮上するまでの6時間に55名(艦長の薛永鵬大佐含む将校22名、将校訓練生7名、下士官9名、水兵17名)が中毒死(低酸素症)したと書かれていと報じた<ref>{{Cite web |title=55 Chinese sailors feared dead after submarine 'caught in trap' |url=https://www.dailymail.co.uk/news/article-12589429/chinese-sailors-trap-yellow-sea.html |website=Mail Online |date=2023-10-03 |access-date=2023-10-04 |first=Mark |last=Nicol}}</ref>。 また、イギリスの『[[タイムズ]]』紙も、同様の内容を報じている<ref>{{Cite news |title=China ‘kills own sailors with trap set for US and British vessels’ |url=https://www.thetimes.co.uk/article/china-kills-own-sailors-with-trap-set-for-us-and-british-vessels-75wdfkc2p |date=2023-10-04 |access-date=2023-10-04 |issn=0140-0460 |language=en |first=George Grylls, Defence |last=Correspondent}}</ref>デイリー・メールによれば、このトラップは2021年10月2日にアメリカ海軍のシーウルフ級原子力潜水艦[[コネチカット (原子力潜水艦)|コネチカット]]を損傷させたものと同一としている<ref>{{Cite web |title=EXCLUSIVE: Furious China believes UK spies tracked one of their submarines by bugging a sailor's Apple smart-watch before the vessel got caught in one of Beijing's own underwater traps, killing all on board |url=https://www.dailymail.co.uk/news/article-12602807/china-uk-spies-tracked-bugged-submarine-smart-watch.html |website=Mail Online |date=2023-10-06 |access-date=2023-10-10 |first=Mark |last=Nicol}}</ref>。この情報の真偽を問われた英海軍はコメントを出していない。
10月4日、イギリスの『[[デイリー・メール]]』紙は入手した英国の報告書に、8月21日に黄海で長征15号(艦番号417)号が、チェーンとアンカーによるトラップに接触、空気循環装置の故障を引き起こし、浮上するまでの6時間に55名(艦長の薛永鵬大佐含む将校22名、将校訓練生7名、下士官9名、水兵17名)が中毒死(低酸素症)したと書かれていと報じた<ref>{{Cite web |title=55 Chinese sailors feared dead after submarine 'caught in trap' |url=https://www.dailymail.co.uk/news/article-12589429/chinese-sailors-trap-yellow-sea.html |website=Mail Online |date=2023-10-03 |access-date=2023-10-04 |first=Mark |last=Nicol}}</ref>。 また、イギリスの『[[タイムズ]]』紙も、同様の内容を報じている<ref>{{Cite news |title=China ‘kills own sailors with trap set for US and British vessels’ |url=https://www.thetimes.co.uk/article/china-kills-own-sailors-with-trap-set-for-us-and-british-vessels-75wdfkc2p |date=2023-10-04 |access-date=2023-10-04 |issn=0140-0460 |language=en |first=George Grylls, Defence |last=Correspondent}}</ref>デイリー・メール、このトラップは2021年10月2日にアメリカ海軍のシーウルフ級原子力潜水艦[[コネチカット (原子力潜水艦)|コネチカット]]を損傷させたものと同一としている<ref>{{Cite web |title=EXCLUSIVE: Furious China believes UK spies tracked one of their submarines by bugging a sailor's Apple smart-watch before the vessel got caught in one of Beijing's own underwater traps, killing all on board |url=https://www.dailymail.co.uk/news/article-12602807/china-uk-spies-tracked-bugged-submarine-smart-watch.html |website=Mail Online |date=2023-10-06 |access-date=2023-10-10 |first=Mark |last=Nicol}}</ref>。この情報の真偽を問われた英海軍はコメントを出していない。
なお、死亡したとされる艦長の薛永鵬氏は原子力潜水艦を保有していない[[東海艦隊]]の所属であり、事故現場とされる連雲港より北の黄海は[[北海艦隊]]の領域である<ref>[http://www.mod.gov.cn/gfbw/wzll/dbzq/16004988.html 东部战区海军某潜艇艇长薛永鹏:“艇为长剑我为锋”]</ref>。
なお、死亡したとされる艦長の薛永鵬氏は原子力潜水艦を保有していない[[東海艦隊]]の所属であり、事故現場とされる連雲港より北の黄海は[[北海艦隊]]の領域である<ref>[http://www.mod.gov.cn/gfbw/wzll/dbzq/16004988.html 东部战区海军某潜艇艇长薛永鹏:“艇为长剑我为锋”]</ref>。



2023年10月10日 (火) 12:48時点における版

093型原子力潜水艦(商型)
基本情報
運用者  中国人民解放軍海軍
建造数 8隻[1]
前級 091型
次級 095型
要目
排水量 6,000-7,000t
長さ 106m[1]
11.5m[1]
主機 原子力蒸気タービン(原子炉2基/蒸気タービン2基)、1軸[1]
最大速力 30kts[1]
兵装 YJ-18 USM,YJ-82 USM,533㎜魚雷発射管x6[1]
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093型原子力潜水艦は、中国人民解放軍海軍原子力潜水艦である[1]NATOコードネーム殷王朝の別名に因んで商級(Shang Class)。

概要

旧式化した091型(漢級)の後継[2]として開発された中国人民解放軍海軍で2番目の攻撃型原潜である[1]ロシアからヴィクターIII型原子力潜水艦の技術を導入して静粛性の向上を図っている[3]。ただし、司令塔の形状はヴィクター型と全く異なり、潜舵も司令塔取り付けであるなど、外形は全く異なる[3]アメリカ海軍の評価では、静粛性もヴィクターIII型に劣るとされている[3](ヴィクターIII型の静粛性は、概ねスタージョン級やロサンゼルス級の初期型と同レベル)。

2007年になると、この艦の発展型である094型が航海している様子が撮影され、本艦が実戦配備されている可能性が濃厚となった。

また、2007年8月には、中国の軍の公式雑誌『現代艦船』で写真が公開され、同時に技術的課題が解決され、2006年の12月に一番艦が就役(配備)したと伝えた 公開された写真。1番艦は1994年建造開始のため、就役まで12年を要しているが、2番艦は2000年建造開始、2007年就役と建造期間は短縮されている[3]

093型の後継として、静粛性が向上し、対地攻撃力を増した、095型が開発中と推測されており[2]、早ければ2010年代後半[3]、遅くとも2020年代前半には就役すると見込まれている[2]

その後、船体を若干延長し水中放射雑音も抑えた改良型の093A型が、4~6番艦として2015~2016年に就役し、さらに改良型の093B型が、7番艦・8番艦として2017~2018年に就役している[1]

中国人民解放軍海軍が技術や兵站上の問題を改善し、潜水艦の遠洋航海に乗り出したのは、事実上2000年代の半ばからと、その期間は未だ長くはない[4]。その中において、093型は遠距離展開を図っており、2014年にはインド洋において哨戒活動を行っている[5][6]

2018年1月10日から11日にかけて尖閣諸島(沖縄県石垣市)の接続水域を潜没航行した潜水艦1隻が同12日に中華人民共和国の国旗を掲げて東シナ海を浮上航行したことを、日本海上自衛隊が確認した[7]小野寺五典防衛大臣は同15日、この潜水艦が商級であると記者団に説明した。『産経新聞』の報道によると、この潜水艦は商級改良型の可能性があり、その場合、最大射程540kmの巡航ミサイル十数発を搭載可能で、中国海軍がアメリカ海軍の空母部隊に対してとっている接近阻止・領域拒否戦略の一端を担っているとみられる[8]

2020年、アメリカの企業により、海南島楡林港地下基地に出入りする093型原子力潜水艦を捉えたとする衛星画像が公開されている[9]

同艦型

一覧表

艦番号 艦名 建造 起工 就役 所属 運用状況
093型
407 長征7号 渤海船舶重工 2002年
12月24日
2006年
12月
龍坡海軍基地 就役中[10]
408 長征8号 2000年 2008年 就役中[10]
409 長征1号 2012年 就役中[10]
093A型
410 長征2号 渤海船舶重工 2012年 2014年 龍坡海軍基地 就役中[10]
415 長征13号 2013年 不明 姜各荘海軍基地 就役中[10]
416 長征3号 不明 就役中[10]
417 長征14号 不明 就役中[10]
418 長征15号 2017年 就役中[10]
419 長征16号 2018年 就役中[10]
093B型
渤海船舶重工 2022年[11] 艤装中
2023年[11] 艤装中

疑惑

2023年8月21日に沈没事故が発生したとの情報がインターネット上で出回ったが、当事国の中国、日本や韓国などの周辺各国からの公式声明は発表されていない。また、場所(台湾海峡→黄海)や状態(沈没→事故後に浮上)、事故原因(爆発→接触破損)、艦(長征15号→長征14号)、犠牲者数(全員死亡→数百人→55人)が度々変更されており、まったく真偽不明の状態である。

2023年8月21日にYouTubeアカウント『路德社(lude media)』が「093型潜水艦が台湾海峡で沈没した」旨の動画を投稿。22日に軍事専門家のH.I Sutton氏がX(旧Twitter)で「まだ確認されていない」と明記した真偽不明の情報として投稿したが、これが広く拡散され国際的な懸念を引き起こした[12]

台湾国防部は、台湾の軍と政府は潜水艦の事故があったという証拠を入手しておらず、一連の報道の裏を取ることはできなかったと述べた[13]中国国防省は、当初事故についての言及はせず、31日に記者会見で事件について「情報は純粋な噂であり、ネットユーザーが権威ある情報に注意を払い、迷わされないことを望む」と答え、事故を完全に否定した[12]

また、路德社は以前より虚偽情報と陰謀論を何度も投稿していた[12]ことから、沈没情報はデマである可能性が高くなった[14]

9月に入ると、沈没したのが長征15号(艦番号418)、場所は北部の黄海との報道があり、中国当局が安全保障会議を招集している、休暇のはずの船員が家に帰らない等の噂が流れた。また、米軍のWC-135偵察機が飛来していたことで、核放射線の探知が行われたのではないかと推測がされた[15][16]。 ただし、実際に黄海付近をWC-135が飛行したのは事故日とされる8月21日から半月程度経過した後の9月6日のことである。

10月4日、イギリスの『デイリー・メール』紙は入手した英国の報告書に、8月21日に黄海で長征15号(艦番号417)号が、チェーンとアンカーによるトラップに接触、空気循環装置の故障を引き起こし、浮上するまでの6時間に55名(艦長の薛永鵬大佐含む将校22名、将校訓練生7名、下士官9名、水兵17名)が中毒死(低酸素症)したと書かれていと報じた[17]。 また、イギリスの『タイムズ』紙も、同様の内容を報じている[18]。デイリー・メールは、このトラップは2021年10月2日にアメリカ海軍のシーウルフ級原子力潜水艦コネチカットを損傷させたものと同一としている[19]。この情報の真偽を問われた英海軍はコメントを出していない。 なお、死亡したとされる艦長の薛永鵬氏は原子力潜水艦を保有していない東海艦隊の所属であり、事故現場とされる連雲港より北の黄海は北海艦隊の領域である[20]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i 今日の中国軍艦 原子力攻撃潜水艦「商」型/093・093A・093B型,世界の艦船,2021年4月号,P23,海人社
  2. ^ a b c Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2014,P8,DoD
  3. ^ a b c d e 攻撃原潜「商」型,小林正男,P84-85,世界の艦船,2014年6月号,海人社
  4. ^ 中国潜水艦運用の現状と課題,小原凡司,世界の艦船,2013年10月号,P92-95,海人社
  5. ^ 中国潜水艦のインド洋進出,海上自衛隊幹部学校コラム,2014-10-06
  6. ^ Exclusive: Indian Navy headless as Chinese nuclear sub prowls Indian Ocean”. indiatoday (2014年3月21日). 2015年2月8日閲覧。
  7. ^ 潜没潜水艦の動向について防衛省・報道発表(2018年1月12日)2018年1月17日閲覧
  8. ^ 尖閣接続水域入域の中国潜水艦は「商」級攻撃型原潜 長射程巡航ミサイル搭載か 防衛相が発表『産経新聞』朝刊2018年1月16日
  9. ^ 地下基地に入る中国の原子力潜水艦? 米企業が衛星写真公開”. AFP (2020年8月22日). 2020年8月22日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i The International Institute for Strategic Studies (2022). The Military Balance 2022. Routledge. p. 257. ISBN 978-1-032-27900-8 
  11. ^ a b China launches second possible Type 093B hull”. janes.com (2023年2月1日). 2023年2月1日閲覧。
  12. ^ a b c 經濟日報. “共軍核潛艦台海發生意外? 陸國防部終回應:純屬謠言 | 大陸政經 | 兩岸” (中国語). 經濟日報. 2023年10月4日閲覧。
  13. ^ 中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も”. Newsweek日本版 (2023年8月24日). 2023年10月4日閲覧。
  14. ^ Yahoo!ニュース エキスパート オーサーJSFさんのコメント”. Yahoo!ニュース. 2023年10月4日閲覧。
  15. ^ 【國防布遮不住】官兵未歸家屬急尋 解放軍潛艇黃海爆炸消息走漏 -- 上報 / 要聞”. www.upmedia.mg. 2023年10月4日閲覧。
  16. ^ 自由時報電子報. “官兵未歸?美軍偵察!中國潛艦黃海遇難傳言又起 - 自由軍武頻道” (英語). def.ltn.com.tw. 2023年10月4日閲覧。
  17. ^ Nicol, Mark (2023年10月3日). “55 Chinese sailors feared dead after submarine 'caught in trap'”. Mail Online. 2023年10月4日閲覧。
  18. ^ Correspondent, George Grylls, Defence (2023年10月4日). “China ‘kills own sailors with trap set for US and British vessels’” (英語). ISSN 0140-0460. https://www.thetimes.co.uk/article/china-kills-own-sailors-with-trap-set-for-us-and-british-vessels-75wdfkc2p 2023年10月4日閲覧。 
  19. ^ Nicol, Mark (2023年10月6日). “EXCLUSIVE: Furious China believes UK spies tracked one of their submarines by bugging a sailor's Apple smart-watch before the vessel got caught in one of Beijing's own underwater traps, killing all on board”. Mail Online. 2023年10月10日閲覧。
  20. ^ 东部战区海军某潜艇艇长薛永鹏:“艇为长剑我为锋”

外部リンク