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「KJ-600 (航空機)」の版間の差分

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== 概要 ==
== 概要 ==
西安飛機第903研究所では、[[航空母艦]]上での運用を想定した[[早期警戒機]]として、西安飛機の[[Y-7 (航空機)|Y-7輸送機]]を改装してJZY-01を製作し、2005年から試験に供して、模擬離着艦などを実施した{{Sfn|石川|2023}}。その試験結果を踏まえた実用機として開発されたのがKJ-600であり、2020年8月に初飛行し、2024年頃の実用化が予測されている{{Sfn|石川|2023}}。
西安飛機第903研究所では、[[航空母艦]]上での運用を想定した[[早期警戒機]]として、同社の[[Y-7 (航空機)|Y-7輸送機]]を改装してJZY-01を製作し、2005年から試験に供して、模擬離着艦などを実施した{{Sfn|石川|2023}}。その試験結果を踏まえた実用機として開発されたのがKJ-600であり、[[2020年]]8月に初飛行し、2024年頃の実用化が予測されている{{Sfn|石川|2023}}。


Y-7と同じく[[ターボプロップエンジン]]を双発に配しており、その機種はY-7と同じ{{仮リンク|WJ-5 (エンジン)|en|Dongan WJ-5|label=渦槳5E}}あるいは渦槳6Cといわれているが、プロペラは、完全に新しい偃月形5枚ブレードの新型のものになった{{Sfn|青木|2023}}。Y-7は全幅が29.2メートルもあることから、KJ-600では艦上運用に対応して主[[翼]]を折りたためるようにしており、エンジン取付部の外側に折りたたみ位置を設けて後方に曲げ、また後方[[胴体 (航空)|胴体]]に沿って密着させるようなスタイルとなっている{{Sfn|青木|2023}}。また[[尾翼]]の設計は完全に変更され、後方胴体のほぼ最後部上面に[[水平安定板]]を載せ、その両端とそれらと胴体の間に計4枚の小さな垂直安定板を立てた形状となった{{Sfn|青木|2023}}。これらはいずれも[[アメリカ合衆国]]の[[E-2 (航空機)|E-2]]に範を取った手法であり、[[アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ]]を収容したロートドームを機体背側に搭載した点とあわせて、機体の外見からはY-7の印象は薄くなっており、むしろE-2に近いものとなった{{Sfn|青木|2023}}。
Y-7と同じく[[ターボプロップエンジン]]を双発に配しており、その機種はY-7と同じ{{仮リンク|WJ-5 (エンジン)|en|Dongan WJ-5|label=渦槳5E}}あるいは渦槳6Cといわれているが、プロペラは、完全に新しい偃月形5枚ブレードの新型のものになった{{Sfn|青木|2023}}。Y-7は全幅が29.2メートルもあることから、KJ-600では艦上運用に対応して主[[翼]]を折りたためるようにしており、エンジン取付部の外側に折りたたみ位置を設けて後方に曲げ、また後方[[胴体 (航空)|胴体]]に沿って密着させるようなスタイルとなっている{{Sfn|青木|2023}}。また[[尾翼]]の設計は完全に変更され、後方胴体のほぼ最後部上面に[[水平安定板]]を載せ、その両端とそれらと胴体の間に計4枚の小さな垂直安定板を立てた形状となった{{Sfn|青木|2023}}。これらはいずれも[[アメリカ合衆国]]の[[E-2 (航空機)|E-2]]に範を取った手法であり、[[早期警戒レーダー]]の[[アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ]]を収容したロートドームを機体背側に搭載した点とあわせて、機体の外見からはY-7の印象は薄くなっており、むしろE-2に近いものとなった{{Sfn|青木|2023}}。


本機は、[[CATOBAR]]方式の「[[福建 (空母)|福建]]」での運用が予定されているほか、[[STOBAR]]方式の「[[遼寧 (空母)|遼寧]]」「[[山東 (空母)|山東]]」でも、[[ロケットエンジン|ロケット]]・[[ブースター]]を使って加速させることで発艦させる方法が検討されている{{Sfn|青木|2023}}。
本機は、[[CATOBAR]]方式の「[[福建 (空母)|福建]]」での運用が予定されているほか、[[STOBAR]]方式の「[[遼寧 (空母)|遼寧]]」「[[山東 (空母)|山東]]」でも、[[ロケットエンジン|ロケット]]・[[ブースター]]を使って加速させることで発艦させる方法が検討されている{{Sfn|青木|2023}}。

2023年11月27日 (月) 02:54時点における版

KJ-600

KJ-600中国語: 空警600)は、西安飛機工業公司早期警戒機として開発したターボプロップ機。航空母艦への搭載などが視野に入れられている。

概要 

西安飛機第903研究所では、航空母艦上での運用を想定した早期警戒機として、同社のY-7輸送機を改装してJZY-01を製作し、2005年から試験に供して、模擬離着艦などを実施した[1]。その試験結果を踏まえた実用機として開発されたのがKJ-600であり、2020年8月に初飛行し、2024年頃の実用化が予測されている[1]

Y-7と同じくターボプロップエンジンを双発に配しており、その機種はY-7と同じ渦槳5E英語版あるいは渦槳6Cといわれているが、プロペラは、完全に新しい偃月形5枚ブレードの新型のものになった[2]。Y-7は全幅が29.2メートルもあることから、KJ-600では艦上運用に対応して主を折りたためるようにしており、エンジン取付部の外側に折りたたみ位置を設けて後方に曲げ、また後方胴体に沿って密着させるようなスタイルとなっている[2]。また尾翼の設計は完全に変更され、後方胴体のほぼ最後部上面に水平安定板を載せ、その両端とそれらと胴体の間に計4枚の小さな垂直安定板を立てた形状となった[2]。これらはいずれもアメリカ合衆国E-2に範を取った手法であり、早期警戒レーダーアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナを収容したロートドームを機体背側に搭載した点とあわせて、機体の外見からはY-7の印象は薄くなっており、むしろE-2に近いものとなった[2]

本機は、CATOBAR方式の「福建」での運用が予定されているほか、STOBAR方式の「遼寧」「山東」でも、ロケットブースターを使って加速させることで発艦させる方法が検討されている[2]

脚注

出典

参考文献

  • 青木謙知「中国海洋進出の先鋒、空母体制の拡充を最新空母「福建」の進水と新型艦載機の動向にみる」『航空ファン』第72巻、第1号、文林堂、62-68頁、2023年1月。CRID 1520857357554155136 
  • 石川潤一「空中早期警戒管制機のいま」『航空ファン』第72巻、第7号、文林堂、50-57頁、2023年7月。CRID 1520296666078947840 

外部リンク